ただいまチーム組成中
「アルファブロガー」の本のインタビュー受けた頃には、「メディアは批評の段階を終え、実行のフェーズだ」とか大見得切ったくせになんもやってねーじゃねーかと読んだ人にガン飛ばされるんじゃないかと実は内心冷や冷やしていたんだけど、世の中うまくできているというかやっぱりなるようになったというか、結局また実行フェーズに思いっきり関わることになってしまった。しかも2件。
具体的なことはもちろんこんなところでは言えないんだけど、今って通常業務も死にそうなほど忙しいんですがその上にアドオンで2件もプロジェクトのスタートアップが絡んでくるって、いったいどうよ。神はいないのか。
怒濤のプロジェクト立ち上げに関わって改めて心に刻んでいるのは、某飲料メーカーの凄腕マーケターが言っていたある一言。「新規事業の立ち上げが成功するかどうかは、その船にどういう順番で誰を乗せるかで、80%が決まるんです」
これって後から振り返って(失敗したり成功したりした人が)つぶやくのは割と簡単な言葉なのだけど、まさに現在進行中の立ち上げ作業の中で「誰を、いつこの船に乗せるか」について、完全にそのタイミングとメリット・デメリットを読み切って判断を下すのは、本当に至難の業だよね。
正確に言えば、今回そうとしているプロジェクトには驚くべきことに、プロジェクトを直接回す人たちに想像もつかないほどすごい面々が集まりつつあるのだけれど、問題はもっと身近な、そしてそのプロジェクトによって影響が及びそうな周囲に位置する人々への対処である。
まず、プロジェクトに関係がありそうな人、どうしてもどこかの段階で手を貸してもらわなきゃいけない人、割り込んできそうな人、敵に回りそうな人…というのを目を凝らして精査し、それぞれの人物についてのプロコン、現有キャパシティ、任せて良いことと良くないこと、そして人格的なケミストリーを把握しておく必要がある。
個人的には、目の前にいる人のそれらを把握するのはそんなに難しくないと思うが、やはりプロジェクトの中で明らかに足りなくなってくるだろうと思われるリソースを持っている、あるいはいざというときにそれを知り合いや身の回りからかき集めて提供してくれそうな人というのが、たいていはプロジェクトスタートの時点では目に入ってなかったりすると大変だ。後から追加で船に乗せていくことになるわけだが、そうするともともと船に乗っていた人とバッティングしたりしてすったもんだが起きたりして、結局もといたメンバーの方を泣いて馬謖を斬らなければならなくなったりする。
そうならないようにプロジェクトの途中経過でどんなリソースが必要になってくるかを予想して、いざという時にケミストリーとか役割分担が大きく食い違わないような人を選んでおき、根回し確保しておいて、いざというタイミングでさっとカードを切るという技が必要になってくる。大事なことは、ここぞという時に切れるカードの数を豊富に持っておくことと、何よりプロジェクトの細かい進め方、どこでどんな話を動かさなければいけないかのロードマップをきっちり見切っておくことである。
しかしネットメディアをやるときに一番大変なのは、コンテンツ回りの開発スピードや意思決定と、システム回りの開発スピードや意思決定の順番とが、全然別のスパンで動くことだ。これが、下手なプロマネが手がけたプロジェクトのロードマップの当てにならない最大の理由である。
したがっていかにブログの機能が発達しようとASPのアプリケーションがたくさん出回っていようと、この2つのロードマップをきっちり書き込んだものを関係者全員でまず共有してから走り出さなければならない。たとえどんなにそれをきっちり徹底していても、コンテンツ屋というのはシステム屋が思いもつかないようなポイントで突然これまで進めてきたことをそっくりちゃぶ台返そうとしたりするものなのだ。まして、中長期的なマイルストーンを設定せず、つまりロードマップに何のコンセンサスも取らないで走り始めたプロジェクトというのは、たいていがコンテンツ屋とシステム屋の決定的仲違いで失敗する。
あと、ケミストリーの点で言うと、プロのコンテンツ屋は気乗りのしないコンテンツを作れと命令されても、たいていは無理矢理何とか原稿をでっち上げて締切までに間に合わせる。それがプロだと教えられてきたからだ。しかしシステム屋というのは、高い金を積んでやってもらう大手のSIerは別だが、少人数のプログラマのチームはコンテンツ屋や経営トップの都合で理不尽な仕様変更とかを押しつけられると、とたんにやる気をなくして開発速度もクオリティもぐぐっと低下する。これが時にはそのプロジェクトに壊滅的なダメージを与えかねないものとなる。
なのでそういう爆発が起きないようにするためにも、プロジェクトで想定するサービスのイメージを(途中での仕様変更等も多少は織り込んだ上で)相当かっちりと明確に持ち、それに合わせてシステムの仕様を書かなければならない。これが一番骨が折れる。
一番骨が折れるというのにそれを近々やらなければいけないので今からかなりグロッキーである。しかし世の中にシステム屋と会話が成立するコンテンツ屋というのがほとんどいない。ご多分に漏れず今回のプロジェクトもどうやら僕1人だ。プラン書きは必死に他人に振りまくっているがシステムの仕様とりまとめだけはやらざるを得なくなりそうな気配。あああ死ぬ。どうしよう。うーむこまったな。誰か代わりに仕様書書いてくれる人はいないもんか。
とかつぶやいているうちにも、目の前のいろいろな仕事の締切は走馬燈のように過ぎ、無力感に打ちひしがれた僕は何もせずにふて寝して結局は時間を浪費するのであった。あうあうあう。
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コメント
http://www.hatena.ne.jp/1124662239
http://www.hatena.ne.jp/1125038953
コンテンツ屋と仕様というくだりで、はてなのエロゲーを1000万でつくりたいという質問を思い出しました。
投稿: ken | 2005/10/22 09:13
開発チームが仕様変更に対応する能力は、リーダーの力量次第。大手のSIerであろうとなかろうとSEの能力は玉石混淆なので、業者の規模ではなく、誰に頼むかが重要。
投稿: 名無し | 2005/10/23 10:19
仕様変更によって開発速度やクオリティが下がる
のは、開発者のモチベーション以前に実際の作業上の問題がある。
クオリティが下がる理由は、家を造ってる途中で柱の位置を変えたら建物の強度が下がのと同じ。
ソフトウェア設計の柔軟性には限界がる。
場当たり的な改変を繰り返すほど新しい機能を付け加えるのが難しくなっていくので生産性が落ちる。
コンテンツ屋のプロ意識うんぬんの部分にも異議がある。
コンテンツとシステムを同列に論じることはできない。
気合いと根性だけでシステムを動かすことはできないのであって、ソフト屋にプロ意識が無いからダメなわけではない。
投稿: 名無し | 2005/10/23 11:23
仕様変更に伴い、予算・スケジュールを組みなおせば士気は下がりません。
一軒家の建設中に「やっぱ地下室追加して」って言って、同じ予算&納期で
出来ると思う?
投稿: イケメン | 2005/10/24 09:11
コンテンツ作成は脳内の作業ですが、システム作成は物作りの側面が多いわけで、あるポイントを超えると仕様変更が困難になってしまいます。
しかも、一軒家が9分9厘完成してから、「狭いから2倍の広さにしたい」とか「日当たりが良くないから建てる場所を移動したい」とか「お城みたいなお家がいい」などという作業を振り出しに戻してしまうような仕様変更が出てくることも多々あるわけで。。。
オートクチュールに例えるならば仮縫いをして体型にきちんと合わせる作業を何度か行えばよいのですが、、、
ご健闘をお祈りします。
投稿: キングフラダンス | 2005/10/26 14:00