マンションを買うということ
少し前のエントリで「自分の家の話でも書こうかと思う」と宣言したので、その話。
といっても、別に「俺はこんなに世間知に長けてるんだぜベイベー!」とかアフォな自慢話をするつもりとかは全然なくて、むしろとりあえず終わった話だから書ける「よい子の皆さんはこんなことしないようにね!」的な恥さらしである。
このブログでもちょろちょろと書いてきたが、僕は今年の6月に持ち家のマンションに引っ越した。それまでは賃貸マンションに住み、「年収の3倍以内で買えるぐらいに値段が下がるまで、家は買わない」と公言していた。それが突然マンションを買うことにしたのは、いろいろ理由もある。その理由はこちらとかこちらのエントリに書いた。
ライフスタイルと住まいとの関係については語り始めると長くなるので省略。ここではお金の話だけしたい。
今回の耐震強度偽装事件でもいろいろ言われているが、新築マンションを買いたいという人の気持ちも、分からないでもない。広さとかデザインとか間取りがどうとか言う前に、中古マンションを買って自分の好きなように間取りやデザインを変更するのは、単純にファイナンスの問題で非常に大変だからだ。
僕の場合、昨年春頃から引っ越し先を探し始めて、確か6月頃に今の家を見つけた。で、元の持ち主と不動産屋を仲介にして価格交渉し、8月に購入を決め、9月にローンを組んでカネを払った。専有面積は92平米で、決着した購入価額は3900万円だった。
このとき、内装は古いままでしかも僕らが購入する前には賃貸にしていたこともあり、かなり汚れていた。サーフェスリフォーム(いわゆるクリーニング)をかければ200万円もかからないできれいになることは知っていたが、そもそも間取りが4LDKと異様に細切れで気に入らなかったこともあり、最初から全面リフォームが前提だった。
当初、リフォームの費用は建築士にも相談し、設計費を含めて1100万円と弾いていた。造作の期間は3ヶ月。年末までに解体して年明けから取りかかれば、4月には入居できると踏み、マンションの購入費用に加えて解体100万、3月までの賃貸住宅の家賃に100万、引っ越しやその他もろもろに100万円程度で、合計1500万円もあればすべて終わるだろうと思っていた。
ちなみにその時持っていた自己資金は1500万円程度。銀行からは住宅ローンの与信枠として4500万円でも全然OKと言われていた(今から考えると、それは僕の収入に対する信用ではなくて、マスコミという勤務先に対する信用だったのだが)。そこで僕はうかつにもこう考えた。
「費用は全部合わせて4400万円。自己資金が1500万円以上あるのだから、マンションの躯体部分には500万円ぐらいは自己資金で払って借り入れは3400万円に抑え、リフォームが終わった段階でさらに必要な金額を500~600万円借りればいいや」
しかし、この目論見は実際のリフォーム着工が(これは純粋に設計を頼んだ建築家のせいだが)3ヶ月以上遅れ、しかも昨年末に僕が転職したことで大きく狂った。
まず、建築家にリフォームのプランを作ってもらい、年末が近づいてからあちこちの工務店に見積もりをかけ始めたのだが、これが思った以上に時間と費用がかかることが明らかになった。そのへんの細かい話はまた省略。最後にはリフォームとその周辺の費用を全部合わせて、1600万円ぐらいかかることになった。これに、実際の入居が6月までずれ込んだ分の費用とかも全部合わせると、たぶん1800万円ぐらい出費がかさんだ。
これに加えて参ったのは、転職が明らかになった瞬間に、銀行が手のひらを返してきたことだ。確かに転職で年収は多少下がったのだが、実際には前職の企業は今後どうあがいても給料が右肩下がりなことは(少なくとも僕には)火を見るより明らかだったし、転職先の収入も契約の額面上は確かに下がっているが、もろもろ含めると転職前より上がることは分かっていたので、自分としては決して自分の信用が落ちたとは思わなかった。
しかし、銀行は「これ以上ご融資できません」の一点張り。よく話を聞いてみると、要するに転職先がどこだろうが、転職して3年以内の人間には貸さないというのがルールだという。めちゃくちゃ腹が立ったが、まあそれがルールだというのだからしょうがない。昨年のうちにあと500万円余分に借りて、自己資金を温存しておけば何とかなったのにと思っても後の祭りである。
4月に入ってからは着工の前金500万円を自己資金で支払い、入居予定が延びたこともあってキャッシュポジションがじりじりと下がっていく。着々とリフォーム工事が進む中、工事会社の人には平然とした風を装いつつ、どうやって足りない資金を調達しようか必死で悩む日が続いた。
まず最初に考えたのは、銀行を変えればどうかということ。だが、これはちょっと話を聞いただけですぐにダメだということが分かった。
購入した物件は築20年の中古マンションである。1981年の建築基準法改正以降の物件なので、躯体も管理組合も非常にしっかりしていて、メンテナンスもこまめに行われており、あと40~50年は余裕で持つと言われていたが、金融機関からすると不動産物件の価値は25年で消滅するため、担保価値はないも同然。そんなところに既に他の銀行が3000万円以上貸しているのに、さらに抵当権順位第2位でローンを貸すバカはいないという。
となると、次に頼れるのは公的金融機関だ。実は、僕は新卒入社以来父親に言われて、毎月給与から天引きで2万5000円を財形貯蓄に積み立て続けていた。残高は300万円弱。この積み立ての実績があれば、住宅金融公庫から財形融資を借りられるかも、とひらめいた。
それで当たってみたところ、何とか条件は満たせるという。ただし、転職した時にきちんと継続の手続きを取っているかどうかがポイントと言われた。うっかり、いったん解約して転職先の財形貯蓄で(その残高だけを移して)新規に積み立て始めていたりすると、いくら過去の積み立て実績があっても融資は受けられないという。
祈るような気持ちで金融機関に照会したところ、「継続」ステータスであるという。助かったと思い、最初にローンを借りたのと同じ銀行の別の支店を通じて財形融資申請の準備に入った。
ところが、これが銀行内で伝わったのかどうかは知らないが、その銀行のローン窓口になった支店の支店長が、5月の連休明けになって突然、僕への融資では無理だが、カミサンへの融資ということでなら追加のローンを組めるかも知れない、と連絡してきた。
カミサンも一昨年に今の会社に転職したばかりであり、しかもその会社は前職に比べて10分の1以下の今の僕の勤め先の、さらに10分の1ぐらいの規模の、どこからどう見ても吹けば飛ぶような中小零細企業である。何が「転職3年以内は貸せない」だ、よく言うよなあと思ったが、それでも頼れるものは何でも頼りたい。で、改めてローンの申請をしたところ、その支店長が行内で必死になって説得に回ってくれたらしく、「最初のローンにカミサンの連帯保証をつけ、逆にカミサンの借りる追加ローンの連帯保証に僕が入る」という条件でゴーサインが出た、と言われた。貸出金額は1000万円。財形貯蓄を含めた手元資金がまだ数百万は残るだけの、十分な金額だった。助かった。
これが、6月になって工事が完成して入居し、細かい不具合の補修もほぼ直し終わった、6月下旬になってのことだった。リフォーム工事会社の連絡してきた支払期限ぎりぎりである。住公の財形融資は、この時点で申請を取り下げた。最後まで決まるかどうか心配でならなかったからだ。
ローンが決まるまではカミサンと二人で「このままどこも貸してくれなかったら、カードローンで2人合わせて500万借りるしかないかなー」などと、恐ろしいことを話していた。たった3ヶ月足らずではあったが、夫婦でナニ金的地獄の淵の底をちらりと見てきた感じである。
この資金繰りから学んだ教訓はたくさんあったと思うが、その中でも最も大きかったのは、やはり「キャッシュ・イズ・キング」ということだ。特に大企業の庇護の元を離れて自分の腕一つで食っていこうと思う人間にとって、キャッシュほど大事なものはない。特に大きな買い物をするときは、余計に借金してでもキャッシュはしっかり握ってろ。それが学べたことが一番大きかったような気がする。
あと、住宅を買う資金を何段階にも分けて支払うというのは、本当に大変なことなのだと思った。その間に信用状態は変化するかもしれないし、建築計画やら収入やら、何が起こるか分からない。代金を受け取りに来たリフォーム工事会社の経理担当の人も「最近のリフォームブームで話はいっぱい来るんですが、資金を都合できないといって着工ぎりぎりでお止めになる方とか、たくさんいるんですよ」と話していた。
だからみんな我慢して、間取りが好みでないとか思いつつも新築マンションを買うのである。そちらの方が、資金の決済が1回きりでリスクが少ないから。でも、それって本当に良いことなのだろうか。単に「我慢してる」だけじゃないのか。金融機関にそういう融資スキームを積極的に作らせてこなかった国の政策の歪みが表れてるだけでしょ。僕が今の日本の住宅に深い問題とチャンスを感じるのは、そういった理由からである。
とりあえず今日はこんなところ。バカな奴だとあざ笑う人はどうぞ。しかし、住宅を買うというのは、ほとんどの人にとって自分の一生を賭けた博打であると思う。少なくとも今の日本では、いろいろな意味でね。これが博打でなくなる時代が、早く来てほしい。
11:49 午前 住まい・インテリア
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