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2006/03/04

SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」

 ボーダフォンがとうとうチキンレースに音を上げたっぽい。で、身売り先はソフトバンクですか。

 Vodafone、ソフトバンクへの日本法人売却交渉を認める(ITmedia)

 英国の報道によると売却額は1兆円とのことだが、これってちょっと安すぎじゃね?一応日本全国をカバーしてるインフラを持つキャリアですよ?すごいディスカウントセールだな。呆然。

 こんな端末の発表とかもして、ようやく日本市場に本気で合わせていこうっていう機運が出てきたところだっていうのに。あ、そうか、英国の本社の思惑にしたがって動かしたら結局どうにもこうにも赤字が止まらなくなって、結局本社の世界戦略に組み込むのを諦めたからこれが出てきたっていうことなのかしら。なんだかなあ。

 一方、ソフトバンクとしては痛し痒しということなんだろうか。先月初めのITmediaのこちらの記事などを読むと、まずはMVNOでのアライアンスから手を付けようと思っていたっぽい。普通に考えたら、それが一番順当なところだろうね。1兆円の買収資金、いくらカネ余りだからって市場から調達すればそれなりの資本コストはかかるわけだし、ARPUがこれ以上伸ばせない成熟市場の事業に今さら1兆円を張ろうというのは尋常な感覚じゃない。

 だけど、MVNOならソフトバンク以外にもいろいろな新規参入組が相乗りしてくる可能性があるし、Y!BBの時のような固定網とは違って、ネットワークと端末を切り離して汎用品をばらまくみたいな戦略も無線では取れないから、どちらかというとネットワーク自体はなるべく自社と少ないメンバーで囲い込んでおきたい。とすれば、株の過半数を握って取締役会を押さえたうえで、大株主以外のMVNOを受け入れないという選択肢のほうが、なんぼか魅力的でもある、ということなのだろう。

 英ボーダフォン撤退後の実質的な会社のハンドリングについては、孫氏のことだから会長に上がった元ドコモの津田志郎会長を三顧の礼でトップに返り咲いてもらい、指揮を執ってもらうつもりでいるに違いない。津田氏に5000億、ネットワークに5000億の値段をつけた、ぐらいのつもりかも(笑)。そこまではいいとして、やはり問題は今後ボーダフォンのネットワークから1兆円の投資に見合った収益を上げるための戦略が描けるかどうか、に尽きるだろう。その戦略がなければ、いかな津田氏といえどもどうしようもない。

 戦略の天才孫正義の考えることなど、僕には到底想像すらつかないのは当然なのだけど、しょせん泡沫ブログなのだし、外し覚悟であえて予想してみる。

 今までのボーダフォンはNTTドコモのコバンザメ路線だったが、少なくともそれではもう後がないことが明らかになった。auは価格志向のユーザーが多く、ナンバーポータビリティが導入されても簡単にはドコモに流れないだろうが、ボーダフォンはFOMAとできるサービスが限りなく同じであり、このまま行けばナンバーポータビリティの導入によってドコモへの顧客流出がますます加速するだろう。

 したがって、おおまかな方向としては3つの選択肢がありうると思う。1つめは、「女性」という、伝統的にボーダフォンが強い地盤のある顧客層に徹底的にフォーカスした端末、サービスを投入して、ニッチプレーヤーの地位を確立すること。2つめはドコモやauがまだきっちり押さえ切れていない、法人顧客向けの無線IPソリューションをいち早く展開して、企業のネットワークをインフラごと乗っ取ってしまうこと。そして最後の1つは、Y!BB参入の時と同様、ソフトバンクが持つコンテンツビジネスへの相乗効果を期待しつつ、ナンバーポータビリティ導入に合わせて「無料(あるいは定額格安)ケータイ」という、ぶっちぎりの価格破壊に出ること。

 個人的には3つめの選択肢をとってくる可能性がものすごく高い気がする。1つめはいわゆる「差別化」の戦略だが、競合の追随をかわして顧客をがっちり囲い込み続けるのは、極めて難しいだろう。また、2つめの戦略は1つめに比べれば成功した時のロックオンの効果は高いだろうが、企業顧客に自社のネットワークを全部SBに任せようと決断させるには、飛び抜けて優秀な営業マンと飛び抜けて優秀なエンジニアがたくさんいなければならず、しかも時間がかかりすぎる。1兆円の投資の成果がすぐに目に見えない。

 3つめの戦略は、携帯業界にとっては「大殺界」だ(笑)。ドコモ、auもこれをやられたらもう逃げようがない。自社のもつネットワークのインフラが「収益基盤」から毎月莫大な赤字を垂れ流す「過剰債務」にある日突然変化するのを、指をくわえて眺めているしかない。もちろん、追随値下げしなければ顧客は全部ソフトバンクのものになるだけ。まさに悪夢のシナリオだが、ソフトバンクが1兆円のカネを張っても意味があったことを市場に見せつけて勝つためには、もうこれしかないだろう。

 というわけで、ナンバーポータビリティ制の導入はソフトバンクの登場によって、携帯電話業界の最悪シナリオを実現する引き金になりそうな気がしてきた。たぶんこれから、各社とも必死でこのさらなるチキンレースからの脱出をはかるべくあがきまくるだろうが、さてどうなるか。数年後にはドコモ、auの大リストラが待ち受けているような気がして仕方がない。南無。

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コメント

 名は体を現しますなぁ。

 SBに暴打フォンなんぞくっつけたら、ナニ仕出かすやら分かんないんですけどw
 沢村竜平(漫画・はじめの一歩)張りに危険なんですけどw

 彼を倒せるのは幕ノ内一歩か間柴了しか居ないんでしょうなぁwww

投稿: 私 | 2006/03/04 10:58

>>シャッチョサン

 最近元気よくね? 調子のいいときは起き抜け暴走エントリーが効果的だもんねぇ。寝る前に何か書くんじゃなくて、起き抜けの一発が効果的。そういうことで。

投稿: 私 | 2006/03/04 11:02

>>シャッチョサン

 単なるランナーズハイですかそうですか。お大事に。

投稿: 私 | 2006/03/04 11:40

大殺界は起こるかなぁ。
SBは新規参入を劇的な形で顧客を奪い取るという風にはしたくない、もしくは難しいだろうと、ADSLの結果から学んだ気がする。

MVNOで参入したいというのもとても妥当な判断だった。1兆円とリークしたのはボーダフォン側でSB側は苦虫つぶしてるんじゃないの?

大殺界は起こったほうが外野としては面白いし(笑)起こって欲しいけど。それやったら結局儲からない投資だったとなって、伸びきったSBの株価は下落を始めるんじゃないかな。次に買収する相手が無いとサプライズを続けられないし、ROI出ませんでしたって結果になって手のひら返したように売り浴びせられるとか。

Yahoo!との相乗効果でARPUが劇的に向上?!ADSLでもコンテンツ課金は結局失敗してるんだから無理ではなかろうか。

露出に頼った広告収入とかあるだろうけど、それならYahoo!でやってればいいわけで、1兆円張ってやるほどの物かな…

孫さんは戦略の天才だけど、サービスを生み出す天才ではないよね。成功してないし。そのところ読み違えないようにするのがいいと思ったりします。

投稿: あなた | 2006/03/04 15:11

ITの限界効用が縮小してきている。
環境の変化でルールが変わるために色々なアクションがある。お財布ケータイつうかクレジット参入もそうで地上波デジタルもハイデフもそうだ。
だがこれは慢心ではなくこれは止まったら死ぬ鮫の必死の自転車操業である。
よく考えればケータイは音質が悪くとも話せればよいし地上波デジタルTVもワンセグでリビングを代替したほうがユーザーにも帯域にもメリットがある。PCは既にハイデフだしいまさらTVがハイビジョンである必要も無い。
つまり各プレイヤーの懸命な努力というものは単なる自己保身だ。限界効用はこれっぽっちも上がっていない。商売人として自分を見失っている。主なプレイヤーに松下や本田のような叩き上げがいないせいだろうか。

ソフトバンクはそんな絵を描ける頭はあると思うがボーダフォンというシステムはどうなのだろう。
常に成長するビジョンで投資したシステムはそうそう変えられない。そう、いつか見た1990年である。これは安い土地だろうか。

これからの注目点はサービスの付加価値でなくマクロでみた効用である。マスを扱うものは常にその影響力の大きさから社会的な意義を考えていかねばならない。
下層で時給800円で仕事する多くの人間がいなければ社会は発展できない。しかし高給を食むコンサルタントは自らの存在意義を問う問題なので直視できないだろう。勝ち組とか言ってる間は分かっていないという事だ。

投稿: a | 2006/03/04 15:35

ADSLの時と同じように、3番目の線でいくのでしょうね。通信費は下げてコンテンツで儲ける作戦。
Vodafoneはインフラ×技術力×なんで、端末と料金で攻めるしかなかったわけですが、SBが加わるとなるとコンテンツの強みを全面的に出しいくことになるでしょう。
でもSBが本当にコンテンツに強いのか、そもそもコンテンツって儲かるのかというと、はなはだ疑問なわけですが…。

投稿: iseeker | 2006/03/04 15:56

ボーダは本体が欧州企業だから規格も欧州系のGMSなのに、J-PhoneはPDC→W-CDMAとNTTと同じ路線でやってきたので、日本のボーダは身動き取れなくなってたわけで、国内企業が支配すれば、そういう捩れは解消するでしょう。

一方で、J-Phoneの路線をそのまま継承してもSBに未来があるとは思えないけど、ADSLの顛末からして、多分祖国の携帯メーカーを大大々的に採用し、端末価格を引き下げて利益をねらうのではないでしょうか。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2006/03/04 17:28

ケータイ無料なんかになるわけない。
「ガセネタ」
…永田かよ!

投稿: 通りすがり | 2006/03/04 18:30

パケット定額制とか、メール無料!とかやっておきながら、インフラへの投資がバカにならないからと言って配信遅延や受信ブロックを平気で起こすような業界ですからね。
期待しません、何も。

投稿: ヲッチャ | 2006/03/04 23:20

孫は「今回は無理な価格競争はしない」と
言ったばかりではなかったですか?

投稿: そん | 2006/03/05 00:52

>>「今回は無理な価格競争はしない」
それは初期投資3,000億での、段階的参入を予定していたときの方針でしょう。

投稿: 緑 | 2006/03/05 14:06

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