2005/12/09

マンションを買うということ

 少し前のエントリで「自分の家の話でも書こうかと思う」と宣言したので、その話。

 といっても、別に「俺はこんなに世間知に長けてるんだぜベイベー!」とかアフォな自慢話をするつもりとかは全然なくて、むしろとりあえず終わった話だから書ける「よい子の皆さんはこんなことしないようにね!」的な恥さらしである。

 このブログでもちょろちょろと書いてきたが、僕は今年の6月に持ち家のマンションに引っ越した。それまでは賃貸マンションに住み、「年収の3倍以内で買えるぐらいに値段が下がるまで、家は買わない」と公言していた。それが突然マンションを買うことにしたのは、いろいろ理由もある。その理由はこちらとかこちらのエントリに書いた。

 ライフスタイルと住まいとの関係については語り始めると長くなるので省略。ここではお金の話だけしたい。

 今回の耐震強度偽装事件でもいろいろ言われているが、新築マンションを買いたいという人の気持ちも、分からないでもない。広さとかデザインとか間取りがどうとか言う前に、中古マンションを買って自分の好きなように間取りやデザインを変更するのは、単純にファイナンスの問題で非常に大変だからだ。

 僕の場合、昨年春頃から引っ越し先を探し始めて、確か6月頃に今の家を見つけた。で、元の持ち主と不動産屋を仲介にして価格交渉し、8月に購入を決め、9月にローンを組んでカネを払った。専有面積は92平米で、決着した購入価額は3900万円だった。

 このとき、内装は古いままでしかも僕らが購入する前には賃貸にしていたこともあり、かなり汚れていた。サーフェスリフォーム(いわゆるクリーニング)をかければ200万円もかからないできれいになることは知っていたが、そもそも間取りが4LDKと異様に細切れで気に入らなかったこともあり、最初から全面リフォームが前提だった。

 当初、リフォームの費用は建築士にも相談し、設計費を含めて1100万円と弾いていた。造作の期間は3ヶ月。年末までに解体して年明けから取りかかれば、4月には入居できると踏み、マンションの購入費用に加えて解体100万、3月までの賃貸住宅の家賃に100万、引っ越しやその他もろもろに100万円程度で、合計1500万円もあればすべて終わるだろうと思っていた。

 ちなみにその時持っていた自己資金は1500万円程度。銀行からは住宅ローンの与信枠として4500万円でも全然OKと言われていた(今から考えると、それは僕の収入に対する信用ではなくて、マスコミという勤務先に対する信用だったのだが)。そこで僕はうかつにもこう考えた。

 「費用は全部合わせて4400万円。自己資金が1500万円以上あるのだから、マンションの躯体部分には500万円ぐらいは自己資金で払って借り入れは3400万円に抑え、リフォームが終わった段階でさらに必要な金額を500~600万円借りればいいや」

 しかし、この目論見は実際のリフォーム着工が(これは純粋に設計を頼んだ建築家のせいだが)3ヶ月以上遅れ、しかも昨年末に僕が転職したことで大きく狂った。

 まず、建築家にリフォームのプランを作ってもらい、年末が近づいてからあちこちの工務店に見積もりをかけ始めたのだが、これが思った以上に時間と費用がかかることが明らかになった。そのへんの細かい話はまた省略。最後にはリフォームとその周辺の費用を全部合わせて、1600万円ぐらいかかることになった。これに、実際の入居が6月までずれ込んだ分の費用とかも全部合わせると、たぶん1800万円ぐらい出費がかさんだ。

 これに加えて参ったのは、転職が明らかになった瞬間に、銀行が手のひらを返してきたことだ。確かに転職で年収は多少下がったのだが、実際には前職の企業は今後どうあがいても給料が右肩下がりなことは(少なくとも僕には)火を見るより明らかだったし、転職先の収入も契約の額面上は確かに下がっているが、もろもろ含めると転職前より上がることは分かっていたので、自分としては決して自分の信用が落ちたとは思わなかった。

 しかし、銀行は「これ以上ご融資できません」の一点張り。よく話を聞いてみると、要するに転職先がどこだろうが、転職して3年以内の人間には貸さないというのがルールだという。めちゃくちゃ腹が立ったが、まあそれがルールだというのだからしょうがない。昨年のうちにあと500万円余分に借りて、自己資金を温存しておけば何とかなったのにと思っても後の祭りである。

 4月に入ってからは着工の前金500万円を自己資金で支払い、入居予定が延びたこともあってキャッシュポジションがじりじりと下がっていく。着々とリフォーム工事が進む中、工事会社の人には平然とした風を装いつつ、どうやって足りない資金を調達しようか必死で悩む日が続いた。

 まず最初に考えたのは、銀行を変えればどうかということ。だが、これはちょっと話を聞いただけですぐにダメだということが分かった。

 購入した物件は築20年の中古マンションである。1981年の建築基準法改正以降の物件なので、躯体も管理組合も非常にしっかりしていて、メンテナンスもこまめに行われており、あと40~50年は余裕で持つと言われていたが、金融機関からすると不動産物件の価値は25年で消滅するため、担保価値はないも同然。そんなところに既に他の銀行が3000万円以上貸しているのに、さらに抵当権順位第2位でローンを貸すバカはいないという。

 となると、次に頼れるのは公的金融機関だ。実は、僕は新卒入社以来父親に言われて、毎月給与から天引きで2万5000円を財形貯蓄に積み立て続けていた。残高は300万円弱。この積み立ての実績があれば、住宅金融公庫から財形融資を借りられるかも、とひらめいた。

 それで当たってみたところ、何とか条件は満たせるという。ただし、転職した時にきちんと継続の手続きを取っているかどうかがポイントと言われた。うっかり、いったん解約して転職先の財形貯蓄で(その残高だけを移して)新規に積み立て始めていたりすると、いくら過去の積み立て実績があっても融資は受けられないという。

 祈るような気持ちで金融機関に照会したところ、「継続」ステータスであるという。助かったと思い、最初にローンを借りたのと同じ銀行の別の支店を通じて財形融資申請の準備に入った。

 ところが、これが銀行内で伝わったのかどうかは知らないが、その銀行のローン窓口になった支店の支店長が、5月の連休明けになって突然、僕への融資では無理だが、カミサンへの融資ということでなら追加のローンを組めるかも知れない、と連絡してきた。

 カミサンも一昨年に今の会社に転職したばかりであり、しかもその会社は前職に比べて10分の1以下の今の僕の勤め先の、さらに10分の1ぐらいの規模の、どこからどう見ても吹けば飛ぶような中小零細企業である。何が「転職3年以内は貸せない」だ、よく言うよなあと思ったが、それでも頼れるものは何でも頼りたい。で、改めてローンの申請をしたところ、その支店長が行内で必死になって説得に回ってくれたらしく、「最初のローンにカミサンの連帯保証をつけ、逆にカミサンの借りる追加ローンの連帯保証に僕が入る」という条件でゴーサインが出た、と言われた。貸出金額は1000万円。財形貯蓄を含めた手元資金がまだ数百万は残るだけの、十分な金額だった。助かった。

 これが、6月になって工事が完成して入居し、細かい不具合の補修もほぼ直し終わった、6月下旬になってのことだった。リフォーム工事会社の連絡してきた支払期限ぎりぎりである。住公の財形融資は、この時点で申請を取り下げた。最後まで決まるかどうか心配でならなかったからだ。

 ローンが決まるまではカミサンと二人で「このままどこも貸してくれなかったら、カードローンで2人合わせて500万借りるしかないかなー」などと、恐ろしいことを話していた。たった3ヶ月足らずではあったが、夫婦でナニ金的地獄の淵の底をちらりと見てきた感じである。

 この資金繰りから学んだ教訓はたくさんあったと思うが、その中でも最も大きかったのは、やはり「キャッシュ・イズ・キング」ということだ。特に大企業の庇護の元を離れて自分の腕一つで食っていこうと思う人間にとって、キャッシュほど大事なものはない。特に大きな買い物をするときは、余計に借金してでもキャッシュはしっかり握ってろ。それが学べたことが一番大きかったような気がする。

 あと、住宅を買う資金を何段階にも分けて支払うというのは、本当に大変なことなのだと思った。その間に信用状態は変化するかもしれないし、建築計画やら収入やら、何が起こるか分からない。代金を受け取りに来たリフォーム工事会社の経理担当の人も「最近のリフォームブームで話はいっぱい来るんですが、資金を都合できないといって着工ぎりぎりでお止めになる方とか、たくさんいるんですよ」と話していた。

 だからみんな我慢して、間取りが好みでないとか思いつつも新築マンションを買うのである。そちらの方が、資金の決済が1回きりでリスクが少ないから。でも、それって本当に良いことなのだろうか。単に「我慢してる」だけじゃないのか。金融機関にそういう融資スキームを積極的に作らせてこなかった国の政策の歪みが表れてるだけでしょ。僕が今の日本の住宅に深い問題とチャンスを感じるのは、そういった理由からである。

 とりあえず今日はこんなところ。バカな奴だとあざ笑う人はどうぞ。しかし、住宅を買うというのは、ほとんどの人にとって自分の一生を賭けた博打であると思う。少なくとも今の日本では、いろいろな意味でね。これが博打でなくなる時代が、早く来てほしい。

11:49 午前 住まい・インテリア コメント (21) トラックバック (13)

2005/07/05

使用期間の長い商品選びの鉄則 ――リフォームビジネスを考える その1

 最近、新聞の社会面やらワイドショーやらでしきりと悪質リフォームの話をやっているみたいですね。てゆーかあれって朝日ソーラーとか光通信とか在宅パソコン内職とか、そうゆう過去に累々と積み重なった消費者生活センターネタと何が違うんですかね。たぶんパターンとしては何も違わないんでしょ。まあ、物忘れの激しいお年寄りにとっては有益な情報かもね。

 リフォーム詐欺のニュースなんかより、リフォームについて本当はもっと大事な議論があるだろうにと思うのだが、たいていテレビ系のマスコミ(除くNHK)というのは不易的に重要な話というのは流さない。彼らにとって「大事」な話というのは流行の話だからね。

 それはともかく、今回自分自身が築20年の中古マンションを買って中身を全面リフォームするという体験をしてみていろいろなことを考えた。これからちょっとずつそれについて書いてみようと思う。

 冒頭にリフォーム詐欺の話を振っておきながら、それと何の関係もない話をするのも何なので、ちょっと話を戻そう。そもそもあのような詐欺事件を制度的に防げたかというと、そりゃ難しいだろうねとは思う。だってリフォームというのはそもそもトラブル産業だからだ。ニュースになってるのは極めて極端な例ではあるけれど、本質的にその他一般のリフォームと何ら違わない。

 マスコミ自身がリフォーム番組をやって煽りまくってるからそういう話が表に出てこないのだけれど、リフォームして工事業者と1つもトラブルなく終わることなど、ほぼあり得ないというぐらいトラブルだらけなのがリフォーム産業の実態だ。

 何故そうなってしまうかというと、理由はとても簡単。そもそも建築業界の常識を知らない一般人が一般的だからだ。

 例えば、あなたがある商品を買ったところ、それが機能的には確かに説明通りなのだが、デザインの仕上がりが当初イメージしていたよりも少し悪かったとしよう。それが工業製品なら、メーカーに「これ、私が思ってたのと違うんだけど。返品するから新しいものを交換して」あるいは「カネ返して」と言えば、たいていは認めてもらえる。

 ところがリフォームではそうはいかない。商品は1件ごとにすべてオーダーメードであるうえ、作ってしまったものを取り替えることもできない。したがって「こんな商品要らないから金返せ」と言われても、業者も応じられないのである。

 しかも、不具合を手直ししようにも、工事が終わった後からでは手を加えられなかったり、手を加えるとかえって見た目が悪くなってしまったりすることがやたらと多い。住んでいる時に目に付きにくい部分なら我慢もできるが、これが壁とか床とかドアとか、思いっきり目に付くところだとどうしようもなく腹が立つ。

 Googleなどで「リフォーム」「トラブル」と検索してこの手の話を書いたウェブサイトなどを読んでみると、たいていは「経験豊富な良いリフォーム業者を選びましょう」「リフォームを頼む消費者の側が勉強して賢くなりましょう」といった結論が書いてある。だが、マニアならともかく、住宅リフォームの設計や施工の経験もない仕事に家庭に忙しい一般人が、どうやって完璧なリフォームの知識を身につけて業者と対等の立場に立てばいいのか。そんなのは後知恵だと僕は思う。少なくとも僕には無理だ。

 CS(顧客満足)やアフターサービスについて、たぶん日本中のどんな記者よりもたくさん取材をした僕に言わせれば、何も自分がリフォームの専門家にならなくても、この問題を解決することはできる。少なくとも、理論上はそんなに難しいことではない。使用期間が長期にわたるような、あらゆる製品を購入する際の企業選びの「鉄則」を適用すればいいだけなのだ。

 その鉄則とは、製品を提供する企業の側に、売上げではなく顧客満足のためだけに対価を受け取っているポジションのスタッフがいるかどうか、そしてそのスタッフが売上げや利益を目標に課されたポジションの人間よりも上の立場にいるかどうかを確かめるというものだ。

 ある業者がリフォームの経験が豊富かどうかなんてちょっとやそっと調べた程度では分からないし、建築業者としての経験があればいいってものでもない。そもそも社歴なんていくらでも詐称できるのがリフォーム業界である。そんなものはあてにならない。

 工事の売上高に関係なく顧客満足の結果によって報酬を受け取り、しかも工事を進める部門のどの人間よりも偉いスタッフがいるリフォーム業者は存在するかと聞かれれば、正直言ってほとんどいないだろうね、残念ながら。だが、そういう構造を作り出すことはできる。リフォーム業者と自分の間に、独立した建築家を挟んで契約するのである。

 建築家、正確に言えば建築設計事務所というのは、工事費用の10%程度の手数料を取る代わり、設計からリフォーム工事の施工監理までを消費者に代わってやってくれる。10%といっても、工事代金に比例して取るわけではなくて、最初の予算が1000万円なら100万円の設計料という契約をするだけだから、こちらが商品の出来に満足して100万円を支払うまでは、リフォーム業者への指示や交渉にいくらでも手を尽くしてくれる。

 建築家は、住宅工事のどこがキモか、職人が手抜きをするとしたらどこで手を抜くか知り尽くしているので、工事業者にしてみれば手強い存在だ。しかも建築業界の弱みを知っていて顧客に入れ知恵したりもするから、トラブルを起こしても勝ち目がないと知っていて、言うことは何でも聞く。つまり、リフォーム業者の「上の立場」の存在なのである。

 工事料金のたった1割をケチって、一生モノの商品購入に失敗して「カネ返せ」「できない」の不毛なトラブルに巻き込まれるぐらいなら、設計から施工まで全部リフォーム業者に任せるのではなく、設計には独立した建築家を必ず入れることにすれば良いと思うのだが、どうもそういう声が世の中のどこにも出てこない。

 思うに、リフォーム業者も建築家という目障りな存在をリフォームに介在させるのを極力避けようと、情報操作に必死なのだろう。だから、この手のトラブルを防ぐのが主目的であるはずの財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターなども、結局“優良”リフォーム業者(何度も言うが、本来あらゆるリフォームにトラブルは付き物であり、業者が優良とかそういうのは関係ない)の登録団体みたいになっていて、優良リフォーム事例の紹介でも設計料と工事費用を分けて表示することさえしていない。トップページには「増改築相談員」とか「マンションリフォームマネジャー」なる資格者を紹介するとうたってるが、見てみると登録者はほとんど全部リフォーム業者の社員。激しく笑わせてくれる。

 これでは、優良事例とかいっても結局競馬か宝くじと同じで、「あなたは当たりのリフォームを引き当てました、おめでとう」と言ってるのと何ら変わらないということが、どうしても分からないようである。ま、紛争予防じゃなくて「紛争処理」を飯のタネにしてる公益法人だから当然と言えば当然か。

 それにしても、リフォームというのはあらゆる意味で日本のライフスタイル全般に関する問題点の縮図だと思う。それは、逆に言えば市場機会の宝庫、ビジネスチャンスの秘密が詰まっている分野でもあるということだ。消費者が悩みを抱える問題の構造をうまく解きほぐせるようにマーケティングすれば、まったく新しい(しかも世の中の役に立つ)ビジネスを生み出せるかもしれないからだ。

 というわけで、これからしばらくこんな調子で、リフォームビジネス周辺のことを折りに触れてあれこれ書いていきたいと思う。

02:41 午前 住まい・インテリア コメント (18) トラックバック (5)

2004/12/06

激安くりぬきリフォームの入居者募集中

 建築家の弟のブログで、面白い話が載っていたのでリンク張っておこう。西武池袋線東久留米駅から徒歩2分のアパート(家賃月4万円)を来年から全面リフォームするので、入居者募集中というもの。

 家賃が安くて居心地のいい家に住みたい!とは誰しも思うことだけど、現実には「狭い」「古い」「都心から遠い」という条件があるからこそ安いのであって、特に1人暮らしなら「狭い」は我慢できても、「古い」や「遠い」はすなわち居心地の悪さや生活コストにつながるため、この夢はなかなか実現しないのが現実だ。

 本当は中をくりぬいてリフォームしてしまえば、「ハコ」が多少古くても快適で自分好みの家にできるのだが、これがまた難しい。賃貸住宅で大家さんが家を丸ごとくりぬいてリフォームすることにOKを出してくれるところなんて、そうそう多くはないからだ。

 今回、弟が手がける賃貸住宅は、そんな例外中の例外物件らしい。山手線ターミナル駅から20分弱の郊外駅目の前という「利便性」、家賃4万円という「安さ」に加えて、今から手を挙げれば自分好みの内装にリフォームしてもらえるという特典もついてくる(自分で少し余計にお金を払えば、もっと格好良くなるかも)。

 弟は建築家ではあるが、もともと青山の億ションの内装設計などを手がけていたこともあり、カネをかけずにゴージャズできれいな部屋を作る腕前は折り紙付き。実は来年3月に完成する予定の僕の自宅(マンション、91㎡)も彼に全面リフォームをお願いしている。

 間取りも1LDKとそこそこの広さのあるアパートみたいなので、1人or2人暮らしぐらいにちょうどいいかな。若いDINKSとかにお勧めかも。興味ある人はこのエントリのコメント欄にメアド入れて書き込んでください(僕以外にメアド明かしたくない場合は、ダミーのホームページURLも入れとけばOK)。そしたら弟の連絡先を教えます。よろしく!

01:07 午後 住まい・インテリア コメント (1) トラックバック (1)