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2006/03/30

『ウェブ進化論』とGoogle論、ふたたび

 今朝からすごい勢いでアクセスが集まっていると思ったら、切込隊長のところからのアクセスでしたか。ごぶさたしておりました。久しぶりに読みでのあるエントリでしたね。

 よりによってのイベントの準備でおおわらわな時なので、あまりどっぷりとディープな反応を返すこともできないのだけれど、簡単にレスしておきたい。finalvent氏同様、『論座』の記事はまだ読んでませんが、というただし書きつきで。

 隊長の言い分をまとめると、「Googleの価値観にくっついて行きたい奴はがんばってくっついていきやがれ。でも別にGoogleだからって特別なことしてるわけじゃなくて、かつてMicrosoftがやっていたみたいに、単に一時代の産業の恣意的な価値観を象徴し、それを中の人が世界中に押しつけてるだけだからな。ま、市井の一般大衆はその程度に受け止めておくのが吉」ということかなあと思う。

 これについては、違和感は特にない。自分もそのつもりだし、FACTAの阿部編集長とかは梅田本に深掘り的コメントを寄せたうちのブログもまとめて「Google礼賛論者」と一絡げにして批判されているが、別に僕も礼賛してるつもりは全然無くて、ただ資本力も価値観押しつけの圧力も、ここで泡沫ブロガーが泣き喚いたところで始まらないほど強烈に強いので、隊長の言うように「Google神に代わる新しい神」がどっかから現れるまで首をすくめて待ってるしかないんじゃね?ぐらいの話だと思ってるだけ。

 それでも勘違いする人もいるかもと思うので言っておくと、『ウェブ進化論』の書評の第2回目の中で、

Googleワールドの原理というのは、Google様の指先1つでビジネスのルール変更が可能な世界なのである。そこに会社としての基盤を依存するなんて、どう考えても正気の沙汰ではない。もちろん、それでも何かあるかもしれないと思ってチャレンジする「はてな」のような会社には男気を感じるし、がんばってほしいと思うわけだが、少なくとも既存のビジネスでそれなりのボリュームを持っている「失うもののある」企業が、オープンネットの世界に今から挑むなど、戦略的にあり得ない選択肢と断言しても間違いないだろう。
 と、申し上げている。もし僕が本当にGoogle神の礼賛論者なら、こんなこと書くわけない。

 で、FACTA阿部氏のほうはというと、サイバーエージェントが昨日Google八分にあったことを取り上げた番外エントリで「大量虐殺にひとしい」と断じているが、そんなおおげさなものですかね。いつものグーグルダンスじゃん。一民間企業が、自分の価値観に合わない競合他社をハブンチョにしただけっしょ?何度も言うけど、競合する相手のダンスで自分の事業が振り回されるのが嫌なんだったら、Googleの影響の届かないビジネスにとっとと逝けっつーの。

 冗談めかして言っているが、Googleがネットの中だけの神だと思ったら大間違いである。Yahoo!が実質的に広告代理店機能を持つという決断を下し、Googleがどこを買収するつもりか知らないが市場から21億ドルものエクイティ・ファイナンスをした今、これからメディア・広告業界は巨大な資本力にあかせての大M&Aの時代に突入することが確定したようなもんなのだ。

 問題なのは、こうした変化が「『ウェブ進化論』は良書だ」「いや、ただのマンセー本だ」とか、そういう馬鹿げたペダンチックな議論の向こう側で黙って起こっている事実だということだ。この前の『ウェブ進化論』の出版記念イベントの後の飲み会でも話していたのだが、高尚な議論よりもエンジニアの書いたコードの方が圧倒的な説得力を持ってしまうのが、ネットの(そして阿部氏的に言うなら米国資本主義の)世界の習わしというものだ。

 既存メディアの人間が「大事なのは民主主義」とか「言論の自由を守れ」とか「ポピュリズムどーたら」とか議論している間に、Googleの中のエンジニアたちは黙々とコードを書き、スパムサイトの検閲を進め、メディア産業をブルドーザーで押し潰し、地ならしして新しい建物をガッツンガッツン建てていってしまうのである。Googleに地ならしされたくなければ、叫ぶより前に自分の考えを表したコードを書く(=ビジネスモデルを作る)しかない。コードが書けないなら、Googleの目の届かないところに逃げるしかない。

 どうもそのあたり、もう議論のための議論はお腹いっぱいというのが僕の正直な感想だ。議論してるヒマがあったら自分でメディアを作れよ、と思う。FACTAは昨年前半とかにブログ界で流行った「ブログとは何か」論みたいな、自己言及的な議論のための雑誌なのかもしれないけど、まあそれはそれで好きな人がいそうだが、もしそうだったら僕自身は読む気がしない。

 たとえGoogleが神だからといって、その神が企業であり、米国に実在する存在である以上、資本主義の原理から自由なわけがないというのは当たり前だ。そして、我々も同様に資本主義の中に生きている。であれば、Googleの長いしっぽの端っこを自分のビジネスのバリューチェーンに入れて商売するもよし、Googleとまったく違う価値観でネット上に新興宗教のようなサイトを作って客を集め、お金を回すもよし。好きに商売して生きていけば良い。

 ただし、Googleがこれまで一言も「言論の自由が大事」とか「ポピュリズムがどーたら」とかの高尚な説を自ら考えてのたまったことがない、無言のブルドーザー集団だということだけは覚えておくべきだ。神かどうかよりも、そちらのほうがずっと大切な事実(FACTA)である。

01:37 午後 ビジネス コメント (8) トラックバック (6)

「ソフトバンク×ボーダフォン」シンポジウム直前のご案内

 いよいよ掲題の「ソフトバンク×ボーダフォン買収を分析する」のイベントが、明日に迫ってまいりました。関係者一同、直前の準備追い込みで大変なことになっております。お客様のほうも、イベント当日まで待ちきれず、なぜか先週24日の夕方に会場においでになった方も数名いらっしゃったようです(笑)。

 今回のイベントには受け付け開始直後より予定座席数をはるかに上回る申し込みが殺到し、とうの昔に締め切って抽選を行い、申し込んでいただいた多くの方にお断りを申し上げざるを得ませんでした。にもかかわらず、相変わらず「まだ席は空いてるか」の問い合わせが毎日入って来ておりまして、対応している事務方の気が狂いそうになっています。一部の方には大変ご迷惑をおかけしておりますが、これ以上「まだ入れるか」とか問い合わせてこないでくださいお願いします(汗)。

 メディアの方々もテレビ、新聞、通信社、業界紙・誌、ネットメディア等々、二ケタに上る媒体から来られる予定です。なので、一般申し込み客に関してはかなりギリギリの(実はドタキャンを見込んで予定数を上回る)見通しで当選通知を出してます。18時開場・18時半開演の予定ですが、当選通知をもらったからといって開演時刻間際に来られても、会場内に入れない可能性が高いです。混雑を避けるため、なるべく早くにご来場ください。

 ここ数日間、パネリストの方々と打ち合わせをしていますが、当然ながらどの方も各分野で僕なんかとは桁違いに膨大な現場経験を積み上げてこられた方々だけに、「FMCでリバンドル化」なんていう簡単な結論に収斂するわけもなく、イベント開催前から侃々諤々の異論反論噴出状態。しかも皆さん、頭が切れすぎです。このとっちらかった真剣勝負状態をどうやってモデレートして話をまとめていくのか、渡辺さんの捌きの腕前が試される状況。裏方の方がドキドキハラハラしてます。

 あと、「事前準備何しておけばいい?」という質問を複数の方々からいただいてますが、ソフトバンクの記者会見の様子をもう一度見ておくか、パネリストの森祐治さんの書かれている「情報経済ブログ」の二本のエントリを読んでおいていただくのが良いのではないかと。以下、ご参考までリンク。

 なお、参加されるブロガーの方は、渡辺さんのブログにアップされた注意書きもざっと読んでおいてください。では、明日いろいろな方々とお会いできるのを楽しみにしております。

12:27 午後 ビジネス コメント (0) トラックバック (1)

2006/03/24

劇評『ベケットライブvol.7 見ちがい言いちがい』

ベケット・ライブ (c)宮内勝 前回「95年に演劇に絶望した」みたいなことを書いて以来、オンライン・オフラインでいろいろな人から感想をもらい、本当に久しぶりに芝居を観に行ってみようかという気になった。

 久しぶりだけに何を観ようかかなり迷ったが、世間的に「面白い」と言われるような芝居に行くのは止めて、あらゆる意味でその面白さを観る側がすべて引き受けなければいけないような芝居を観たいと思った。で、選んだのがサミュエル・ベケットである。

 スリーポイント ベケット・ライブ vol.7 『見ちがい言いちがい』(宇野邦一訳・三浦基演出・鈴木理江子出演、下北沢「劇」小劇場)

 知らない人のために少し説明しておくと、サミュエル・ベケットというのは、20世紀のアイルランド出身の劇作家で、「不条理劇」と呼ばれる演劇ジャンルの代表とされる人である。不条理劇とは何かについて説明し始めると長くなるので省略。要するに、一般の人が演劇を観てイメージする「(社会的なコンテクストによる)意味の付与」を拒否するような、支離滅裂な芝居のことを言う。

ゴドーを待ちながら    ベスト・オブ・ベケット ベケットの代表作といえば、ウラジミールとエストラゴンという2人の男が、いつまで経っても現れない「ゴドー」という人物が来るのを待ちながら舞台上で延々と無駄話やどたばたを繰り広げる「ゴドーを待ちながら」という劇(1952)だが、この芝居は日本の戦後演劇にも多大な影響を与え、今もいろいろなところで引用されたりしている。読めばそれなりに面白い戯曲なので、興味のある人は原作を読まれると良いだろう。

 「ゴドーを待ちながら」は、いつまで経っても現れない人物を、なぜだか分からないけど待つことになっている2人の男という、不条理な状況を描いた演劇ではあるが、この芝居を上演する場所や演出によって、2人の男がなぜ「待つ」のかという理由が外部の社会コンテクストから与えられることになる。

朝日のような夕日を連れて 例えば鴻上尚史が85年に「第三舞台」旗揚げで上演した『朝日のような夕日を連れて』は、ゲーム会社社員4人の新製品開発に舞台を置き換えることで、際限ない消費と戯れの日々に飽き足りなくて恋愛、新興宗教といった形而上的な「救済」を求める現代日本の状況を「待つ」人たちを描いた。また、90年代に哲学者のスーザン・ソンタグがユーゴ紛争のまっただ中のボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォで上演した『サラエヴォでゴドーを待ちながら』では、それは戦火の中で待てども来ないNATO軍を観る者に想起させた。

 劇それ自体に「コンテクストの意味」を持たない不条理劇は、観る者の社会的コンテクストをそのまま取り込み、映し出すことになる。「ゴドーを待ちながら」の場合は、「永久に来ない何かを待つ」という行為に対して、観客の側の社会的コンテクストが問われるのである。

この時代に想うテロへの眼差し 今回観た芝居は、後期ベケット作品の特徴である「観る側のコンテクストを問う」という不条理劇の働きを、さらに徹底している作品である。

 舞台上にはスピーカーや液晶テレビがあり、役者がしゃべっていない時にもそこから様々なトーンの台詞が流れる。または、スライド映写機によって意味があるようなないようなテロップが壁に投影される。役者もまた、それらと同じような台詞、シンクロする台詞、微妙にすれ違う台詞をしゃべることもある。

 しかし、それらの言葉は役者の動作とはほとんど関係がない。舞台美術も同じだ。壁には枕が1つ、つり下げられている。袖近くには鍬と椅子が置いてあり、舞台前方には写真アルバムと茶碗、スプーンが置いてある。舞台の中央右手には、枯れ木から出た枝にくくりつけられたハンガーに掛かったコートと、ブーツが置いてある。これらの舞台上のオブジェも、その存在や配置にも(おそらく)ほとんど意味がない。

 出てくる台詞、役者の動作、舞台上の物体には、それぞれに微妙に関係があるように思える場面もあるが、その意味合いが前後の言葉やシーンと何か関係があるわけでもない。観客の側は、舞台上で流れる台詞や動作、オブジェなどに何らかの関係、つながり、またはかすかな意味を求めようとするたびに、その次の瞬間にはその“希望”を断ち切られる。

 舞台上には台詞が流れ、役者が動いており、それらと舞台上のオブジェの微妙なかかわりは「ある」ように見えているのである。にもかかわらず、観客がこの劇の意味を自分のいる社会的なコンテクストの中に探そうとする、あらゆる意識さえもが否定される。

 そこで問われるのは、純粋にこの劇を(社会に依存しない)純粋な「自分」としてどう捉えるのか、言い換えれば「社会的関係を絶ったところでの“自分”は、どのようなコンテクストの中にこの劇を置くのか」ということだ。「面白くない」と思うことは自分自身というコンテクストが面白くないと言っているのと同義だし、「すごい衝撃を受けた」と感じることは自分が自分というコンテクストに衝撃を受けたのと同じことなのだ。

 幸い僕はこの芝居を観て、普段考えもしないような様々な感情が浮かび上がってきた。特に、液晶テレビに舞台上の俳優の姿を舞台上の監視カメラで撮影した映像が映るというシーンがあったが、これに何とも言えない不思議な気分を味わった。目の前には舞台をゆっくり歩いていく俳優の姿が見えているのに、自分はどうしてもテレビに映る俳優の後ろ姿に意識を取られてしまうのである。目の前に生の人間がいるのに、それを監視カメラとテレビを通じて見るほうに意識を取られてしまう自分とは何なのだろうか。うまく言葉にできないが、舞台を見ながらぼんやりとそんなことを考えていた。

 あらゆる意味で「意味を付与される」ことを拒否する芝居を観ることによって、僕は少なくとも僕自身の中のコンテクスト、感受性のようなものが、普段の仕事や日常の生活を生きることですり切れてしまってはいないことを確認できた。これから少し、その感受性を大切に守りながら、もう少し他の芝居にも足を運んでみようかと思う。

10:24 午後 演劇 コメント (28) トラックバック (1)

2006/03/18

日本史上最大のディールについての簡単な感想

sb_son いやー、今日は絶妙のタイミングだった。

 17時から始まったソフトバンクのボーダフォン買収の記者会見のストリーミングを聞きながらメモに起こしてブログにアップ。同時にそれをプリントアウトして見ながら、渡辺さんと夜19時から3/31の緊急イベントについての打ち合わせをした。ちょっと前までは、こんな世紀の記者会見など、一般の人間にはマスコミの報道を通じて以外、全貌を決してうかがい知ることのできないイベントだった。今では誰でも会見を同時に見られるし、マスコミより先に感想記事を書いてしまうことができるし、すぐに作戦会議(笑)に使うこともできる。感慨もひとしおだ。

 僕はというと、打ち合わせを終えて帰宅してから、もう一度オンデマンド放送の記者会見を見直していた。それでちょっと思ったことをいくつか、書き残しておこうかと思う。

 今日の発表を聞いて、まず一番びっくりしたこと。それは、「この話、資金調達が最初の難関だろう」という僕の予測が見事に外れていたことだ。

 報道陣の撮影後、ボーダフォンのモロー氏が去ってから最後の質疑応答で、孫氏は「今回の件が知られて以来、国内外の金融機関から、予定額の何倍ものオファーをいただいた。非常に積極的で、金利も十分に魅力的だった」とコメントしていた。

 ソフトバンクに金融機関が、“魅力的で積極的なオファー”?!最初に融資してくれた興銀をメーンバンクから蹴落として金融機関を天秤にかけ、銀行業界から総スカンを食らって野村證券出身の北尾吉孝氏とともに株式市場からのエクイティ・ファイナンスに社運を賭けた90年代のソフトバンクを知っている人間からすれば、この10年の金融業界の様変わりは、まさに「隔世の感」とも言うべきものだ。

 あるいは、景気加熱×金融量的緩和解除直前で空前のじゃぶじゃぶカネ余りという絶好のタイミングで、成熟産業の巨大企業に売却を持ちかけて首を縦に振らせた孫社長の天才的戦略家ぶりのなせる技だったのかもしれない。おそらく彼はVFのサリーン氏に囁いたことだろう。「今このタイミングを逃せば、我々が1兆円をはるかに超える資金をご用意することは、もう永遠にできないかもしれませんよ」と。

 それにしても、ファイナンスに溺れ、あるいは振り回されるベンチャー経営者があまりにも多い中で、ファイナンスをあくまで「自分のビジョンを達成するための戦略ツールの1つ」としか見なさず、徹底して「市場を振り回す」側に回る孫氏の豪胆さには、心底恐れ入るばかりだ。

 あと、12日から14日にかけて、「サーベラスやKKRがカウンターオファーを出した」という投資銀行筋経由の情報が出たのは、VFがSBのオファーを受け入れることをほぼ固めていたからだったんだろうね。つまり、VFに門前払いを食ったので、VF株主向けにカウンターオファーの金額をアナウンスすることで、「これ以上安い価格でSBに売るようなら訴訟を覚悟しろよ」という脅しのつもりだったのだろう。残念ながら、その程度でぐらつくほど孫社長の信念と準備はヤワではなかったということのようだ。

 それから、VF買収の戦略面からみた分析については、詳しくは3/31のイベント席上に譲るとして、ここでは簡単に会見の感想だけ書いておこうと思う。

 記者会見の発言をテキストに起こしてみて、孫社長は一見さらっと説明しているかに見えて、実はその言葉の1つ1つに周到な意味を持たせているということが改めてよく分かった。さすがだと思う。このテキストを読み抜くことから、今後のSBの方向を予想する作業が始まるといっても過言ではないだろう。

 分析で分かることはたくさんあるが、ここではその中の1つだけ書いておく。孫社長が記者会見で言っていたSBのVF買収に関する戦略面の説明(ファイナンスのスキームやそれぞれの持つ顧客基盤の規模の話を除く)は、要約すると結局3つに絞られる。1つは「VFはSBグループと一緒になることで、基幹網の共有化によるコスト削減が可能」、2つめは「ヤフーが総力を挙げてモバイル向けのコンテンツ供給に取り組む」、そして最後に「SBは2000億円以上のカネは出さないし、それ以上のリスクもかぶらないから株主は安心してくれ」という3つだけだ。これ以上、何も言ってない。

 「コスト削減可能」ということについて、その節約できたキャッシュを新たなネットワーク設備への投資につぎ込むのか、それとも価格戦略に使うのか、それ以外の用途なのかには一切触れていないし、「ヤフーが総力を挙げてモバイルコンテンツの開発に取り組む」というのも、それを「VFのために開発する」とは一言も言ってない。言っているのは「開発する」ということ、そして「4200万のヤフーユーザー、1500万のVFユーザーの両方に相互のシナジーが起きる」ということだけ。ヤフーユーザーの携帯電話保有者を、すぐに全員ボーダフォンに買い換えさせてみせるとは言ってないところが、ミソである。

 おそらく、この「会見で言及しなかったポイント」にこそ、孫社長の意図がひそんでいると見て良いのではないかと思う。おおかたの出方は当初の想定内だったと思うが、あの会見を聞いて孫氏の隠れた意図に気が付いた人はあまりいないのではないか、と感じた。

 ここから先の分析は、3/31のイベントでさらに突っ込んで考えてみたいと思っているので、お楽しみに。ちなみに、渡辺さんのところではイベントの申し込みは既に締め切りましたが、グロービスの一般向け申し込みの枠がまだ少々空いているそうなので、参加ご希望の方はなるべくお早めにお申し込みください。

 なお、ネットメディアの記事リンク集を作ってくださったブログと、資金調達や資金の流れのポンチ絵を作って掲載していたブログがあったので、最後にご紹介しておきます。ご参考にどうぞ。

02:54 午前 ビジネス コメント (12) トラックバック (14)

2006/03/17

ソフトバンク孫正義社長 会見質疑応答

続いて、質疑応答についても速記しました。聞き取れなかったところもあるので、参考程度に。


質問:

Q:VFというブランドはどうなっていくのか。また、ビジネスモデルについて、水平分業というお考えが以前にあったと思うが、ハンドセットの調達も含めてどうするのか。また新規事業として割り当てられた周波数帯についてどうするつもりか。

孫:ブランドについてお答えします。基本的に新しいブランドに切り替えますが、移行期間として半年~1年ほどかかると思うが、お店の看板掛け替え、印刷物などを徐々に新しいブランドを浸透させていきたい。ブランドについてはできるだけ早い時期に決めたい。これから検討する。

水平分業については、ヤフーへの質問ですか?

Q:ヤフーと端末と両方教えてください。

井上:ヤフーについてはBBの時に経験していますが、インターネットユーザーに広く提供していくということと、VFのユーザーの方々にキャリアに近いところにいるために利便性を提供できる部分があると思うので、社内ではT字形というが、横に広くサービス提供する部分と、会員の顧客に深いサービスを提供する部分とに分けていきたい。

孫:端末はこれまで通り多くのメーカーさんから調達することになるが、新しいテクノロジーや使い方についてはもっともっと深く関わっていきたい。周波数については新規事業者として1.7mhzを得たが、新規事業の部分を残すか、それとも完全な既存事業者としていくのかは総務省と話し合って決めていきたいと思うが、1.7mhzを返すとしたら、VFは既存事業者としてイコール・フッティング、高速データサービスなどをやっていくのに必要な周波数を持っているのか、800mhzなど浸透率の良い周波数についてはどうなのかというのをよくよく議論して、収まるべきところに収まるのだろうと思って検討していきたいと思っています。

Q:念のため。手放す手放さないについてはどうお考えで。

孫:よく相談のうえ、ということになるかと思います。

Q:(ITmedia)新体制ですが、津田会長・モロー社長という体制は残すのか、SBから新しい役員は入るのか。また新規で一からやったほうがIPネットワークは作りやすいとおっしゃっていたと思うが考えは変わったのか。

孫:本当に買収できるかどうか、今日まで議論していたので役員体制まで考えている余裕がなかったので、これから考えていきたいと思っています。新規ネットワークを一から構築、MVNOなどあらゆる可能性を検討すると、私は一貫して言ってきたつもりですが、新規事業でのみやるという印象を与えていたとすれば、誤解を招いていたかもしれません。私は携帯は必ず参入するつもりであると、何度も聞かれるたびに言ってきました。今後も何でもありうるということは申し上げておきます。ただ、本業のデジタル革命の部分は変わりません。この幹の部分はそのままです。

Q:(NHK)VFは日本でいまいちだったわけだが、これをどのように分析し、NTTに対抗できるように強化していくのか、一言で言うとというのをお話いただければ。

孫:少なくとも3Gについてはつながらないところが多すぎるという声があったと認識しています。これについては徹底的につながるようにこだわってネットワークを強化していきたい。これはまったくの新規で作るのに比べれば、はるかに苦労が少なく、早くできると考えている。2つ目はコンテンツだが、ドコモ、auに比べて少なかった。これはヤフー、SBグループ総力を挙げて一気に強化したい。3つ目、営業についてはSBは営業を非常に重視しており、それを強化したい。ただ今回は格好良くやりたい(笑)。泥臭くやると持っているのが恥ずかしくなるので、格好良くスマートにやりたいと思っています。端末デザインについては海外端末への意識が強くなりすぎていたと思いますが、モローさんが戻ってこられてからかなり改善しているが、今後一気に強化していきたいと思っている。この4点です。

Q:利用者にとっては料金がどうなるのか興味があるところですが、どのようにしていくか。

孫:少なくとも料金がドコモ、auに比べて高いというイメージはユーザーの中にはないのではないかと思いますが、新たな価格戦略についてはコメントすべき時期ではないと思っています。

Q:(NCC)2.5GHzのサービスについてと、ボーダフォンがこれまでやろうとしていたこと、MVNOについての見通しを。

孫:WIMAXについては、これまでいろいろ実験をやってきておりますので、VFの買収によって早く展開できることになってきたので、これは進めていきます。またMVNOについても新たな顧客獲得の手段と思っていますので、積極的に検討していきたい。

Q:(朝日)価格をどのくらい武器にして戦っていくつもりかを知りたい。ADSLでやったような価格破壊者として臨むのか、寡占クラブの一員としていくのか。

孫:まだコメントすべき時期ではないとお答えした通りです。

Q:(FSBI)設立する新会社の出資比率はどうなるのですか。それと1.75兆円の買収額は、LBOとか各社の出資を足していくと上回ると思いますが。

孫:議決権のある株式はソフトバンクが100%です。また、97.5%の英VF保有株を1.75兆円で買収するわけですが、VFJが一部外部からの借り入れが1200億円、英VFからの融資が1400億円だったかあります。その部分をはずして考えると、英VFから譲り受ける株式の価値は1.75兆円。ただ、新会社が借り入れするものの中には、親会社VFからの借り入れのスライドもあるということです。

Q:ノンリコースローンについては、SBの子会社負債として出てくるということでしょうか。

孫:連結では入ってきますが、返済リスクはあくまで遮断されていると。SBの株主から見るとリスクマネーは2000億円で打ち止めで、新会社がキャッシュフローで負債を返済していくということです。

Q:(NSSB)既存借り入れや既存融資の債権者については不利な立場になるかと思いますが、もう少し詳しく説明してください。

孫:既存の社債が1000億ちょっとありますが、これは社債のまま引き継ぐのではないかと。最終調整を行っているところですが、資金調達の中で置き換えるかどうかも調整中です。残りの債権者はVFUK本体から1000億円ちょいでているのですが、それは新会社の1000億円の劣後債として残すということにVFと合意しました。それ以外の債権者はほんの数十億円あるということですので、今回の調達で借り換えて返済ということになるのではないかと思います。

Q:(CNBC)2点。現在の各社の料金体系について高い、安いどのように考えていますか?

孫:さっきと同じ趣旨の質問ではないかと(笑)。まだコメントする時期ではないと、時期が来ればお話しさせて頂きたいと思っています。

Q:3Gのつながらないところが多いという話でしたが、年間いくらぐらいの設備投資を考えていますか?

孫:これまで2000億円規模の投資をVFではやっていますが、同じレベルはやっていくと思います。それに加えて3Gのつながりにくいところへの補強、ユーザーキャパシティも増やしていきたいと思っています。

Q:(朝日)交渉の過程について、モローさんが空港に来るのを待ちかまえていたと聞きましたが、モロー社長は一貫して売却の意志がないと言っていたのが1カ月ほど前に転換した理由を聞かせてください。

モロー:MVNOについてはこれまでも交渉していたが、空港で待ちかまえていたというのは、そういう熱心さを象徴する話です。また、売りには出していなかったけれども、孫さんから話をもらって、私どもとしても株主に価値がある話として検討するべきと考えたということでした。

孫:昨年早い時期までは自前でやりたいと考えており、暮れにかけてはMVNOを交渉していましたが、よく考えるといっそ買収したほうが早いかなと思って私のほうから今年に入って申し入れた、ということです。

Q:ヤフーとの関係でコンテンツを拡充していくということでしたが、10月にはMNPが予定されていますがいつ頃にやるんでしょうか。

孫:何をするにも時間がかかるのですが、本格的な展開ということでいうと半年ぐらいはかかるかなと。またそこから徐々にふくらんでいくという、ただ半年後からは急に積み上がっていくということで。

井上:そんな感じにするようにがんばります(笑)。

Q:(quick)子会社を作って買収というのは、本体での買収には不都合があったのでしょうか。またノンリコースローンはコストが高くなると思うのですが、なぜそこまでして切り離したのか教えてください。またこれでケーブルとワイヤレスとを手に入れられたわけですが、当初から全部まとめて買った方が良かったのではないかと思いますが。

孫:子会社での買収は戦略的な意味があるわけではなく、手続き上の意味だけです。BBモバイルが1.7GHzの周波数をいただき、人員も研究開発もいるわけですが、このチームがそのまま所有するというのが自然かと思っている、最終確定ではありませんがその方向で検討しているということです。またノンリコースのことですが、SB株主から見ると財務リスクは遮断できると。直接リスクを負わなければいけないのは2000億円というところで完結できるほうがいいと思います。また、VFJに3000億円のEBITDAがありますので、それを使うほうがコストアップにはならないという判断です。日本テレコムとJフォンを一括で買わなかったのは、その時にはそんなにお金がなかったというのがシンプルなお答えです。

Q:(FT)PEからのオファーも出ていたと思いますが、VFグループについては他のオファーも検討されましたか?しなかったとすればなぜですか?

モロー:検討しましたが、SBと生み出せる価値を見ますと、この価値に満足できるし、それを生み出すことができると思います。だから取締役会は孫さんのオファーを受け入れると決めたわけです。

Q:(日経)無議決優先株式については、将来議決権が発生するものなのか、また配当ルールはどうなっているのか。また

孫:無議決権株式については、7年の累積EBITDAが3.35兆円を超えたら、VFとヤフーは新会社の普通株式を入手できる権利がついています。VFJは、同じ条件が起こった場合新会社の10%の普通株を取得できる条件があります。またヤフーは新会社の4%の普通株を入手できることになっていますので、SBの持ち分は合計14%のダイリューションが起こる可能性があるということになります。また配当は(聞き取れず)。ブリッジローンの後のパーマネントローンについてはこれからシンジケーションを組成します。その中で調整していきます。ただ大半のお金はシンジケーションになります。一部流動化、あるいはリースが入ります。(以下略)

07:01 午後 ビジネス コメント (2) トラックバック (0)

ソフトバンク孫正義社長 会見速記録

期間限定で削除します。とりあえずネット中継を見ながらメモったのをアップ。最初のほうとか、聞き取り間違ってるところもあるかも知れないので、使う時には注意・裏取りを必ずしてください。


ソフトバンクの孫です。これまで創業してから20年、いろいろな事業を開始・買収し、5~6年前からブロードバンド事業を開始し、一日も早く携帯電話事業をやりたいと強く思っていた。いろいろな選択肢を検討してきた。自前の新規ネットワーク、MVNO、買収など様々な検討をしたが、今日正式にVFJの株式を買収すると決定した。少し待たせたのは契約の文言についての詰めをしていたから。この後アルーン・サリン氏が電話であいさつをしてくれることになっている。無事回線がつながれば。

買収成立まで随分交渉したが、SB・VFの両方から見て納得のいく内容になった。VFから見れば日本からの撤退ではなく、私どもと新たなジョイントベンチャーを設立するという方向で検討した。

(サリーン氏の電話コメント)

VFJの概要については書類でお渡しする。買収の方法は、SBの全額出資子会社が行う。エンティティについては、詳細を詰めているところ。VFJの株式の97.7%を、新会社が約1兆7500億円で買い取る。2.3%は少数株主がいるが、TOBで買い取る予定。今日調印し、1~2カ月後までに詳細を詰める。新会社はSB自身が2000億円出資で新会社を設立。

そこから無議決優先株式を発行して、ヤフーに1200億円、英ボーダフォンに3000億円割り当て、さらに英VFに1000億円の劣後債を発行。そこに銀行等からLBOで1.1~1.2兆円を借り受け、VFJを買収する。

まず最初にブリッジローンをやり、買収後に新会社が長期の社債、借り入れ(シンジケート、メザニンローン)を使って設備投資をやっていく。これらの借り入れのすべてはノンリコースとなる。SB自身は一切の返済義務、つまり借り入れのリスクを負わない資金調達方法となる。今年9月までに長期借り入れに転換する。従来のSBグループは連結有利子負債が4700億円。過去9カ月の連結EBITDAを1年分に換算すると、1200億円ある。これで従来の順有利子負債を返済し、新たな有利子負債は返済原資を分離し、VFJの年3000億円の営業キャッシュフローを使って独立返済することになる。

売上高で2.5兆円、回線数で1500万。これにY!BB、日本テレコム、ヤフージャパンなどをミックスしていく。私がイメージした「デジタル情報革命」のための構えが一通りできてきたという感じ。

NTTグループ、KDDIグループと比較して、SBグループの世界300社の企業が、デジタル情報革命のパワーとして役立ってくれる。

買収メリットとして、顧客基盤(国内1500万、JVで1億のVFグループ)がある。新規参入に比べてはるかに多くのベースからスタートできる。それに加えて、VFはバックボーンのネットワークを自前で持っていない。日本テレコム、Y!BBなどがもつ自前のネットワークを、VFも使うので、この部分が大きなコスト削減になると考える。

さらに、アクセス回線のフルラインナップがそろい、いつでも誰でも情報のやり取りができる。NTT、KDDIは音声については立派なネットワークを持っているが、データについてはVFとSBグループのほうが他のグループよりも先を行っていると言える。

BBネットワーク、モバイルネットワークが、IPのネットワークで全部つながる。オンデマンドでユーザーの望むものが望む時に使えるというものになる。ネットワークの内容は、WBMのネットワーク、超高速光ネットワーク、世界的に見てもこれだけの完全なネットワークを持ち、しかもコンテンツを持っているグループは他にないと自負している。

端末調達は自前でするとなると茨の道だと思っていたが、VFとの提携で端末品揃えも一気に加速できる。もともとSBが考えていた機能を盛り込んだ端末をこれから続々用意していきたい。

次にシナジー効果だが、お客様にトータルパッケージを提供できる。

営業体制は、VFに1800店の専門ネットワークがある。一方、SBは家電量販などに強いネットワークがあり、ヤフーも強い代理店網を持っている。ブロードバンドも携帯も両方でたくさん売れる。インターネットユーザーを獲得しやすくなると考える。

ヤフージャパンとのシナジーは、コンテンツの販売だ。井上社長に発表してもらうが、ヤフーの強みを全面的に活用していきたい。モバイルコンテンツの充実を図って行きたい。月間300億PVを超えるトラフィック、4200万人のユニークユーザーと、1500万人のVFのユーザーが相互のシナジーを起こせれば大変大きなエンジンになると思う。ちなみに、ドコモの公式サイトのコンテンツは5800、KDDIは4300だが、ヤフーの携帯コンテンツはこれをはるかに超える量、インターネットのサイトも含めると何億サイトという、桁違いのサイトがあり、これらをスムーズに携帯で使えるようになると、インターネットユーザーから見て大変満足できるサービスが提供できるのではと思っている。

最後にVFグループとSBグループでジョイントベンチャー設立を検討するというLetter of intentを調印した。世界を見ると、VFのユーザーは5億人。世界の携帯ユーザーの4分の1がVFのユーザー。このVFグループとコンテンツを持つSBが世界的なジョイントベンチャーを作れないかという提案があり、ちょうどそれは作りたいと思っていた、という返事をした。その方向で検討していくつもり。

世界的なVF live!のユーザー数は3000万だが、潜在的なユーザーの数はVFが圧倒的に大きく、SBの持つコンテンツとVFが組めば、世界にインターネットユーザーの倍いる携帯ユーザーへの道が開けると考える。SB、VFグループを足すと膨大な量の市場があり、チャンスが開けてくると目論んでいる。

たとえば、Eコマースではオークションやショッピングがあるが、ドコモやKDDIはこれらのECからの収入はほとんどない。しかしヤフーはこれらの手数料収入が合計で600億円ある。VFと組めば将来のマーケットは大変大きい。日本のモバイルポータルを世界のポータルにしたい。

VFLive!は、VFJで作ったものがベースになって欧州などでも展開されている。日本の携帯事業を我々に売却するということは、VFにとって先進的なマーケットとのつながりがなくなるというのが、交渉の最初に言われていた。もしVFとSBが組めば、先進的なマーケットで我々がもっと強化したサービスを、VFのワールドワイドのサービスに展開できれば、撤退ではなく強化だということで思惑が一致した。

固定と携帯の融合で、我々が目指すのは「ユビキタスな総合デジタル情報カンパニー」。決して「総合通信会社」ではない。そういうふうに言わないで欲しい。それは我々の志からすると、ちょっと小さい。

06:21 午後 ビジネス コメント (0) トラックバック (1)

2006/03/16

油断も隙もないですね

 うわ、金融界って本当に油断も隙もないな。一瞬「1兆5000億円なんて安すぎ」って思ったのは僕だけじゃなかったっぽい。サーベラスが1兆8000億円でカウンター・オファーを出してきましたよ。

 米投資会社が買収提案・ボーダフォン日本法人(NIKKEI.NET)

 これでSBは1兆8000億円以下の提案はもうできなくなった。シナジーがどうたらとか、関係ない。これより下げたら英Vodafoneの株主が黙ってないだろう。この調子だと、3月中にはクローズまでたどり着かないかもしれませんね。

 ファイナンス的には、もうソフトバンク自身が増資とかMSCB発行とかなんかして、3000億円ぐらい余計に積み上げるしかないだろう。でなければ、カーライルとか別の投資ファンドと連合軍を組んで、自分は業務提携モードに切り替えるか。ここに北尾さんがいれば、敢然と戦いに出ただろうが、今のSBにはこれだけの資金調達スキームを描いてマーケットに売り込める人は、果たしているのだろうか。

 ちなみに、その後もこの件に関するエントリをアップするブログはあちこち巡回してチェックしているが、昨日今日と、面白いエントリが上がったのでそちらをご紹介しておく。はてなダイアラー歴6日目にして突然ストレートの超剛速球を投げ始めた、コンサルタントのクロサカタツヤ氏のブログ。

 ボーダフォンとソフトバンクの行方(1)、 ボーダフォンとソフトバンクの行方(2)(another aspects from txk)

 クロサカ氏は、これまでウェブ上に出たいろいろな意見を的確に整理したうえで、PCの世界のYahoo!に比べて、VFのビジネスの「リアルな個人とひも付いている」というアフォーダンスがPCインターネットの側の事業リスクを低減する、と見る。そのうえで「(ソフトバンクは)ビジネスモデル次第で、今の価格帯と同じ端末やサービスで、既存のビジネスモデルを壊すことができる」と喝破している。すごい。

 ちなみにこのブログ、梅田氏の『ウェブ進化論』への池田信夫氏の書評をばっさり切った批評など、(4日分しかない)過去エントリもものすごい読み応えなので、いきなり通信業界関係者の必読ブログにのし上がりそうな予感。

 というわけで、あちこちで絶望したり投げ出したくなったりしている人もいるようだけれど、僕自身はなんだかんだ言いつつ今日もますますブログの世界から目が離せないのであった。

03:46 午後 ビジネス コメント (19) トラックバック (3)

2006/03/14

言葉の磁場

 以前のエントリにも書いたことがあるが、93年にタイで出家していたことがある。その理由は、1つには高校時代のホームステイ先のホストマザーを喜ばせたいということだったが、もう1つはこちらのサイトで彼が書いているようなこととそっくりな理由だった。彼が91年、そして僕が93年だから、京都と東京という違いはあれど、あれはちょうどあの時代の共通な空気だったのかも知れない、と思う。僕はたまたまタイで出家ができた。彼はそれを日本でやりたいと考えた。違いはそれだけだったのだろう。

 僧侶だった間、僕はずっと自分と世界とのかかわりの法則について考えていた。当時の僕の頭の中は、マルクスとかデカルトとかカントとかヘーゲルとかヴィトゲンシュタインとか、そういうものでいっぱいだった。そして、タイで先輩僧侶に向かって「マルクスはこう言っている」とか「ヴィトゲンシュタインはこういう説を述べている」とか、つたないタイ語で必死に説明して、西欧の哲学の巨人たちとブッダの教えとを比較して、どちらの矛が盾より強いか一生懸命試そうとしていたのだった。

 2カ月の間、ずっとそういう論争を先輩僧侶にふっかけ、「どうしてそうなるの?」「どうしてそれが正しいの?」と質問しまくっていたので、やがて寺院の中で僕はみんなからからかい混じりに「プラ・ダインガイ(どうして坊主)」と呼ばれるほどになった。他のタイ人の同僚僧侶たちは、中学・高校の国語でパーリ・サンスクリット語の基礎も習っているから、毎日唱えるたくさんのお経の意味がふつうに分かっているのだが、僕にとってはそれは暗号みたいなものだったので、自分の理解できる範囲の知識を元に質問し、それに理解できる範囲のタイ語で得られる知識をぶつけて考えるしか、仏教を理解するための方法がなかったのだ。

 僕が慕っていた先輩僧侶はとても人格の優れた人で、(マルクスぐらいは知っていたかもしれないが)ヴィトゲンシュタインとかヘーゲルとか、聞いたこともない哲学者のことを説明する僕に黙って耳を傾けては、「君のいうその哲学者はきっとこういうことを説明したかったのだろうと思うが、私の理解ではブッダはこのように世の中を見ていたと思うよ」と、静かにその議論につき合ってくれていた。

 延々と続いていたその議論に終わりが来たのは、以前のエントリで書いた虹色の渦巻きが現れて、消えた時だった。その時、僕の中で何かが氷解したのだ。溶けた氷の中から出てきたのは「宗教とは、個人的な問題だ」ということだった。それは社会と自分との関わりを「自分の側」から説明するのに役に立つが、「社会の側」からの説明として押しつけられることはないし、いかなることがあっても押しつけられるべきものでもないのだということだった。

 実は僕はその前年に宗教ではないが、ある非常に強烈な「宗教的」な体験をしていた。そこで、カリスマティックな人物が発する言葉というのが、ときに周囲の人々の意識をすべて巻き込み、その人々がその言葉を借りることでしか思考できなくなるほど強烈な「磁場」を形成すること、そして一度巻き込まれてしまった言葉の磁場とその人々の輪の中から逃れるのは、実際のところ、自分というアイデンティティを一度ほとんど喪失することになるため、死ぬほどの苦しみと努力を必要とするものだということを経験した。

 結局僕自身はある日突然その輪から逃げ出し、カリスマ本人はもちろん、自分と親しかった関係者からの電話や説得にも耳を貸さず、一切の関係を絶つという暴挙に出ることで、半年ほどかけてようやくその言葉の磁場から抜け出て「自分自身の言葉で思考する」ことができるようになった。それまでは、確かに思考のレベルはスリップストリームに入ったかのように凄まじく上がり、早くなるのだが、その一方で自分の考えることはすべてそのカリスマな人物の言葉の範疇でしかなく、まるで自分が自分でないかのようにものを考えていたのだ。半年間、必死でそのカリスマの使っていた言葉を使うのを自分に禁忌と課し、ようやく自分の言葉を取り戻したと思えるようになった。だから翌年のタイでの出家は、自分の思考だけでなく、世界と自分とのかかわりをもう一度自分の手元に取り戻すための試みだったのかもしれなかった。

 そういう経験をしたものだから、彼が資本主義の外部性としての原始仏教に心を動かされた気持ちもよく分かるし、頭が切れる人だったからこそ、カリスマ本人を目の当たりにして自分が急にものすごいスピード、レベルでものを考えられるようになったことに感激し、その虜になっていった気持ちもものすごく良く分かるし、さらには周りの人に何度諫められてもそこから何年も抜け出られなかった理由もよく分かる気がするのである。つまり、彼と同じあの時代、彼と同じあの空気を吸って生きていた自分が、今はたまたまこういうふうに生きているけれども、もしかして何かのはずみに彼であったかも知れないと強く思うのだ。

 もちろん彼と僕が違っていたのは、宗教の場所を「大学の夏休みに行って2カ月で戻ってくるべき場所」と思っていたか、それとも「出家信者」という生き方を自分の人生の中軸に据えてしまったかということでもあるし、それはつまり「宗教とは個人的な問題だ」という悟りを得られなかったという不幸だったかも知れない。そして、その結果起こってしまったことに対して、過去を自己批判し続けない限り、常に社会的な制裁を受け続けなければならないという重い十字架を負ってしまったことかもしれない。ただ、このことについては、理不尽と言おうがなんと言おうが、日本社会というのがそういうものである以上、僕にはどうすることもできないし、仕方のないことだと思っている。

 彼らが本当に自分自身の信仰者、ここで言う「出家信者」としての人生を貫きたいと思うのであれば、そういう存在を地域のコミュニティーによってきちんと受け止められ、包み込んでもらえるタイやビルマに“独りで”行けば良いと思うし、宗教的なるものに対しては常に狭小で重箱の隅まで資本主義的でどうしようもなく現世崇拝的な日本という社会において、無理矢理自分たちの宗教を「社会化」させて生きようとするのはどうかと思うこともある。それは「出家信者」と称する彼ら自身に、実際にはエゴイスティックな自意識や嫌悪する日本社会と同じように狭小な仲間意識ばかりが強烈で、本当に信仰者に求められるべき「社会」へのまなざしが根本的に欠けてしまっていることの証左でもあるのではないかと思うからだ。

 ただ、僕という「個人的」な問題の範疇で言うならば、「あの時代において、僕はもしかすると彼であったかもしれなかった」という当事者意識のもとにこの出来事を受け止めるほかないのだと思っている。そして、こういう社会の中でひっそり生きるあらゆる宗教者、本当の信仰者の「こころにいつも太陽の」あらんことを祈るほかない。

11:49 午前 日記・コラム・つぶやき コメント (15) トラックバック (9)

2006/03/09

3/31に緊急イベントやります:ソフトバンク×ボーダフォン

 1つ前の「ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ」というエントリを書きながらいろいろなブログに目を通したが、やはりブログの世界と新聞やテレビの世界とでは、この問題への切り込みの深さが根本的に違うなあと思った。

 マスメディア、特に新聞は元ネタとなるニュースが出てこないと、それこそ1行も記事が書けなくなる。本当はこの問題をきっかけに通信業界が今どんな役割を産業全体の中で果たすようになってきているのか、ソフトバンクの孫正義という経営者はどういう戦略性を持ってこの買収を進めようとしているのか、分析すべきことはたくさんあると思うのだが、どうも話がそちらに行かない。

 テレビはもっと表面的だ。どこかのブログでニュース番組か何かのとんちんかんな解説を嗤ってるのを見たが、こういうファクトもあまりなくて「どこからどう語れば良いのか分からない」出来事に、的確な解説を加えるためのフレームというか時間というのがテレビにはないから、もう何がなんだか分からなくなって、結局「あまりにも深くて重要な問題すぎるがゆえに大きく扱えない」という、訳の分からない状況に陥ってしまう。

 ただ、最近の僕は「マスメディアがやらない」ことに対する文句を言うのではなく、彼らがやらない、やれないことは自分でやろうと思うようになってきたので、早速やってしまうことにした。この件でCNETのコラムニストの渡辺聡さんといろいろ連絡を取っているうちに、「きちんとイベントのかたちにして全部解説しちゃいましょう」というアイデアが出てきたので、僕もお手伝いさせていただくことにしたのだ。

 3月31日(金)の18:30から、マーケティング戦略論やコンテンツとメディア、情報通信などの専門家の方々を集めて、パネルディスカッションを開こうと思う。渡辺さんに専門家の方々のモデレータをお願いし、僕自身はブログでの告知と、イベントの設計、運営などの裏方業務に徹することにした。イベントの詳細はこちらのリンクをご覧ください。概要は、以下の通り。

■タイトル
 グロービス+Emerging Technology研究会共催(グロービス先端セミナー第1回)
 「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる120兆円情報通信産業の波乱の行方」

■パネリスト:
 森祐治 氏(株式会社シンク 代表取締役)
  元NTT、マイクロソフト、マッキンゼーのご出身で、情報・メディア論がご専門の方です。

 降旗淳平 氏(日経ビジネスアソシエ 副編集長)
  日経エンタテインメント、日経ビジネス、日経ビジネスアソシエで15年以上エンタテインメントやコンテンツ・メディア業界をウォッチされてきた、メディアビジネスの裏の裏までご存じの方です。

 塩川博孝 氏(アスクドットジェーピー社長兼CEO)
  日航、外資系広告会社、外資系損保などを経てネットベンチャーの社長や取締役をいくつも兼任されている「プロ経営者」の方です。

■モデレータ:
 渡辺聡
 (渡辺聡事務所・Emerging Technology研究会主宰・CNET「情報化社会の航海図」)

 会場運営の費用などの都合で参加費を少々いただくことになるが、たぶんその金額をはるかに上回る深い内容をご提供できると思うし、集まる人たちとの貴重なネットワークを得られる場にもなると思っている。年度末の金曜日という厳しいタイミングになるが、実際にはソフトバンクから今回のディールの詳細が発表されるタイミングにも重なると思うので、目の前で起こっている事柄が情報通信ビジネスの業界全体にどう波及するかをリアルタイムで読み解くという、スリリングなイベントになるはずだ。

 当日は参加者とパネリストの質疑応答の時間もなるべくたくさん取りたいと思っているので、「我こそは」と思う方にはぜひご参加の申込みをしていただければと思います。よろしくお願いします。

08:57 午前 メディアとネット コメント (0) トラックバック (3)

2006/03/04

ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ

 表題の件、あちこちのブログで猛烈な勢いで分析がアップされているので、ちょっとリストアップ+一言コメントを付しておく。

 リリースが金曜日深夜だったので、ビジネス系メディアはネット媒体も含めて一報を伝えた後に沈黙。もっとも身近な、そして国際競争力があるんだかないんだか分からない巨大業界のルールが、一夜にして変わろうとしている時に、まったく役に立たん。まあ、関係者に必死で取材しようとしてるんだろうけどね。そんなときに、ブログは遠慮無くどんどんさまざまな角度から分析がアップされる。本当に素晴らしい。今後新しい分析記事が出てきたら追加していく予定。 (3/5 2:30、3/5 7:30、3/5 11:20、3/6 0:45、3/6 4:00追記)

 ●ボーダフォン1.7兆円でソフトバンクへ身売り?日経が「大筋合意」と報道(番号ポータビリティ対策)
 ●ソフトバンクは2兆円も出せるのか? ボーダフォン買収(番号ポータビリティ対策)

 SB系の媒体に書いているライターの三上洋氏の分析。今回の買収の最大の狙いは「端末メーカーとの関係を手に入れられること」という指摘はなかなか興味深い。あと、2兆円の買収資金は新株や社債の発行、ヤフー株売却などで捻出するんじゃないか、とのこと。付け加えるなら、後はボーダフォンの資産を担保にしたLBO(Leveraged Buy-Out)ですよたぶん。これなら何とか1兆円は調達できると思われ。

 ●ソフトバンクのボーダフォン買収には反対します(ケータイAlternative)

 同じくライターの三田隆治氏。こちらは「いかにSBといえども、これだけの巨額の投資をしておいて料金を下げるわけにはいくまい。携帯の寡占が強まり価格が上がることには反対」とのこと。このへんの記事を根拠におっしゃっているのだろうと思うが、実際のところ価格を下げずにブレークスルーは可能なんだろうか。なんかちょっと違う気がする…。

(3/5 2:30追記)三田氏から長大な反論エントリが送られてきた。ものすごい読み応え。さすがプロのライターさん。ていうかこんなところにタダで書いていていいんですか?(笑)

 ●本当に大きな変化は起こるのか?ボーダフォン買収(ケータイAlternative)

 割と短期間(これから先1年程度)までの間に何が起きるか、というところでの予想をされている。プロらしい、堅実な記事だなあと思った。予想の内容は、(1)既存プレーヤーの買収ということで、価格破壊よりは業界秩序維持が基本路線となる(2)07年3月までは価格体系を多少いじるぐらいで、Vの政策がほぼそのまま踏襲される(3)中長期的に見てもSBにできるのは海外製の低機能な安い端末を安くばらまくことぐらい、というもの。というわけで、SBには「ボーダフォンを買うよりMVNOを選択せよ」と訴えている。(追記終)

 ●携帯キャリアとしてのソフトバンクの登場。(Mediologic.com/weblog)

 タカヒロノリヒコ氏@mediologicの分析。「VodafoneとYahoo!のブランド・シナジーは、Docomo+gooなんかとは比較にならない強烈な衝撃」「ボタン1つでYahoo!に繋がる端末が発売されるに違いない」との予想。これは面白い。固定回線からブロードバンドネット、無線、そしてインフラからコンテンツまでコミュニケーションの全レイヤー・全カテゴリをグループ傘下に持つ企業の登場で、「最大手Docomo(つまりNTT)も戦略の大幅練り直しが急務」という指摘は興味深い。

 ●ソフトバンクのVodafone買収が引き金を引く携帯コンテンツと国産携帯端末事業の統廃合(雑種路線でいこう)

 南方司氏の分析。方向性の予測としては僕とほぼ同じ。SBには元Jフォン時代の人材が数多く転籍しているので、ボーダフォンの内部事情は筒抜けだろうとのこと。なるほど。あとは、海外低価格端末の調達による電話料金価格破壊のシナリオ。まあこれは予想の範囲内。だれかもう少し電波の帯域利権についての情報を書いてくれる人がいると面白いのだけど、そっちはあまり目新しい話はないのかな。

 ちなみに、ITmediaの+D編集部ブログでは、2/28に
 ●ボーダフォンがつぶやいた「FMCの障害」(+D編集部ブログ)

 という記事が掲載されていて、ここでボーダフォンの津田志郎会長がFMC(Fixed Mobile Convergence)について「アライアンスを検討している」とコメントしたことが書かれている。個人的な印象で言うと、楠氏のブログと合わせて考えれば、おそらくSBの孫正義氏はこの時点で津田氏との顔合わせは既に終えていたのではないだろうか。

 ざっと見渡した限り、SBの買収資金の調達方法と、端末とサービスの競争軸の変化あたりがこれからの論点というところでしょうか。他の論点があるよ、または異論反論あり、といった方々は引き続きトラックバック求む。

(3/5 7:25追記)
 ●ボーダフォン、ソフトバンクが買収か(fareaster)

 fareaster氏のブログ。FMCを考えると、ボーダフォンがSBグループ入りして連携するのはY!BB(個人向けISP)ではなく日本テレコム(法人サービス)ではないか、という予測。

 ●Yahoo!×Vodafone新戦略を妄想してみる(雑種路線でいこう)

 南方氏の追加記事。新サービスはYahoo!とアカウント(課金システム)、メールボックス、サービスなどを共有し、待ち受けや着信画面などにふんだんに広告を組み込むのではないか、など具体的な予想。いやはや、すごいです…。

 ●SoftbankがVodafone(J)買収か!? ケータイコンテンツ屋の悲劇はここから始まる...(キャズムを超えろ!)

 携帯端末メーカーの企画部門にいる和蓮氏が、SBの携帯参入によって携帯向けコンテンツ業界のボロ儲け構造が崩壊するという予測を面白おかしく語っている。ちょう面白い。最後のとこに笑った!

(3/5 11:20追記)
 今朝の日経が「米Yahoo!と英Vodafoneが業務提携」というヘッドラインを流しました。また2兆円の資金調達の内訳として、ボーダフォン(j)のLBOで1兆円、ボーダフォンの増資を英Vodafoneが4000億、SBが2000億程度引き受けることで賄うとの報道も出てます。またVodafoneグループへのコンテンツ提供を米Yahoo!が行い、Yahoo!グループとVodafoneグループの業務提携にまで発展するみたい。昨夜のLBO1兆円の読みは当たりました(フフッ)。

 ●ソフトバンクのVodafone買収 3つのインパクト(近江商人 JINBLOG)

 近江商人JIN氏の分析。このディールのインパクトを、「MNP料金競争の開始、FMCでARPU20,000円の争奪戦開始、モバイルコンテンツ市場の崩壊」の3つにまとめている。そっか、これって個人・家庭における通信・娯楽支出全体のシェア争奪戦と考えるべきなのか。なるほどね。ということは競合はNHKでもあったりするわけか。ぎょぎょぎょ。

 ●ソフトバンク × ボーダフォンの問題整理(SW's memo)

 昨夜GoogleTalkで話していた渡辺聡さんのまとめエントリ。実は火を噴くところは株式市場だったりキャピタリストだったり総務省だったりと、携帯電話業界に収まらないですよーという話。そうなんですよね。米Yahoo!まで巻き込んでの包括提携とLBOによる2兆円の過去最大の資金調達、しかもキャリアだけでなく、コンテンツ業者や端末メーカーを干上がらせ、テレビや法人向けITシステム構築などの業界にまで影響が及ぶとなると、短期的にも中長期的にも、日本経済にとって「大激震」なんですよね、このニュースって。「Yahoo!の"Google"化」、言い得て妙です。

 ●ソフトバンクのボーダフォン買収で、Vodafone Live! が Yahoo! Live! に!?(お仕事日誌&一日一麺)

 渡辺さんとこで紹介されていたayustety氏の分析。NTTグループ再々編とともに、日本の携帯端末メーカー大再編の論議にも火がつく予感。まあ、ここまで来ると今さら「業界秩序の維持」もへったくれもない気がしますが…。どうなるやら。

(3/6 0:45追記)
 ●ソフトバンク、ボーダフォン買収に思う(■財務アナリストの雑感■)

 財務アナリストのdancing-ufo氏のボーダフォン企業価値分析。1.7~2兆円という買収金額は、少なくとも今期中間決算発表の内容を見る限りは妥当な水準とのこと。ま、そのへんは日経の記者もちゃんと計算して記事は書いているでしょうしということで、特に目新しい切り口はなし。やはりファイナンス面の焦点は調達手法の方ですかね。個人的には、1兆円まではLBOで調達可能だと思いますが、それ以上はたぶん無理なので、英Vodafoneの要求する買い取り価格との差をどう埋めるかが焦点となるはず。

 ●Google化するYahoo! JAPAN :ソフトバンク × ボーダフォンの追記(CNET:情報化社会の航海図)

 このブログも引用していただきました、渡辺聡さんのCNETでのまとめ記事。「ネット業界は水平分業から垂直統合へと競争の圧力が変化」、そして逆に「携帯業界は垂直統合から水平分業への激烈なオープン化競争への変化」。これらの変化が、今のところSB×VFという組み合わせから読めてくる。これって、Googleが欧米で起こしている変化の構図と、実は非常によく似ているという指摘が興味深い。

(3/6 4:00追記)
 ●SoftbankのVodafone買収によるYahoo!JAPANのGoogle化を考える(ちよろず。)

 上の渡辺聡さんの言う「Yahoo!JapanのGoogle化」という言葉の意味がわからん!という人にぜひお勧めの、屋島新平氏による分かりやすいエントリ。要するにDocomoやauのような、キャリアによって囲い込まれた疑似インターネットではなく、Yahoo!360やYahoo!BlogといったCGMを通じて生み出されるコンテンツに検索連動広告を挟んで稼げば、端末価格や通信費用を抑えられるじゃん、ということ。

 ●[ケータイ]ソフトバンク、ボーダフォン買収へ(atkondoの日記)

 atkondo氏のこちらのエントリは、CDNの技術からみたWeb2.0的分析。SBが採用を予定しているクアルコムのMediaFLOの技術だと、既存の3Gに専用チップを追加するだけで、ワンセグをはるかに上回るチャネル数と省電力のケータイテレビが可能になるとのこと。こうなると、既にBBTVで42chもの動画コンテンツを持つSBは圧倒的に有利。MediaFLOは、KDDIとどちらが導入が早いかが見物。

 ※このテーマで、3/31に緊急のイベントをやります。ご興味がある方はこちらからぜひお申し込みを

09:31 午後 ビジネス コメント (10) トラックバック (42)

SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」

 ボーダフォンがとうとうチキンレースに音を上げたっぽい。で、身売り先はソフトバンクですか。

 Vodafone、ソフトバンクへの日本法人売却交渉を認める(ITmedia)

 英国の報道によると売却額は1兆円とのことだが、これってちょっと安すぎじゃね?一応日本全国をカバーしてるインフラを持つキャリアですよ?すごいディスカウントセールだな。呆然。

 こんな端末の発表とかもして、ようやく日本市場に本気で合わせていこうっていう機運が出てきたところだっていうのに。あ、そうか、英国の本社の思惑にしたがって動かしたら結局どうにもこうにも赤字が止まらなくなって、結局本社の世界戦略に組み込むのを諦めたからこれが出てきたっていうことなのかしら。なんだかなあ。

 一方、ソフトバンクとしては痛し痒しということなんだろうか。先月初めのITmediaのこちらの記事などを読むと、まずはMVNOでのアライアンスから手を付けようと思っていたっぽい。普通に考えたら、それが一番順当なところだろうね。1兆円の買収資金、いくらカネ余りだからって市場から調達すればそれなりの資本コストはかかるわけだし、ARPUがこれ以上伸ばせない成熟市場の事業に今さら1兆円を張ろうというのは尋常な感覚じゃない。

 だけど、MVNOならソフトバンク以外にもいろいろな新規参入組が相乗りしてくる可能性があるし、Y!BBの時のような固定網とは違って、ネットワークと端末を切り離して汎用品をばらまくみたいな戦略も無線では取れないから、どちらかというとネットワーク自体はなるべく自社と少ないメンバーで囲い込んでおきたい。とすれば、株の過半数を握って取締役会を押さえたうえで、大株主以外のMVNOを受け入れないという選択肢のほうが、なんぼか魅力的でもある、ということなのだろう。

 英ボーダフォン撤退後の実質的な会社のハンドリングについては、孫氏のことだから会長に上がった元ドコモの津田志郎会長を三顧の礼でトップに返り咲いてもらい、指揮を執ってもらうつもりでいるに違いない。津田氏に5000億、ネットワークに5000億の値段をつけた、ぐらいのつもりかも(笑)。そこまではいいとして、やはり問題は今後ボーダフォンのネットワークから1兆円の投資に見合った収益を上げるための戦略が描けるかどうか、に尽きるだろう。その戦略がなければ、いかな津田氏といえどもどうしようもない。

 戦略の天才孫正義の考えることなど、僕には到底想像すらつかないのは当然なのだけど、しょせん泡沫ブログなのだし、外し覚悟であえて予想してみる。

 今までのボーダフォンはNTTドコモのコバンザメ路線だったが、少なくともそれではもう後がないことが明らかになった。auは価格志向のユーザーが多く、ナンバーポータビリティが導入されても簡単にはドコモに流れないだろうが、ボーダフォンはFOMAとできるサービスが限りなく同じであり、このまま行けばナンバーポータビリティの導入によってドコモへの顧客流出がますます加速するだろう。

 したがって、おおまかな方向としては3つの選択肢がありうると思う。1つめは、「女性」という、伝統的にボーダフォンが強い地盤のある顧客層に徹底的にフォーカスした端末、サービスを投入して、ニッチプレーヤーの地位を確立すること。2つめはドコモやauがまだきっちり押さえ切れていない、法人顧客向けの無線IPソリューションをいち早く展開して、企業のネットワークをインフラごと乗っ取ってしまうこと。そして最後の1つは、Y!BB参入の時と同様、ソフトバンクが持つコンテンツビジネスへの相乗効果を期待しつつ、ナンバーポータビリティ導入に合わせて「無料(あるいは定額格安)ケータイ」という、ぶっちぎりの価格破壊に出ること。

 個人的には3つめの選択肢をとってくる可能性がものすごく高い気がする。1つめはいわゆる「差別化」の戦略だが、競合の追随をかわして顧客をがっちり囲い込み続けるのは、極めて難しいだろう。また、2つめの戦略は1つめに比べれば成功した時のロックオンの効果は高いだろうが、企業顧客に自社のネットワークを全部SBに任せようと決断させるには、飛び抜けて優秀な営業マンと飛び抜けて優秀なエンジニアがたくさんいなければならず、しかも時間がかかりすぎる。1兆円の投資の成果がすぐに目に見えない。

 3つめの戦略は、携帯業界にとっては「大殺界」だ(笑)。ドコモ、auもこれをやられたらもう逃げようがない。自社のもつネットワークのインフラが「収益基盤」から毎月莫大な赤字を垂れ流す「過剰債務」にある日突然変化するのを、指をくわえて眺めているしかない。もちろん、追随値下げしなければ顧客は全部ソフトバンクのものになるだけ。まさに悪夢のシナリオだが、ソフトバンクが1兆円のカネを張っても意味があったことを市場に見せつけて勝つためには、もうこれしかないだろう。

 というわけで、ナンバーポータビリティ制の導入はソフトバンクの登場によって、携帯電話業界の最悪シナリオを実現する引き金になりそうな気がしてきた。たぶんこれから、各社とも必死でこのさらなるチキンレースからの脱出をはかるべくあがきまくるだろうが、さてどうなるか。数年後にはドコモ、auの大リストラが待ち受けているような気がして仕方がない。南無。

10:35 午前 ビジネス コメント (11) トラックバック (15)

2006/03/02

泡沫ブロガーが何か言ってます。

 大笑いしながら眺めていた例のテンプレですが、はあちゅう先生自らコピペをご講評いただけるとの情報をid:maroyakasaさんのところで見たので、さっそく講評に間に合うよう、徹夜明けのテンションであちこちの記事からインスパイアされたものを一気に書いてしまいました。関係各所にひきつった反応を引き起こしそうな内容ですが、実在の人物・団体・固有名とは一切関係ございませんのであれこれ類推なさいませんよう、何とぞよろしくお願い致します。



ねえ、
日本が可及的速やかに、しなきゃいけないことは何だと思う?

私は絶対教育改革だと思う。

この前もちおのブログのコメント欄で
「なんで世の中みんなネットのあちら側で処理しなきゃいけないのか説明してください」
とか執拗に書き込んでる某自称市民ジャーナリストを見て、
「は?」って思った。
もしあれが私の子供だったら、末代までの恥。
世の中には説明の要ることと要らないことがあって、
その質問は後者のカテゴりーに属するでしょ。
Googleのすごさを知らないからそんな質問出てくんだろうね。
あたしも大して知らないけどさ。
Googleの起こすあちら側の変化がどれだけすごいかって知ってたら、
そんな質問できなくない?
そういう低レベルなことぼやいてる奴らをまとめて、アマゾンの市川デポとかに全員ボランティアで逝かせるべきだと思った
向こうも迷惑だろうけど、頭下げて勉強させてもらいに行くべき。
Web2.0の世界が実現したらこちら側の世界には単純労働しか残らないことを目の当たりにしたら、
「なんでネットのあちら側じゃないといけないか」なんて言えなくなるはず。
こういう感覚を持った奴がエスタブリッシュメント側にいること自体間違ってるよ。
日本、なんか最近情けなくない?
この前、どっかの国営放送の記者が取材相手に「こっちの言うことは聞いてください、でも取材に一切条件は付けないで」って言ってて、
「終わってるな」って思ったんだけど。
国営放送の記者がそんなこと言う時代?
友達と話してた時、その子が
「最近のマスコミはジャーナリストの三大義務である
公正中立、客観的、謙虚のどれも満たしてないからウジ虫以下だ」

って言ってて、
すごい説得力あった。
最近のマスコミっていうのは、「自分だけべらぼうな高年俸で勝手放題に仕事してればいい」っていう感覚が根底にある気がする。マスコミをよく知らないから全否定はできないけど、
日本人がこのままマスコミの奴隷化して、「みんな黙って俺たちに教導されてればいい」
ってなったら、国は滅びることだけは確か。
そもそも、一億総表現者であることがWeb2.0の市民の姿なのに。
表現力が落ちてる!!
表現力を上げる教育が必要不可欠だと思われ。

ていうか、「なんで一生懸命自分の目で確かめようって意欲が失われつつあるの?」
って考えたんだけど、私なりの推測は、「メディア・リテラシーがないから」。
ネットという表現の場をもって自分のテキストサイトを作って、
てっぺん極めたら、
最後にパブリックジャーナリストに名乗りを上げるのが本来の市民の姿だと私は思うのね。
それを放棄するのは、ネットを愛してないからじゃない?

ふだんからテレビ漬けで洗脳されてると、メディア・リテラシーなんて意識しないけど。
だからこそ、若者はもっとネットで発言したりしなきゃ。
マスコミの言うこと鵜呑みにしてないでさ。
で、若者のメディア・リテラシーを上げるには教育から変えていくべきじゃないかと。
あちら側っていうものは実体が掴めないから、結局はGoogle、Amazon、Yahoo、はてなとかの利用経験がリテラシーになるんだと思うの。
で、それらを「使うこと」が出来ないなら、教育が絶対悪い。親と学校とマスコミが悪い!
メディア・リテラシーがないと、ネットの使い勝手は向上しないから、ブロードバンドの回線だけ敷きまくった日本は簡単にGoogleに植民地化されちゃうであろう。
教育を徹底改革して、子供にはタッチタイピングを叩き込むべきだと思う。

NIE教育は間違ってる。
あれは、朝日新聞の天声人語の読者を増やすだけ。
個人的には、総務省事業で視察した韓国のオーマイニュースに感動したので、あれを普及させるべきだと思ってる。(韓国のPC房についてはまた別エントリーでかくかも。)まあ韓国はネットユーザーの頭が悪いから、それを生かせてないけど。あの国はいろいろなもののバランスが悪すぎる。でも、ホロン部の巣窟ではある。
ていうかここまで思いつくままに書いてきたけど、何が言いたいのかよくわからなくなってきた…。
いろんな方向に飛びすぎ。書きたいことが多すぎて。
つまりまあ、まとめると、
私は教育改革に興味があるよって書こうとして、途中でいろんな問題にすりかわっちゃった…?盛り込みすぎた韓が否めない。

書いてて思ったけど、私の意見って、ネット知らずでリテラシー不足の意見だと思うのね。(しかも、まとまってないし。)
でも大事なのは問題意識があるか、意見を持てるか、ネットで表現できるかってことな気がする。
finalvent先生が、「最近のブロガーは『きっこの日記のどこがおかしい?』ってきいても、自分で検証ができない」って嘆いてた。
こんなの、他国ではないってさ。
デマゴギーの検証ができない子が増えたっていうのも、教育に問題があると思う。
では肝心の、どこをどう直したいのかということは、また別のときにでも書こうと思う。
そういえば朝日と「ブログキャスター」の原稿が終わってないのを思い出した。
そして今夜は1時からアサマシブログ書かなきゃいけないことも。

全日本ブログ団体連絡会総連合会
世界統一ブログ協会

ふと思ったんだけど、この国のネットをあやつってるのって、
どうやらNTTグループじゃなさそうだよね。
この国のネットを変えたいと思ったら、
どこに逝くのが一番てっとりばやいの?
ライブドア?楽天?

08:37 午前 メディアとネット コメント (32) トラックバック (5)