生活保護は国の責任だとか言ってるご都合主義者どもに告ぐ
三位一体改革で相変わらず霞ヶ関の抵抗というか、握ったひもは死んでも離したくない人たちの思惑が顕わになっていて笑えるわけだが、政府のやり口を批判する側も結局なんだかんだ言って、総論では地方分権に賛成なのだけど各論では反対という、相変わらず知恵の足りない反応しかできないのがなんだかなーと。
義務教育の国庫負担金は中教審のホゲ答申にへつらって国負担堅持をうたうくせに、生活保護は削減して地方に分権してもいいんじゃね?とかぬかしてる自民党のボケ爺どもはもはや「抵抗」でさえなく「低脳勢力」の一言でほっとくとして、それにしても「生活保護は憲法で保障された最低限のセイフティーネットだから地方分権しちゃいけない」とか、まったく意味のわかんねーことを言ってるのはどこのアホですか。勘弁してください。てか本当に憲法で決まってる国の役割は地方分権しちゃいけないとか言うなら、知事会は自衛隊と米軍の部隊配備計画にいちいちグダグダ口出すなよマジで。国防は国の役目なんだからな。
とか煽っていてもしょうがないわけなんだけど、さて本題の生活保護の話。まず最初にワタクシのスタンスを。住宅扶助全額、生活扶助と医療扶助は2分の1とかわけわかんねーこと言ってねーで、とっとと全部全額地方に分権しろ厚労省。なんでちょっとずつ中央のひもを残すんだよ。結局またそこで国の言うこと聞かざるを得なくなるじゃねーか。やり口が汚ねーんだよ。これが結論。
ちなみに、この件についての新聞の社説を見ると「総論賛成、各論反対」の典型。朝日の11/16付け社説は「子育てとか在宅福祉の三位一体はいいけど、生活保護はどうかなー」だって。ヤの字の方々の既得権益だったり耶蘇教の方々の縄張りだったりする生活保護は、見栄えの良い福祉を食い扶持にする左巻きさんたちにとってはうまみが少ないですかそうですか。いやはや大変ですな。
これに対して読売の11/18付け社説は新自由主義風。「生活保護は地域によって保護対象の実態も違うから、地方の裁量を大きくするのは基本的によろしいんじゃないでしょうか」と言った最後に、「でも支払いはもっと厳正にね!」とチクリ。基本的なところでは異論はないんだけどさ、むしろ生活保護の支出は所得が二極分化する以上は、これから増える一方でしょ、好むと好まざるとにかかわらず。
ただ、トータルとして「収入が少ないから生きていけない」という人は世の中全体でかなり減ってると思うのだよね。スラドで最近議論になっていたけど、アニメーターとか役者とか建築家とかポスドクとか、アート系の職業というのは常に年収50万とか100万円だったりするわけで、でも裕福な親とかが裏で生活を支えてたりするので生きていけるわけだ。
こういう、言い方は悪いけど「好き好んで生活保護レベルの水準に生活を落としている」人、企業で言えば「将来が楽しみな赤字」な人と、世の中の何かの間違いで突如貧困に落ちちゃった人や気がついたら隅田川の川縁にたたずんでいた人とかを同じ収入基準で判断して「生活保護」の対象にしようとする方が無茶なわけで。まさに収入基準以外のいろいろな事情というかライフスタイルというかによってその人をどう処遇すべきかというのも変わって当然なんである。
非常におおざっぱに言うと、首都圏や大阪とそれ以外の地域での生活保護対象というのは、困窮している部分が正反対という意味で本来打つべき手がまったく違うと思う。大都市の生活保護世帯というのは「ホームレス」という言葉が象徴するように、住む場所の確保を巡ってのトラブルにまず直面するわけだ。そしてその状況を食い物にする人々というのも世の中には存在する。
山谷とかに行って話を聞くとよく分かるが、生活保護でもらったお金を、ホームレスが役所から出てきたところでそっくり全部巻き上げる宿屋(ドヤという)商売が存在する。で、ドヤの回りにはちょうどその日稼いだ日銭で良い具合に飲み食いできる安酒屋がびっちり軒を連ねたりしているわけで、こういう環境に住んでいる限り永久にそこから出られなくなる。結局こういう、地域まるごと生活保護を食い物にして成り立つ「産業」の存在を何とかしない限り、何ともならんのだ。
一方、地方の生活保護というのは住まいはあるんだけれど仕事が恒常的に、ない。地方はただでさえ仕事がないのに、生活保護受ける世帯とかっていうのは、さまざまな事情があって本当にない。これまでは公共事業がある程度の生活保護的雇用創出を担っていたわけだけど、今や公共事業そのものが減ってるし、その元締めだった組織は完全に既得権益死守にやっきになってるだけだしね。もう悲惨なもんですよ。
そんなに悲惨な話、全然聞いたこともないだって?そりゃそうでしょうよ、これまでそういうのは国がほとんど財源の面倒を見てくれたし、地方自治体はとにかく悲惨な人たちの集まってるところをなるべく人目に触れない一部のエリアに限定して、世間から隠し通すことだけを考えてきたのだから。そして、政治家も子育てや老人介護は「票」につながるから声高に訴えるけど、生活保護の仕組みの改善や充実なんて票にも何もならないから、とにかく目を背ける。住民も、ホームレスや生活保護の人を集めて収容する施設が自宅のそばにできるというだけで猛反対。結局誰もひたすら目をつぶろうとしてきただけなんだよね。
で、マスコミもマスコミで、生活保護というと「働けるのにもらってる人がいた」とか不正受給の事例を挙げて非難したり、読売みたいに「支給の審査を厳しくすればいい」とか言ったりするばかりで、生活保護者を食い物にして成り立つ産業の問題点やその解決策について議論しようともしない。平成17年度の一般歳出47兆2800億円、うち社会保障費20兆3000億円のうち、生活保護支出は2兆円を超えますがそれについては見て見ぬふりですか?まったく、社会全体で資本主義の臭いものには蓋をすればいいっていうこの体質、酷いもんだよね。
問題の根源は、生活保護が単に収入や財産という外形基準だけで受給される制度である限り、その制度を悪用して生活保護者を社会の最低層に閉じこめてロックインするという「生活保護産業」をなくすことはできないし、それを解決しようとする社会的なアクションを起こすきっかけも作れない、ということだ。もっと言えば、読売のこの記事が書いているように、都市部の高齢者世帯においては生活保護が実質的に年金に代わる仕組みになっている以上、この問題は国民年金の未払い率にも無縁じゃない。
ホームレスの流動性の高い首都圏や近畿圏では、首都圏ならおそらく東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県が、包括的な自立支援活動をやっているこういったNPOなどとも共同でホームレス自立支援と都市計画を合わせた広域政策大綱をまとめて実施しなければ問題は解決しないだろうし、地方においては公共事業に頼らない民間主導の雇用創出策とセットで生活保護を考えなければいけないだろう。
いずれにせよ、「セーフティーネット」というのは、お金の問題ではなく地域社会の問題である。もはやカネをいくらばらまけばいいのかとか、誰がカネをばらまくのかという次元の話ではない。施設整備費を委譲せずに生活保護という「票にならない」カネのやりくりだけを地方に押しつけようとする厚労省のやり口も確かに酷いとは思うけれど、だからといって地方自治体と地域住民が生活保護の抱える問題にこれまでのように無関心を貫いていて良いわけがないのだ。
というわけで、霞ヶ関の悪口をうそぶきながら「民にできることは民で、地方にできることは地方で」とか偉そうに主張するくせに、生活保護の話になった途端に憲法だとか国の責任だとかごね始める朝日新聞をはじめとするご都合主義者どもは、厚労省の前で豆腐五丁にヘディングして氏んでいただければと存じます。以上よろしく。
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コメント
> てか本当に憲法で決まってる国の役割は地方分権しちゃいけないとか言うなら(中略)国防は国の役目なんだからな。
憲法何条?
主張には共感するが、関係無くね?
投稿: tm | 2005/11/18 21:23
燃えるね。頑張れ。
そしてGoogleとJwordの背後に潜む非対称戦略の目論見が
情報の対象化によって脆くも崩れ去りますように。
#SEOの寄生虫は死んでもらうとして、セキュリティの研究者は
#Googleのアルゴリズムをモニターした方がよい。
#“より良い行政サービス”には所属市民の監視が必要だ。
投稿: cn | 2005/11/18 22:17
「生活保護者を食い物にして成り立つ産業の問題点やその解決策について議論しようともしない」。マスゴミもこの問題について、本当に知らないのか、知らないフリをしているのか、とにかくこの問題に光を当てて頂いたのは、よかったと思います。
投稿: 屋根の上のミケ | 2005/11/18 22:31
「国防は国の役目なんだからな」。まったく、その通りです。国防は国の最も大切な役目です。「憲法の第何条?」なんて、聞いてくる、馬鹿な左巻きの憲法オタクが、いるようですが、バカをさらしに来たようなものですね。国が自国を守るのは、まさに自然権ですよ。進駐軍がお仕着せ憲法で、わざとカットした国の自衛権なのに、「憲法第何条?」なんて聞いてくるバカがいるなんて、驚き、モモのキ、山椒の木ですね。
投稿: 屋根の上のミケ | 2005/11/18 22:37
R30チンの世代、サラリーマンは年功序列が完全崩壊している可能性が高いだろうなぁ。そうすると、定年近くにドカっと減収になって、住宅ローンの返済や維持費やもろもろの出費が重たくなってしまって、よっぽど貯蓄もできてればいいけど、う~ん。となると、生活保護対象者がいままでない社会的階層にでてきそうだ。本人は受けたくないとおもうだろうし、自治体側は側で支給しづらい状況も…。
生活保護者というのは貧困者のことをいうのであって、貧乏生活者のことをいうのではない。で、貧乏は悪でないという、貧乏も豊かさがある思想が広まらないと、無理して中流階級を維持しようとするばかりに、実は生涯収入を無駄に削ってしまい。老人になったとき、清算したら赤字になるということはおきそうだ。
金持ちだけど貧乏生活者として有名なのは○○隊○さんがいるけど、もし、相場の大暴落があっても、あとは才能とその生活力で生き残ることができるだろうけど、IT成金は、どうだろ。帳尻が合うのかなぁ? となると、サラリーマンは、老後年金で薔薇色だと夢みているより、生活資金を確実にためて、山の麓で安い土地を借りて、梅干しやパイをつくって、それをネットを通じて販売して、一生、働くことで収入をえつつ、現実に積み立てた年金は、個人企業の運営資金として使うのがいいのかもしれないな。
あと、日本の貧困者は本当はまだいないのかもしれないしいるのかもしれいし、それでも、辛抱強いししたたかだし、大きな社会貢献もしているよ。それは、暴動を起こさないこと。きっと、そういうところに、国も金持ちもたかをくぐっているのだろうな。ただ、貧富の差が広がれば広がるほど起きるのは歴史が証明しているよね。どうなるのだろう。
せめてなぁ、大企業やオエライさんや金持ちがボランティア精神をみにつけてくれたらなぁ。アメリカだってあるのが当然のようなところがあるのに、ニホンはまるで駄目だから、助け合いがうまく機能せず、結局、ただの金の問題で、貧困者にまとまった金を用意して、これをワリカンにしてくれなんだろう。つらいな。貧困者の中に格差ができてしまって。とほほ。
投稿: 野猫 | 2005/11/19 07:45
知り合いにも時給換算200円で働いている「建築家のタマゴ」がいるんだが、あれって何とかならんものかね。本人たちは夢をもっているのかもしれないが、端から見れば親のスネかじっている奴隷をいいように使い捨ててるようにしか見えない。「この業界はみんなやってる」とかいってる場合じゃねぇだろ、と。
投稿: L30 | 2005/11/19 08:04
以前コメントを書いた『いい国作ろう!「怒りのブログ」』管理人です。厚生労働省は全部地方に押し付けたいのですが、地方6団体は拒否しているのだと思います。地方では生活保護を今の水準で受け取ると、将来の赤字はほぼ確実です。記事中でもご指摘があるように生活保護を受ける主な層は、地方と都市部では違うかもしれません。地方では高齢層が多く、大半が医療給付費だと思います。つまり将来医療給付費が伸びるという予想が立てば、多分そうなってしまいます。無年金者もそうです。今は、国保の最低年金額(月5万円くらい)よりも生活保護費の方が少し多い(8万円くらい)ので、無年金にしておいて最後には生活保護を受けた方がいい、ということになります。国保は周知のように6割程度しか保険料支払いがありません。国保の主な資格者達は地方に多くいて(サラリーマンが多い大都市部と違って農家漁師の自営や厚生年金未加入会社=零細の仕事が多いからだろうと推測します)、この未払い者達の多くは将来生活保護になってしまうでしょう。この時に地方財政だけで支え切れるか?ということが大きな問題だろうと思います。長く書いてしまい、申し訳ありませんでした。以前書いた記事ですが、参考になれば、と思います。
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/6407b0df43d94c83ddd0d8815618b2b9
投稿: まさくに | 2005/11/19 14:19
今回のエントリーは、いつも以上に良かったです(メモメモ
投稿: Kondo | 2005/11/19 19:22
>時給換算200円
昔の職人とかの徒弟制度は実は
よくできた仕組みだったんだな。
投稿: ほう | 2005/11/19 22:46
原理的にはご主張の通りだと思いますが、今回の三位一体改革は「4兆円の補助金削減、3兆円規模の税源移譲」と、小泉首相によってあらかじめシーリングが決められていますからね。その中でできるだけ多くの裁量を獲得することが、地方側の目標ではないかと。
とすれば、生活保護費を後回しにするというのは合理的判断ではないでしょうか?移譲されたところで、保護費を削減しようとすれば現場では相当のコンフリクトが発生するでしょうから、とても裁量が増える状況にはなりませんし。
A紙の社説を擁護するわけではありませんが、地方側の主張の背景は十分に理解できます。
投稿: Marc | 2005/11/19 23:01
事実関係を無視して飛ばし記事を書くのは、氏ねとR30さんが氏ね仰っている朝日新聞と変わりない行為ですよ、と。もうちょっと生活保護の実態を調べて書こうよ。書き難い実態ではあるけれども。
投稿: ななしさん | 2005/11/20 01:20
>>昔の職人とかの徒弟制度は実は
>>よくできた仕組みだったんだな。
永六輔さんが散々書いているけど、
「徒弟制度」には「徒弟制度」なりの良いところがあるのに、
全く関係性のない「労働基準法」が徒弟「制度」を崩しているとか。
若い者が労働者なら、きちんと給料と休みをあげなさい、労働時間とかも。
若い者が生徒なら、きちんと月謝をとりなさい、なんてことを言ってくる。
あと「日本の伝統工芸を守れ!」と言う人が、どれだけ
「尺貫法」の廃止、罰則が日本の伝統工芸に打撃を与えたか、
言わないんですよね〜。
酒屋さんで「一升瓶」という単位がまだあるのか、
不動産屋さんで「坪」という単位がまだあるのか。
飛行機を尺貫法で作るのは(多分)無理だろうけど、
伊勢神宮の新築は尺貫法でないとまずいんでね?
とまぁこういう事実って、最近はどうなんでしょ?
投稿: てんてけ | 2005/11/20 07:48
「二十一世紀は地方の時代」だそうです。伝え聞きですが。
>>てんてけさん
職人達はそれすら乗り越えた。
伝統工業を守れ、って絣一枚ですごすのって京極夏彦くらいか。
投稿: 五郎座エモン | 2005/11/23 08:56
お下劣コメント御免!
>朝日新聞をはじめとするご都合主義者どもは、厚労省の前で
>豆腐五丁にヘディングして氏んでいただければと存じます。
私だったら玄界灘に「不法投棄」したいと言う所ですな。
思わずアヒャヒャと藁ってしまいました(2ちゃんねる)
兎に角、朝日新聞の馬鹿さ加減には毎度の事ながら呆れ果てます。
だから晋遊社辺りにも「まんが嫌韓流」などでおちょくられるの
だと。朝日新聞を馬鹿にするのは産経新聞や文藝春秋の専売特許
ではありませんなwww
投稿: abusan | 2005/11/25 10:23
生活保護者に損害賠償の請求できない。
行政の福祉係りのひとがいろいろとじゃまする。
投稿: 野口 透 | 2006/03/20 23:41
長崎県西海市では違法占有者に生活保護費支給して支援している。(裁判所より建物収去土地明け渡し命令が出されている生活保護者に。)
西海市福祉課では生活保護者の意思を尊重する。
投稿: 野口 透 | 2006/03/21 00:07
追伸.意思.尊重して5年.強制執行されずいます。西海市(西彼町)福祉課には人道的に移り先をといいつずけていますが本人の申告がないと強制できないともとらし事ばかり言うばかり。人権的事もあり憲法で住居の自由がある。また個人間の民事的事だから行政は民事
不介入です。(現在。生活保護費。在宅介護を
受け生活しています。)...ヘルパーは無断で土地の所有者の了解もえず出入り。
投稿: 野口 透 | 2006/03/21 12:51
>飛行機を尺貫法で作るのは(多分)無理だろうけど
むしろ飛行機は他のものより簡単だろうね。
自国のスタンダードを押し付けてくる素敵な某国が主導権を握っている世界なんで、今でもSI単位系と、in, ft, lb, yd, gl, nm 等が乱れ飛んでますが、システムも実務もしっかり対応できてます。
なのに、SIで取引しないとダメなんて法律を作る役人は、PSE法を作った役人と一緒に消えて欲しいものです。
投稿: 東海地方民 | 2006/03/21 13:06