フラット化するニッポンの象徴としてのNAKATA
HBSの入学資格は四大卒業同等以上の最終学歴なんですがねといった野暮なツッコミはさておき。
中田英寿、MBA取得 第2の人生は実業家(gooニュース)
彼ほどの才能があれば特例で入れてあげても良いと思うし、米国の大学というのはそのへん野暮なことは言わないと思うのでまあ期待して待つが吉。で、思ったのは彼がそういうものを目指すと公言することの2つの社会的な意味である。
1つは、ビジネス社会の中のさらに中央官僚とか外資とか超大手グローバル大企業とかの人たちだけの世界のブランドであった「MBA」、そして「ハーバード・ビジネス・スクール」が、彼の一言によって一気に日本のお茶の間に広がった点である。
サッカーでも同じだった。それ以前にも奥寺や釜本など名選手で欧州のリーグで活躍した人は多数いたが、結局のところサッカー界の中の話に過ぎなかった。だが98年に彼がペルージャに移籍した時から、「トップクラスの人間は日本ではなく世界に行く」ということが、サッカーだけでなくあらゆるスポーツ、そして日本のお茶の間の常識になった。
自らの行為で示しただけでなく、それをムードとして日本社会に浸透させてしまったこと、これこそがNAKATAの最大の功績であった。日本人にとっては、これからは「MBA」が好むと好まざるとにかかわらず、ある種の「常識」化するだろう。欧米を初めとする世界がそうであるように、日本も彼のおかげでグローバルスタンダードの価値観を社会常識とせざるを得ないようになるに違いない。
そしてもう1つ、(彼が今後HBSに入学でき、卒業できればの話だが)大きな意味を持つだろうと思うのは、「MBA」あるいは「ハーバード・ビジネス・スクール」というブランドを持っていれば何でもかんでも一流なのではなく、やはりそこに明らかに個人の素質が必要だ、と世間が認知するだろうということだ。
サッカーでも、NAKATAの後に多くの選手が欧州のトップクラブに移籍したが、その中で芽が出なかった者もいたし、また大きな成果を挙げた者もいた。要するに「欧州のクラブへの移籍」がブランドなのではなく、そこで個人が何を成し遂げるかがブランドになるのだという、フラット化した世界の冷厳な事実が日本のお茶の間に突きつけられることになったわけだ。
よく考えればそんなことは当たり前のことなのだが、舶来のブランドと言えばそれだけで思考が止まってしまう日本人にとって、NAKATAが突きつけるこの事実は大きな意味がある。当然ながら、今後ハーバードMBAを取った人間は、「NAKATAと比べてどうなのか」というベンチマークを一生突きつけられ続けることになるわけだし、またそれが社会に明らかにされるだろう。公費で留学している中央官僚は、その異様なドメスティックな凝り固まりぶりを白日の天下に晒されるだろうし、自分のキャリアについて深い考えもなく漫然とMBAを取った人は常にそのダメっぷりをNAKATAと比較対照されるかもしれない。そして、多くの日本人に「MBAだからって特別でも何でもないんだ、そのうえでちゃんとNAKATAみたいに努力しなきゃダメなんだ」ということを思い知らせるだろう。
いずれにせよ、彼の通る道はこれまで確実に日本人の意識をグローバル化する先鞭を果たしてきた。今度の発言も実現するか否かにかかわらず、日本の社会をトム・フリードマンの指し示す世界へとまた1歩いざなうきっかけになるに違いない。
追記:尊敬するスポーツジャーナリスト、増島みどりさんの「中田英寿の現役引退によせて」の記事が出ていたのでリンク。
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コメント
NAKATA(笑)にそんなインパクトがあると思えませんが・・・。
むしろ、スポーツ選手がビジネスマンとしてどこまでやれるか。
NAKATA(笑)側が試されると言えるのでは?
まあ、彼なら「やっぱスポーツ選手は馬鹿だわ」という
事にはならないと思いますが。
投稿: 通りすがり | 2006/07/04 11:57
> HBSの入学資格は四大卒業同等以上の最終学歴なんですがねといった野暮なツッコミはさておき。
野暮に付き合いますと大学を1年で中退してその後、犬の散歩のバイトをやってたお兄ちゃんでもHBSから入学を認められたそうですよ。
ちなみにその犬はブッシュ大統領の犬で、その男、ついでにブッシュの娘さんの面倒もみてたそうです。
ま、どこまでいってもコネは大切ということですね。
http://thinkprogress.org/2006/05/27/bush-peanut-harvard/
投稿: Stock&Flow | 2006/07/04 12:12
志村(R30)ーッ
うしろ(次原悦子)ーうしろーっ!
というわけでホワイドバンドでその無能さとセンスの無さで
名を馳せたサニーサイドアップの次原女史によるの田舎者臭い
ベタベタのPRなわけで終了。
投稿: a | 2006/07/04 13:44
トム・クルーグマンって誰ですか?
投稿: yomoyomo | 2006/07/04 13:50
ごっめーん>yomoyomoさん
ネタ記事だと思って力抜いて、フリードマンとクルーグマンを間違えちゃいました。失礼(笑)
投稿: R30@管理人 | 2006/07/04 14:12
楽天の役員?・・・という線はないのでしょうか。
HBSいく前でも後でも。
投稿: 金鉱マン | 2006/07/04 21:01
>奥寺や釜本など名選手で欧州のリーグで活躍した人は多数いたが
中田ヒデ以前で「活躍」といえるのは、奥寺さんだけでは?
また、釜本さんは欧州クラブチームからのオファーはあったものの、結局、ヤンマー一筋の現役生活だったはずですが・・・
投稿: indoorffm | 2006/07/05 14:11
ブランドで思考停止になる訳では無くて、思考停止になっているからブランド足りえているのでは?
って思いました。
思考停止にならないような、神格化されないモノは、あんまりブランドって呼ばれないような…
ただ、ブランド化する敷居が日本では低いというのはあると思います。
投稿: AB | 2006/07/06 01:48
サッカー好きなひとの間で、いまの増島さんの評価は決して高くないですよ、ということをシャチョーさんにはお伝えしておきます。なぜそうなのかはご自分でお調べ下さい。
投稿: スポーツ好き | 2006/07/06 08:56
結局「タレントネタが一番食いつきがイイ」って話じゃないのかね?
マネーの虎の出演者は確かに成功者。
でもそれ以上の成功者も沢山いるということで。
投稿: 児玉遼太郎 | 2006/07/09 10:04
>>スポーツ好き
「シャチョーさん」ではなく、「シャッチョサン」だ。
なぜなら此処は胡散臭いフィリピンパブ(推定)。
フィリピンのねーちゃんはシャッチョサンって言うか! 言う。たぶん。
投稿: 私 | 2006/07/09 14:39
んー、ピンパブはシャッチョサンとは言わないと思うなー。ピンパブはお客さんもデフォルトで英語しゃべれる人が多いから。「シャッチョサン」はたぶんタイのお姉ちゃんとかの口癖ですよ>私さん
投稿: R30@管理人 | 2006/07/09 20:04
んじゃタイパブでいいっす。それで。
投稿: 私 | 2006/07/09 20:45
みどりちゃん……。四年前に変わってしまったね。
「六月の軌跡」も「ほぼ日」の対談も、その頃は最高によかったのになあ。「ナンバー」と切れて「ヤー」に跳んだあたりからおかしくなっちゃったな。それもこれもズィッコ・マジックか。:(
投稿: zoffy | 2006/07/14 09:16
「ゲーテ」9月号(7月24日売り)の特集は、「中田英寿完全独占インタビュー」です。
表紙はもちろん本人。所属事務所のサニーサイドアップからは幻冬舎に半年前に引退話が持ち込まれ、
幻冬舎も中田取材で著名なライターの小松成美を3ヶ月前からボルトンに送り込むなど、相当な力の
入れようとのこと。テレ朝の特番は、後から決まったとのこと。
投稿: hideo | 2006/07/15 11:45
NAKATA含めスポーツ選手って馬鹿だからなぁ。
投稿: bluehack | 2006/09/01 21:11