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2006/05/14

PVではなくFeedがウェブの価値基準になる?

 今年初めぐらいからあちこちで言われていたことが少しつながったような気がしたのでメモ書き。

 気になっていた1つめは、こちらのブログでさりげなく書かれていた話。ページビュー(PV)とかリーチで見た日本のインターネットの伸びが、今年第1四半期で頭を打ったというもの。

 こちらのブログでは「インターネットが右肩上がりである、というオプティミズムは、意外に早く崩壊するかも」と、ネガティブなファクトと受け止めていたのだが、僕自身は何か腑に落ちないものを感じていた。実感として、日本人のネット利用時間がここに来て減り始めているという印象はない。

 まあ、6月末になれば総務省の情報通信白書が出てくると思うので定量的なものが明らかになるだろうが、今年初めからのYouTubeの大人気ぶりなどを見ていても、むしろ情報メディアとしてのネットの勢いは、ここに来て一気に加速し始めたというほうが感覚値的には正しい。

 じゃあどうしてPVやリーチが下がるのか。これに対する仮説の1つとしてピンと来たのが、こちらの話題。はてなと大手新聞社サイトという、局所的なレベルでのアクセスの話でしかないんだけど、ここでgitanezさんが挙げているはてなのPVの理由が、「はてなは無数のFeedを吐いていて、それに対するRSSアグリゲーター(リーダー)のアクセスがPVのかなりの割合を占めてるんじゃないか」というもの。

 もちろん、htmlファイルとrdfやxmlのどっちのアクセスがどれだけかなんてことは、はてなの中の人にしか分からないんであくまで仮説に過ぎないんだけど、確かにはてなってそこら中のページがFeedを吐いている(Firefoxを使っていると、アドレスバーの右端にオレンジのFeedマークが表示されるのでよく分かる)ので、それはあり得ない話じゃないなあと。

 しかし、一方でRSSリーダーが一般のネットユーザーに普及しているとは到底思えないので、gitanezさんの言うように「必ずしも人間が見てる数が多いんじゃないのかも」というところにこの謎を解く鍵があるような気がする。たとえば、僕もGoogle パーソナライズのコンテンツに「はてな注目エントリー」のRSSを登録してあって、Googleを開くとGmailのメール一覧などの横にいつも「最新の注目エントリー」がずらっと表示されるようにしてあるんだけど、Ajaxを使ったそういうウェブサイトの機能が、元サイトのPVにあまり影響を与えずにFeedだけで事足りるようにしてしまっていたり、あるいはFeedを吐いてないサイトへのアクセスを自然と減らしていたりするのかもね。

 実はこのブログも、連休前からRSSで配信する内容をこれまで「見出しと本文の一部」だったのを、「本文全文」に変えてみた。PVは大して変わらないので、何がどう変わったかは管理者側からはあまり分からないんだけど、読者側からしたらこのほうが圧倒的に便利なんでしょうね、きっと。そうしてサイトを訪問せずにコンテンツだけFeedで読む人が増える、と。

 次のニーズはここだな。Feedがいつどのくらい、どんな人に読まれているのかという「Feedアクセス解析」。これがちゃんとできるシステムがあったら、ブロガーとしては絶対使ってみたくなるよね、たぶん。今のFeedはどっちかっていうとタダで投げっぱなしだが、このへんがFeedアグリゲーターの側の情報まで引っ張って見せられるようになればかなり受けそうな気がする。

 というところで連想したのが、サイトのFeedを特定のアグリゲーターの利用者にしか読ませないという朝日新聞と小川浩氏@Speed Feedの実験。反応を見ると「オープンであるべきFeedに認証をかけて、特定アグリゲーターにしか読ませないってのはどういうことだ、反Web2.0的だ」とかネガティブなものが多いみたいだけど、僕個人はこの試みの発想自体は大いに評価する。少なくとも、そこにマーケティング・チャンスを見出したということは、とっても正しい。

 ただ、そこで配信されるコンテンツ(W杯ドイツ大会特集の記事)が、配信先であるFeedpathの「ITビジネスパーソン」というターゲット顧客層とどうマッチするのか全然わかんないのと、アグリゲーター側でユーザー捕捉するのだからPVどうこう言う必要もないのに、なぜか全文配信ではなく記事の抜粋のみであるっていうところが、なんか歯車1つ飛んでいる感じがして超ナイス。コンセプトが正しくてもこういうUIのささいなところがダメだと、こういうミスマッチが結局ユーザーの気持ちを掴めなくて終わっちゃうんだよなあ。もったいない。

 それはおいといても、以前にサイボウズラボの奥さんが言っていたようなFeedの認証配信に世の中の関心が向かってきたのはとても良い流れだと思うし、エンドユーザーをしっかり掴んでいるRSSアグリゲーターがマーケティング上の立場で強くなるのは当然のことだと思う。といっても、現時点でこの領域の最大のプレーヤーはやっぱりGoogleになってしまうのかもしれないが。日本のネットサービス企業には今後ぜひ、簡単で使いやすいFeedアグリゲーションのアプリケーション・サービス開発に血道を上げていただきたいものだ。

 …とかいって、今Googleパーソナライズをいじっていたら、すごいことに気が付いた。去年の12月ぐらいからあった機能みたいなんだけど、英語版のPersonalizedの「Add Contents」のメニューの中に、パックマンとかテトリスとかクロスワードパズルとかが入ってる!しかもどのゲームもタダでやりたい放題。ディルバートとかの漫画もある!ちょう凶悪!あーあ、こんなもの見つけちゃって、これからデスク仕事がますます滞るぞ…困ったなあ。トホホ。

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コメント

”試みの発想”に賛同いただいて良かったです(笑)。
FeedがコンパクトなWebとして、独自のトラフィックを
持っていくということは、我々は1年ほど前からFBSと
いう団体を通じて啓蒙活動にいそしんでおります。

ここで何点か補足しておきたいと思いますが、

1) Feedは原則全文だしている。
新聞社の記事は、通信社が著作権を持っていて二次利用
できないものと、新聞社自体が著作権を持っているもの
の二つがあります。後者のものはちゃんと全文出しています。

この実験は単に認証付きFeedを出すかどうかではなく、
こうした著作権の問題であり、テクノロジーだけで
解決し得るものではなく、ビジネス上の問題をいかに
クリアしていくかの実験になっています。

2) Feed自体の発展の流れについて
今後はWebサイトのサブセットとしてではなく、
Feed自体を直接作っていく、HTML-WebからFeed-Web
という流れも生まれてくると考えています。
我々はこれをLive Feedと呼んでいます。

3) 今回の実験の意義について
実のところ、この試みはマーケティング的な気分は
持っていません。最終的には朝日新聞社、というか、
1次ソースであるメディアのFeedは、全てのFeed
リーダーに開放されるはずだからです。囲い込みを
していくつもりはありません。
しかし、現時点では、さまざまな制限をかけ、
アップストリームからダウンストリームまで、
全てコントロールできる環境でなければ、新聞社と
しても全文Feedを出すことに踏み切れず、苦肉の策
として、今回ようやく一歩踏み出せることになったわけ
です。

以上、初めてコメントさせていただきます。

投稿: hiro ogawa | 2006/05/14 09:32

>小川さん
はじめまして~。コメントありがとうございます。また、以前は大変お世話になりました(笑)

ご指摘の件、他人のブログの又聞きで書いてましたので、失礼しました。本文を修正しておきますね。また遊びに来てください。

投稿: R30@管理人 | 2006/05/14 10:33

R30さん、

トラックバックがうまくいかないのでコメントにて失礼します。
このエントリーを読んで、Feed解析について、新しくエントリーをたてましたので。
http://gitanez.seesaa.net/article/17805884.html

投稿: gitanez | 2006/05/14 19:23

僕がフィード対PVで思い浮かんだのがGoogleではなくmemeorandumですね。Bloglinesを使っているのですけど読む時間がいつもない。でもmemeorandumを知ってからBloglinesの使い方が変わりましたね。Bloglinesではメールフィードや友達のブログなどパーソナルなもの。あとは大体memeorandumで事は済むようになりました、僕は。でも、もはやアホのようにRSSフィードを100取るのはほとんどの人間には無理かと。

でR30さんにはこの話題をEtechのテーマだったAttentionと繋げて頂きたいと思いますが、どうでしょうか?

投稿: etto | 2006/05/14 20:48

WEBディレクターの素朴な疑問。
feed化(?)の作業費は誰が支払うの?

え? プロダクションのサービス? ムリポ!

投稿: 児玉遼太郎 | 2006/05/15 00:39

うー

投稿: 私 | 2006/05/15 10:31

PVが飽和しつつあるって言うのは結構しっくりくるけどなぁ。
YouTubeつっても今まで別のページ見てた人間が流れ込んでくるだけでしょ?
Gyaoを先頭に大容量化はしてきていると思うけど、1ページ当たりの情報量も増えて逆にPVは減るんじゃないのかな

投稿: サルガッソー | 2006/05/16 03:40

もう、面白がって「ネットサーフィン」しまくる時期ではない
ということではないかと。
みたいところがはっきりしてくればPVは減るでしょう。

投稿: 通りすがり | 2006/05/23 12:57

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