2006/11/28

冗談じゃなく、結構ありと思うよ

 僕だって「連載してけろ」とか言われたら嫌だけれどもさ。いや、別にこれだけじゃなくて、その「醜悪な男性誌」のほうでも、どっちも。そういうキャラじゃないんでね。

 「品のない女性週刊誌を作ろう!」と呼びかける馬鹿っていいなー(切込隊長BLOG)

 以前にあるマーケティングリサーチの会社が「10年後の顧客ニーズ」という調査をして、もっともニーズが高そうと出たのが女性向け風俗サービスという結果だったという話からしても、こういう情報媒体には猛烈なニーズがありそげ。

 ただ、隊長の言うとおり、男性版と違って表紙にこれ見よがしな艶めかしい女性の写真を配するといったかたちでは媒体を訴求できないのがちょっと考えれば丸分かりなわけで、ニーズはあるけれどいったいどういう体裁を取って売るべきかというところでみんな悩んでいるところだと思うのだよね。いや、別に僕が企画書いた訳じゃないけど。

 そういう意味では、確かに「L25」は大変な可能性のある媒体だと思った。これ、「R25」以上に大化けするんじゃない?もしかすると。すでにフリーペーパーだけあって、率直な欲望に忠実なその手のコンテンツが多々混じっている気配ではあるが、将来的にはもっと下品なコンテンツと広告で大いに賑わいそうな予感。

 某食品メーカーの出した金キラキンの下品なデザインのボトル入り飲料も、聞くと発売前の社内では「ブランドイメージを損なう」と反対の大合唱だったようだが、いかにもなパッケージデザインで目を引いて売れてしまえばもうこっちのもの。今じゃ驚異的な売り上げで株価も上がり、大騒ぎになっているらしい。まあ、あれは男性向けだけどね。女性向けのそういう商品は、きっとさらに難しいだろう。絶妙なパッケージデザインを思いついただけでノーベル賞ものですよ。

 上品で誰もが無難と認める商品なんざ、いくら言葉巧みに売ろうとしたって利益なんか出やしない。それよりも身も蓋もない下品な商品を、消費者の劣情感を刺激しないようにうまく提供できる企業にはすごい利益が転がってくるというのは、非常に普遍的な法則のような気がするよ。隊長に向かって脳内妄想を延々としゃべりまくるその編集者氏にも、ぜひとも頑張ってほしいものである。こっちに近寄らないでねって感じだけど。

10:58 午前 ビジネス コメント (18) トラックバック (1)

2006/11/11

正直、このMBOはあり得ないだろ

 日本というのは、なんでこういう一般泡沫株主に後ろ足で砂かけるようなディールが平気でまかり通るのかね。

 「牛角」など展開のレックス、MBOで株式を非公開に(読売新聞 via gooニュース)

 株価の推移を見てみると、今年1月の55万円を最高値に、じりじりと下がってきてこの8月の中間決算発表とともに30万円台から一気に半額の15万円まで下がった。そして現在20万円にようやく戻したと思ったところで、過去1ヶ月(!)の株価平均に14%のプレミアムを乗せた23万円というTOB価格を発表。

 別に僕はレックスの一般泡沫株主でも何でもないのだが、このTOB価格はいくら何でも一般株主をバカにしすぎ。こんなディール、果たして許されるのか?来週以降の市場での一波乱が予想されます。てか、波乱してくれ。この世に正義はないのか、正義は。

 西山社長は責任とってかとらずしてか会長に退くとのことだが、持ち株SPC(特別目的会社)の3割の株主にはなるらしい。ampm買って成城石井買って、ここまで必死で多角化してきたのに、結局この株価じゃ意味がないよと言いたいんだろう。でもそれってコングロマリット・ディスカウントですから!残念!(死語)

 まあ、いくら牛角やampmの業績が苦しいとはいえ、成城石井とかは好調なわけだし、西山社長が低株価に業を煮やすのもわからんではない。だが、同じくMBOで上場廃止したすかいらーくが、数年にわたって低迷していた株価がじりじり上げてきていたときにMBOを発表し、しかも過去3年の株価よりも高い水準のTOB価格設定だったのに対して、レックスはわずか3ヶ月前の中間決算発表までは30万円台だったものを、決算で特損出して株価爆下げさせたところでTOBというのは…もし僕が同社の株主だったら、到底同意しかねる。あるいは、誠に遺憾の限り。もう少し直截的な表現でもって申し上げるとすると、まさに外道まさに詐欺。あり得ないあり得ない。

 TOB価格の基準が直近1ヶ月の平均ってどういう意味ですか。意味もなくデイトレーダーによって株価が大幅変動するような流動性の少ない株ならいざしらず、流動性だってちゃんとあるし、根拠のない株価じゃないでしょう。まして、わずか1年前に50万円超で買った株主には半減の損させて…っていうのは、常識的にちょっと許せないものがある。NTT株売り出しとか、楽天の上場以来の暴挙じゃないですかね。せめてTOB価格は8月の中間決算発表前の30万円にしておけば良かったのに。これってもしかして、株主代表訴訟起こせば勝てるんじゃないのか?ひょっとしてひょっとすると。

 というわけで、誰か証取法と会社法に詳しい方、分析をよろしくお願いします。<(_"_)>

02:19 午前 ビジネス コメント (6) トラックバック (4)

2006/07/24

「残り物」を総取りするAMDの戦略

 1月にApple、Intelといったホームユース側に期待を賭けるプレーヤーに視点を当ててこんなエントリを書いたが、どうもちょっと逆サイドのプレーヤーの戦略のほうが面白そうだ。というので、半年前の読み違いを反省しつつエントリ。

 AMD、ATIを55億ドルで買収へ(ITmedia News)

 フレームワークのレイヤーが上位層に移るほど、下層のレイヤーはプレーヤーの統合が進む。 今さら言うまでもないが、現時点のコンピューティングの中心的フレームワークは、ブラウザである。そしてこの流れは恐らく今後10年は変わらないだろう。

 だとすれば、ブラウザより下のレイヤーのプレーヤーは可能な限り統合され、シンプルなソリューション提供に徹するべきだというのが、このアクションに秘められたAMDの戦略と言えるのではないか。まさにIntelと逆さまのアプローチである。ちなみにIntelの戦略動向についてはayustety氏による先月のET研報告を参照のこと。

 Dual-Core、そしてgraphic processorまで入れたQuad-Coreへと、PCにおけるgrid computing技術の実装が急激に進む中で、AMDの生き残り戦略はなかなか巧みだ。graphic processorとの統合というのは、かつての90年代前半のCyrixの戦略のそっくり焼き直しといえばその通りなのだが、あの当時は誰もがPCの構成要素にconsciousだった。今は違う。ブラウザさえきちんと動けば、もう誰もPCの中身など気にしない時代になった。AMDは、池田信夫氏言うところの「ウェブには『三度目の正直』がある」をまさに地で行っている。

 Viiv、vProへと上位レイヤーのビジネスに必死で食い込もうとする戦略展開を図るIntelよりも、GPUチップメーカーを統合して「ボックスの中身をシンプルに」していこうとするAMDのほうが、少なくとも彼らのコア顧客であるビジネスユーザーから見れば魅力的に見えるだろう。ここは目の前の要塞構築の総仕上げにあたる。

 そして、2~3年後という中長期のスパンで見れば、敵の最後の牙城であるモバイル系プロセッサへの侵攻にもメドが立ってくる。まず、Intelがサーバ系技術の応用であるチップコアの複数化に、ホームPCへの実装で先鞭を付けてくれている。そのうえ、ITmediaの記事を読む限りでは、AMDはIBMとのアライアンスで対Intel戦略上の課題であった45ナノ以降のプロセス開発でも急激な追い上げをものにできそうだからだ。

 AMDといえば、今年3月頃にはサーバのビジネスクライアントとして恐らく世界最大のGoogleにも猛烈アプローチをかけていた話が報じられていたっけ。以前のエントリで僕はGoogleを「ホームユースに期待をかける」側に分類していたが、これは間違いだった。Googleはもちろんそちらの市場を収益源としてはいるのだが、Google自身のコスト構造から考えれば、GoogleがわざわざOSSで構築しているサーバのアーキテクチャーに口を出そうとするIntelよりも、grid computingに適切なハード・プラットフォームを提供してくれるAMDとアライアンスを組んだほうが、よほどメリットが大きい。

 AMDのこの的確すぎるアプローチを見ていて、PCビジネスを自社規格で覆い尽くそうとするIntelのポジションが、製品戦略上最終消費者とのタッチポイントを持たない彼らにとって実は画餅に過ぎないのではないかという懸念を感じているのは、僕だけだろうか。

03:18 午後 ビジネス コメント (14) トラックバック (2)

2006/07/04

フラット化するニッポンの象徴としてのNAKATA

 HBSの入学資格は四大卒業同等以上の最終学歴なんですがねといった野暮なツッコミはさておき。

 中田英寿、MBA取得 第2の人生は実業家(gooニュース)

 彼ほどの才能があれば特例で入れてあげても良いと思うし、米国の大学というのはそのへん野暮なことは言わないと思うのでまあ期待して待つが吉。で、思ったのは彼がそういうものを目指すと公言することの2つの社会的な意味である。

 1つは、ビジネス社会の中のさらに中央官僚とか外資とか超大手グローバル大企業とかの人たちだけの世界のブランドであった「MBA」、そして「ハーバード・ビジネス・スクール」が、彼の一言によって一気に日本のお茶の間に広がった点である。

 サッカーでも同じだった。それ以前にも奥寺や釜本など名選手で欧州のリーグで活躍した人は多数いたが、結局のところサッカー界の中の話に過ぎなかった。だが98年に彼がペルージャに移籍した時から、「トップクラスの人間は日本ではなく世界に行く」ということが、サッカーだけでなくあらゆるスポーツ、そして日本のお茶の間の常識になった。

 自らの行為で示しただけでなく、それをムードとして日本社会に浸透させてしまったこと、これこそがNAKATAの最大の功績であった。日本人にとっては、これからは「MBA」が好むと好まざるとにかかわらず、ある種の「常識」化するだろう。欧米を初めとする世界がそうであるように、日本も彼のおかげでグローバルスタンダードの価値観を社会常識とせざるを得ないようになるに違いない。

 そしてもう1つ、(彼が今後HBSに入学でき、卒業できればの話だが)大きな意味を持つだろうと思うのは、「MBA」あるいは「ハーバード・ビジネス・スクール」というブランドを持っていれば何でもかんでも一流なのではなく、やはりそこに明らかに個人の素質が必要だ、と世間が認知するだろうということだ。

 サッカーでも、NAKATAの後に多くの選手が欧州のトップクラブに移籍したが、その中で芽が出なかった者もいたし、また大きな成果を挙げた者もいた。要するに「欧州のクラブへの移籍」がブランドなのではなく、そこで個人が何を成し遂げるかがブランドになるのだという、フラット化した世界の冷厳な事実が日本のお茶の間に突きつけられることになったわけだ。

 よく考えればそんなことは当たり前のことなのだが、舶来のブランドと言えばそれだけで思考が止まってしまう日本人にとって、NAKATAが突きつけるこの事実は大きな意味がある。当然ながら、今後ハーバードMBAを取った人間は、「NAKATAと比べてどうなのか」というベンチマークを一生突きつけられ続けることになるわけだし、またそれが社会に明らかにされるだろう。公費で留学している中央官僚は、その異様なドメスティックな凝り固まりぶりを白日の天下に晒されるだろうし、自分のキャリアについて深い考えもなく漫然とMBAを取った人は常にそのダメっぷりをNAKATAと比較対照されるかもしれない。そして、多くの日本人に「MBAだからって特別でも何でもないんだ、そのうえでちゃんとNAKATAみたいに努力しなきゃダメなんだ」ということを思い知らせるだろう。

 いずれにせよ、彼の通る道はこれまで確実に日本人の意識をグローバル化する先鞭を果たしてきた。今度の発言も実現するか否かにかかわらず、日本の社会をトム・フリードマンの指し示す世界へとまた1歩いざなうきっかけになるに違いない。

 追記:尊敬するスポーツジャーナリスト、増島みどりさんの「中田英寿の現役引退によせて」の記事が出ていたのでリンク。

11:36 午前 ビジネス コメント (16) トラックバック (11)

2006/06/25

動体視力

 渡辺さんとシンクロニシティがあったようなのでちょっと触れておく。

 マーケティング基盤:コミュニケーションとユーザー制空権(CNET・情報化社会の航海図)

 非常に強固なマネジメントサイクルを持つが完全に安定期に入ってしまったビジネスを、より精緻なsegmentationとtargetingによって何とか拡大軌道に戻そうとするようなマーケティング施策というのは、何か新しい取り組みをしているように見えて、実のところその完成されたマネジメントサイクルの為していた何かに対する理解と敬意が足りないが故に非常に危険であることが多いように思う。

 context targetingによってfocusされた顧客というのは、ぱっと見ると何やら非常に明確に特定された属性のように見えるが、実のところそのsegmentは非常に流動的であり、またcontextではなくそのダイナミクスこそがまさに顧客のニーズの本質であることがしばしばある。

 これをある一瞬のsnapshotによって個別のビジネスユニットに囲い込んでしまい、マネジメントサイクルの組織まで閉じてしまうことは、個別のビジネスの成否に関わるだけでなく、組織全体に対して顧客というもののダイナミズムを見失わせることにつながる。

 重要なことは、そうした刻一刻segmentを移動してゆく顧客のダイナミズムそのものをマネジメントの側が的確に受け止め、wholisticに把握できるかどうかであり、そこで必要なことはビジネスユニットのSegmentationではなくてむしろIntegrationである。

 しかし、組織というのは良くあろうとすればするほど落伍者よりも功労者を増やしたがるものだし、残念ながらあらゆる組織は常にパーキンソンの法則に従う。したがって人為的にそれに逆らったマネジメントを行わない限り、ビジネスユニットのsegmentationは自然法則である。CFTなどでどうにかなるものではない。CFTもまた組織の一種であるし、またCFTはtemporaryだというのであれば結局それは組織というものの自然法則を否定し得ない。

 Integrationの必要性に気づくのは常に顧客と接している現場である。なんとなれば彼らのミッションは顧客を追尾(trace)することだからだ。現場が顧客を追尾することをミッションとしないような組織はそのmomentumが起こらない。

 したがって良い組織と悪い組織を見分けるためには組織が顧客のsegment移動のダイナミズムを的確に追尾するのを妨げるようなユニットに分かれているかどうかを見れば良い。顧客の移動は常にマネジメントの側の想像を超えて起こるので、完璧な組織デザインというものはあり得ない。とはいえ、その組織デザインが外部の人間が見ても明らかにsegment移動のダイナミズムに反していると思われる場合は、どう見てもダメである。

 もう一つのクライテリアは、商品そのものである。そして商品こそは今もっともintegrationの問われているものである。ネットの登場で商品が極めて細かくSegmentされるようになった。そして顧客はそのsegmentを喜んで受容/需要しているように見える。だがそれは何度も言うようにcontext targetingの魔術に嵌った見方だ。segmentaionが容易になり、一見膨大な商品が切り刻まれて市場に出回っているように見えているからこそ、integrationにより生まれる価値はますます高くなる。

 それはビジネスがmediaであればaggregation、retailingであればmerchandisingと呼ばれるもののことである。retailingの比喩で言えば、それは単なる「品揃え」ではない。全体を紡ぐ大きな「物語」の流れのことである。Marketing of Integrationを成す根本の力は顧客に対する動体視力である。止まっているものは見ない。動いているものだけをそのベクトルにおいて見る。自然法則に反した意思決定のできるマネジメントのある組織でなければ、顧客に対する動体視力を持つことの意味は活かされない。これは勇気の有無の問題ではなく、ある種の動物的な勘の有無の問題かもしれない。少なくとも今そのことが理解され、仕組み化されている企業はそれほど多くないように思う。

12:52 午前 ビジネス コメント (10) トラックバック (2)

2006/04/12

Web2.0の終わり

 このエントリのタイトルを見て、「おきまりのネタキタ━━━━(°Д°)━━━━!!!!」とか思ってる人、多いんじゃないだろうか。「ブログブームの終わり」を書いてから1年、4月になると終わりを宣言するR30がまた戻ってきましたよ。

 こっちの記事とかが「Web2.0=メディア事業、広告モデル」っていう結論を出して納得しちゃったりしてるのを見て、もう脱力しまくり。今さら否定する元気さえも起こらないというか。もうそれでいいんじゃない?とか答えたくなる。どうせ「真実のWeb2.0」が何だろうと、結局世の中の人が理解したようにしか世の中は進んでいかないと思うので。

 そういう意味で言うと、「ブログブームの終わり」を書いたときには、ブログが日常化して「巡航速度とは何かを探す」展開になるだろう、みたいな予測をイメージしていたんだけど、今回の「Web2.0」はもともと何か具体的なサービスや製品を指すわけでもなく、実体のないただの言葉遊びだったので、2年後ぐらいには世の中から完全に忘れられてしまう気がする。2000年の頃によく言われていた「ニューエコノミー」みたいなのと同じようにね。

 米国だと、ニューエコノミーという言葉にも、「在庫調整を原因とする景気サイクルの緩和・短縮化」という、マクロ経済研究の成果に裏付けられた一定の定義が与えられている。Web2.0という言葉も、おそらく「ユーザーが参加・貢献することによってトラフィックを増大させ、サービスを改良・向上させていくウェブサイトの設計思想とその要素技術」みたいな定義が与えられて、その定義の範囲内で議論とビジネスの試行錯誤が広がっていっているんじゃないかと思ったりするのだけど、これが日本に持ってこられると途端に超胡散臭いバブルネタに変形するところが何ともまた寒々しい。

 昨日、99年頃に光通信で働いていたことがある某後輩と飯を食っていたんだが、そこで彼が「Web2.0って言葉を使って何かしゃべってる人たちって、昔僕が光通信にいた頃に見ていた、目つきのいっちゃってる営業マンの連中と雰囲気がそっくりなんですよ」と話していた。ちまたには自分が知りもしない、見たこともないものの名前を呪文のように唱え続けることで、何千万、何億単位のカネを動かそうと必死になっている人たちが跳梁跋扈しているらしい。

 まあ、何十億、何百億のカネが株券とともに飛び交いまくっていた2000年のITバブルに比べりゃあ、そんなもの可愛いものだぐらいの話かも知れないが、しかしなぜそうなりますかね。

 もちろん、米国にだってそういう怪しげなカネを動かす輩がいないとは言わないけれど、日本ほど「みんながそっちに我先に走っているようだから何だかよくわかんないけど俺も俺も」という傾向が強いとは思えない。そういう意味では、90年代後半以降の日本は、謎めいたバズワードがちょっと流行っただけで常にミニバブルが起きやすいような環境になってきているのかも。

 誰のせいかっていう議論は難しいんだけど、こういう謎めいたキーワードをロジカルに分解して理解しようという努力を払う人がほとんどいないことっていうのは、1つあるような気がする。あとは、実際にそれでどのくらい自分のビジネスが影響を受けるのかとか、実際どのくらい儲かるのかっていう定量評価をきちんとやって、そのデータをパブリックに出そうとする人がいないこととかも。

 まあ、これは正直なことしゃべるよりも、手の内伏せてIPOしちゃったほうががっぽりお金が儲かるよねっていう、日本の株式市場が生み出したベンチャー業界に見られる悪弊の結果なのかもしれず、よく分からない。asahi.comにはこんな記事も載っていたけど、正直思うのはそもそも日本のWeb2.0ビジネスの代表格って言われるはてなが、月間ページビュー数億、国内ウェブサイトのリーチで15位という膨大なトラフィックを集めて、いったいどのくらいちょっとしか儲けていないのかという数字を出さないから、こんなことになってるんじゃないのか(笑)。

 はてな自身も手の内伏せておきたいっていう気持ちは分からなくもないけれど、「うさん臭さが漂い始めた」とかコメントするぐらいなら、近藤社長ご自身がはてなの経営数字を公開して、「Web2.0」でカネを集めて回る胡散臭い奴らどもに冷や水ぶっかけた方が良くないですかとか思ったりする今日この頃なのであった。

11:23 午前 ビジネス コメント (8) トラックバック (18)

2006/03/30

『ウェブ進化論』とGoogle論、ふたたび

 今朝からすごい勢いでアクセスが集まっていると思ったら、切込隊長のところからのアクセスでしたか。ごぶさたしておりました。久しぶりに読みでのあるエントリでしたね。

 よりによってのイベントの準備でおおわらわな時なので、あまりどっぷりとディープな反応を返すこともできないのだけれど、簡単にレスしておきたい。finalvent氏同様、『論座』の記事はまだ読んでませんが、というただし書きつきで。

 隊長の言い分をまとめると、「Googleの価値観にくっついて行きたい奴はがんばってくっついていきやがれ。でも別にGoogleだからって特別なことしてるわけじゃなくて、かつてMicrosoftがやっていたみたいに、単に一時代の産業の恣意的な価値観を象徴し、それを中の人が世界中に押しつけてるだけだからな。ま、市井の一般大衆はその程度に受け止めておくのが吉」ということかなあと思う。

 これについては、違和感は特にない。自分もそのつもりだし、FACTAの阿部編集長とかは梅田本に深掘り的コメントを寄せたうちのブログもまとめて「Google礼賛論者」と一絡げにして批判されているが、別に僕も礼賛してるつもりは全然無くて、ただ資本力も価値観押しつけの圧力も、ここで泡沫ブロガーが泣き喚いたところで始まらないほど強烈に強いので、隊長の言うように「Google神に代わる新しい神」がどっかから現れるまで首をすくめて待ってるしかないんじゃね?ぐらいの話だと思ってるだけ。

 それでも勘違いする人もいるかもと思うので言っておくと、『ウェブ進化論』の書評の第2回目の中で、

Googleワールドの原理というのは、Google様の指先1つでビジネスのルール変更が可能な世界なのである。そこに会社としての基盤を依存するなんて、どう考えても正気の沙汰ではない。もちろん、それでも何かあるかもしれないと思ってチャレンジする「はてな」のような会社には男気を感じるし、がんばってほしいと思うわけだが、少なくとも既存のビジネスでそれなりのボリュームを持っている「失うもののある」企業が、オープンネットの世界に今から挑むなど、戦略的にあり得ない選択肢と断言しても間違いないだろう。
 と、申し上げている。もし僕が本当にGoogle神の礼賛論者なら、こんなこと書くわけない。

 で、FACTA阿部氏のほうはというと、サイバーエージェントが昨日Google八分にあったことを取り上げた番外エントリで「大量虐殺にひとしい」と断じているが、そんなおおげさなものですかね。いつものグーグルダンスじゃん。一民間企業が、自分の価値観に合わない競合他社をハブンチョにしただけっしょ?何度も言うけど、競合する相手のダンスで自分の事業が振り回されるのが嫌なんだったら、Googleの影響の届かないビジネスにとっとと逝けっつーの。

 冗談めかして言っているが、Googleがネットの中だけの神だと思ったら大間違いである。Yahoo!が実質的に広告代理店機能を持つという決断を下し、Googleがどこを買収するつもりか知らないが市場から21億ドルものエクイティ・ファイナンスをした今、これからメディア・広告業界は巨大な資本力にあかせての大M&Aの時代に突入することが確定したようなもんなのだ。

 問題なのは、こうした変化が「『ウェブ進化論』は良書だ」「いや、ただのマンセー本だ」とか、そういう馬鹿げたペダンチックな議論の向こう側で黙って起こっている事実だということだ。この前の『ウェブ進化論』の出版記念イベントの後の飲み会でも話していたのだが、高尚な議論よりもエンジニアの書いたコードの方が圧倒的な説得力を持ってしまうのが、ネットの(そして阿部氏的に言うなら米国資本主義の)世界の習わしというものだ。

 既存メディアの人間が「大事なのは民主主義」とか「言論の自由を守れ」とか「ポピュリズムどーたら」とか議論している間に、Googleの中のエンジニアたちは黙々とコードを書き、スパムサイトの検閲を進め、メディア産業をブルドーザーで押し潰し、地ならしして新しい建物をガッツンガッツン建てていってしまうのである。Googleに地ならしされたくなければ、叫ぶより前に自分の考えを表したコードを書く(=ビジネスモデルを作る)しかない。コードが書けないなら、Googleの目の届かないところに逃げるしかない。

 どうもそのあたり、もう議論のための議論はお腹いっぱいというのが僕の正直な感想だ。議論してるヒマがあったら自分でメディアを作れよ、と思う。FACTAは昨年前半とかにブログ界で流行った「ブログとは何か」論みたいな、自己言及的な議論のための雑誌なのかもしれないけど、まあそれはそれで好きな人がいそうだが、もしそうだったら僕自身は読む気がしない。

 たとえGoogleが神だからといって、その神が企業であり、米国に実在する存在である以上、資本主義の原理から自由なわけがないというのは当たり前だ。そして、我々も同様に資本主義の中に生きている。であれば、Googleの長いしっぽの端っこを自分のビジネスのバリューチェーンに入れて商売するもよし、Googleとまったく違う価値観でネット上に新興宗教のようなサイトを作って客を集め、お金を回すもよし。好きに商売して生きていけば良い。

 ただし、Googleがこれまで一言も「言論の自由が大事」とか「ポピュリズムがどーたら」とかの高尚な説を自ら考えてのたまったことがない、無言のブルドーザー集団だということだけは覚えておくべきだ。神かどうかよりも、そちらのほうがずっと大切な事実(FACTA)である。

01:37 午後 ビジネス コメント (8) トラックバック (6)

「ソフトバンク×ボーダフォン」シンポジウム直前のご案内

 いよいよ掲題の「ソフトバンク×ボーダフォン買収を分析する」のイベントが、明日に迫ってまいりました。関係者一同、直前の準備追い込みで大変なことになっております。お客様のほうも、イベント当日まで待ちきれず、なぜか先週24日の夕方に会場においでになった方も数名いらっしゃったようです(笑)。

 今回のイベントには受け付け開始直後より予定座席数をはるかに上回る申し込みが殺到し、とうの昔に締め切って抽選を行い、申し込んでいただいた多くの方にお断りを申し上げざるを得ませんでした。にもかかわらず、相変わらず「まだ席は空いてるか」の問い合わせが毎日入って来ておりまして、対応している事務方の気が狂いそうになっています。一部の方には大変ご迷惑をおかけしておりますが、これ以上「まだ入れるか」とか問い合わせてこないでくださいお願いします(汗)。

 メディアの方々もテレビ、新聞、通信社、業界紙・誌、ネットメディア等々、二ケタに上る媒体から来られる予定です。なので、一般申し込み客に関してはかなりギリギリの(実はドタキャンを見込んで予定数を上回る)見通しで当選通知を出してます。18時開場・18時半開演の予定ですが、当選通知をもらったからといって開演時刻間際に来られても、会場内に入れない可能性が高いです。混雑を避けるため、なるべく早くにご来場ください。

 ここ数日間、パネリストの方々と打ち合わせをしていますが、当然ながらどの方も各分野で僕なんかとは桁違いに膨大な現場経験を積み上げてこられた方々だけに、「FMCでリバンドル化」なんていう簡単な結論に収斂するわけもなく、イベント開催前から侃々諤々の異論反論噴出状態。しかも皆さん、頭が切れすぎです。このとっちらかった真剣勝負状態をどうやってモデレートして話をまとめていくのか、渡辺さんの捌きの腕前が試される状況。裏方の方がドキドキハラハラしてます。

 あと、「事前準備何しておけばいい?」という質問を複数の方々からいただいてますが、ソフトバンクの記者会見の様子をもう一度見ておくか、パネリストの森祐治さんの書かれている「情報経済ブログ」の二本のエントリを読んでおいていただくのが良いのではないかと。以下、ご参考までリンク。

 なお、参加されるブロガーの方は、渡辺さんのブログにアップされた注意書きもざっと読んでおいてください。では、明日いろいろな方々とお会いできるのを楽しみにしております。

12:27 午後 ビジネス コメント (0) トラックバック (1)

2006/03/18

日本史上最大のディールについての簡単な感想

sb_son いやー、今日は絶妙のタイミングだった。

 17時から始まったソフトバンクのボーダフォン買収の記者会見のストリーミングを聞きながらメモに起こしてブログにアップ。同時にそれをプリントアウトして見ながら、渡辺さんと夜19時から3/31の緊急イベントについての打ち合わせをした。ちょっと前までは、こんな世紀の記者会見など、一般の人間にはマスコミの報道を通じて以外、全貌を決してうかがい知ることのできないイベントだった。今では誰でも会見を同時に見られるし、マスコミより先に感想記事を書いてしまうことができるし、すぐに作戦会議(笑)に使うこともできる。感慨もひとしおだ。

 僕はというと、打ち合わせを終えて帰宅してから、もう一度オンデマンド放送の記者会見を見直していた。それでちょっと思ったことをいくつか、書き残しておこうかと思う。

 今日の発表を聞いて、まず一番びっくりしたこと。それは、「この話、資金調達が最初の難関だろう」という僕の予測が見事に外れていたことだ。

 報道陣の撮影後、ボーダフォンのモロー氏が去ってから最後の質疑応答で、孫氏は「今回の件が知られて以来、国内外の金融機関から、予定額の何倍ものオファーをいただいた。非常に積極的で、金利も十分に魅力的だった」とコメントしていた。

 ソフトバンクに金融機関が、“魅力的で積極的なオファー”?!最初に融資してくれた興銀をメーンバンクから蹴落として金融機関を天秤にかけ、銀行業界から総スカンを食らって野村證券出身の北尾吉孝氏とともに株式市場からのエクイティ・ファイナンスに社運を賭けた90年代のソフトバンクを知っている人間からすれば、この10年の金融業界の様変わりは、まさに「隔世の感」とも言うべきものだ。

 あるいは、景気加熱×金融量的緩和解除直前で空前のじゃぶじゃぶカネ余りという絶好のタイミングで、成熟産業の巨大企業に売却を持ちかけて首を縦に振らせた孫社長の天才的戦略家ぶりのなせる技だったのかもしれない。おそらく彼はVFのサリーン氏に囁いたことだろう。「今このタイミングを逃せば、我々が1兆円をはるかに超える資金をご用意することは、もう永遠にできないかもしれませんよ」と。

 それにしても、ファイナンスに溺れ、あるいは振り回されるベンチャー経営者があまりにも多い中で、ファイナンスをあくまで「自分のビジョンを達成するための戦略ツールの1つ」としか見なさず、徹底して「市場を振り回す」側に回る孫氏の豪胆さには、心底恐れ入るばかりだ。

 あと、12日から14日にかけて、「サーベラスやKKRがカウンターオファーを出した」という投資銀行筋経由の情報が出たのは、VFがSBのオファーを受け入れることをほぼ固めていたからだったんだろうね。つまり、VFに門前払いを食ったので、VF株主向けにカウンターオファーの金額をアナウンスすることで、「これ以上安い価格でSBに売るようなら訴訟を覚悟しろよ」という脅しのつもりだったのだろう。残念ながら、その程度でぐらつくほど孫社長の信念と準備はヤワではなかったということのようだ。

 それから、VF買収の戦略面からみた分析については、詳しくは3/31のイベント席上に譲るとして、ここでは簡単に会見の感想だけ書いておこうと思う。

 記者会見の発言をテキストに起こしてみて、孫社長は一見さらっと説明しているかに見えて、実はその言葉の1つ1つに周到な意味を持たせているということが改めてよく分かった。さすがだと思う。このテキストを読み抜くことから、今後のSBの方向を予想する作業が始まるといっても過言ではないだろう。

 分析で分かることはたくさんあるが、ここではその中の1つだけ書いておく。孫社長が記者会見で言っていたSBのVF買収に関する戦略面の説明(ファイナンスのスキームやそれぞれの持つ顧客基盤の規模の話を除く)は、要約すると結局3つに絞られる。1つは「VFはSBグループと一緒になることで、基幹網の共有化によるコスト削減が可能」、2つめは「ヤフーが総力を挙げてモバイル向けのコンテンツ供給に取り組む」、そして最後に「SBは2000億円以上のカネは出さないし、それ以上のリスクもかぶらないから株主は安心してくれ」という3つだけだ。これ以上、何も言ってない。

 「コスト削減可能」ということについて、その節約できたキャッシュを新たなネットワーク設備への投資につぎ込むのか、それとも価格戦略に使うのか、それ以外の用途なのかには一切触れていないし、「ヤフーが総力を挙げてモバイルコンテンツの開発に取り組む」というのも、それを「VFのために開発する」とは一言も言ってない。言っているのは「開発する」ということ、そして「4200万のヤフーユーザー、1500万のVFユーザーの両方に相互のシナジーが起きる」ということだけ。ヤフーユーザーの携帯電話保有者を、すぐに全員ボーダフォンに買い換えさせてみせるとは言ってないところが、ミソである。

 おそらく、この「会見で言及しなかったポイント」にこそ、孫社長の意図がひそんでいると見て良いのではないかと思う。おおかたの出方は当初の想定内だったと思うが、あの会見を聞いて孫氏の隠れた意図に気が付いた人はあまりいないのではないか、と感じた。

 ここから先の分析は、3/31のイベントでさらに突っ込んで考えてみたいと思っているので、お楽しみに。ちなみに、渡辺さんのところではイベントの申し込みは既に締め切りましたが、グロービスの一般向け申し込みの枠がまだ少々空いているそうなので、参加ご希望の方はなるべくお早めにお申し込みください。

 なお、ネットメディアの記事リンク集を作ってくださったブログと、資金調達や資金の流れのポンチ絵を作って掲載していたブログがあったので、最後にご紹介しておきます。ご参考にどうぞ。

02:54 午前 ビジネス コメント (12) トラックバック (14)

2006/03/17

ソフトバンク孫正義社長 会見質疑応答

続いて、質疑応答についても速記しました。聞き取れなかったところもあるので、参考程度に。


質問:

Q:VFというブランドはどうなっていくのか。また、ビジネスモデルについて、水平分業というお考えが以前にあったと思うが、ハンドセットの調達も含めてどうするのか。また新規事業として割り当てられた周波数帯についてどうするつもりか。

孫:ブランドについてお答えします。基本的に新しいブランドに切り替えますが、移行期間として半年~1年ほどかかると思うが、お店の看板掛け替え、印刷物などを徐々に新しいブランドを浸透させていきたい。ブランドについてはできるだけ早い時期に決めたい。これから検討する。

水平分業については、ヤフーへの質問ですか?

Q:ヤフーと端末と両方教えてください。

井上:ヤフーについてはBBの時に経験していますが、インターネットユーザーに広く提供していくということと、VFのユーザーの方々にキャリアに近いところにいるために利便性を提供できる部分があると思うので、社内ではT字形というが、横に広くサービス提供する部分と、会員の顧客に深いサービスを提供する部分とに分けていきたい。

孫:端末はこれまで通り多くのメーカーさんから調達することになるが、新しいテクノロジーや使い方についてはもっともっと深く関わっていきたい。周波数については新規事業者として1.7mhzを得たが、新規事業の部分を残すか、それとも完全な既存事業者としていくのかは総務省と話し合って決めていきたいと思うが、1.7mhzを返すとしたら、VFは既存事業者としてイコール・フッティング、高速データサービスなどをやっていくのに必要な周波数を持っているのか、800mhzなど浸透率の良い周波数についてはどうなのかというのをよくよく議論して、収まるべきところに収まるのだろうと思って検討していきたいと思っています。

Q:念のため。手放す手放さないについてはどうお考えで。

孫:よく相談のうえ、ということになるかと思います。

Q:(ITmedia)新体制ですが、津田会長・モロー社長という体制は残すのか、SBから新しい役員は入るのか。また新規で一からやったほうがIPネットワークは作りやすいとおっしゃっていたと思うが考えは変わったのか。

孫:本当に買収できるかどうか、今日まで議論していたので役員体制まで考えている余裕がなかったので、これから考えていきたいと思っています。新規ネットワークを一から構築、MVNOなどあらゆる可能性を検討すると、私は一貫して言ってきたつもりですが、新規事業でのみやるという印象を与えていたとすれば、誤解を招いていたかもしれません。私は携帯は必ず参入するつもりであると、何度も聞かれるたびに言ってきました。今後も何でもありうるということは申し上げておきます。ただ、本業のデジタル革命の部分は変わりません。この幹の部分はそのままです。

Q:(NHK)VFは日本でいまいちだったわけだが、これをどのように分析し、NTTに対抗できるように強化していくのか、一言で言うとというのをお話いただければ。

孫:少なくとも3Gについてはつながらないところが多すぎるという声があったと認識しています。これについては徹底的につながるようにこだわってネットワークを強化していきたい。これはまったくの新規で作るのに比べれば、はるかに苦労が少なく、早くできると考えている。2つ目はコンテンツだが、ドコモ、auに比べて少なかった。これはヤフー、SBグループ総力を挙げて一気に強化したい。3つ目、営業についてはSBは営業を非常に重視しており、それを強化したい。ただ今回は格好良くやりたい(笑)。泥臭くやると持っているのが恥ずかしくなるので、格好良くスマートにやりたいと思っています。端末デザインについては海外端末への意識が強くなりすぎていたと思いますが、モローさんが戻ってこられてからかなり改善しているが、今後一気に強化していきたいと思っている。この4点です。

Q:利用者にとっては料金がどうなるのか興味があるところですが、どのようにしていくか。

孫:少なくとも料金がドコモ、auに比べて高いというイメージはユーザーの中にはないのではないかと思いますが、新たな価格戦略についてはコメントすべき時期ではないと思っています。

Q:(NCC)2.5GHzのサービスについてと、ボーダフォンがこれまでやろうとしていたこと、MVNOについての見通しを。

孫:WIMAXについては、これまでいろいろ実験をやってきておりますので、VFの買収によって早く展開できることになってきたので、これは進めていきます。またMVNOについても新たな顧客獲得の手段と思っていますので、積極的に検討していきたい。

Q:(朝日)価格をどのくらい武器にして戦っていくつもりかを知りたい。ADSLでやったような価格破壊者として臨むのか、寡占クラブの一員としていくのか。

孫:まだコメントすべき時期ではないとお答えした通りです。

Q:(FSBI)設立する新会社の出資比率はどうなるのですか。それと1.75兆円の買収額は、LBOとか各社の出資を足していくと上回ると思いますが。

孫:議決権のある株式はソフトバンクが100%です。また、97.5%の英VF保有株を1.75兆円で買収するわけですが、VFJが一部外部からの借り入れが1200億円、英VFからの融資が1400億円だったかあります。その部分をはずして考えると、英VFから譲り受ける株式の価値は1.75兆円。ただ、新会社が借り入れするものの中には、親会社VFからの借り入れのスライドもあるということです。

Q:ノンリコースローンについては、SBの子会社負債として出てくるということでしょうか。

孫:連結では入ってきますが、返済リスクはあくまで遮断されていると。SBの株主から見るとリスクマネーは2000億円で打ち止めで、新会社がキャッシュフローで負債を返済していくということです。

Q:(NSSB)既存借り入れや既存融資の債権者については不利な立場になるかと思いますが、もう少し詳しく説明してください。

孫:既存の社債が1000億ちょっとありますが、これは社債のまま引き継ぐのではないかと。最終調整を行っているところですが、資金調達の中で置き換えるかどうかも調整中です。残りの債権者はVFUK本体から1000億円ちょいでているのですが、それは新会社の1000億円の劣後債として残すということにVFと合意しました。それ以外の債権者はほんの数十億円あるということですので、今回の調達で借り換えて返済ということになるのではないかと思います。

Q:(CNBC)2点。現在の各社の料金体系について高い、安いどのように考えていますか?

孫:さっきと同じ趣旨の質問ではないかと(笑)。まだコメントする時期ではないと、時期が来ればお話しさせて頂きたいと思っています。

Q:3Gのつながらないところが多いという話でしたが、年間いくらぐらいの設備投資を考えていますか?

孫:これまで2000億円規模の投資をVFではやっていますが、同じレベルはやっていくと思います。それに加えて3Gのつながりにくいところへの補強、ユーザーキャパシティも増やしていきたいと思っています。

Q:(朝日)交渉の過程について、モローさんが空港に来るのを待ちかまえていたと聞きましたが、モロー社長は一貫して売却の意志がないと言っていたのが1カ月ほど前に転換した理由を聞かせてください。

モロー:MVNOについてはこれまでも交渉していたが、空港で待ちかまえていたというのは、そういう熱心さを象徴する話です。また、売りには出していなかったけれども、孫さんから話をもらって、私どもとしても株主に価値がある話として検討するべきと考えたということでした。

孫:昨年早い時期までは自前でやりたいと考えており、暮れにかけてはMVNOを交渉していましたが、よく考えるといっそ買収したほうが早いかなと思って私のほうから今年に入って申し入れた、ということです。

Q:ヤフーとの関係でコンテンツを拡充していくということでしたが、10月にはMNPが予定されていますがいつ頃にやるんでしょうか。

孫:何をするにも時間がかかるのですが、本格的な展開ということでいうと半年ぐらいはかかるかなと。またそこから徐々にふくらんでいくという、ただ半年後からは急に積み上がっていくということで。

井上:そんな感じにするようにがんばります(笑)。

Q:(quick)子会社を作って買収というのは、本体での買収には不都合があったのでしょうか。またノンリコースローンはコストが高くなると思うのですが、なぜそこまでして切り離したのか教えてください。またこれでケーブルとワイヤレスとを手に入れられたわけですが、当初から全部まとめて買った方が良かったのではないかと思いますが。

孫:子会社での買収は戦略的な意味があるわけではなく、手続き上の意味だけです。BBモバイルが1.7GHzの周波数をいただき、人員も研究開発もいるわけですが、このチームがそのまま所有するというのが自然かと思っている、最終確定ではありませんがその方向で検討しているということです。またノンリコースのことですが、SB株主から見ると財務リスクは遮断できると。直接リスクを負わなければいけないのは2000億円というところで完結できるほうがいいと思います。また、VFJに3000億円のEBITDAがありますので、それを使うほうがコストアップにはならないという判断です。日本テレコムとJフォンを一括で買わなかったのは、その時にはそんなにお金がなかったというのがシンプルなお答えです。

Q:(FT)PEからのオファーも出ていたと思いますが、VFグループについては他のオファーも検討されましたか?しなかったとすればなぜですか?

モロー:検討しましたが、SBと生み出せる価値を見ますと、この価値に満足できるし、それを生み出すことができると思います。だから取締役会は孫さんのオファーを受け入れると決めたわけです。

Q:(日経)無議決優先株式については、将来議決権が発生するものなのか、また配当ルールはどうなっているのか。また

孫:無議決権株式については、7年の累積EBITDAが3.35兆円を超えたら、VFとヤフーは新会社の普通株式を入手できる権利がついています。VFJは、同じ条件が起こった場合新会社の10%の普通株を取得できる条件があります。またヤフーは新会社の4%の普通株を入手できることになっていますので、SBの持ち分は合計14%のダイリューションが起こる可能性があるということになります。また配当は(聞き取れず)。ブリッジローンの後のパーマネントローンについてはこれからシンジケーションを組成します。その中で調整していきます。ただ大半のお金はシンジケーションになります。一部流動化、あるいはリースが入ります。(以下略)

07:01 午後 ビジネス コメント (2) トラックバック (0)

ソフトバンク孫正義社長 会見速記録

期間限定で削除します。とりあえずネット中継を見ながらメモったのをアップ。最初のほうとか、聞き取り間違ってるところもあるかも知れないので、使う時には注意・裏取りを必ずしてください。


ソフトバンクの孫です。これまで創業してから20年、いろいろな事業を開始・買収し、5~6年前からブロードバンド事業を開始し、一日も早く携帯電話事業をやりたいと強く思っていた。いろいろな選択肢を検討してきた。自前の新規ネットワーク、MVNO、買収など様々な検討をしたが、今日正式にVFJの株式を買収すると決定した。少し待たせたのは契約の文言についての詰めをしていたから。この後アルーン・サリン氏が電話であいさつをしてくれることになっている。無事回線がつながれば。

買収成立まで随分交渉したが、SB・VFの両方から見て納得のいく内容になった。VFから見れば日本からの撤退ではなく、私どもと新たなジョイントベンチャーを設立するという方向で検討した。

(サリーン氏の電話コメント)

VFJの概要については書類でお渡しする。買収の方法は、SBの全額出資子会社が行う。エンティティについては、詳細を詰めているところ。VFJの株式の97.7%を、新会社が約1兆7500億円で買い取る。2.3%は少数株主がいるが、TOBで買い取る予定。今日調印し、1~2カ月後までに詳細を詰める。新会社はSB自身が2000億円出資で新会社を設立。

そこから無議決優先株式を発行して、ヤフーに1200億円、英ボーダフォンに3000億円割り当て、さらに英VFに1000億円の劣後債を発行。そこに銀行等からLBOで1.1~1.2兆円を借り受け、VFJを買収する。

まず最初にブリッジローンをやり、買収後に新会社が長期の社債、借り入れ(シンジケート、メザニンローン)を使って設備投資をやっていく。これらの借り入れのすべてはノンリコースとなる。SB自身は一切の返済義務、つまり借り入れのリスクを負わない資金調達方法となる。今年9月までに長期借り入れに転換する。従来のSBグループは連結有利子負債が4700億円。過去9カ月の連結EBITDAを1年分に換算すると、1200億円ある。これで従来の順有利子負債を返済し、新たな有利子負債は返済原資を分離し、VFJの年3000億円の営業キャッシュフローを使って独立返済することになる。

売上高で2.5兆円、回線数で1500万。これにY!BB、日本テレコム、ヤフージャパンなどをミックスしていく。私がイメージした「デジタル情報革命」のための構えが一通りできてきたという感じ。

NTTグループ、KDDIグループと比較して、SBグループの世界300社の企業が、デジタル情報革命のパワーとして役立ってくれる。

買収メリットとして、顧客基盤(国内1500万、JVで1億のVFグループ)がある。新規参入に比べてはるかに多くのベースからスタートできる。それに加えて、VFはバックボーンのネットワークを自前で持っていない。日本テレコム、Y!BBなどがもつ自前のネットワークを、VFも使うので、この部分が大きなコスト削減になると考える。

さらに、アクセス回線のフルラインナップがそろい、いつでも誰でも情報のやり取りができる。NTT、KDDIは音声については立派なネットワークを持っているが、データについてはVFとSBグループのほうが他のグループよりも先を行っていると言える。

BBネットワーク、モバイルネットワークが、IPのネットワークで全部つながる。オンデマンドでユーザーの望むものが望む時に使えるというものになる。ネットワークの内容は、WBMのネットワーク、超高速光ネットワーク、世界的に見てもこれだけの完全なネットワークを持ち、しかもコンテンツを持っているグループは他にないと自負している。

端末調達は自前でするとなると茨の道だと思っていたが、VFとの提携で端末品揃えも一気に加速できる。もともとSBが考えていた機能を盛り込んだ端末をこれから続々用意していきたい。

次にシナジー効果だが、お客様にトータルパッケージを提供できる。

営業体制は、VFに1800店の専門ネットワークがある。一方、SBは家電量販などに強いネットワークがあり、ヤフーも強い代理店網を持っている。ブロードバンドも携帯も両方でたくさん売れる。インターネットユーザーを獲得しやすくなると考える。

ヤフージャパンとのシナジーは、コンテンツの販売だ。井上社長に発表してもらうが、ヤフーの強みを全面的に活用していきたい。モバイルコンテンツの充実を図って行きたい。月間300億PVを超えるトラフィック、4200万人のユニークユーザーと、1500万人のVFのユーザーが相互のシナジーを起こせれば大変大きなエンジンになると思う。ちなみに、ドコモの公式サイトのコンテンツは5800、KDDIは4300だが、ヤフーの携帯コンテンツはこれをはるかに超える量、インターネットのサイトも含めると何億サイトという、桁違いのサイトがあり、これらをスムーズに携帯で使えるようになると、インターネットユーザーから見て大変満足できるサービスが提供できるのではと思っている。

最後にVFグループとSBグループでジョイントベンチャー設立を検討するというLetter of intentを調印した。世界を見ると、VFのユーザーは5億人。世界の携帯ユーザーの4分の1がVFのユーザー。このVFグループとコンテンツを持つSBが世界的なジョイントベンチャーを作れないかという提案があり、ちょうどそれは作りたいと思っていた、という返事をした。その方向で検討していくつもり。

世界的なVF live!のユーザー数は3000万だが、潜在的なユーザーの数はVFが圧倒的に大きく、SBの持つコンテンツとVFが組めば、世界にインターネットユーザーの倍いる携帯ユーザーへの道が開けると考える。SB、VFグループを足すと膨大な量の市場があり、チャンスが開けてくると目論んでいる。

たとえば、Eコマースではオークションやショッピングがあるが、ドコモやKDDIはこれらのECからの収入はほとんどない。しかしヤフーはこれらの手数料収入が合計で600億円ある。VFと組めば将来のマーケットは大変大きい。日本のモバイルポータルを世界のポータルにしたい。

VFLive!は、VFJで作ったものがベースになって欧州などでも展開されている。日本の携帯事業を我々に売却するということは、VFにとって先進的なマーケットとのつながりがなくなるというのが、交渉の最初に言われていた。もしVFとSBが組めば、先進的なマーケットで我々がもっと強化したサービスを、VFのワールドワイドのサービスに展開できれば、撤退ではなく強化だということで思惑が一致した。

固定と携帯の融合で、我々が目指すのは「ユビキタスな総合デジタル情報カンパニー」。決して「総合通信会社」ではない。そういうふうに言わないで欲しい。それは我々の志からすると、ちょっと小さい。

06:21 午後 ビジネス コメント (0) トラックバック (1)

2006/03/16

油断も隙もないですね

 うわ、金融界って本当に油断も隙もないな。一瞬「1兆5000億円なんて安すぎ」って思ったのは僕だけじゃなかったっぽい。サーベラスが1兆8000億円でカウンター・オファーを出してきましたよ。

 米投資会社が買収提案・ボーダフォン日本法人(NIKKEI.NET)

 これでSBは1兆8000億円以下の提案はもうできなくなった。シナジーがどうたらとか、関係ない。これより下げたら英Vodafoneの株主が黙ってないだろう。この調子だと、3月中にはクローズまでたどり着かないかもしれませんね。

 ファイナンス的には、もうソフトバンク自身が増資とかMSCB発行とかなんかして、3000億円ぐらい余計に積み上げるしかないだろう。でなければ、カーライルとか別の投資ファンドと連合軍を組んで、自分は業務提携モードに切り替えるか。ここに北尾さんがいれば、敢然と戦いに出ただろうが、今のSBにはこれだけの資金調達スキームを描いてマーケットに売り込める人は、果たしているのだろうか。

 ちなみに、その後もこの件に関するエントリをアップするブログはあちこち巡回してチェックしているが、昨日今日と、面白いエントリが上がったのでそちらをご紹介しておく。はてなダイアラー歴6日目にして突然ストレートの超剛速球を投げ始めた、コンサルタントのクロサカタツヤ氏のブログ。

 ボーダフォンとソフトバンクの行方(1)、 ボーダフォンとソフトバンクの行方(2)(another aspects from txk)

 クロサカ氏は、これまでウェブ上に出たいろいろな意見を的確に整理したうえで、PCの世界のYahoo!に比べて、VFのビジネスの「リアルな個人とひも付いている」というアフォーダンスがPCインターネットの側の事業リスクを低減する、と見る。そのうえで「(ソフトバンクは)ビジネスモデル次第で、今の価格帯と同じ端末やサービスで、既存のビジネスモデルを壊すことができる」と喝破している。すごい。

 ちなみにこのブログ、梅田氏の『ウェブ進化論』への池田信夫氏の書評をばっさり切った批評など、(4日分しかない)過去エントリもものすごい読み応えなので、いきなり通信業界関係者の必読ブログにのし上がりそうな予感。

 というわけで、あちこちで絶望したり投げ出したくなったりしている人もいるようだけれど、僕自身はなんだかんだ言いつつ今日もますますブログの世界から目が離せないのであった。

03:46 午後 ビジネス コメント (19) トラックバック (3)

2006/03/04

ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ

 表題の件、あちこちのブログで猛烈な勢いで分析がアップされているので、ちょっとリストアップ+一言コメントを付しておく。

 リリースが金曜日深夜だったので、ビジネス系メディアはネット媒体も含めて一報を伝えた後に沈黙。もっとも身近な、そして国際競争力があるんだかないんだか分からない巨大業界のルールが、一夜にして変わろうとしている時に、まったく役に立たん。まあ、関係者に必死で取材しようとしてるんだろうけどね。そんなときに、ブログは遠慮無くどんどんさまざまな角度から分析がアップされる。本当に素晴らしい。今後新しい分析記事が出てきたら追加していく予定。 (3/5 2:30、3/5 7:30、3/5 11:20、3/6 0:45、3/6 4:00追記)

 ●ボーダフォン1.7兆円でソフトバンクへ身売り?日経が「大筋合意」と報道(番号ポータビリティ対策)
 ●ソフトバンクは2兆円も出せるのか? ボーダフォン買収(番号ポータビリティ対策)

 SB系の媒体に書いているライターの三上洋氏の分析。今回の買収の最大の狙いは「端末メーカーとの関係を手に入れられること」という指摘はなかなか興味深い。あと、2兆円の買収資金は新株や社債の発行、ヤフー株売却などで捻出するんじゃないか、とのこと。付け加えるなら、後はボーダフォンの資産を担保にしたLBO(Leveraged Buy-Out)ですよたぶん。これなら何とか1兆円は調達できると思われ。

 ●ソフトバンクのボーダフォン買収には反対します(ケータイAlternative)

 同じくライターの三田隆治氏。こちらは「いかにSBといえども、これだけの巨額の投資をしておいて料金を下げるわけにはいくまい。携帯の寡占が強まり価格が上がることには反対」とのこと。このへんの記事を根拠におっしゃっているのだろうと思うが、実際のところ価格を下げずにブレークスルーは可能なんだろうか。なんかちょっと違う気がする…。

(3/5 2:30追記)三田氏から長大な反論エントリが送られてきた。ものすごい読み応え。さすがプロのライターさん。ていうかこんなところにタダで書いていていいんですか?(笑)

 ●本当に大きな変化は起こるのか?ボーダフォン買収(ケータイAlternative)

 割と短期間(これから先1年程度)までの間に何が起きるか、というところでの予想をされている。プロらしい、堅実な記事だなあと思った。予想の内容は、(1)既存プレーヤーの買収ということで、価格破壊よりは業界秩序維持が基本路線となる(2)07年3月までは価格体系を多少いじるぐらいで、Vの政策がほぼそのまま踏襲される(3)中長期的に見てもSBにできるのは海外製の低機能な安い端末を安くばらまくことぐらい、というもの。というわけで、SBには「ボーダフォンを買うよりMVNOを選択せよ」と訴えている。(追記終)

 ●携帯キャリアとしてのソフトバンクの登場。(Mediologic.com/weblog)

 タカヒロノリヒコ氏@mediologicの分析。「VodafoneとYahoo!のブランド・シナジーは、Docomo+gooなんかとは比較にならない強烈な衝撃」「ボタン1つでYahoo!に繋がる端末が発売されるに違いない」との予想。これは面白い。固定回線からブロードバンドネット、無線、そしてインフラからコンテンツまでコミュニケーションの全レイヤー・全カテゴリをグループ傘下に持つ企業の登場で、「最大手Docomo(つまりNTT)も戦略の大幅練り直しが急務」という指摘は興味深い。

 ●ソフトバンクのVodafone買収が引き金を引く携帯コンテンツと国産携帯端末事業の統廃合(雑種路線でいこう)

 南方司氏の分析。方向性の予測としては僕とほぼ同じ。SBには元Jフォン時代の人材が数多く転籍しているので、ボーダフォンの内部事情は筒抜けだろうとのこと。なるほど。あとは、海外低価格端末の調達による電話料金価格破壊のシナリオ。まあこれは予想の範囲内。だれかもう少し電波の帯域利権についての情報を書いてくれる人がいると面白いのだけど、そっちはあまり目新しい話はないのかな。

 ちなみに、ITmediaの+D編集部ブログでは、2/28に
 ●ボーダフォンがつぶやいた「FMCの障害」(+D編集部ブログ)

 という記事が掲載されていて、ここでボーダフォンの津田志郎会長がFMC(Fixed Mobile Convergence)について「アライアンスを検討している」とコメントしたことが書かれている。個人的な印象で言うと、楠氏のブログと合わせて考えれば、おそらくSBの孫正義氏はこの時点で津田氏との顔合わせは既に終えていたのではないだろうか。

 ざっと見渡した限り、SBの買収資金の調達方法と、端末とサービスの競争軸の変化あたりがこれからの論点というところでしょうか。他の論点があるよ、または異論反論あり、といった方々は引き続きトラックバック求む。

(3/5 7:25追記)
 ●ボーダフォン、ソフトバンクが買収か(fareaster)

 fareaster氏のブログ。FMCを考えると、ボーダフォンがSBグループ入りして連携するのはY!BB(個人向けISP)ではなく日本テレコム(法人サービス)ではないか、という予測。

 ●Yahoo!×Vodafone新戦略を妄想してみる(雑種路線でいこう)

 南方氏の追加記事。新サービスはYahoo!とアカウント(課金システム)、メールボックス、サービスなどを共有し、待ち受けや着信画面などにふんだんに広告を組み込むのではないか、など具体的な予想。いやはや、すごいです…。

 ●SoftbankがVodafone(J)買収か!? ケータイコンテンツ屋の悲劇はここから始まる...(キャズムを超えろ!)

 携帯端末メーカーの企画部門にいる和蓮氏が、SBの携帯参入によって携帯向けコンテンツ業界のボロ儲け構造が崩壊するという予測を面白おかしく語っている。ちょう面白い。最後のとこに笑った!

(3/5 11:20追記)
 今朝の日経が「米Yahoo!と英Vodafoneが業務提携」というヘッドラインを流しました。また2兆円の資金調達の内訳として、ボーダフォン(j)のLBOで1兆円、ボーダフォンの増資を英Vodafoneが4000億、SBが2000億程度引き受けることで賄うとの報道も出てます。またVodafoneグループへのコンテンツ提供を米Yahoo!が行い、Yahoo!グループとVodafoneグループの業務提携にまで発展するみたい。昨夜のLBO1兆円の読みは当たりました(フフッ)。

 ●ソフトバンクのVodafone買収 3つのインパクト(近江商人 JINBLOG)

 近江商人JIN氏の分析。このディールのインパクトを、「MNP料金競争の開始、FMCでARPU20,000円の争奪戦開始、モバイルコンテンツ市場の崩壊」の3つにまとめている。そっか、これって個人・家庭における通信・娯楽支出全体のシェア争奪戦と考えるべきなのか。なるほどね。ということは競合はNHKでもあったりするわけか。ぎょぎょぎょ。

 ●ソフトバンク × ボーダフォンの問題整理(SW's memo)

 昨夜GoogleTalkで話していた渡辺聡さんのまとめエントリ。実は火を噴くところは株式市場だったりキャピタリストだったり総務省だったりと、携帯電話業界に収まらないですよーという話。そうなんですよね。米Yahoo!まで巻き込んでの包括提携とLBOによる2兆円の過去最大の資金調達、しかもキャリアだけでなく、コンテンツ業者や端末メーカーを干上がらせ、テレビや法人向けITシステム構築などの業界にまで影響が及ぶとなると、短期的にも中長期的にも、日本経済にとって「大激震」なんですよね、このニュースって。「Yahoo!の"Google"化」、言い得て妙です。

 ●ソフトバンクのボーダフォン買収で、Vodafone Live! が Yahoo! Live! に!?(お仕事日誌&一日一麺)

 渡辺さんとこで紹介されていたayustety氏の分析。NTTグループ再々編とともに、日本の携帯端末メーカー大再編の論議にも火がつく予感。まあ、ここまで来ると今さら「業界秩序の維持」もへったくれもない気がしますが…。どうなるやら。

(3/6 0:45追記)
 ●ソフトバンク、ボーダフォン買収に思う(■財務アナリストの雑感■)

 財務アナリストのdancing-ufo氏のボーダフォン企業価値分析。1.7~2兆円という買収金額は、少なくとも今期中間決算発表の内容を見る限りは妥当な水準とのこと。ま、そのへんは日経の記者もちゃんと計算して記事は書いているでしょうしということで、特に目新しい切り口はなし。やはりファイナンス面の焦点は調達手法の方ですかね。個人的には、1兆円まではLBOで調達可能だと思いますが、それ以上はたぶん無理なので、英Vodafoneの要求する買い取り価格との差をどう埋めるかが焦点となるはず。

 ●Google化するYahoo! JAPAN :ソフトバンク × ボーダフォンの追記(CNET:情報化社会の航海図)

 このブログも引用していただきました、渡辺聡さんのCNETでのまとめ記事。「ネット業界は水平分業から垂直統合へと競争の圧力が変化」、そして逆に「携帯業界は垂直統合から水平分業への激烈なオープン化競争への変化」。これらの変化が、今のところSB×VFという組み合わせから読めてくる。これって、Googleが欧米で起こしている変化の構図と、実は非常によく似ているという指摘が興味深い。

(3/6 4:00追記)
 ●SoftbankのVodafone買収によるYahoo!JAPANのGoogle化を考える(ちよろず。)

 上の渡辺聡さんの言う「Yahoo!JapanのGoogle化」という言葉の意味がわからん!という人にぜひお勧めの、屋島新平氏による分かりやすいエントリ。要するにDocomoやauのような、キャリアによって囲い込まれた疑似インターネットではなく、Yahoo!360やYahoo!BlogといったCGMを通じて生み出されるコンテンツに検索連動広告を挟んで稼げば、端末価格や通信費用を抑えられるじゃん、ということ。

 ●[ケータイ]ソフトバンク、ボーダフォン買収へ(atkondoの日記)

 atkondo氏のこちらのエントリは、CDNの技術からみたWeb2.0的分析。SBが採用を予定しているクアルコムのMediaFLOの技術だと、既存の3Gに専用チップを追加するだけで、ワンセグをはるかに上回るチャネル数と省電力のケータイテレビが可能になるとのこと。こうなると、既にBBTVで42chもの動画コンテンツを持つSBは圧倒的に有利。MediaFLOは、KDDIとどちらが導入が早いかが見物。

 ※このテーマで、3/31に緊急のイベントをやります。ご興味がある方はこちらからぜひお申し込みを

09:31 午後 ビジネス コメント (10) トラックバック (42)

SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」

 ボーダフォンがとうとうチキンレースに音を上げたっぽい。で、身売り先はソフトバンクですか。

 Vodafone、ソフトバンクへの日本法人売却交渉を認める(ITmedia)

 英国の報道によると売却額は1兆円とのことだが、これってちょっと安すぎじゃね?一応日本全国をカバーしてるインフラを持つキャリアですよ?すごいディスカウントセールだな。呆然。

 こんな端末の発表とかもして、ようやく日本市場に本気で合わせていこうっていう機運が出てきたところだっていうのに。あ、そうか、英国の本社の思惑にしたがって動かしたら結局どうにもこうにも赤字が止まらなくなって、結局本社の世界戦略に組み込むのを諦めたからこれが出てきたっていうことなのかしら。なんだかなあ。

 一方、ソフトバンクとしては痛し痒しということなんだろうか。先月初めのITmediaのこちらの記事などを読むと、まずはMVNOでのアライアンスから手を付けようと思っていたっぽい。普通に考えたら、それが一番順当なところだろうね。1兆円の買収資金、いくらカネ余りだからって市場から調達すればそれなりの資本コストはかかるわけだし、ARPUがこれ以上伸ばせない成熟市場の事業に今さら1兆円を張ろうというのは尋常な感覚じゃない。

 だけど、MVNOならソフトバンク以外にもいろいろな新規参入組が相乗りしてくる可能性があるし、Y!BBの時のような固定網とは違って、ネットワークと端末を切り離して汎用品をばらまくみたいな戦略も無線では取れないから、どちらかというとネットワーク自体はなるべく自社と少ないメンバーで囲い込んでおきたい。とすれば、株の過半数を握って取締役会を押さえたうえで、大株主以外のMVNOを受け入れないという選択肢のほうが、なんぼか魅力的でもある、ということなのだろう。

 英ボーダフォン撤退後の実質的な会社のハンドリングについては、孫氏のことだから会長に上がった元ドコモの津田志郎会長を三顧の礼でトップに返り咲いてもらい、指揮を執ってもらうつもりでいるに違いない。津田氏に5000億、ネットワークに5000億の値段をつけた、ぐらいのつもりかも(笑)。そこまではいいとして、やはり問題は今後ボーダフォンのネットワークから1兆円の投資に見合った収益を上げるための戦略が描けるかどうか、に尽きるだろう。その戦略がなければ、いかな津田氏といえどもどうしようもない。

 戦略の天才孫正義の考えることなど、僕には到底想像すらつかないのは当然なのだけど、しょせん泡沫ブログなのだし、外し覚悟であえて予想してみる。

 今までのボーダフォンはNTTドコモのコバンザメ路線だったが、少なくともそれではもう後がないことが明らかになった。auは価格志向のユーザーが多く、ナンバーポータビリティが導入されても簡単にはドコモに流れないだろうが、ボーダフォンはFOMAとできるサービスが限りなく同じであり、このまま行けばナンバーポータビリティの導入によってドコモへの顧客流出がますます加速するだろう。

 したがって、おおまかな方向としては3つの選択肢がありうると思う。1つめは、「女性」という、伝統的にボーダフォンが強い地盤のある顧客層に徹底的にフォーカスした端末、サービスを投入して、ニッチプレーヤーの地位を確立すること。2つめはドコモやauがまだきっちり押さえ切れていない、法人顧客向けの無線IPソリューションをいち早く展開して、企業のネットワークをインフラごと乗っ取ってしまうこと。そして最後の1つは、Y!BB参入の時と同様、ソフトバンクが持つコンテンツビジネスへの相乗効果を期待しつつ、ナンバーポータビリティ導入に合わせて「無料(あるいは定額格安)ケータイ」という、ぶっちぎりの価格破壊に出ること。

 個人的には3つめの選択肢をとってくる可能性がものすごく高い気がする。1つめはいわゆる「差別化」の戦略だが、競合の追随をかわして顧客をがっちり囲い込み続けるのは、極めて難しいだろう。また、2つめの戦略は1つめに比べれば成功した時のロックオンの効果は高いだろうが、企業顧客に自社のネットワークを全部SBに任せようと決断させるには、飛び抜けて優秀な営業マンと飛び抜けて優秀なエンジニアがたくさんいなければならず、しかも時間がかかりすぎる。1兆円の投資の成果がすぐに目に見えない。

 3つめの戦略は、携帯業界にとっては「大殺界」だ(笑)。ドコモ、auもこれをやられたらもう逃げようがない。自社のもつネットワークのインフラが「収益基盤」から毎月莫大な赤字を垂れ流す「過剰債務」にある日突然変化するのを、指をくわえて眺めているしかない。もちろん、追随値下げしなければ顧客は全部ソフトバンクのものになるだけ。まさに悪夢のシナリオだが、ソフトバンクが1兆円のカネを張っても意味があったことを市場に見せつけて勝つためには、もうこれしかないだろう。

 というわけで、ナンバーポータビリティ制の導入はソフトバンクの登場によって、携帯電話業界の最悪シナリオを実現する引き金になりそうな気がしてきた。たぶんこれから、各社とも必死でこのさらなるチキンレースからの脱出をはかるべくあがきまくるだろうが、さてどうなるか。数年後にはドコモ、auの大リストラが待ち受けているような気がして仕方がない。南無。

10:35 午前 ビジネス コメント (11) トラックバック (15)

2005/12/22

郊外出店規制じゃなくて、中心市街地商店廃業強化が必要じゃね?

 すったもんだの挙げ句にようやく出てきました、大型店出店規制のまちづくり3法改正案。でもおまいら遅すぎですよ&何だかスジが悪そげ。

 大型店の郊外出店を制限、1万平方メートル以上対象・政府案(NIKKEI.NET)

 1万㎡以上っていうと、家電量販で首都圏最大規模って言われているケーズデンキ東京ベイサイド浦安店の売り場面積が約8000㎡だから、単独の専門業態店でこの規模を超えるところってたぶんほとんどない。規制の焦点は明らかにイオン、ベイシア、プラントなどのウォルマートライクな大規模スーパー、ショッピングモール、あと一部のホームセンターか。

 しかし今さら遅すぎだっちゅーの。ホームセンターについては、10月にこんな記事とかも出てたしねえ。流通業の側からしたら、今さら政府に言われなくっても店舗面積の上限に挑戦する時期というのはもうとっくに終わってると思うんですが。

 地方都市のスプロール現象を防ぐための大型店出店規制は、今年の5月頃に内閣府がやった調査で国民の50%が「大型店イラネ(゚⊿゚)」と答えた、とか発表されるなど、足場作りは進んでいたっぽいが、例によって邪巣湖などからおアシをいただいているネオ自民党が大反発、国交省内で進んでいた都市計画法改正案が止まってた。っていう理解で、いいのかな?それとも反発したのはクラシック自民党の方だろうか。意外に、そっちのスジのほうがあり得るかも。よくわからん。

 アンチ邪巣粉の私R30としては、出店規制そのものには賛成。でも日経の記事によれば、この規制は「郊外への店舗進出に歯止めをかけ、停滞する中心市街地の活性化を促す」のが狙いだそうだ。残念ながら、そういう意味ではこの法改正、以下の2つの理由でこの狙いは実現できないと断言してもいいと思う。

 1つは「もう小売りはSC内場所貸しがメインの一部の企業を除き、別の方向(つまり店舗面積の適正化)を向いてますよ」ということ。専門業態店で1万㎡以上の店構えが必要なところなんてないわけだから、この規制そのものが日本の地方の幹線道路沿いのチェーン店だらけのみっともない光景をなくすわけでもないし、ましてや幹線道路沿いのロードサイドの方が商業集積として便利な以上は、規制したからすぐに中心市街地に客のにぎわいが戻ってくるなんてことはない。

 もう1つは、大型商業施設を開発できる地域を中心市街地に限ったからといって、イオンなどの流通デベロッパーが中心市街地を何とか開発したろうとは、絶対思わないよということ。彼らが郊外の市街化調整区域に開発の目を向けたのは、カネを積まれれば広大な田畑を手放してもいいやと思う地主農家がたくさんいたからであり、しかも1万㎡の店舗を作るのに必要な土地(店舗はたいてい平屋建てなので、その2倍近い駐車場と合わせると最低でも3万㎡以上の土地が必要)が簡単に手に入ったからだ。

 ところが中心市街地はそうではない。商店街には開店休業のシャッター通りになっているにも関わらず、税務署にはまだ「営業」していることにして、猫の額みたいな土地なのに固定資産税の大部分を免除してもらって暮らしている人がたくさんいる。彼らは農家と違って何よりその地面の上に住んでいるし、近くに大型商業施設が来れば棚ぼたで自分の土地のあるところの回りにも客が来ることを知っているから、簡単には土地の買収にも応じない。デベロッパーは、そんな猫の額地主がうじゃうじゃいるところで3万㎡の商業施設用地を手に入れられるのか?まあ、まずあり得ないでしょう。

 そんなバカなことするぐらいなら、郊外の幹線道路沿いに駐車場を取り囲むようにして5000㎡ぐらいの店を3店ぐらい建て、その回りに「勝手に」チェーン店を集めるネイバーフッド型SC(NSC)でも作った方がずっとましだ。で、たぶんこれから日本の地方の商業開発はウォルマート型メガスーパーや大型専門店を核とした高集積RSCから、集客力のあるいくつかのチェーン店を3つほど集め、中央に供用駐車場を作るNSCにシフトすることだろう。だからやっぱり中心市街地に商業施設は戻ってこない。

 そもそも、日本の田舎というのはもうクルマしか移動手段がないのである。で、中心市街地というのはたいてい古くからの町とかであればあるほど、まっすぐの大きな道路がなくて細い道がくねくねと走っている。そんなところにでかい商業施設など作って週末になるたびに郊外からクルマが殺到したら、都市機能はすぐにパンクしてしまう。

 内閣府の調査を見て疑問に思うのは、この調査に答えた「全国の成人男女3000人」のうち、首都圏と近畿圏以外の人って何人なんだよ?ということだ。大都市圏に住んでいる人間にしてみたら、そりゃ郊外型大規模店なんて要らないだろうさ。でも、田舎の大規模店というのは、家族が週末に遊びに行ってそれぞれの興味の持てるものを眺めて楽しめ、帰りに1週間分の食料も買いだめして来られる「レジャーランド」、田舎における実用性を兼ねた数少ない娯楽なんだよ。

 で、そういうまとまったレジャーランドを、中心市街地でシャッター通りにしがみついてる商店主のおっさんおばさんが邪巣粉の代わりに提供できるのか?というのが問われているわけだ。やったるというならそれでいい。だけど、普通無理でしょ。だったらそこにしがみつくのを止めろ。できるやつにとっとと土地を渡せよ、と思う。

 問題は、そういう人たちの店が開店休業状態でありながら、中小事業者振興なんたらかんたらの補助金だのをたくさん受け取って利益が上がらないのをチャラにして固定資産税さえ払わずに暮らしているということにあるのだ。そういうぶら下がり中小商店主を、やる気やアイデアのある順に選別するか追い払うかする仕組みを一緒に作らないと、多くの地権者が複雑に入り組む中心市街地の土地の流動性は郊外並みには上がらない。とすれば、市街地活性化は絵に描いた餅で終わるだろう。

 あと、地方では高齢化が進むにつれて、今後消費者の流動性が急速に落ちていくはずだ。既に家電店やドラッグストアなど、最寄り品を多く扱う業態ほど流通業者の店舗面積は次第に小さくなり、店舗が人口の少ない地域にまで分散していく傾向が表れ始めている。

 とすれば、中心市街地のシャッター通りに陣取って「人が来ねえ」と嘆いている商店主こそ、とっととそんな店は引き払い、もっと地方のコミュニティーがあるところに店を移転して、本腰を据えて自宅にひきこもりがちな高齢者相手の商売を始めるべきだろう。そっちの方がずっとビジネスチャンスになるはずだ。なのにそれができないのは、上で述べたように、やる気がない、もっと言えば「リスクを冒してまでシャッター通りの商店街にある土地を手放すメリットがあまりにも少ない」からだ。

 目ざとく商機を見つけて動こうとするインセンティブを中小企業から補助金漬けで奪い取っているくせに、一方で「郊外のレジャーランドはもう建てるな」はないものだ。日本の小売業の生産性統計を見ると、90年代まで存在していた旧大店法(500㎡以上の店舗の出店には厳しい規制がかかっていた)が、小売業の生産性向上の最大の阻害要因になっていたことが分かる。だが、大店法が改正されて出店に対する規制は緩和されたものの、変化に取り残された「負け組」プレーヤーへの退出規制が相変わらず厳しかったため、既得権者としての中小商店主が割拠する中心市街地はゴーストタウンになってしまった。

 今市街地活性化のために本当に必要なのは、郊外の出店規制を再び強化することよりも、実は中心市街地にはびこる既得権益を取り除き、市街地での競争を激化させることのほうだと思う。「負け組の退出障壁」を下げないくせに、いくら郊外のプレーヤーを市街地に追い込もうとしても、誰もそんなお誘いには乗らないと思うんだが、どうなんだろね。

 参考:大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本(Passion for the Future)
    [研究]大型店出店規制条例(the other side of ernst)

11:11 午前 ビジネス コメント (9) トラックバック (15)

2005/12/11

LOHASは「サブマリン商標」の成功事例か

 調べてみたら今年のあたまぐらいからひそかに話題にしていたブログとかあったみたいだが、日経が書いちゃったのでもうバレバレですかね。

 三井物産、「ロハス」のブランド管理(NIKKEI.NET)

 「ソトコト」を出してる会社のグループ企業と三井物産とで、「LOHAS」「ロハス」の商標権を独占してビジネス展開するとのこと。こちらのブログのコメント欄を見ると、今年の初め頃にソトコトがイースクエアというコンサル会社から雑誌の特集と引き替えでロハスの商標を譲渡されたらしいとのこと。さんざん自分たちでバズワードを煽っておいて、十分広まったところで「実はそれうちの商標ですが」というわけか。「サブマリン特許」ならぬ「サブマリン商標」とでも呼んだらどうかな、このビジネスモデル。

 関連するブログとか見て回ってたのだが、一番ワロタのが「R25」のブログ。「LOHAS、知らないな~んて言ってるあなた?相当カッコ悪いですよ」って、カッコワルイのは君だ。で、最後のまとめが「少しずつ、自分のため・将来のために 俺のライフスタイルはLOHASを取り入れてる! って言えるようになるのが、モテモテへの近道?」だって。禿藁wwww

 ちなみに取材した人によると、ロハス的企業の代表とされていた米パタゴニアのCEOも、「うちはロハスとは関係ない」と断言。んで、こちらのブログはロハス関連のドメイン、マスコミに報道された新規事業をざっとさらった上で「これはのまネコの二の舞になる」と結論づけてる。

 僕はそこまでは思わないなあ。だって、ロハスってそもそも「ソトコト」自身が煽って広めて、「ロハスクラブ」とかまで作ってムーブメントに仕立てたものでしょ。だったら「ソトコト」がそのコンセプトに乗ってタダで稼ごうとするやつからライセンス料徴収して、当たり前じゃん。もっとも、それでロハスを単なる理想のライフスタイルを目指す言葉だとか信じてそれに対する信仰を表明した方々は思いっきりバカを見た、ということになるわけですが。

 ロハス商法を、「ホワイトバンド」よろしくきれい事言いながら裏でがっぽり儲ける汚い商売だと思うか、それとも「さすが小黒編集長!98年にLOHASが出現してすぐの99年に『ソトコト』発刊するなんて、すごいマーケティング的先見の明!」と感動するか、それは人それぞれだと思う。個人的にはこういうマーケティングはこれからいろいろ増えていくだろうと思うし。

 ま、ソトコトの小黒さんには、ここまでやったらいっそのこと、神戸空港の「ロハスターミナル」から法外なネーミングライセンス料を徴収してもらいたいものだ。そうすればバズワードにただ乗りする公権力からカネをふんだくった最初の成功例としてあがめられるだろうし、国交省や地方自治体の知的財産保護に関する意識も一気に高まることでしょうよ。

 ただ、今カミングアウトすることのデメリットがあるとすれば、タイミングとして早すぎなかったか、ということだろうね。ロハスが特定企業の商標だってことが判明した時点で、マスメディアはたぶんロハスの記事内での使用を禁止すると思うし。別のうまい環境系ライフスタイルを表現するマーケティング用語を誰かが発明して広めてくれるまでは、しばらく不自由な期間が続きそうな気配。

 あと、こちらのブログが2006年1月号の「ソトコト」のイタさっぷりをレポートしてくれているが、この手の「きれい事マーケティング」というのは、最後までその欲の深さという鎧を見せちゃいけないんだね。見せた瞬間に「イタイ奴」扱いされてしまう。ソトコトも「我々はロハスを商標登録することでロハスとは明らかに違う意味でロハスを使って金儲けしようとする団体・個人を牽制するが、それ以外で商標権を使うことはしない」とか表明してれば、もうちょっとイメージは変わったかもしれないけど、「スローライフ」まで商標登録しようとしたり、三井物産と組んじゃったりした時点で終わりかも。

11:46 午前 ビジネス コメント (12) トラックバック (32)

2005/11/30

ファイナンスした人が責任取れば?

 つらつらとウェブを巡回していたら、D通の高広さんが今日をもって辞めますという報告をブログにアップしてるのを発見。藤代さんがまとめた『ブログ・ジャーナリズム~300万人のメディア』の対談で末席を汚させていただいた時に同席してしゃべってみて、「同じぐらいの歳なのに世の中にはすごい人がいるもんだ」と感動したことを思い出した。報告エントリを見ると、「広告業界の明日を考えすぎた」とか書いてある。これもブログで辞めたの一例になるのか?なんつって。次どこに行くのか、激しく気になる。

 それはおいといて、例のマンションの耐震強度偽装の件は、何かこの機会にみんなカミングアウトしちゃえという感じで、収拾がつかなくなってきた感があり。踊る新聞屋氏がブログ界の反応、主要メディアの動向などを総括しているが、まあ実際業界みんなで「オレも、オレも」ってここぞとばかりに暴露しまくりながら、国交省の公的資金税金投入を待ちわびてるんじゃないかね。

(12/17 6:10追記)悪徳不動産屋さんが同じことを書いていた。こっちの方が現実的な手だてかも。勉強になる。

 昔、某大手ゼネコンの債権放棄の記者会見に行ったことがあるが、その時見た社長は、言葉は丁寧なんだけど顔はいかにも「こんだけ政治家のためにいろいろしてやってんだから税金くれて当たり前だろ」みたいなことが書いてあるように見えるほどふてぶてしく、記者連中が「経営責任はどう取るのか」「世間の感覚とはずれていると感じないのか」とかいろいろ詰問しても罵声を浴びせても、顔色一つ変えなかった。建設業界っていうのはこういう鉄面皮な人が偉くなる業界なんだーと、不思議に感心した覚えがある。

 今回の事件に関してはいろいろな意見があるだろうけれど、僕は実際に強度不足を指摘されたマンションの住民の方の書くブログを丹念に読んでいて、この人(gskay氏)が言っていることが一番冷静でかつ的を得ていると思う。正直、この事件を報道するメディアを含め、関心があり、何かを言いたいと思う人たちはそこに書いてあることをきちんと読んでから言うべきだろう。

 gskay氏の論点は非常に明快だ。この問題の本質は、ファイナンスである。建築基準法がどうたらという議論をしている人が多いけれども、それはどうでもいい。行政のさじ加減で法律の細かいところを決めていた時代の名残の法律が、チェック業務自体の民営化に対応した細かい規定などを持たずに規制緩和が走り始めてしまったので云々というのも、よくある話である。

 新しい状況に合わせて法律をまったくのゼロから1本書くならまだしも、古い時代にガラス細工のようにして作られた法律を、状況の構造的な変化に合わせて書き直すというのは、たぶん4~5人の官僚の気を狂わせて死に追いやるほど大変な作業だろう。それができてなかったというのも、国交省の官僚を責めたてる口実にはなろうが、だからといって目の前の問題を解決する手だてにはならない。

 規制緩和、民営化というのは、何もかもが行政の仕事ですねと役所に帳尻を持っていき、誰かがミスしたら税金を払えと喚き、行政はミスをあげつらわれないために際限なく人を増やし手続きを煩雑化し、最後にはほとんど誰も通れないような迷宮のごとき手続きのトンネルに何百人もの役人が通ろうとする人間を突っつき回すためだけに張り付いているという事態を改善するために行われる施策である。

 いや、今回の建築確認の民間開放が間違いでござんした、やっぱり役所でやった方が正確、効率、無謬でござんす、という手のひらを返したような結論を立法府が出すのならそれはそれで仕方ないなと思うけれども、だいたい今回申請をチェックしていた人って全員自治体からの天下りノンキャリだったんでしょ?仕事を役所に戻しても彼らがまた机を民間企業から役所に移すだけだと思うよ?それで何が変わるの?という気がする。

 一度民間に任せたことは、とにかく最後まで民間でやらせればいい。ただし、いくつか原則をはっきりさせておくべきだと思う。一つは、こういう時に一番立場が弱い、だからツケを回されやすい「個人」には、消費者保護の観点からツケを回さないということ。

 gskay氏が書いているように、問題の本質は「違法な建築のはずの建物が、基準に合致していると判を押され、それを正しいと思って金融機関が購入者たる住民に住宅ローンを融資、つまり信用を供与した」ことなのである。ここでもし違法な建築であるということが分かっていれば、カネのやり取りはヒューザーと建設会社や設計士の間、つまり業者同士だけで終わっていたはずなのだ。建築確認が通ったということが、金融機関にファイナンスを可能にさせ、住民がそれを買うことを可能にした。つまり被害を一般人にまで広げた。

 であれば、まず国交省と金融庁は「債務者が預かり知らないところで作られた違法建築に対して供与された住宅ローンは、本来債務者に返済義務はない」として、金融機関にまず責めを負わせればいいと思う。銀行と住宅公庫は、もちろんそれでは収まらないだろう。違法建築を建てた責任は誰かということを、銀行と住宅公庫が売り主、設計事務所、建築確認した会社を相手取った裁判で争って明らかにすればいい。

 どうせ建設業界のことだから、この手の話は関係者全員が少しずつ薄々は気づいていて、でもあうんの呼吸でやっているものだからおおっぴらにすると誰も責任を取れない、取らない仕組みになっているはずだ。売り主は「値段を下げてくれと建設会社に頼んだだけだ」と言うだろうし、建設屋は「鉄筋の値段が最近上がってるんだよね、と設計士に愚痴っただけだ」と言うだろう。姉歯氏は既に「資材を極限まで少なくしてくれという圧力はあったが、たぶん建築確認のところで撥ねられるだろうと思った」とか心にもないことを言ってるみたいだし、確認屋は「偽装は簡単には見つけられなかった」と言い張る。

 ここは、各人の言い分を聞いていてもしょうがないので、とにかく新しいルールを入れるしかない。金融市場のルールに倣う、つまり「与信のもととなるエビデンスにゴーサインを出した奴が責任とれ」、ということにするしかない。企業のファイナンスであれば、与信の論拠となる財務諸表にはんこを押した会計士が責任を取れということになっている。

 今回も、銀行は裁判所の指示に従いつつ、取りっぱぐれた住宅ローンの回収のたしになるように、イーホームズを身ぐるみ剥がして持っていけば良い。業界トップの日本ERIでさえ総資産が26億しかないような、吹けば飛ぶようなベンチャーのようだから、大したカネは回収できないだろうが、まあ損失の1割ぐらいにはなるかもしれん。

 そして、銀行はこれに懲りたら次からはまともな審査と補償能力がある企業に建築確認を頼む、あるいは銀行のグループ内にそういう審査機能を持った子会社を作ってそこで確認業務を請け負うことにすれば良いのだ。ファイナンスとは、そういうものである。リスクを行政におっかぶせておけば安心という時代は終わったのだよ、と銀行に分からせればいいのだ。業界全体で150億程度の授業料、安いものである。

 逆にこういう処理ができず、今回も公的資金を投入とか意味不明のスキームで決着するようだとしたら、日本の規制緩和なんて全部嘘だ。ノンキャリの天下り先を守るためにイーホームズを潰さない、なんていう結論が出るようじゃあ、結局行政が最後の帳尻合わせの役を負わされて、何かあると税金投入をせざるを得なくなるに違いないと誰もが(特にファイナンスの世界の人間が)思いこむ。そうすれば未来永劫、日本にまともな建築を作ろうと思う人はいなくなるだろう。だってまともじゃない建築を作っても、税金がケツ拭いてくれるんだから。ばれるまでは適当にやって蓄財しておけばいいや、ぐらいにしか思えなくなって当然である。

 そして、日本の最大の問題は、こういう事件が起こったときに真っ先に個人の一般消費者を保護するというルールが、そもそもないことだ。ブログ界隈でも出ていたが「ヤバイマンションを買ったのはお前が間取り図を読んで構造がおかしいと気づかなかったからだろう」的な議論がすぐに出てくる。これは、絶対におかしい。消費者というのは、そのことに気がつく奴もいるかも知れないが、気がつかないレベルだから「消費者」なのである。構造というのは、表からは見えないものだ。それに気がつくのがマンション購入の前提というのでは、個人を法人事業者と対等にみなしているということにほかならない。そんなの、あり得ないじゃん。でも、日本ってこれを「あり得ない」と思う人がほとんどいないんだなあ。残念ながら。一応民法とかにはそう書いてあるんだけど。

 というわけで、個人的にちょっと思うことがあるので、これからぼちぼち自分の家の購入の経験談でも書いていこうかと思う。

(追記)エロサイトからのTBスパムがすごいので、いったんTB受付を止めます。夜にまた復活させますので、しばらくお待ちを。

(16:10追記)トップにダミーエントリを立てることでTBスパム回避できるかどうか試すことにしました。TB受け付け再開します。ライブドアニュースのこのページからの流入でアクセスPVがすごいことになってます。そして検索キーワードでは「ローストビーフ」が初の1位(笑)。ブログ始まって以来の1日2万PVいくかもしれん。

(12/1 0:10追記 TBスパムは撃退できたが、散人先生から「ライブドアニュースのトップに張り付くエントリを書く偽証系PV乞食ブログ」とか罵倒されたので、ライブドアニュースの都合なんざ知るかボケと思いつつトップのダミーエントリを削除。これでアダルトTBスパムがまた集まるようならもう知らん。ニフティ撤収してはてなでも行くか。)

06:05 午前 ビジネス コメント (83) トラックバック (53)

2005/11/11

見慣れない場所のビジネス

 もう最近カモシカのように寝ても覚めても働きまくっている。なんでカモシカかはよく分からないけど。昨日も一日引き篭もってデスクワークと決めていたのに諸々こなしていたら結局やろうと決めた仕事の半分も終えられなかった。ヤバイ死ぬ。

 でそんな中、オアシスのような「naoyaのダイアリー」の名エントリに噛みついてみる企画。

 最近つくづく思ったのは、ビジネスとゆうのは結局人が簡単に行き来できないところの両側を橋渡しすることなのだなとゆうことだ。当たり前の話なのだがその「簡単に行き来できない」とゆうのは空間的な要素であったり時間的な要素であったり、あるいははたまた技術や心理的な壁だったりする。で、普通の人が越えられないその壁をうまく越えていける道を発見した人は、儲かりますよと。

 重要なのは、その道を発見しただけであったり、あるいは壁を越えて向こう側に行ってしまったきり戻ってこなくなったりしては、そもそもビジネスにならんということだ。壁を越えられた人間は得てして「自分は壁を越えられた」と悦に入ってしまうものだが、悦に入ったところで誰も知ったこっちゃない。

 聞けば「そんなことは当たり前だ」と思うだろうが、これが実際に自分がそうゆう立場に立ってみると、ほとんどの人が悦に入るか、「あっち側に残っている人にはこっちのことは分かってもらえない」とか得意げに憂えてみたりするだけなのだ。いやもう、ほとんどたいていそうである。世の中の人はみんな、君が壁を越えたかどうか、いやそれ以前に自分が壁を越えられるかどうかにさえ、これっぽっちも関心ありませんから!

 壁を越えたいと自覚的に思っているのは君の友だちか取り巻きかそれとも能力がなくてあるいはパージされてヒマになって悪事を成そうとか余計なことを考えたりしている小人、つまりニート、つまり2ちゃんねらだけである。それ以外の人にとっては壁の向こう側にどんな知的刺激があるか、どんな素晴らしい新世界があるかなんて激しくどうでもいい。それよりは毎日こっちの世界で粛々と社畜として食い扶持を稼いであるいはサッカーチームを応援してあるいは食ったものを日々排泄して暮らしていくのに精一杯なのである。壁の向こう側なんて暇人か能力がなくてパージされたやつがたまたまひねり出した妄想の世界だろうぐらいにしか思っていないし実際のところそれは半分ぐらい事実であったりする。

 ビジネスとゆうのはそうゆう人たちにいかに壁を越えることが食い扶持を増やすことや仕事を楽することやサッカーチームの応援以上にわくわくすることや健康的にたくさん食って排泄できることであるかを耳元でささやき、足を1歩伸ばしただけで彼らがナチュラルにスムーズに無意識にまるであたかもずっと昔から自分はそれを当然と思っていたかのように壁をするっと越えさせるようにし向けること、そしてその瞬間にどこかで「ちゃりん」とお金が落ちる音が聞こえてくるような仕組みを設計するところまでのことを言うのである。

 向こう側に行くことが本当のことを知ることであるかあるいは本当に楽しくて面白いことであるか、そんなことは正直どうでもいい。しょせん世の中に「本当のこと」などどこにもないのだし単にこちらの世界にはでっかいぴかぴか光るガラス板だとか灰色の木くずと油の束とかが存在していてそれらが「これが本当だ」とか世の中の人間みんなに向かって日々刻々ささやいているので何となく誰もがそれを本当のことだと信じているだけのことである。

 一方あちらの世界にはそういうぴかぴかしたものが存在しないから真っ暗闇の中で隣にいる人と手を握り合って「君だけは嘘をつかないよね」とか言いながら前に歩いていかなければならないので隣にいる人のしゃべっていることが本当に思えるだけのことである。まあ実際そこで嘘をつくと手をつないでいる人間が両方とも崖から落っこちてしまうので嘘をつかないとゆうだけのことなのだが中には大嘘こきながら手をつないでる人間を全員ありもしない方向に引っ張っていってそこで楽しくキャンプファイヤーとかやったりする人もいて、まあそれも楽しくわいわいやりながら生きていられるとゆう意味では嘘ではないのかもしれないとゆう程度の確からしさしかない。

 要するにいつも目の前にある食い扶持とガラス板や木くずの言うことを信じるだけで生きているという実感を持てるのか、それとも暗闇の中で隣の人と手をつないでいることが生きている実感だと思う人なのかによって生きる場所が違いますねとゆうだけの話であって、どちらが勇気があるとかトンマであるとかゆうようなものでもない。単に人間いろいろ人生いろいろ、価値観の違いの問題だけである。

 ビジネスとゆうのは、その両方を行き来して、たとえばこっち側に居残っている人たちには「世にも奇妙で珍しくわくわくしてためになる話を聞かせてあげますよ」とか言いながら暗闇の中で隣の人から聞こえてきたひそひそ話を適当に面白おかしく脚色して金を取って聞かせ、一方暗闇の世界ではその金を見せびらかしながら「ほらほら、ここでの面白い話をオレに聞かせてくれたらあっち側の世界のローソクが買える金をあげるよ」とか言って適当にキャンプファイヤーでもやりながら人を集めて次の商売のネタを仕入れるとゆう、そうゆうことを言うのである。

 考えてみると簡単なことのように思えるが、これを着実にかつ大規模にやってうまく自分の回りに「ちゃりん」とお金が落ちてくる仕組みを作れる人とゆうのは本当に少ない。日本で言うと孫正義とか。そう考えるとやっぱり孫さんとゆうのは本当にすごい人だ。なんかちっともオチになってないが今ちょうどカモシカ並みの思考力しか残ってないからなのでこれにておしまい。

11:23 午前 ビジネス コメント (6) トラックバック (10)

2005/10/30

楽天は本当にAppleに対抗しようと考えたのか?

 湯川氏の「ネットは新聞を」ブログで、「楽天はTBS買収から撤退せざるを得ないだろう」という予測が開陳されている。面白いのは、そもそもライブドアが試みて失敗したテレビ局の買収に楽天があえてまた乗り出した理由を、世間でよく言われる「株価を上げ続けなければならないから」ではなく、「アップルに対する対抗軸をコンテンツ企業の買収で作りたかったから」と見ている点だ。

 ここで湯川氏を批判するのは簡単なことだ。だが、この仮説はとても面白い示唆を含んでいるように思うので、それに関連して少し考えをめぐらせてみたい。

 以前に書いた「Video iPodに勝つためには何をすればいいか。」のエントリで、僕はiPodのビジネスに勝つためには、まず映像配信のプラットフォーム(ソフトウェア)を作って、安いハード(プレーヤー)と一緒にばらまいてしまうことだ、と書いた。コメント欄でも指摘されているように、現時点でのAppleの収益源はiTunesでの楽曲売り上げではなく、iPodというハードの販売利益だ。これはつまり、Appleのビジネスモデルが、まだ発展途上であることを示している。

 どういう意味か?デジタルの世界で利益を出せるビジネスの規模というのは、商材によって違うということだ。一番規模が小さくても(数百~数千ユーザー)利益が出るのは、ソフトウエアの販売である。そこそこ面白い、使えるソフトをCDに焼いてパッケージにすれば書籍や雑誌とほぼ同じ流通チャネルで販売できるし、オンラインでのダウンロード販売やシェアウェア方式にすればもっと手間もかからない。しかし、Appleはここを「タダで配る」ことで、収益化を諦めた。

 その代わり、彼らが狙ったのはその上のレイヤー、「ハードウェア」である。ここは最低でも10万ユーザーぐらいの規模がないと、利益が出ない。その代わり、デザインや機能といった分かりやすいチャームポイントを人々に見せることが可能であり、うまくやれば実際のユーザー数以上に世の中に宣伝効果を及ぼすことができる。この宣伝効果をうまく下のレイヤーで「規模」化して回収できれば、十分な相乗効果は得られるはず。これが彼らの読みだったろう。

 その上の3つめのレイヤー、「コンテンツ」は、もっとも商売の難しいところである。商品を作るのはクリエイターであり、企業が投資をすればすぐに自分で人気作品を作れるわけではない。ゲーム業界はクリエイターの人件費が非常に低廉だったこともあり、ハードウェアメーカーは自らのハードの利益を多少犠牲にしてでもコンテンツに猛烈な投資をして、優良なコンテンツを囲い込む戦略を取った。

 これに対し、AppleがiPodで扱おうとしたコンテンツは「音楽」という、クリエイターのコストが非常に高く、また現在のコンテンツではなく過去のコンテンツ資産が圧倒的な市場価値を持つ世界である。これは1社でコンテンツの囲い込みを画策しても、どうにもならない。そこで彼らは、ここの利益はほぼ全部コンテンツホルダーに還元することにして、儲けることを諦めた。

 真ん中のレイヤー「ハードウェア」で利益回収とブランディングを行い、その下のレイヤー「ソフトウェア」で規模を稼ぎ、上のレイヤー「コンテンツ」で他人のふんどしを借りる。こうして、音楽業界におけるiPodのビジネスモデルができあがった。

 では、映像ではどうだろうか。ソフト、ハードまでは上記に同じであろう。問題はコンテンツだ。「映画」では音楽と同様、過去のコンテンツ資産が大きな価値を持つが、「テレビ」あるいはそれ以下の視聴時間の映像コンテンツは、過去の作品が市場で幅を利かせているわけではない。つまりここではコンテンツ「ホルダー」を囲い込む必要はないということだ。

 では、クリエイターはどうだろう。テレビ局所属のクリエイター(プロデューサー、ディレクター、アナウンサーなど)は確かに高給だが、下請け制作会社やアニメ業界のクリエイターは途上国並みの薄給で働かされている。その生産するコンテンツのクオリティに大した差があるわけでもない。とすれば、下のレイヤーでのプラットフォームさえ作ってしまえば、コンテンツは過去資産のホルダーを囲い込むのではなく、制作力のあるクリエイターを一本釣りで囲い込み、作品を作らせるほうがずっとビジネス上のインパクトが高いことになる。

 幸い、昔は視聴に耐えうる映像作品を作るためには、高額な機材をたくさんそろえなければならなかったが、今はデジタル化の進展で、ビデオ撮影も編集もコツさえきちんと知っていれば素人でも揃えられる程度の機材で十分なクオリティが出せる。大事なのはコツを知っている人をかき集めて囲い込むことのほうだ。

 さて、話を元に戻して、楽天である。湯川氏は、「三木谷社長には焦りがあったのだろう」と言う。僕もそれには同感だ。彼は焦っている。でなけりゃ、あんなことするわけがない。

 しかし、焦りの内容は湯川氏の読みとは違う。もし本当にAppleに対抗する気があるのなら、何らかのかたちでAppleに対抗できるだけのプラットフォーム開発に着手する一方、良質な映像制作のクリエイターをかき集めようとするだろう。幸い、日本ではまだiPodそのものを持っている人はそんなに多くない。ハードが自分で作れないなら、ソニーかドコモと組むとか、あるいはケンウッドあたりにTOBをかけても良かったはずだ。

 しかしそうではなく、虎の子の1000億円をTBSに投じたのはなぜか?その理由をおなじみ、松本のコーヒー屋氏や、kenjimori.comが分析してくれている。要するに、もう楽天の「ショッピングモール」というビジネスは、寿命間近なのである。映像ビジネスに種をまいてそれが芽を出し育つまで、待ってられないのだ。そのことを三木谷氏本人が一番よく知っているのである。

 かつてネット・ショッピングには、信用できる決済システムと店舗へのトラフィック確保にネックがあると言われていた。楽天はそこに注目し、決済インフラの確立、そして「ネット店舗なら何でも楽天にある」と言わしめるほどの店数を揃え、「ネットショッピングならまず楽天」と消費者に連想させ、お客のトラフィックを確保することに多大な努力をかけた結果、大いに成長した。

 だが、ネットでの物品購買が当たり前になり、決済インフラの信用性もほとんどボトルネックにならなくなった。またトラフィックはGoogleを初めとする検索エンジンからが中心になり、SEOや検索連動広告を出せば単独でネット上で店を出しても十分トラフィックを確保できるようになった。そうすると、楽天に顧客リストを握られている既存店舗はともかく、新規に出店する業者が楽天の利用を検討する必然性はまったくない。ここが、オークションという「システム」そのもので顧客をロックインしてしまったヤフーと楽天の、大きく異なる点である。

 結局、楽天は今持っている信用とキャッシュを、何かすぐに価値となるものに変えておかないと、2~3年後には会社そのものが存亡の危機に瀕するという危機感を隠せないのだろうと僕は思う。TBSを、村上氏の言うように「含み益を大量に含んだ不動産の塊」と見るか、三木谷氏のように「売れるコンテンツとその制作力を持つクリエイターの集まり」と見るかは人それぞれだろうが、いずれにせよ今手元にある1000億円のキャッシュを、5000億円近くある有利子負債の返済に回せるエクイティー調達にふさわしい事業に何とか変えないとと考えている点では、大した差はないのではないかと思う。

 三木谷氏はずっと以前、「コンテンツなんて、あんなもの自分で作っちゃダメですよ。世の中にいくらだって転がっているのだから」と周囲に語っていたこともあり、もし彼がTBS買収でコンテンツ囲い込みを狙ったのだとしたら、そもそも彼は楽天創業以来の自分のビジョンを変えたことになる。人間、誰しも焦ると判断を間違えるものだ。利益を出したければ、まずは利益を考えずに顧客のことを考えなければならない。短期的な成果を出したければ、まず長期を見なければならない。経営というのは難しいものである。

11:21 午前 ビジネス コメント (12) トラックバック (22)

2005/09/27

ありがちな「PDA2.0」論

 「ややこしや~、ややこしや~、誰が敵やら味方はどこやら」。PalmがMicrosoftのOSを搭載した携帯電話端末をVerizon Wirelessから発売するそうな。おお、ぱーむよ。まっくろそふとになびいてしまうとは、なさけない。

 米マイクロソフトとパームが携帯電話事業で提携(NIKKEI.NET)

 リストラしても残った社員は養わなきゃいけないし、PalmOS6は使えないと分かっていても携帯電話は作らなきゃいけないしということで、やむを得ない決断ではあるのでしょうが。しかしお前ら、プライドってものがないのか。ないですかそうですか。

 しかし逆に言うと、次世代PDAのあるべき姿的なものがこの1年ぐらいでものすごくはっきりしてきたので、Palmにとってもここで動かないでいつ動く!ぐらいの感覚なのかも知れない。

 次世代PDA(PDA2.0)とは、これまで言われてきた携帯電話コアなものと、iPodのようなソリッドオーディオコアなもの、このどちらかだろう。前者の最右翼はDocomo、Blackberryあたり。そして後者はもちろんApple。

 もちろん1つの端末に両方の機能を持たせることは可能だろうが、どうも個人的な感覚から言うと、この2つは端末として分かれていた方がいい気がする。

 通信端末というのは、メールだの電話だのがいつ飛んでくるか分からず、飛んでくれば今やっている作業を中断せざるを得ない。端末を使っている時間が100%自分の自由にならないもの、という印象があるし、他人との連絡手段だからバッテリーが切れたりしたらマジで困る(その瞬間に自分がビジネス空間に存在しないものになってしまう)。

 一方、ソリッドオーディオプレーヤーというのは、やはり100%自分の自由になるものだ。バッテリーが持つ限り、映像やマルチメディアも他人に割り込まれることなく楽しみたい。この2つを1つの端末の中に同居させるというのは、今から考えると結構無理があったのではないかと思う(だから、モトローラの出したiTunes入り携帯電話なんて、全然欲しいと思わない)。

 あとは、PIM的な機能をどちらの端末に潜り込ませて使うかということに尽きるだろう。ワイヤレスでサーバーと直接同期させたいのなら携帯電話端末と一緒にすればいいし、端末独立でPIM機能を使いたい、あるいは自分のPCと同期させておけば十分というインディペンデントな人であればソリッドオーディオプレーヤーに組み込むのが自然ということになる。つまり、大企業などの法人向けには前者が売れそうだけど、個人事業主やライフスタイルを会社に縛られたくない人なら後者を買う、ということになるんじゃないかな。

 そういう意味では、Microsoft+Palm+Verizonという組み合わせは、ユーザーとしては前者を狙ったものだろうし、企業としてとてもまっとうな判断だ。でもMicrosoftには、自分で携帯電話やオーディオプレーヤー作るっていうのがどれだけリスクがでかいか分かってるから、絶対にやらない。ゆえに水平分業が進んでいる携帯電話分野では橋頭堡を築けるかもしれないけど、垂直統合が有利なオーディオプレーヤー分野ではたぶんAppleに追随することすらできないだろうね。

 個人的には、もう前者のパターンにあまり期待はしてない(実際にやろうとなると、企業側の社内システムのところがボトルネックになりすぎるので)。端末やクライアントソフトの進歩に比べて、企業内システムの進歩が遅すぎるのだ。だから全然つまらない。

 後者のパターンが、やはりこれからのPDA2.0の成長を牽引すると思う。Appleは下手にiTunesを携帯電話なんかと一緒にしようとせずに、どんどん独自のiPodワールドを極めてほしいと思う。

11:32 午前 ビジネス コメント (3) トラックバック (2)

2005/09/24

ストリンガーさん、終わったかも…

ハワード・ストリンガー・ソニー会長

 言ってることはまったくの正論だと思うが、それをマスコミ向けに(しかも外国メディアに)ぶっちゃけちゃったところがアウトかも。彼にはやっぱり日本のメンツ文化は分からなかったってことなんかな。

 ソニー会長、英紙に不満表明・「事業整理の熱意ない」(NIKKEI.NET)

 ハワード・ストリンガー氏が、フィナンシャル・タイムズの記者に向かって「(ソニーの一部役員はいかなる人員削減にも徹底的に抵抗した。)日本社会は米国社会よりも人道的だ」と吐き捨てた、という話。海外の会社はどうか知らんけど、日本の会社でそれやったらおしまいでしょ。

 22日に出たソニーの再建策発表については、コメントしようかと思っていたけどあちこちで的確な読みが書かれていた(たとえば麻倉怜二氏のこちらの記事などが一番コンパクトでかつポイントを突いてるのでオススメ)んで、今さらコメントするまでもないやと思っていたが、少し気になっていたのは会長のストリンガー氏が無能だったのか、それともストリンガー氏はともかくソニーの役員会が無能だったのか、どっちなんだろということだった。

 FT紙へのこのコメントが、問題点を如実に物語っている。つまり、ストリンガー会長は「ソニーに助けてくれと頼まれたんだから当然身を切るリストラの覚悟はできてるんだと思っていた」、一方の役員会は「助けてくれとは頼んだけど悪いのはオレじゃなくて隣の奴なんだよね」って口々に言い張ってるって状況だったと。もうね、アホかとバカかと。

 アホのレベルで言うと役員会の方が上なわけだが、ただストリンガー会長がアホじゃないかというとそうとも言えないように思う。傾きかけた会社なんて多かれ少なかれ縄張り争いと既得権益死守の両方で幹部同士がいがみ合ってるんだから、そのぐちゃぐちゃのどこを「象徴」のボタンとして最初に押すかというのを、慎重に見極めてやらなきゃダメ。

 例えば、カルロス・ゴーン社長がやった日産のリバイバルプランでは、それは「中堅社員を中心にした横串組織(=クロス・ファンクショナル・チーム)を作る」、つまり組織の目標(コミットメント)設定とその施策の責任を両方とも現場レベルに落とすことだった。これは、逆に言えば日産という会社がそれまで事業の目標設定とその施策とがかみ合ってなかったのが最大の問題だ、と彼が認識したからだ。事業部門の区切り方や生産・販売の役割分担については、問題はなかったか、あったとしても後回しだと思ったのだろう。

 一方、中村邦夫社長がやった松下電器の「創生21」改革では、最初に手を付けたのが「事業部制の解体」と、事業領域ごとの戦略決定権を本社、子会社も合わせて括り直した「ドメイン会社に集中する」ことだった。これは、商品単位に細かく分かれた松下独特の事業部が、顧客から見たときの事業領域(ドメイン)ごとの戦略的統一感を著しく損なっているというのが、最大の問題であると彼が認識したからだ。松下が1万人以上の人員削減を発表したのは、「創生21」スタートから確か1年近く経過してからである。

 これに対して、ソニーはどうだろう。麻倉氏の分析を待つまでもなく、ソニーのどこが最も大きな問題なのか、それに対してどうメスを入れるのがいいと思うのかが、今回の経営方針発表からはまったく読みとれない。まさに「緊急避難」的な発表に過ぎない。

 NIKKEI.NETでFTのインタビューの断片を見る限り、ソニーの組織を変革する「象徴」となるキーレバーがどこにあるとストリンガー会長が考えていたのかは分からない。「職場のモラルが低く」て「人員削減に反発が大きかった」からリストラができなかったというのは、かつての富士通の秋草会長の「社員が働かないからダメなんだ」発言にも似た香ばしさが漂う。

 あくまで外部の、社内事情を知らない個人の感覚で言うと、ソニーって組織がわかりにくすぎると思う。いろいろな事業領域の境界線上にあるような微妙な商品が多すぎて、いったいどのカンパニーが何をカバーしているのか全然わからん。しかも商品企画は本社でカンパニーごとに分かれているように見えるが、生産部門はソニーEMCSだし、国内販売はSMOJだし、カンパニーごとに生産や販売のリソースを取り合っていて、結局生産部門のトップを占める派閥のカンパニーが生産ラインを優先的に確保できるとか、わけのわからんことになってる。これじゃまともに市場を見据えて戦略的な商品企画を作って出していくことなどできない。

 いっそのことEMCSとかSMOJを解散して、もう一度開発・生産から販売まで、事業領域カンパニーごとの縦割りに戻したらどうだろう。どっちにしたって、半導体のCELLとか以外は、事業領域をまたいで戦略的に使っていかなきゃいけないインフラ的なパーツなど、何も持ってないんでしょ?メモリスティックからだってほとんど撤退モードだし。よく考えたら、これだけの企業規模でまとまって投資の選択・集中の判断する必要なんかないじゃん。

 で、ソニーとして出しても良い製品かどうかのブランディングの判断だけ、統括持ち株会社の中に「ブランド管理室」を置いてそこで決めるってことにすれば?そうしたら、さすがにSonyブランド付けてトイレの便座カバーを売り出す奴だけは止められるだろうしさ。どうしても絶対儲かると思ってトイレの便座カバー売りたいやつは、自分で勝手にSony以外のブランド作って付けろと。それで十分のような気がする。

 …てなことを考えていたりしたのだが、どうもそういうキーレバーを見つけて何とかしようともしなかったストリンガー会長は、最初の1歩目でけつまずいたような気がしてしょうがない。人員削減がどうとかじゃなくて、社外に向けて社内の悪口を言っちゃうことが、日本でどれだけ社内から恨みを買うかということを、彼はやっぱり分かってなかったんでしょう。たぶんこのあと彼が何を言っても、誰も言うことは聞かんわね、残念ながら。

 2000年に入ってから僕はずっと「ソニーはヤバイ。このままだと本当にボロボロになるよあの会社」って言い続けてきたのだけれど、回りは誰も信じてくれなかった。みんな「ソニーはなんだかんだ言って底力のある会社だから」というのが先輩たちのロジックだった。んなわけないじゃん。あの会社がいったい何人「顧問」を抱えてるか、知ってるんか?すごい数だぞ。トップのポジションの時に何もせずに部下の提案握りつぶして定年迎えたような唐変木でも、全部「顧問」処遇で飼ってるんだぞ。あんな昔の阪神みたいな会社、「底力」いくらあっても足りねえっつーの。

 今回のリストラの前に「SFH売却」ってニュースを聞いたとき、ほんのちょっとだけ期待したんだけどなあ。金融をやりたいって言ったのは確か盛田昭夫だったはず。創業者のしがらみを切り捨てて「聖域はない」って示せるなら、まだ可能性があるかと思ったんだが、やっぱりダメだった。ハズシ覚悟で予言しておくと、次はストリンガーのクビを切って誰をトップに据えるかに焦点が移るんじゃないかな。出井復活とかいう悪夢もありげ。

 行きがかり上、次のトップは日本人じゃなくちゃ務まらないだろうが、しかしこんな会社任せられる人なんて今の日本にいるんだろうか。日経がソニーを褒めそやすのをあと3年早く止めていたら、産業再生機構に放り込めたかもしれないのに。もう手遅れザマスよ。トホホ。

04:53 午後 ビジネス コメント (18) トラックバック (13)

2005/09/22

大学ビジネスのポジショニング

 例のコピペレポートの話題で知った「大学教員の日常・非日常」というブログが、大学論を語る時には自分がどの領域の大学について語っているのかを明示すべきという提起をしている。

 大学の区分け(大学教員の日常・非日常)

 マーケティング的に言うなら、市場にある商品群をいくつかのタイプに分類して比較することをポジショニングという。上記のブログ筆者のフラスコ氏は、大学論が論じる対象を「理系←→文系」「一流←→二流以下」という2つの軸でポジショニングすることを提案している。

 一見、非常に分かりやすい軸のように見えるが、よくよく考えてみるとこれってどうよ?という気がしてくる。もちろん、理系と文系で教授の求められる成果の内容とか研究のための費用、研究室の学生に与える課題もかなり違うということは分かる。だが、理系と文系を切り分けて議論しようとすることで、何が新たに発見できるというのだろう?

 表面的な現象形態による分類は、表面的な打ち手の差にしか表れない。こういうポジショニングをするとき、マーケターはやはりその分け方そのものからからもっと深い何かを読みとりたくなってしまうものだ。

 また、「一流大学←→二流以下の大学」という分け方も微妙に主観的だ。一流大学の定義を「優秀で学習意欲の高い学生が集まり(入試の)倍率も上がっている」としているが、これって全然定義になってないと思う。

 まず代ゼミや旺文社などの発表している毎年の大学の入試倍率と偏差値を見比べてみればすぐにでも分かることだが、入試の倍率と大学の知的水準やブランド価値とは、何の相関もない。東大より亜細亜大や立教大の方が実質倍率の高い学部なんていくらでもある。

 あえて言えば、倍率が1以上とそれ未満(つまり実質無試験)の場合には偏差値と多少相関があるかも知れないが、学生の学習意欲に至ってはもっと何の相関もないだろう。トップ私大にいて勉強する気のないやつなんていくらだっているし、マイナーな小規模校だって学生に学ぶ意欲を持たせるのに成功しているところはある。つまり、学生の学習意欲を入試という入り口のせいにすること自体が、ある意味ですごく旧弊にとらわれた考え方と言えなくもない。

 人の考えたアイデアにあれこれケチつけてこき下ろすくらいなら、てめーのアイデア聞かせろや、という声がそろそろ飛んできそうなので、僕なりの大学ビジネスのポジショニングを考えてみたい。

大学ビジネスのポジショニング・マップ

 僕が考える「大学ビジネス」のポジショニングとは、上のようなものだ。

 「入口ブランド」「出口ブランド」とは、大学が卒業生の品質をどこの段階で担保しようとしているかを指す。例えば東大は「東大に合格した」ことが今も昔も最大のブランド価値であり、誰しもが「東大生」というのは入試に合格した人のことを指す、と考えている。たとえホリエモンが一見どんな素行不良のワルだったとしも、東大中退という彼の履歴は、彼が「常人とは頭の出来が違う奴」であるというシグナルを発する。

 一方、「出口ブランド」とは、卒業資格を持ってなければ何の意味もない大学のことだ。アメリカの大学はたいていの場合そうだ。アイビーリーグクラスともなると入学したことも多少のブランドにはなるのかも知れないが、そもそも卒業資格を持っていないと加われない「OB人脈」というのもある。従来の日本にこの手の大学はほとんどなかったが、最近は卒業する=国家資格を取ることであり、資格がなければ何の意味もないという「職業大学院」などが出てきつつあるので、少しずつそういうところが増えるだろう。

 一方、横軸は文字通り、その大学が研究に重きを置くのか、教育に重きを置くのかという、ブランド作りウェイトの位置である。こうしてみると、例えば東大とは、卒業生の品質は「入口」で担保しつつ、大学としては「研究」水準の高さを売りにするという、Bのポジションにあったことが分かる。

 一方、フラスコ氏が言う、日本に数多くある「教育に力を入れないと卒業生の能力が保証できなくなってブランドがやばくなりそうな入試定員割れ寸前の二流大学」というのは、Cのポジションにあると言えるだろう。そう日本の大学というのは、これまで東大を先頭として、B←→Cという対角線上のどこなのかという序列を形成していたのである。「入試の倍率がその大学の研究水準と一流/二流の物差しとなる」というフラスコ氏の考えは、B-Cの対角線上のフレームから一歩も出ていない。

 だが、先ほども言ったように、入試の倍率とはそもそも、研究業績や学生の学習意欲とは相関がない。なぜなら、入試にどれだけ人を集めて、どれだけ合格させるかというのは、大学のブランドイメージ以外のレバーでいろいろ操作可能だからだ。

 一番簡単なのは、受験料や授業料を上げたり下げたりすることである。下げすぎて経営が成り立つかどうかという問題は別にあるものの、本当に定員の何十倍もの受験者を集めたければ、受験料も授業料もタダにして、広告を打ちまくればいいのである。その代わり、卒業までに猛烈なカリキュラムを課して本当に能力があると認めた人しか卒業させないようにすれば、(何度も言うが、経営が成り立つかどうかはともかくとして)圧倒的な「出口ブランド」の大学ができるだろう。

 そんな暴論を、それでは経営が成り立たない、という反論が出るだろう。まったく仰せの通り。Cの部分は、よほどしっかりした教育システムと、集まってくる学生の質を入試を行わずにふるいにかけ、期待値をそろえる巧みな「ディ・マーケティング」の技術がないと、手間とコストばかりかかって成果の出ない教育機関になってしまうと思う。

 研究水準で高いブランドを持つ大学ほど、Bのポジションに行きたがる。何となれば、ここが一番収益性が高いからだ。なにせ、入試でがっぽり受験料を取り、入学した後は適当なマスプロ授業に押し込んで高等教育といううなぎの香りだけ嗅がせ、ところ天方式に学生を押し出していればいいからである。その代表が東大を筆頭とする日本の既存のエスタブリッシュの大学だった。

 でも世界的に見れば、そんなレベルで儲かったなどと言って喜んでいるバカは日本の大学ぐらいのものである。海外の大学で世界ランキングに入ってくるようなところは、みんな学生がどんな研究成果を上げたかをしっかり見て卒業資格を与えている。その目利きの力と、超優秀な学生はすぐにでも師匠を飛び越えて教授になり、卒業生はそのネットワークを駆使して学外で活躍するという実力主義とが、大学のブランドを決めるのである。つまり、本来大学が最終的に目指すべきはDのポジションだ。

 では、Aのポジションとはどういう大学だろう。個人的な考えだが、教育熱心さをもって入口のブランドを構築するという戦略は、ダイレクトにはあり得ないのではないかと思う。これは、日本が高等教育の内容に対する格付け評価などのインフラが全然整ってないことも大きな理由だが、購入してみなければ分からないサービスの品質の高さをもって、試験で振り落とさなければならないほどの希望者を集めるというのは、よほど特殊な教育方法を持っている学校でない限り不可能ではないかと思う。

 最近、一部の既存大学が設立する職業大学院(法科、会計など)が、大した教育メソッドもないくせに資格が取れることをエサに学生を釣って、受験料で儲けようとたくらんでいるようだが、はっきり言っておこう。Aのポジションは絶対に無理。成り立たない。まずは地道にCのポジションで教育メソッドを磨くべきだ。どちらにしろ、少子化がどんどん進むこれからの日本で、入口ブランドで大学の価値を訴求する戦略など、旧帝大やそれと並ぶ私立大レベルのブランド資産があるところしか取りようがないのである。

 だから二言目には「入試の倍率が」とかいう大学の先生というのは、自分の大学が旧帝大・名門私立大と張り合えるはずという密かな自信をちゃんと持っている人か、それとも東大と文科省が作り上げた戦後教育のイデオロギーに相変わらずどっぷり思考を冒されているか、どちらかでしかない。自分自身がどういうポジションでものを言っているのか、そういうふうに考えてみると分かりやすいのではないだろうか。

03:52 午後 ビジネス コメント (10) トラックバック (4)

2005/09/09

インターネット経営から退却するHP

Mark Hurd, CEO of HP CNETのトップページに、HPのマーク・ハードCEOの記者会見の概要が載っていた。なかなか面白かったので、ちょっとコメントしてみよう。

 HP、CEOが新戦略を明らかに(CNET Japan)

 翻訳元の記事はこちら。っていうか、翻訳記事は途中までしか訳してないんで、ハード氏が狙っているHPの改革とは何なのか、読んでもちっともわかんない。ちゃんと最後まで訳してくれないとねえ。

 今年4月の就任当時は「テニス好きな口べたの田舎紳士」みたいな言われ方して、演説でどんな相手でもメロメロに酔わせてしまうフィオリーナ前CEOとのあまりのギャップの大きさに全米が爆笑したマーク・ハードCEOだが、どうやら本当の人柄も経営手法も前評判そのまんまのベタベタだったらしい。

 8月22日号の日経ビジネスに載ってた編集長インタビューも読んだけど、「僕たちは世界最高の企業です。目標は成長することです。大切なのはお客さんに信頼されることです。社員はみんなまじめでいっしょうけんめいです。これからもがんばるのでみなさんもおうえんしてください。おしまい」みたいな内容。途中で突っ伏して眠りたくなっちゃうほどノーテンキでつまんなかった。フィオリーナが就任して初めて来日して講演したときは幹部から末端社員まで涙を流して感動したって言われたけど、ハード氏の来日スピーチってどうだったんだろ。半分ぐらい寝ちゃったんじゃないのか(笑)。

 それは冗談だけど、しかしこのテニスお兄さん、繰り出してくる打ち手はなかなか堅実というか、むしろめちゃくちゃ手堅い。なるほど、こういうやり方があったのかという感じだ。

 CNETの記事によると、HPの新戦略をハード氏は次のように説明している。

HP's overarching game plan, Hurd said, is to be an infrastructure technology company, using its vast research and development resources to collectively serve as a foil against competitor Dell. HP would leave IBM, meanwhile, to focus on business processing, he said.

 (和訳)Hurdによると、HPがとる戦略の概要としては、同社をインフラストラクチャーテクノロジー企業にすることだという。そのため、同社は研究開発に膨大な費用を投入し、ライバルのDellと違いを示すという。また、当面は、ビジネスプロセス分野に集中するIBMには対抗しないつもりだともHurdは述べた。

 しかしこの一方で、今年7月にハード氏は既に発表した1万5000人の人員削減に絡んで、“パソコンの生みの親”であるアラン・ケイも関わるプロジェクトを含め、パロアルトの本社で進めていた4つの研究開発プロジェクトを中止させてもいる。もちろん、アラン・ケイ自身も解雇だそうな。

 「インフラストラクチャーテクノロジー企業」と聞いて、一瞬僕の頭の中に「e-Speak」(※1)という恐ろしげな単語が横切ったのだが、ハード氏のこの言葉で指しているのはそういう何だかわけの分からないネットワーク上のデジタル・テクノロジーのことではないらしいことが、その後の文章(英語)を読んでいけば分かる。

HP also plans to take an inquisitive, opportunistic approach to potential acquisitions, Hurd said, pointing to the company's recent announcement of its planned acquisition of Scitex Vision's assets. Scitex, which helps companies print billboards and banners, will be used to bolster HP's printing and imaging efforts.

 (和訳)HPは将来的には買収に対しても前向きに、興味を持って取り組んでいくつもりだとハード氏は言う。これは、同社が最近発表したScitex Visionの株取得の計画のことを指している。Scitexは掲示板のポスターや垂れ幕の印刷会社だが、これがHPのプリンティング・イメージ事業を補完することになりそうだからだ。

 なんつーか、天下のHPがこんなにベタでいいんでしょーか。要するにハード氏は、「おたくの会社の書類作りに関することなら、プリンターから垂れ幕作りまで何でもHPに任せておくんなはれ!」という、日本でエプソンがやっているようなベタベタな商売をやることを「インフラストラクチャーテクノロジー企業」と呼んでいるのである(笑)。

 ただしそれは、IBMようなビジネスプロセスに関するところをHPで成り代わるという意味ではない。誤解を恐れず単純化して言えば、IBMは「どうやって垂れ幕を印刷したらいいかも分からない人に、垂れ幕の印刷方法を教えてあげつつその印刷システム一式を売りつける」のが商売である。一方、ハード氏の目指すHPは「書類であれ垂れ幕であれ、とにかく何でも徹底的に安く効率的に作って差し上げる。その代わり印刷方法ぐらいはお客さん、自分で説明書読んでよね?」というものだ。

 で、徹底的に安く効率的に作って売るというところではDELLとバッティングすることになるので、DELLの元CIOを引き抜いて社内のシステムを効率化する、というのがハード氏の戦略である。事業の1つ1つを徹底的にコンパクトで効率的にし、成長戦略や技術開発も事業ごとに判断してやればいい。だからこそフィオリーナ氏がくっつけたばかりだったPCとプリンターの事業もあっさり分離したわけだ。

 ある意味、めちゃくちゃ分かりやすい。JavaだLinuxだXMLだ、というような姿も形も見えないIT魔法使いどもの脳内妄想なんど、オラ知らねえ、難しくてわかんねえだ。お客さんから「これが一番安くて使いやすい」って言われるようなプリンター、PC、サーバーをひたすら作って売ってればいいんだ。これが、僕が見る限り、オハイオから出てきた田舎のテニス兄ちゃんの考えていることのようだ。タンジブルなもの、ばんざい。インターネット詐欺師に背を向けて、目の前のプリンターだけを信じろ。

 まあ、シンプルなのは大切だよ。しかしそれって本当にこれから大丈夫なのか?どこか不安になる。もしかしてその発想、5年ぐらい前の松下電器そのものじゃないのか。これってひょっとすると、HPにとって「デジタル・ネットワーク経営」からの退却なんじゃないの?

 あれだけ膨大な特許を持っている企業だから、これから数年間ぐらい脇目もふらずに既存事業の拡大再生産だけやっていてもそれなりに食ってはいけるのだろうけど、その後が恐ろしいな。今のところ株式市場や取締役会からの評判も上々なハード氏にとっての次なる課題は、個々の事業をDELL方式で効率化している最中に、どこまで次なる新事業に繋がるバリュー・ネットワークの網の目を張りめぐらせておけるかというところだろう。さて、どうなるんですかね。

※1)e-Speak:フィオリーナCEO就任後の99年に、IBMとマイクロソフトに対抗するためのキラーテクノロジーとして発表された、異なるミドルウェア間の通信を可能にするHPのJavaプラットフォーム技術。いつの間にか名前を聞かなくなった。なんだったんだあれ。

01:40 午後 ビジネス コメント (3) トラックバック (1)

2005/07/17

環境が無敵のポジショニング軸になる日

 3つ前のエントリで自動車業界の話が出たので、クルマネタをもう1本。

 今の国内自動車業界の話題と言えばとにかく8月のレクサス上陸でもちきりなわけだが、その中でもトヨタ以外の各社が一番衝撃を受けているのがこちらのブログで語られているような話。つまり、2006年にもレクサスで販売する全車種にハイブリッド・エンジンが搭載されるらしい、というものだ。

 先日クルマ大好きな(お金持ちの)友人と話していたところ、「レクサスISにハイブリッドエンジンが載ったら、絶対に買う」と言い張っていた。彼はそれまでトヨタ車を1台も買ったことがない。かつては日産スカイライン、今はBMWの3シリーズという、典型的なスポーツカーマニアである。

 こういう人は、かつてトヨタ車などには脇目もくれなかったタイプだ。その彼がなぜハイブリッドが載ったレクサスなら買うのか?理由を聞いてみると、「モーターの加速を味わってみたいから」と言う。

 眞鍋かをりと一緒に退屈なエンジン講義を聴いた人なら分かると思うが、排ガス低減・省エネのためだとばかり思っていたハイブリッド・エンジンに、実は高トルク走行時のガソリンエンジンの動力効率の悪さを電気モーターでカバーするという、新しい使い方があることを示した。

 もし前評判通り、レクサス車に搭載されるハイブリッドが従来のターボエンジンよりも加速性能が高いとなると、価格や居住性より「走り」の性能が求められる上位車種の競争のルールががらりと変わってしまう。ハイブリッド・エンジンを持たない他のメーカーにとっては、危機的な事態だ。

 もっとも、このようなハイブリッド・エンジンの使い方自体は、トヨタのオリジナルではない。昨年12月に米国でホンダが発売した「アコード・ハイブリッド」は、通常のガソリンエンジンの横に電気モーターを積むことで、高トルク時の加速性能を従来車比で30%も高めた。

 トヨタがこれにヒントを得た、と言ったらさすがに言い過ぎだろうが、このホンダのマーケティングが米国で大きく当たったことから、「『ハイブリッド=ターボ以上の加速性能』という構図を作れば上位車種で勝てる」という自信をトヨタに持たせたことは、ほぼ間違いないだろう。「環境対策」がマイナスをゼロに戻す陰の努力ではなく、他社の追随できない圧倒的な競争優位性の源泉になる時代が来たのだ。

 …といったようなことを、電車の中でぼーっと思い出していたら、トヨタ以外にも環境対応を競争優位性にしようとしている企業を発見。「ペコロジー」ってなんか意味不明なんだけど妙に頭に残るフレーズ。ブランドとしてまず面白い。少なくとも「クールビズ」よりは少しクールだ。「これからのお茶は潰しやすくなくっちゃね」というコピーがどうにもイケてないのが残念だが。

 「んなぺらぺらの薄いペットボトルなんて、やろうと思えば誰だってマネできるっしょ?」とか思いがちだが、そんなに簡単なもんでもないようだ。ペットボトルそのものはぺらぺらに作ることができても、それにうまく飲料を充填する生産ラインが難しいらしい。つまりうまくブランドとして浸透させられれば、他の飲料メーカーに3~4年(ボトリングラインの刷新にはそれぐらいの時間がかかる)のアドバンテージをつけられるってこと。うまくいくといいですね。

01:10 午前 ビジネス コメント (7) トラックバック (6)

2005/07/14

やっぱりそうだったのかニュース

 R30久しぶりの下ネタです。読んでいるだけで妄想大爆発、考えるだけで顔がにやついて止まらなくなるビジネスニュースを発見。

 オカモト、イチジク製薬を10月に完全子会社化(NIKKEI.NET)

 近藤さんの会社が浣腸薬の会社を買収。その理由は「オカモトは男性用避妊具を製造販売しており、イチジク製薬の取り扱う浣腸薬と販路が共通。卸の共通化などで営業・物流の効率化などの相乗効果を狙う。」

 販路が共通
 販路が共通
 販路が共通
 販路が共通

 や っ ぱ り か ! ( 爆 笑 )

 とかって笑いながらいろいろ書くネタを考えていたら、70%の株式を取得した3月に、既にこのサイトでは到底書けないレベルの内容を大まじめにビシバシ書いているブログを発見した。ので、詳しくはそちらを読んで妄想を暴発させてください。

06:57 午前 ビジネス コメント (1) トラックバック (0)

2005/07/12

連邦制チェーンストアの可能性

 3年以上前から業界内でくっつく、くっつくと言われていた3社がとうとうくっついた。周到な準備のうえでの、見事な統合でした。

 ホーマック・カーマ・ダイキ、経営統合を発表(NIKKEI.NET)

 来年9月に37都道府県に524店舗を擁する、売上高4330億円のホームセンターチェーン「DCMJapanホールディングス」が登場、と。持ち株会社になるのは、これまで3社+三井物産の合弁で作った共同仕入れ会社。これまで1位だったカインズが2006年2月期末で約150店舗、売上高3000億円の見通しだから、売り上げ規模だけで見れば2位をはるかに上回る圧倒的なトップが登場ですな。

 カインズは売上高でここ2~3年、伸びが鈍っていた。新潟でPLANTとガチンコの勝負のまさにその時に中越地震が起きたり、ベイシアとの合同出店でのスーパーセンター業態を中心に据えたため、出店調整にてこずっていたりとか、最近あまり良い話がなかったので仕方ないかもと思うが、何かあったのかな。

 個人的にはやっぱり群馬が本部の会社は群馬周辺でしか、東京が本部の会社は東京周辺でしかうまくいかないんじゃないかという印象を持つ。前橋に本社を置きながら直営店だけでほぼ全国に店舗展開を成し遂げたヤマダ電機は例外中の例外。たいていはどんなに強いチェーンストアでも、本部から遠くなればなるほどその強みが薄れ、その地場の強豪ライバルに競り負けてしまう。

 これは、チェーンストアといえども日本国内でも極端に違う「土地柄」に勝てないからだ。日本というのは本当に不思議な国で、地域間のギャップがものすごく大きい。言葉一つとっても、東北弁と関西弁は言語的に見ればイタリア語とポルトガル語よりも離れている、というような話を前に聞いたことがある。

 生活風習についても同じで、地域ごとに生活習慣や食事などがものすごく違うので、どこでも同じような品揃えの小売りには客がつかない。品揃えだけじゃなくて、商圏設定から始まって陳列や接客スタイルに至るまで、地域の独自性というのはとどまるところを知らない。流通業界風に言うと「本当の意味でのチェーンオペレーションが通用しない」のじゃないか、日本という国は。というような話が、もう延々と10年来議論されてきたのだけれども。

 そんな中で最近「ふーん」と思って興味を持って見ているのが、DCMのような「ボトムアップでできたローカルチェーンの連合体」みたいな形式の全国チェーン。家電業界で言うとエディオン(西日本=デオデオ、東日本=エイデン)とかギガスケーズデンキ(関東=ケーズ、中部=ギガス、近畿=八千代ムセン)みたいなとこ。

 各地域に機能をまとめて持つ地域統括本部みたいなのがちゃんとあるチェーンは、それなりに全国展開できるのだろうけれど、じゃあ「おまえんとこをうちの○○地域統括本部にしてやるから仲間に入れよ」とか言われて納得できるわけじゃないところが小売業の難しいところだ。

 なぜなら、小売業で一番「おいしい」ところは仕入れであり、一番「つらい」のは店舗運営だから。仕入れはスケールメリットを出すために本部でやります、しかし現場は独自の店作りでがんばれとか言われて、ハイそうですかって喜んで全国チェーンに店を売る経営者などいない。結局みんな自分がおいしい思いをしたいのは当然である。だからこういう合従連衡による全国チェーン化というのがなかなか進まなかった。

 ただ、エディオンやギガスケーズのように、経営トップたちに強い危機感があり、かつ主導権を持つ企業が仕入れ、利益配分も徹底的に透明化しないと、納得ずくで仕入れの権限など譲れないだろう。実際、ドラッグストア業界ではこの手の企てがほとんど失敗している。薬や日雑など、国内のメーカーや卸が至れり尽くせりで小売店をちやほやしてくれる業界などで、仕入れ機能を集約して利権を手放してまで価格勝負に挑もうなどと思う小売りは出てくるわけないからだ。

 DCMはその意味で、価格競争に勝つために海外仕入れのスケールメリットが必要で、しかも仕入れ先の開拓が大変なホームセンターという業界だったからうまくいったとも言える。だが、やはり誰かが中心になるというよりは、3社がそれぞれの得意技(ダイキ=店舗建設、カーマ=売り場設計、ホーマック=PB開発)を持ち寄るというかたちだったからうまくいったというのもあるだろう。そういう、ギブ&テイクのない一方的関係で連邦を築くのは難しい。

 別にどの業界の企業も連邦をおやんなさいなどと言うつもりもない。そもそも仕入れのスケールメリットの効かない分野で巨大化してもしょうがないし、イオンやダイエーなどのGMSはまさにその点を間違えたがゆえに厳しいことになってるわけだ。ただ、スケールメリットのある程度効く業界で生き残るためには、地場で強くなるのと全国規模で通用する強みを1つか2つ持って、遠くの地域で似たような補完関係が作れるお友達を探すというのが一つの成功パターンになるのではないかな、と思った次第。

 最も、ホームセンターだって規模よりオペレーションが大切な商品も扱ってるわけだし、DCMだって数年後にダイエー化していない保証もないわけなので、あまり楽観的なことは言えないけど。しかし小売業の方々というのは、本当に大変ですな。

12:19 午後 ビジネス コメント (9) トラックバック (3)

2005/07/01

経営者は何によって記憶されるか――追悼・小倉昌男

 ヤマト運輸元会長の小倉昌男氏が昨日、死去した

 経営者というのは、何によって記憶されるのだろうかと考える。もちろん、経営者と言う職務の本来的な役割は事業活動を通じた社会のイノベーションである。巨大な事業を興した人やその後の社会になくてはならない基盤となるようなイノベーションを生み出した人は、間違いなく永く人々に記憶されるだろう。

 だが、そのような事業はどのようにして興されるのか?と問うてみると、実はその奥底に潜む経営者本人の志というか執念というか、そうしたものの凄まじさこそが事業を生み出すのであり、それこそが経営者の本質であるということもできる。

 日本では、たいていの成功した経営者には、官庁の審議会委員、業界団体や経済団体の役員などのポストが名誉職のように与えられ、自分の会社やそれらの名誉職ポストを引退した後も、死ぬまでそういう団体が居場所を確保してあげる仕組みがある。今はどうか知らないが、数年前までは丸の内の日本工業倶楽部とかに行くと、よぼよぼの今にもぶっ倒れて死にそうな元著名経営者が何人も、緋色の分厚い絨毯の部屋で日がなぼーっと新聞を読んだりお茶を飲んだりしている光景を見ることができた。

 けれどもそういう「徐々に会社からも社会からも忘却されていく」タイプの経営者というのは、亡くなった時にはほぼ完全に世の中から忘れられていて、勲章受章しているようなあまりに偉大な人だったりすると一応マスコミも引退寸前の論説委員あたりを引っ張り出してきて追悼記事を書かせたりとかして、でも誰も覚えてねーみたいな話になる。それを考えると、亡くなった時に人々にある種のショックを与える経営者というのは、実はそんなに多くはない。

 世の中に永く記憶されるタイプの経営者というのは、死ぬまで自分の志とか執念とかに忠実に生き、しかも業界団体や審議会などのポストを経由して緋色の絨毯の部屋に押し込められたりしなかった人なんだろうと思う。

 ヤマトの小倉氏は、まあ確かに運輸省に喧嘩を売ったりもしたけれど、おそらくそういう「徐々に忘れ去られる」道にも踏み込めたし、実際ほんの少しだけ踏み込んだりしたこともあったけど、敢然とそれを蹴り飛ばし、死ぬまで自分の志に忠実であることを選んだ、希有な経営者だった。

 では、彼の「志」とは何だったのだろうか。

 小倉氏の遺志を最もストレートに継いだ、ある女性がいる。福祉ベンチャーパートナーズ代表の大塚由紀子氏だ。

 彼女は中小企業診断士時代に小倉氏に出会い、その情熱と思いに自分の人生を小倉氏の理想を実現することに捧げると決めた。そして、事業として成り立つかどうかも分からないまま、小規模福祉作業所に経営コンサルティングをする会社「福祉ベンチャーパートナーズ(FVP)」を立ち上げた。僕は、彼女がFVPを開業してまもない頃に会い、取材をさせてもらった。

 知っている人なら分かるが、障害者福祉の世界に「経営」「コンサルティング」というキーワードで踏み込むことがどれほどの困難を伴うものか、それは想像を絶する世界だ。まず「経営」という言葉に激しいアレルギーがある。福祉作業所の人たちには、そもそも「売上げ」とか「利益」という概念が分からないのだ。彼女が「障害者の人たちに自立して生活できる給料を出せるように経営を改善しましょう」と呼びかけても、「自分たちは利益を上げるために仕事をしているのではない」と、頭ごなしに怒鳴られるのである。

 しかし、彼女はそれでも諦めなかった。ねばり強く経営セミナーへの参加を呼びかけ続け、作業所の若手職員たちのどんな相談にも乗った。FVP創立から2年がたち、彼女が必死で教え、励まし合った福祉起業家の第1期生が昨年、生まれた。今年も第2期がまもなく始まるそうだ。

 著作権侵害は承知のうえで、今日の午後1時に受け取った、彼女が小倉氏追悼によせて書いたFVPのメールマガジンを引用させてもらう。この文章は、かの人の理想を実現するために自分の人生をなげうつという決断をした人間だけに書ける言葉だと思う。読むたびに涙があふれてくる。これ以上の心揺さぶる言葉は、世の中に存在しないだろう。そして、小倉氏がそれによって世の人々に記憶されるであろう「志」が何だったかも、その中に刻み込まれているに違いない。以下、大塚由紀子氏による小倉昌男哀悼の辞。

1万円脱出なんて、そんなみみっちいことはお止めなさいよ!
やっぱりねえ。きちんと会社にして障害者を雇用して給料10万円払うっていう
のがいいと思うのよ。
ベンチャーだよ。これからは。
作業所うんぬんじゃなくてベンチャーでおやんなさい。

小倉昌男前ヤマト福祉財団理事長のお言葉を今もはっきりと覚えています。
これは2003年の3月、「障害者賃金1万円からの脱却経営塾」を始めたいとご相
談に伺ったときのこと。
これは今、福祉起業家経営塾と名づけられ、FVPのサービスとなって存在し
ています。

「福祉ベンチャーパートナーズ」の社名は小倉さんに頂いたようなものです。
小倉さんとのご縁がなければ、
小倉さんの「ベンチャーでおやんなさい」というお言葉がなければ
今日のFVPは、福祉起業家経営塾はありませんでした。

大変だよね。
でもやりがいがあるよ。
とても大切な仕事だよ。
がんばっておやんなさい。
お客様に喜んでいただくこと。
それが一番大切なんだよ。

基本は自分がしてもらいたいことを相手にもしてあげることなんだよ。
相手の立場になって考えるんだよ。
経営でも人生でも同じなんだよ。

再来週に福祉起業家経営塾の第2期が開講します。
障害者に10万円の月給を払える経営者をたくさん世に出していくこと。
これを、私自身、そしてFVPの使命として
取り組んでいく。
何が何でも障害のある人の働く場作りを進めていく。
小倉昌男さんの訃報に接し、
「福祉に経営の視点を」とおっしゃられた小倉さんの願いを改めて確認しました。
しっかりしっかり受け継いでいこうと思います。
FVPは、小倉イズムをひとつも曲げることなく、正しいことを正しく進めてい
こうと思います。

宅急便を作った方。
官と闘った経営者。
私財を投じて福祉改革に取り組んだ方。
すべて小倉さんです。

どんな方にも等しく優しいまなざしをお向けになる小倉さん。
ジャガイモと北海道が大好きな小倉さん。
日本酒をこよなく愛し、
時折、少年のようなはにかんだ表情をお見せになる小倉さん。
福祉起業家の経営するお店で、一緒にお酒を飲む日を楽しみにしていらした
小倉さん。

ご冥福をお祈りいたします。
合掌。

大塚由紀子

07:47 午後 ビジネス コメント (5) トラックバック (8)

2005/06/16

コンプライアンスで問題を起こす企業の特徴

 栗先生から「ミュージカル・バトン」とか何とか言われてるみたいなんだけど、答えなきゃいけない項目を見たら何か自分に全然縁のない話ばかり。CDとか最後に買ったの、いつだよ?みたいなレベルだし。いや、ホントに。未だに学生の頃にダビングしたりエアチェックしたりして貯めた洋楽ポップスのカセット聞いてたりするので、申し訳ないけどスルーさせてください。それで、今日はこの記事。

 期限迫りあせり、不正次々 三井物産DPFデータ捏造(asahi.com)

 なかなか見てきたように書かれていて面白い記事なんだけど、何かすごく大事なことが書いてない気がするんだよな、これって。結局全国紙の取材ってこのレベルでおしまいなのね、JR西の時もそうだったけどさ。

 裏取り取材としか全然してないブログの分際であーだこーだ言うのも何だけど、最近この手の面白おかしいルポ風の記事が、冷静な問題分析よりも(新聞社内の)社内評価が高いんじゃないかと感じたりもするので、思ったことを書いておこう。

 何が書かれてないような気がするのかっていうと、2つある。1つは三井物産という企業の、こういう違法行為を頻発させる根本原因が何なのかということ。もう1つは再検査を見過ごした都庁側には何にもないのかということ。

 1つめについては、僕の推測できる範囲で言うとこの会社、2つの意味でたぶんコンプライアンスがなってないのだと思われる。1つは、社員個人への信賞必罰が激しすぎること。昔は二大大手商社を比べて「人の三井、組織の三菱」とか言われたものだけど、これは別に三井物産に優れた人が多いという意味ではない。こちらのサイトにも書いてあるように、社員個々人の力量に頼る部分が大きいのだ。

 それはそれで別に悪いことではないのだけれど、問題なのは成果を出すのも個人なら失敗の責任も個人が全部取るという三井物産の文化である。つまり、いったんことが起こるとトップは「知らぬ、存ぜぬ」で目をつぶって、下っ端が全責任を取って左遷されるというわけだ。失敗した個人に再起のチャンスを与えたり、組織で失敗を共有して再発を防ぐ仕組みを作ろうという「失敗学」が働かないのである。

 このため、下っ端としては目の前にミスが見えていたとしても上に知られると全責任を取らされるため、何とか隠し切ろうとするようになる。こうして悪い情報が上に伝わらなくなる。こういう雰囲気を作った最たる経営トップが、2002年9月に国後島ディーゼル発電装置入札事件で引責辞任した上島重二・前会長だった。

 槍田社長体制に交代してから少しはましになっていたのかと思ったが、そのあたりがたかが2~3年で変わるわけもないし、しかも今回の不祥事があったのはまさに上島会長在任の最後の年だったわけで、槍田社長もまだ膿を出し切れてないということなのだろう。

 もう1つの意味は、こうした企業体質の問題からすると些細な話ではあるのだけれど、日本の企業に対する最も強力なチェック機能を果たすはずの日本経済新聞が、三井物産にだけは歴史的に甘いということもある。

 これは日経新聞の生い立ちを知っている人なら自明のことだが、日経新聞の前身の「中外物価新報」が、もともと三井物産の出資によって設立されたものなのだ。だから物産上層部には、今も「日経なんてしょせんうちの子会社だ」という意識がものすごく強くて、日経に悪口を書かれるとことさらに逆上する癖がある(笑)。

 そんなわけだから日経としても三井物産を取材する時だけは結構腫れ物に触るような態度だったりして、なんていうか舐められてるわけだ。そんなわけで、かつて日経に金曜会の内幕まで暴かれた挙げ句、陰に日向にマスメディアや言論団体の動向をチェックするネットワークを社内外に張り巡らすようになった三菱商事とは、企業活動のコンプライアンスやトランスペアレンシーに対する意識レベルが違いすぎるのですよ。

 それから、もう1つ気になるのは排ガス基準未達成らしいということに薄々気がついていながら、再試験で職員が発展途上国のお役人並みの接待に連れ出されていたという都庁の「グル」度である。ま、このあたりは言うだに野暮なのかも知れんけどね。

 何しろクビ大問題で「都知事の公約だ」というだけで、あれほどの馬鹿げたリストラを強行した都庁である。テレビに出て真っ黒な牛乳ビンを振りかざして規制を力説した都知事のメンツがかかっている以上、予定通りの日程でスタートするためには民間企業の10社や20社のウソに目をつぶるぐらいは造作もないことだろう。

 逆に言えば、物産としてはそういう都の無理難題にまがりなりにもつき合ってあげたわけで、今回も都庁に代わって泥をかぶり通せばそれはそれで政商として石原慎太郎にたっぷり恩は売れるのだろう。今さら石原に恩売ってどうするよと思わないこともないけれど。ま、物産には物産なりの思惑があってのことなんでしょう。

 話を戻すけど、そもそもあの会社はそういう体質なんだからして、現場をほじくり返したら他にもたくさんコンプライアンスのヤバいネタが埋まってそうで怖いよなあ。

 とはいえ、「組織の三菱」の方でも自動車関連があちこちで組織的に製品の欠陥をなんだかんだ理屈付けて隠しては売っちゃったりもしているわけで、問題は人か組織かにあるわけじゃない。要するに悪い話を聞きたがらないトップがいる会社っていうのはいつの間にか悪い話がたくさん現場に埋められて、ある日突然そいつが「ブシューッ!!」とかいって噴出するんです。

 だから変な話だけど、法律をちゃんと守る会社になりたかったら、法律違反しそうな話をトップが真っ先に聞きつけて首を突っ込むようになれと、こういう結論なのかもしれませんな。おしまい。

03:11 午前 ビジネス コメント (10) トラックバック (2)

2005/06/10

テレビは電気屋でなくレンズ屋のものになるかもしれない

 昨日はデジカメ絡みで暗ーい話を書いてしまったので、ちょっと明るい話でもしようかな。デジカメでいつの間にかソニーを抜いてトップシェアの見込みと思ったら、それでも飽き足らないもようの万年最高益企業、キヤノンのお話。

 薄型テレビ心臓部、キヤノン自社開発へ(asahi.com)

 え?キヤノンってリアプロもやるつもりだったの?テレビは東芝とSEDでやるんじゃなかったのかよ??と思ってぐぐってみたら、ありましたよ。今年の1月に「リアプロもやる」って発表してた(TechOn!(要登録))のね。年末かあ。エプソンもいよいよ本気価格で売り始めたし、来年はリアプロの市場が一気に広がりそうな気配。

 リアプロについては、これまで日本市場では売れないとされてきた。僕自身も数年前、カリフォルニアの高級家電専門店を視察に行ったとき、売れ筋の主力は巨大な家具とセットになった100インチのリアプロジェクションテレビと聞いて、「日本の狭い住宅でこんなテレビが売れるかい、バカモノ」とか思ったものだった。

 でも最近ファミリー向けの新築マンションとかの間取りを見ると、リビングとダイニング・キッチンを合わせて20畳とかの大空間が当たり前になってる。今回自分もリビングの広い家に引っ越してみて、これだけリビングが広いとテレビ画面も37インチ以上、できれば50インチぐらいはないと見た気がしないのだということに気がついた。つまり、日本でもリアプロクラスの巨大画面テレビのニーズはそれなりにあるということだ。

 問題は価格である。個人的には、液晶やプラズマというのは、大画面テレビでブラウン管に代わるほどの技術だろうかという疑問がずっと前からあった。液晶というのはぶっちゃけ巨大な「半導体集積回路」であって、1つの集積回路の大きさが30cm四方というだけでも驚きなのに、1mや2mの大きさの回路を1枚の集積回路で作ろうなど、無茶だと思った。もちろん、技術的にやってできないことはないんだけれど、無茶なことをしようとすれば当然ながら雪だるま式にコストがかさむ。プラズマについて言えば、電力食い過ぎ、熱出過ぎ。あれも「無茶」な技術の一種だと思っていた。

 でっかい映像を表示したければ、一番理にかなっているのは「映画」だ。つまり小さな基板の上に映像を再現して、それを何らかの仕組みでレンズや鏡を通し、スクリーンに投影する。投影する光量、そして基板とスクリーン画面の距離を調整するだけで、映像は100インチでも200インチでも大きくできる。画面の大きさとコストに幾何級数的な相関関係はなくなる。つまりリアプロジェクションテレビが、一番コスト上は合理的だ。

 エプソンが発売した1インチ1万円を切るリアプロジェクションテレビは、今のところ厚さが40cmちょっととプラズマや液晶に比べてまだ劣るが、最近は鏡やレンズの工夫で理論上20cmの厚さのリアプロも作れるそうなので、来年以降三菱電機やキヤノンなどが参入して製品の改良に血道を上げれば、設置スペースの面で液晶やプラズマとの差がなくなるのも時間の問題だろう。

 さて、日本でも大画面テレビの主役にリアプロが躍り出た場合、勝ち負けを決めるカギとなる要素は何だろうか。

 キーデバイスはいくつかある。1つは映像を再現する小さな基板「マイクロ・ディスプレー(MD)」と呼ばれるものだ。これには大きく3種類あって、後ろから光を当てて透過させる「HTPS(高温ポリシリコン液晶)」がエプソンとソニー、集積回路上に小さな鏡をたくさん並べて動かす「DLP(デジタル・ライト・プロセッサ)」がシャープと三菱電機、偏光フィルターの原理を使って光を反射させる「LCOS(反射型液晶パネル)」がキヤノンとビクターというグルーピングである。

 HTPSはエプソンが既に外販も含めて大量に作っているし、DLPは米テキサス・インスツルメンツが外販している。いずれにせよ、デジカメのCCDのように、この供給確保がカギとなるような希少なパーツではない。

 一方、投影する透過型スクリーンの方も、大日本印刷や凸版印刷などの複数メーカーが既に大量に市場に供給しているものなので、問題ではない。彼らは自分でリアプロを作るようなマネはしないだろうし、スクリーンを改良すればすぐに全メーカーに行き渡るだろう。

 では、どこに技術的な優位を発揮できるか。たぶんそれは、MDとスクリーンの間にあるもの、つまりレンズと鏡の設計だろう。いかにMDとスクリーンの間隔を詰めながら(=薄くしながら)、歪みや色収差のない、明るくてきれいな映像を投影するか、そのあたりがリアプロテレビメーカーの技術のカギだろう。

 この手の高度な光学技術は、やはり日本とドイツにしか存在しない。その意味で、今後はMDの映像コントローラーから光学系の設計技術までを囲い込むのに成功したメーカーがリアプロテレビ市場で勝ちそうな気がする。今の顔ぶれを見た限りでは、やはり総合力でキヤノンがその最右翼だろう。

 ただ、日本の他の精密機器メーカーが、キヤノンに対抗できるレベルの映像コントローラーや光学系の設計技術まで含めた「リアプロテレビ用トータルソリューション」を外販し始めたら、また競争のルールは変わるかもしれない。映像コントローラーとレンズ技術を抱えるオリンパスさん、チャンスですよ!(笑)

03:10 午後 ビジネス コメント (5) トラックバック (2)

2005/06/09

オリンパスはどこでどう道を間違えたか

 2005年にはデジカメ市場の成長が止まるってのは、もう2002年ぐらいからずっと言われ続けてたことなんだけどな。生き残り続けたいと思っていたのなら、なぜそれまでにポジションを確定しておかなかったんだろう、この人たちは。

 オリンパスなど老舗3社 デジカメ事業立て直し リストラ、新機種…復権急ぐ(産経新聞 via gooニュース)

 デジカメの勝ち組はキヤノン、ソニー、富士写の3強に加えて、ニコン、カシオ、松下が健闘といったところか。産経のやり玉に挙げられているのはオリンパスとコニカミノルタ、そしてペンタックス。ペンタなんて元々レンズ技術だけを頼りにカシオに泣きついたクチだし、コニカミノルタは合併前も合併後もデジカメはヨレヨレだったのでしょうがないとして、かつてはトップシェアかつ業界のリーダーでもあったオリンパスの凋落は、痛々しいな。

 産経の記事によるとオリンパスは「マーケティングの失敗で、売れない機種をたくさん作りすぎて在庫の山を築いた」と言うんだが、どうも嘘っぽい。2005年3月期の決算説明資料を見てみると、映像事業の在庫水準は確かに2年前から上がってはいるが、昨年よりはむしろ減っている。今年初めには小宮御大自ら「E-1とE-300はバックオーダーまで抱えてフル生産で絶好調」とか発表していたぐらいだし、在庫云々をにわかに信じられない。

 ただ、E-300も欧米では「絶好調」なのだが、日本はそれほどでもなかったところを見ると、特に昨年末以来価格下落の激しかったコンパクトタイプのデジカメで、日本向け機種と海外向け機種の在庫コントロールにミスがあったんじゃないか、という憶測は成り立つかもしれない。

 しかし、問題の本質はそうじゃないと僕は思う。この前の「マネ下デンキ戦略」のエントリにトラックバックをもらったhbikimoon氏のブログで書かれているが、どうもこの1年で、デジカメの競争ルールがまた変わってしまったのである。そして、オリンパスはそれについていけなくなってしまった。

 もともとオリンパスが一世を風靡したのは、「画素数競争」と呼ばれる競争ルールを、自分で設定したからだった。それまでカシオのQVシリーズなど、数十万画素の、今から思うと「ウェブカメラかよ」と思うほどしょぼい画像しか撮れなかったデジカメに、突然「メガピクセル!」の掛け声とともに大画素数のCCDを持ち込んだのがオリンパスだった。

 なぜこの戦略が成功したかと言えば、当時のデジカメの部品で最も希少だったのは、画素数の多い(そして安い)CCDだったからだ。海外ではコダックなどが600万画素とかの超高画素(でも値段も数百万円也)のCCDを作ってはいたが、国内ではビデオカメラ用の十数万画素のCCDをソニーや松下が作っている程度(ビデオカメラ用には画素数など十数万で十分)で、百万画素以上のCCDを作るアホなどいなかったのである。

 オリンパスは当時、ソニーが試作した100万画素クラスのCCDを、それまでの国内のデジカメの全出荷台数よりも多い数買い付けた。98年に富士写が150万画素のCCDを実装し10万円を切る価格で「FinePix700」を発売すると、オリンパスも間髪入れずに8万円台の131万画素デジカメ「C-840L」を発売した。

 CCDというのは、最初に使ったメーカーがその画質のクセなどを最もよく知り尽くして調整できるので、先行者に常にアドバンテージが生まれる。こうして他社が追随できないまま富士写とオリンパスの2強による「画素数時代」が始まったわけだ。

 ところが、2002年前半にミノルタが「DimageX」を、カシオが「EXILIM」を発売したあたりから、デジカメの競争ルールが変わってしまう。「DimageX」は200万画素と、当時400万画素台だったトップ画素数のデジカメからすると2ランクぐらい下のデジカメだったが、カード型で厚さ20mmという奇抜なスタイルと、それに似合わない画質の良さが評判を呼び、デジカメ業界の競争ルールをCCDの画素数から「デザインのかっこよさ」と「画質の良さ」に変えてしまった。

 とはいえ、画質の良さなんてそうそう画期的に変わるものでもないので、結局はデザインの良さが店頭での勝負になる。カシオがさらに薄いデジカメを出し、めちゃくちゃ体の細い女性をTVCFに起用して宣伝したことで、「ファッション性」がますます購入要素として大きくなり、商品の寿命はCCDの画素数向上という「シリコンサイクル」から、「ファッションとして飽きられるスピード」に比例するようになった。

 オリンパスはこのルール変更についていけず、2001年と2002年の3月期で、2期にわたって映像事業が赤字に転落。結局草創期の「画素数バクチ」戦略を築いた小島祐介執行役員が左遷され、生産畑の小宮弘専務が事業をコントロールすることになった。

 小宮氏の取った戦略は、「賞味期限の切れないうちに作って売る」というスピーディーな生産コントロールを、オリンパスの強みにすることだった。それまで小島氏はレンズ以外のキーデバイスを持たないことを「身軽さ」に変えるべく、デジカメの組み立て生産のほとんどを三洋電機に委託してきた。小宮氏はこれを中国の自社工場に順次切り替えることで、販売現場からのリクエストに応じて必要な機種を自社内で機動的に生産できる体制に変え、商品寿命の短縮に対応しようとした。

 この試みは2002年から始まっていったんは成功し、2003年3月期、2004年3月期とデジカメ事業を回復させた。ところが、その状況も長くは続かなかった。在庫もそう増えてはいない、売上げも海外では伸びているのに、突然の赤字転落である。

 競争ルールの、何がどう変わってしまったのだろう。たぶんそのヒントがhbikimoon氏のブログのエントリにあるように、「IT系企業の参入」である。

 この1年でデジカメの何が変わったのか。デジカメはおそらく変わってない。変わったのは「携帯電話」である。そう、数百万画素のCCDを積んだ携帯電話が当たり前のように手に入るようになり、普及クラスのデジカメは携帯電話と価格比較されるようになってしまった。デジカメ屋にしてみれば「携帯電話なぞと一緒にされるなど心外」もいいところだろうが、後で月額課金できる携帯屋と売り切りのデジカメ屋では、価格で勝負になるわけがない。

 では何で勝負するか。一眼レフなど、より高級カメラの市場へと逃げるか、あるいは付加価値のあるパーツを自社以外にも外販して稼ぐか、どちらかしかないだろう。今年のデジカメの勝ち組6社を見れば、それは明らかだ。自前で独自のCCDを製造する能力のあるメーカーが6社中、5社もある。しかもこの5社のうちソニー以外の4社は、レンズも自前で生産できる。つまり、レンズとCCDおよびそのコントローラーチップなど、付加価値の高い部品をすべて内製できる企業しか、この市場では生き残れなくなったということだ。

 例外はカシオだが、同社は部品も技術も完全に外部に依存しながら、マーケティングだけで薄利多売の激戦をくぐり抜けていく知恵と度胸とスピードのあるメーカーだ。オリンパスが今後取るべき道は2つに1つ。もっと身軽になって機動力を上げて、工場さえ全部放棄し、徹底したマーケティングの会社として生き残るか。それとも、「ズイコー」ブランドのレンズなど付加価値パーツの外販を積極的に展開し、自前でシェアトップにはなれなくても大手メーカーに欠かせない「部品屋」として食べさせてもらうか。

 前者は既にカシオという偉大な先人が既に存在し、それ以外の企業はほぼ撤退したもようなので、これからオリンパスが入っていくとすれば相当厳しいだろう。となると、総力戦で戦う体力もないオリンパスとしては、高級カメラの市場に特化するか、レンズや映像処理チップなどを外販していくかしか生き残る術がない。

 とはいえ、高級デジカメ市場はすでにキヤノン、ニコンが鉄壁の牙城を築いており、フィルムカメラでは生き残れたミノルタやペンタックスもはじき飛ばされたほど。オリンパスがこれから1人でかかっていっても、割り込むのは相当難しいだろう。

 そうした高級デジタル一眼レフ市場攻略+ズイコーレンズの売り込み、の一石二鳥という意味で、松下電器とのアライアンスは的確な打ち手ではあったと思う。ただ、これで安泰が保証されたわけでも何でもない。松下だって山形で業務用ビデオカメラのレンズを自前で作ってきた実績があるし、今さらズイコーでもないだろうに。

 オリンパスとしては、これでデジカメ市場から撤退して引き下がったら、内視鏡とICレコーダーの会社になってしまい、消費者に名前を忘れられてしまうというお家の事情があるのだろう。それとも、・・・もしかして松下に会社ごと買ってもらえれば、とでも思っているのかしら。

 だがそれにしても悔やまれるのは、なぜ2003年に儲かりまくっていた時に、キヤノンのようにCMOSチップの実用化やレンズ外販に投資しておかなかったのだろうかということだ。冒頭にも言ったが、あの当時から2005年に市場の成長が止まるということは、彼ら自身も予想していたはずなのに。

02:36 午後 ビジネス コメント (12) トラックバック (8)

2005/05/16

リサイクル引っ越しについて考える

 週末はあれこれ忙しくしていて更新できなかった。このまま放置しておくと永久に更新が止まってしまいそうな気がするので、むりやりエントリ。

 来月に引っ越しを予定している。それでいろいろと見積もりを取っていた。ネットが最大の力を発揮する1つの典型が、こういう「一生に数回あるかないか」の頻度でしか買わない商品・サービスを選ぶ局面だ。今回もそういう意識を持っていろいろとネットの活用を試してみた。

 うまく業者を選定して購入するためには、引っ越し業者およびその業界についての基礎知識がまず必要だ。そういう基礎知識も、ネットにしっかりと蓄積されている。

 今回見つけた中でのイチオシは、「引越しのウラオモテ」というサイト。元引っ越し業者で働いていた横浜の中村氏が作ったサイトで、引っ越し業界の概説から料金計算機、見積もりサイトの活用や価格交渉、準備から当日のトラブル、果ては自力での引っ越し方法まで、ここを全部読めばとりあえず引っ越しについて戸惑うことはなくなる。ちょっとした相談のできる掲示板や関連情報のリンクなどもついていてとても便利だ。

 で、引っ越し業者を見積もりに呼ぶわけだが、これがまた最近は本当に便利。ネットで運ぶ荷物の数や住宅の条件などを入力すると、それが自動的に何十社もの引っ越し業者に送られ、見積もり連絡や交渉ができる「一括見積もりサイト」というのがたくさんある。

 今回はその中で、「100社へ引っ越し見積り!100社.com」というサイトと、「あい見積り」というサイト、2つに入力して送ってみた。結果から言うと、「あい見積り」の方はサイトの担当者がすぐに電話してきて「○○社と××社が連絡を取りたいと言っているが紹介して良いか」などの確認があり、その後もメールでレスポンスしてきた業者が多かったと思う。

 ただ、業者の数は多ければいいってものでもない。いちいちメールに返事を書いて時間調整するのも大変だし、訪問見積もりをしてもらうと貴重な休日の時間が1社あたり30分~1時間は潰れる。今回は2日に分けて4社に来てもらったが、多くても4~5社が限界だろう。10社とか見積もりしてもらっても、どこも似たり寄ったりであまり意味がないと思う。

 こういう一括見積もりサイトで連絡してくる引っ越し業者というのは、テレビでCMを流しているような大手ではない(大手も一応加わっているようだが、繁忙期でもないはずなのに連絡はまったく来なかった)。地域限定でやっていたり、ちょっとした特技のある中堅業者だ。でも値段は大手よりたいていは安い(らしい)ので、引っ越し業者のブランドイメージ(ネコやらペリカンやらパンダやらのマークの入ったトラックを新築住居の前に横付けして近隣に見せびらかしたいという欲望)を気にしない人であれば、大手にこだわる必要はないと思う。

 メールや電話で業者から連絡があったら、さっそくお伺いを立てるのがGoogle先生だ。先生に「(引っ越し業者名) 最悪」あるいは「(業者名) site:2ch.net」とでも入れて検索すれば、悪評は一発で見つかる。大手のS社なんて、もう悪評がこれでもかっていうぐらいてんこ盛りで、大いに笑える。

 逆にネットの一括見積もりサイトに登録している中堅業者は、悪評はほとんど出てこない。これは、単純にこなしている件数が大手よりも少ないということもあるだろうけど、ネットに悪評を書かれるようなことをすれば一巻の終わりだということを彼らが相当意識しているからだろうと思う。

 実際、見積もりに来た某社の営業マンも「最近はネットで情報がすごく出回っていますから、本当に下手なことはできないんですよ」と言っていた。いいことだ。下手なことなどしないでほしい(笑)。

 そういう流れを見ていると、少なくとも引っ越し業者の中でもCMを打って企業ブランドを作ろうとするような企業は、これからどんどん法人引っ越しなどのスケールメリットの効く市場にシフトしていくのだろうと思うし、個人客を取って行こうとする中小・中堅企業は、広告宣伝費を使わなくても、ウェブの活用や工夫でかなりのところまで業容拡大していけるんではないだろうか。同じ引っ越しでも、規模によってKSFが明確に変わってくることになるんだろうね。

 かつては、個人向け引っ越しサービスは営業マンを叩けばすぐに何万円と値段が下がるというようなことが言われたが、今回見積もりを取った感じでは、どこも比較的良心的な価格を出してきているように思えたし、材料なしで価格交渉されてもあまり取り合ってくれなさそうな印象が強かった。むしろ思うのは、引っ越しサービスそのものではなく、付加サービスの部分でどのくらい顧客のメリットを追加できるかというところに、競争の力点が移ってきているのではないかということだ。

 各業者のウェブサイトをよく見ると、それぞれにユニークな付加的なサービスをいろいろと取りそろえようとしていることが分かる。その意味で今回見ていて面白いなあと思ったのは、不要な家具や家電製品のリサイクル買い取りというサービスを、何社かが提供していたことだ。

 不要品の引き取り(処分)というのはこれまでもあったが、リサイクルショップを兼営したり、フリーマーケットに常設ショップを持ったりする引っ越し業者が出てきている。これは引っ越しする人と業者の双方にとって結構メリットが大きい。大きな家具のリサイクルコストというのはたいていほとんど運送費だが、引っ越しに使ったトラックでそのまま中古家具を回収してくれば、リサイクルのためだけの運送コストは要らなくなるため、その分通常のリサイクルショップより高い価格で買い取りができる。つまり、顧客にとってもトータルな引っ越し費用を相殺して抑えることができる。

 さらに一歩進んで、買い取った中古家具や家電製品を、手ごろなセットにして単身の引っ越し客に再販売することもできる。こうすれば、例えば一定期間だけ単身赴任する人などにとっては、いちいち赴任先でまた1人用の家具や生活家電を買いそろえなくても、引っ越しと同時にそれらの手配が終わることになり、非常に便利だ。

 特に大きな家具などのリサイクルは、商品価格(と利益)を物流コストがはるかに上回ってしまうため、法人向けのオフィス用品など、取引ロットの大きなものでない限り、これまでなかなか市場が育ってこなかった。だが引っ越し業者を仲介とした中古家具の流通サービスというのがもう少し大きくなってくれば、いろいろと面白いことが起きそうな気もする。

 もし近々そういう引っ越しをしてみたいとお考えの方がいらっしゃったら、僕が見つけた「リサイクル買い取り+引っ越し」の合わせ技サービスをやっている引っ越し業者として、「アルファ引越センター」「リサイクルBOY引っ越しセンター」の2社をご紹介しておく。この2社は関東近辺のみの営業みたいだが、他の地域にも似たような業者が既にあるかもしれない。

 家具の場合は運送コストが大きすぎるのでどうかとも思うが、中古品というのは相場形成のノウハウにおいて一般にスケールメリットが働く。こういうリサイクル引っ越し業者がある程度出てきたら、首都圏とか近畿圏ぐらいの規模で中古家具のネット取引市場を作る企業なども生まれてきそうな気がする。

11:22 午前 ビジネス コメント (4) トラックバック (3)

2005/05/12

往年のセガバンダイが重なって見えるタカラトミー統合

 ナムコ+バンダイに続いて、タカラ+トミーも経営統合ですか。おもちゃ再編ラッシュですな。

 タカラとトミー、経営統合へ(NIKKEI.NET)

 日経のスクープだが、NHKも朝のニュースで流していたから、複数ソースからリークが出てるんだろうな。その後、両社からは一応「協議中」のコメントが出ているようですが、朝一の取締役会で決議して、午後3時にでも発表するんでしょう。合併比率も決めないうちにリーク出すなんて・・・とかいう繰り言はまあおいといて。

 そもそも、ナムコ+バンダイの時に比べて、この2社の負け組連合っぷりはどうよ。シナジーも何もあったもんじゃねえ。

 ナムコ+バンダイは、分かりやすかったんだよな。「セガに振られた組結婚」とかいろいろ言われていたが、僕的には非常に納得感が高かった。だって、ナムコっていろんなゲームセンターをはじめ、「ナンジャタウン」をはじめとしたテーマパークや、「浪速食いしんぼ横町」「池袋餃子スタジアム」とかのフードテーマパークなど、往年のセガがそうだったような「集客力のある施設を作る」ノウハウに徹底集中していた会社なんだよね。その代わり、中のアミューズメント機のうち女の子向けキャラクターものなど、どうしてもナムコ自身の弱い部分というのはコンテンツを持つ他社に頼らざるを得なかった。

 一方、バンダイは「ライダー」や「レンジャー」シリーズ、「おじゃ魔女」「プリキュア」など、小学生から大きいオトモダチまでにリーチするキャラクターを複合商品で展開し、この部分では他を圧倒する強さを持つ。ただし、実際の消費者との接点は、テレビやコミックという空中戦(マスメディア)しかなくて、白兵戦(店舗)での展開は町のおもちゃ屋さんや量販店、それにナムコやセガなどのゲームセンター運営会社頼み。せっかく「ガンダム」など強力なキャラクターの版権も買い集めたのに、それをどうやって拡販するかに悩まされていたわけだ。

 だから、おりしも家庭用ゲーム機向けの市場先行きが怪しくなってきている今、この2社の統合というのは、かなり理想的な組み合わせだと思った。バンダイが作ったものをナムコの抱えるアミューズメント施設で売りまくるというのをうまく実現できれば、おもちゃ業界各社の長年の夢だった「開発からMD、流通まで一気通貫で握る」垂直統合が起きるわけだから。

 それに対してタカラとトミーって何ですか。タカラは前社長の積極策が実を結ばなくて傾きかけ、ゲーム屋の大株主にさえ見放されて社長の首が飛んだうえに株が転売されたばかり。トミーは前々期にようやく赤字から脱出したものの病み上がり、しかも未だ創業家が大株主で経営者に座ってるベタベタのオーナー経営会社。しかも両方とも売れる仕組み、商品開発の両方に弱みを抱えてる。

 こんな体質の会社2社くっつけたところで、どうにかなるもんでも何でもないよ。今回は陰にカネ余りのIT企業が控えてるところがちょっと違うっぽいが。なんか、昔、業績の傾きかけたゲーム開発の名門セガと必死になってくっつこうとしたベタベタの創業家経営者山科社長率いるバンダイの姿が思いっきり重なって見えるんですがこれは僕の目が涙でくもっているせいですかそうですか。

 確かにおもちゃ業界ってこのまま行っても先が見えないよーっていう気持ちを持ちたくなるのは分かるんだけどさあ、しょせんはコンテンツ屋、しかも流行り廃りの激しい分野のコンテンツ屋なんだから、そういう認識を持てよと思うわけだ。今までみたいにおもちゃ屋に商品押し込んでなあなあやってれば食っていけた時代も終わったわけだしね。

 コンテンツ屋ってのは、ヒットエンドアウェイが基本。流行を作り出して、その中で波頭をすくい取って儲けたと思ったら、流通にどんなにブー垂れられようが商品を残さず逃げ切る。これですよ。で、そうやってリスク管理を徹底してチビチビ儲けた金をLand Walkerこういうこととかにドカーンと使って世の中に話題をまき、それをまたネタにブームを作り出す。それがコンテンツ屋の仕事というものでしょう。ていうかキミタチ売上高あんだからこのくらいやってくれよ群馬の中小企業がやってんだから。

 そういうケチ臭い科学的経営管理を作らないで傾いちゃいましたって会社が2社一緒になっても、だからって勝てる訳じゃないと思うんだけどなあ。まあ、前日夜の段階で日経に経営統合のリークが流出する時点で、両社とも経営の脇がアマアマな会社ですねということはしれてしまっているので、もはや何も期待してないわけですが。

 夢を売る商売の会社がこうなってしまったらもうダメだな。後は中国の企業あたりに企業規模とキャラのブランド価値を思いっきり誇示しながら買ってもらうぐらいしか、最終処分の方法がないんじゃないかしら。90年代にオーディオメーカーがたどったのと同じ末路を、日本のおもちゃ屋もたどるのかな。

 P.S.ナムコの佐藤様、いつも社内HPからこちらへのリンクありがとうございます。( ̄m ̄* )ムフッ

11:44 午前 ビジネス コメント (12) トラックバック (6)