郊外出店規制じゃなくて、中心市街地商店廃業強化が必要じゃね?
すったもんだの挙げ句にようやく出てきました、大型店出店規制のまちづくり3法改正案。でもおまいら遅すぎですよ&何だかスジが悪そげ。
大型店の郊外出店を制限、1万平方メートル以上対象・政府案(NIKKEI.NET)
1万㎡以上っていうと、家電量販で首都圏最大規模って言われているケーズデンキ東京ベイサイド浦安店の売り場面積が約8000㎡だから、単独の専門業態店でこの規模を超えるところってたぶんほとんどない。規制の焦点は明らかにイオン、ベイシア、プラントなどのウォルマートライクな大規模スーパー、ショッピングモール、あと一部のホームセンターか。
しかし今さら遅すぎだっちゅーの。ホームセンターについては、10月にこんな記事とかも出てたしねえ。流通業の側からしたら、今さら政府に言われなくっても店舗面積の上限に挑戦する時期というのはもうとっくに終わってると思うんですが。
地方都市のスプロール現象を防ぐための大型店出店規制は、今年の5月頃に内閣府がやった調査で国民の50%が「大型店イラネ(゚⊿゚)」と答えた、とか発表されるなど、足場作りは進んでいたっぽいが、例によって邪巣湖などからおアシをいただいているネオ自民党が大反発、国交省内で進んでいた都市計画法改正案が止まってた。っていう理解で、いいのかな?それとも反発したのはクラシック自民党の方だろうか。意外に、そっちのスジのほうがあり得るかも。よくわからん。
アンチ邪巣粉の私R30としては、出店規制そのものには賛成。でも日経の記事によれば、この規制は「郊外への店舗進出に歯止めをかけ、停滞する中心市街地の活性化を促す」のが狙いだそうだ。残念ながら、そういう意味ではこの法改正、以下の2つの理由でこの狙いは実現できないと断言してもいいと思う。
1つは「もう小売りはSC内場所貸しがメインの一部の企業を除き、別の方向(つまり店舗面積の適正化)を向いてますよ」ということ。専門業態店で1万㎡以上の店構えが必要なところなんてないわけだから、この規制そのものが日本の地方の幹線道路沿いのチェーン店だらけのみっともない光景をなくすわけでもないし、ましてや幹線道路沿いのロードサイドの方が商業集積として便利な以上は、規制したからすぐに中心市街地に客のにぎわいが戻ってくるなんてことはない。
もう1つは、大型商業施設を開発できる地域を中心市街地に限ったからといって、イオンなどの流通デベロッパーが中心市街地を何とか開発したろうとは、絶対思わないよということ。彼らが郊外の市街化調整区域に開発の目を向けたのは、カネを積まれれば広大な田畑を手放してもいいやと思う地主農家がたくさんいたからであり、しかも1万㎡の店舗を作るのに必要な土地(店舗はたいてい平屋建てなので、その2倍近い駐車場と合わせると最低でも3万㎡以上の土地が必要)が簡単に手に入ったからだ。
ところが中心市街地はそうではない。商店街には開店休業のシャッター通りになっているにも関わらず、税務署にはまだ「営業」していることにして、猫の額みたいな土地なのに固定資産税の大部分を免除してもらって暮らしている人がたくさんいる。彼らは農家と違って何よりその地面の上に住んでいるし、近くに大型商業施設が来れば棚ぼたで自分の土地のあるところの回りにも客が来ることを知っているから、簡単には土地の買収にも応じない。デベロッパーは、そんな猫の額地主がうじゃうじゃいるところで3万㎡の商業施設用地を手に入れられるのか?まあ、まずあり得ないでしょう。
そんなバカなことするぐらいなら、郊外の幹線道路沿いに駐車場を取り囲むようにして5000㎡ぐらいの店を3店ぐらい建て、その回りに「勝手に」チェーン店を集めるネイバーフッド型SC(NSC)でも作った方がずっとましだ。で、たぶんこれから日本の地方の商業開発はウォルマート型メガスーパーや大型専門店を核とした高集積RSCから、集客力のあるいくつかのチェーン店を3つほど集め、中央に供用駐車場を作るNSCにシフトすることだろう。だからやっぱり中心市街地に商業施設は戻ってこない。
そもそも、日本の田舎というのはもうクルマしか移動手段がないのである。で、中心市街地というのはたいてい古くからの町とかであればあるほど、まっすぐの大きな道路がなくて細い道がくねくねと走っている。そんなところにでかい商業施設など作って週末になるたびに郊外からクルマが殺到したら、都市機能はすぐにパンクしてしまう。
内閣府の調査を見て疑問に思うのは、この調査に答えた「全国の成人男女3000人」のうち、首都圏と近畿圏以外の人って何人なんだよ?ということだ。大都市圏に住んでいる人間にしてみたら、そりゃ郊外型大規模店なんて要らないだろうさ。でも、田舎の大規模店というのは、家族が週末に遊びに行ってそれぞれの興味の持てるものを眺めて楽しめ、帰りに1週間分の食料も買いだめして来られる「レジャーランド」、田舎における実用性を兼ねた数少ない娯楽なんだよ。
で、そういうまとまったレジャーランドを、中心市街地でシャッター通りにしがみついてる商店主のおっさんおばさんが邪巣粉の代わりに提供できるのか?というのが問われているわけだ。やったるというならそれでいい。だけど、普通無理でしょ。だったらそこにしがみつくのを止めろ。できるやつにとっとと土地を渡せよ、と思う。
問題は、そういう人たちの店が開店休業状態でありながら、中小事業者振興なんたらかんたらの補助金だのをたくさん受け取って利益が上がらないのをチャラにして固定資産税さえ払わずに暮らしているということにあるのだ。そういうぶら下がり中小商店主を、やる気やアイデアのある順に選別するか追い払うかする仕組みを一緒に作らないと、多くの地権者が複雑に入り組む中心市街地の土地の流動性は郊外並みには上がらない。とすれば、市街地活性化は絵に描いた餅で終わるだろう。
あと、地方では高齢化が進むにつれて、今後消費者の流動性が急速に落ちていくはずだ。既に家電店やドラッグストアなど、最寄り品を多く扱う業態ほど流通業者の店舗面積は次第に小さくなり、店舗が人口の少ない地域にまで分散していく傾向が表れ始めている。
とすれば、中心市街地のシャッター通りに陣取って「人が来ねえ」と嘆いている商店主こそ、とっととそんな店は引き払い、もっと地方のコミュニティーがあるところに店を移転して、本腰を据えて自宅にひきこもりがちな高齢者相手の商売を始めるべきだろう。そっちの方がずっとビジネスチャンスになるはずだ。なのにそれができないのは、上で述べたように、やる気がない、もっと言えば「リスクを冒してまでシャッター通りの商店街にある土地を手放すメリットがあまりにも少ない」からだ。
目ざとく商機を見つけて動こうとするインセンティブを中小企業から補助金漬けで奪い取っているくせに、一方で「郊外のレジャーランドはもう建てるな」はないものだ。日本の小売業の生産性統計を見ると、90年代まで存在していた旧大店法(500㎡以上の店舗の出店には厳しい規制がかかっていた)が、小売業の生産性向上の最大の阻害要因になっていたことが分かる。だが、大店法が改正されて出店に対する規制は緩和されたものの、変化に取り残された「負け組」プレーヤーへの退出規制が相変わらず厳しかったため、既得権者としての中小商店主が割拠する中心市街地はゴーストタウンになってしまった。
今市街地活性化のために本当に必要なのは、郊外の出店規制を再び強化することよりも、実は中心市街地にはびこる既得権益を取り除き、市街地での競争を激化させることのほうだと思う。「負け組の退出障壁」を下げないくせに、いくら郊外のプレーヤーを市街地に追い込もうとしても、誰もそんなお誘いには乗らないと思うんだが、どうなんだろね。
参考:大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本(Passion for the Future)
[研究]大型店出店規制条例(the other side of ernst)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
「中心市街地商店廃業強化」も意味ないんじゃないかと。いなかの中心市街地の土地は奥行きも狭く駐車場が作りにくい。(個々の土地は細長いと言われるが間口が狭いためで奥行きは車社会の商業地としては足りない。)
「目ざとく商機を見つけて動こうとするインセンティブをもった」人たちはあんまりいなかの旧商業地で商業を行おうとはしないでしょう。
中心市街地商店街がシャッター通りになっているのは中心市街地の収益力が落ちたため、コストの低い住宅地としての利用でしかペイしないということ。そういう土地では新しくできる建物が純粋な住宅であることが結構多い。
金額にもよるけど、そんな土地を買って商売しようなんて人がいたら喜んで売る人結構いるよ。
投稿: いなかもの | 2005/12/22 14:49
マーケッテング=机上の空論
という感じがしますね。ふかぶかと。
投稿: 月夜の晩 | 2005/12/22 21:11
誰がどう手を尽くしても既存の商店街は絶対復活しないでしょ。敗者復活に手を貸すくらいなら、いっそ素直に殺したほうが宜しいかと。
真面目に稼業に勤しむ気があるなら誰に言われようが言われまいが補助があろうがなかろうがやってるわけだし、補助金や税制優遇云々についても、それで楽してる奴らはとっくの昔にやる気ナッシングになってるわけで。
そういうの相手にしても、無駄だと思うけどな。
大店規制や活性化策を云々するより、楽すな死ねで追い詰めたほうが、効果高いんじゃない?
差し当たって優遇措置縮小・廃止の方向に持って逝くだけでも、数年単位で効果出ると思うけどね。やんないだろうけど。
郵便地主殺せて小売(らない)店殺さない法はねえだろ、といったところ。
それはそうと、最近は車業界がなかなかお盛んなようで。私も今週は毎日5,6時間の残業が当たり前になってますよ。1日15時間立ちっぱ仕上げ作業は、なかなかキュートなものがありますな。
投稿: 私 | 2005/12/23 01:25
ウチの田舎だと、じーやんばーやんが地道に頑張ってる煎餅屋とか、なんか作ってる系統のお店はしぶとく生き残ってるね。小売系(本屋・薬屋等)や加工系(車修理屋)なんかは、真面目にやってないとこほど潰れてる。あと、40・50・60代が当主の店ほど廃業率高いね。70代以上が当主の店って何か知らんがしぶといし、たいがい真面目にやってる。
ちなみに我が家は創業500年(推定)@今更辞められないんで、一家皆殺しにならない限り未来永劫続く。補助金? ハァ? なんだそりゃ? そんなのに頼る奴は人間の屑ですがな。死ねと。自力で生きろと。そんな感じ。
シャッチョサンもがむばって自力で生きてください。南無~。
投稿: 私 | 2005/12/23 01:38
>>私
うんこさん何故に別ハンドル名乗ってるの?
投稿: うむ | 2005/12/23 11:56
実りのないエントリーだった
ということで、ハイ、次をよろしくR30。
投稿: 月夜の晩 | 2005/12/24 00:05
コメントありがとうございました。
一番お金を持っている年齢層の消費者が移動力をつけてしまったことは、どうしようもないと思うんですよね。自動車もそうだけど自転車がこれまた。そうすると商圏がぐっと広がってしまいます。
もうひとつ、食材を買わずに食事を買う方向へ動いたことで、「小売店を通らない消費」の比率は特に最寄品で上がっているはず。コンビニなら売場構成の変化だけで済むんですが、業種を先に切り分けててこでも動きません、という中小店にはこれもつらいはず。
まあ補助金を欲しがるな、というのは人情に反するわけで、「先例通り補助金を出している」側を締め上げるのが本筋。政策効果に説明責任を持たせるような方向の外部評価がつくと、役所的な組織のやることもだいぶ変わってきます。大学にもすでにそういう外部評価の波が来ていますよ。
投稿: 並河 | 2005/12/24 01:04
やさぐれてるのか?
餅つきしたか?
投稿: noneco | 2005/12/24 07:29
神戸新聞でこんな記事がありました
http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/ha/00044187ha200611180900.shtml
>ほかにも、零細の権利者が再開発ビルで小規模店舗を開くと、後継者難で閉鎖されたり、じり貧になりやすいことを実例を挙げて紹介。「誰でも残れる再開発を目指すべきでない」と自戒を込めて説明する。
こういう指摘を表だっていえるのはすごいなと
「弱者への優しさ」が裏目に出てるんですなあ
投稿: 憑かれた大学隠棲 | 2005/12/26 03:01