ストリンガーさん、終わったかも…
言ってることはまったくの正論だと思うが、それをマスコミ向けに(しかも外国メディアに)ぶっちゃけちゃったところがアウトかも。彼にはやっぱり日本のメンツ文化は分からなかったってことなんかな。
ソニー会長、英紙に不満表明・「事業整理の熱意ない」(NIKKEI.NET)
ハワード・ストリンガー氏が、フィナンシャル・タイムズの記者に向かって「(ソニーの一部役員はいかなる人員削減にも徹底的に抵抗した。)日本社会は米国社会よりも人道的だ」と吐き捨てた、という話。海外の会社はどうか知らんけど、日本の会社でそれやったらおしまいでしょ。
22日に出たソニーの再建策発表については、コメントしようかと思っていたけどあちこちで的確な読みが書かれていた(たとえば麻倉怜二氏のこちらの記事などが一番コンパクトでかつポイントを突いてるのでオススメ)んで、今さらコメントするまでもないやと思っていたが、少し気になっていたのは会長のストリンガー氏が無能だったのか、それともストリンガー氏はともかくソニーの役員会が無能だったのか、どっちなんだろということだった。
FT紙へのこのコメントが、問題点を如実に物語っている。つまり、ストリンガー会長は「ソニーに助けてくれと頼まれたんだから当然身を切るリストラの覚悟はできてるんだと思っていた」、一方の役員会は「助けてくれとは頼んだけど悪いのはオレじゃなくて隣の奴なんだよね」って口々に言い張ってるって状況だったと。もうね、アホかとバカかと。
アホのレベルで言うと役員会の方が上なわけだが、ただストリンガー会長がアホじゃないかというとそうとも言えないように思う。傾きかけた会社なんて多かれ少なかれ縄張り争いと既得権益死守の両方で幹部同士がいがみ合ってるんだから、そのぐちゃぐちゃのどこを「象徴」のボタンとして最初に押すかというのを、慎重に見極めてやらなきゃダメ。
例えば、カルロス・ゴーン社長がやった日産のリバイバルプランでは、それは「中堅社員を中心にした横串組織(=クロス・ファンクショナル・チーム)を作る」、つまり組織の目標(コミットメント)設定とその施策の責任を両方とも現場レベルに落とすことだった。これは、逆に言えば日産という会社がそれまで事業の目標設定とその施策とがかみ合ってなかったのが最大の問題だ、と彼が認識したからだ。事業部門の区切り方や生産・販売の役割分担については、問題はなかったか、あったとしても後回しだと思ったのだろう。
一方、中村邦夫社長がやった松下電器の「創生21」改革では、最初に手を付けたのが「事業部制の解体」と、事業領域ごとの戦略決定権を本社、子会社も合わせて括り直した「ドメイン会社に集中する」ことだった。これは、商品単位に細かく分かれた松下独特の事業部が、顧客から見たときの事業領域(ドメイン)ごとの戦略的統一感を著しく損なっているというのが、最大の問題であると彼が認識したからだ。松下が1万人以上の人員削減を発表したのは、「創生21」スタートから確か1年近く経過してからである。
これに対して、ソニーはどうだろう。麻倉氏の分析を待つまでもなく、ソニーのどこが最も大きな問題なのか、それに対してどうメスを入れるのがいいと思うのかが、今回の経営方針発表からはまったく読みとれない。まさに「緊急避難」的な発表に過ぎない。
NIKKEI.NETでFTのインタビューの断片を見る限り、ソニーの組織を変革する「象徴」となるキーレバーがどこにあるとストリンガー会長が考えていたのかは分からない。「職場のモラルが低く」て「人員削減に反発が大きかった」からリストラができなかったというのは、かつての富士通の秋草会長の「社員が働かないからダメなんだ」発言にも似た香ばしさが漂う。
あくまで外部の、社内事情を知らない個人の感覚で言うと、ソニーって組織がわかりにくすぎると思う。いろいろな事業領域の境界線上にあるような微妙な商品が多すぎて、いったいどのカンパニーが何をカバーしているのか全然わからん。しかも商品企画は本社でカンパニーごとに分かれているように見えるが、生産部門はソニーEMCSだし、国内販売はSMOJだし、カンパニーごとに生産や販売のリソースを取り合っていて、結局生産部門のトップを占める派閥のカンパニーが生産ラインを優先的に確保できるとか、わけのわからんことになってる。これじゃまともに市場を見据えて戦略的な商品企画を作って出していくことなどできない。
いっそのことEMCSとかSMOJを解散して、もう一度開発・生産から販売まで、事業領域カンパニーごとの縦割りに戻したらどうだろう。どっちにしたって、半導体のCELLとか以外は、事業領域をまたいで戦略的に使っていかなきゃいけないインフラ的なパーツなど、何も持ってないんでしょ?メモリスティックからだってほとんど撤退モードだし。よく考えたら、これだけの企業規模でまとまって投資の選択・集中の判断する必要なんかないじゃん。
で、ソニーとして出しても良い製品かどうかのブランディングの判断だけ、統括持ち株会社の中に「ブランド管理室」を置いてそこで決めるってことにすれば?そうしたら、さすがにSonyブランド付けてトイレの便座カバーを売り出す奴だけは止められるだろうしさ。どうしても絶対儲かると思ってトイレの便座カバー売りたいやつは、自分で勝手にSony以外のブランド作って付けろと。それで十分のような気がする。
…てなことを考えていたりしたのだが、どうもそういうキーレバーを見つけて何とかしようともしなかったストリンガー会長は、最初の1歩目でけつまずいたような気がしてしょうがない。人員削減がどうとかじゃなくて、社外に向けて社内の悪口を言っちゃうことが、日本でどれだけ社内から恨みを買うかということを、彼はやっぱり分かってなかったんでしょう。たぶんこのあと彼が何を言っても、誰も言うことは聞かんわね、残念ながら。
2000年に入ってから僕はずっと「ソニーはヤバイ。このままだと本当にボロボロになるよあの会社」って言い続けてきたのだけれど、回りは誰も信じてくれなかった。みんな「ソニーはなんだかんだ言って底力のある会社だから」というのが先輩たちのロジックだった。んなわけないじゃん。あの会社がいったい何人「顧問」を抱えてるか、知ってるんか?すごい数だぞ。トップのポジションの時に何もせずに部下の提案握りつぶして定年迎えたような唐変木でも、全部「顧問」処遇で飼ってるんだぞ。あんな昔の阪神みたいな会社、「底力」いくらあっても足りねえっつーの。
今回のリストラの前に「SFH売却」ってニュースを聞いたとき、ほんのちょっとだけ期待したんだけどなあ。金融をやりたいって言ったのは確か盛田昭夫だったはず。創業者のしがらみを切り捨てて「聖域はない」って示せるなら、まだ可能性があるかと思ったんだが、やっぱりダメだった。ハズシ覚悟で予言しておくと、次はストリンガーのクビを切って誰をトップに据えるかに焦点が移るんじゃないかな。出井復活とかいう悪夢もありげ。
行きがかり上、次のトップは日本人じゃなくちゃ務まらないだろうが、しかしこんな会社任せられる人なんて今の日本にいるんだろうか。日経がソニーを褒めそやすのをあと3年早く止めていたら、産業再生機構に放り込めたかもしれないのに。もう手遅れザマスよ。トホホ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
> 社外に向けて社内の悪口を言っちゃうことが、日本でどれだけ社内から恨みを買うかということを、彼はやっぱり分かってなかったんでしょう。たぶんこのあと彼が何を言っても、誰も言うことは聞かんわね、残念ながら
どやろ、ワザとFTに喋ったんじゃないの?
それだけSONYに膿が溜まっているんでしょう
つうかアンサンも生粋の日本人やね
SONYという会社が生きようが死のうがどうでもいいじゃないですか
おっしゃるように、このショック療法効かないかもしれない
でもまぁ、それはそれでSONYという会社の役割が終ったちゅうことです
どっちにしろ、誰かに井深、盛田の心が生きればいいっスよ
この創造屋集団、技術屋集団の力が残っていればそれでいいですワ
会社は死んでも、人という細胞はどこかで芽を出します、今のネット証券を支えているのは山一の連中です罠...
投稿: マルセル | 2005/09/24 17:31
>しかしこんな会社任せられる人なんて今の日本にいるんだろうか。
いる。
Ichirou Yamamoto
白髪か金髪になってもらって。
投稿: 野猫 | 2005/09/24 18:18
出井復活の悪夢って50%くらいですかね?
投稿: Kondo | 2005/09/24 19:26
今日のうんこ
街の寺に出掛け、親戚の法事に付き合ってきた。
1周忌。
明るく元気で良く肥えた景気のいい姉ちゃんで、自宅でやってるクリーニング店の店番をやっていて、よく通って馬鹿話をしていたものだった。
「日本が滅んでも姉ちゃんだけは生き残るじゃろ、デブが」
「そのゴキブリじみた体力を分けてほしいわ、デブが」
「デブのくせに飽きもせずよう働くなあ、デブが」
「体に肉を回すヒマがあるんなら頭に血を廻らせんかい、デブが」
…などとからかいつつお茶菓子やお米を差し入れていたが、もうそんなことをすることも無くなった。
―子宮癌―
女として一番大事な部分を病み、朽ちていく。どれほど無念だったかは想像に余りある。
「最近肥り過ぎじゃけえ、痩せて丁度ええかもしれんな、デブが」
そんな軽口を叩くことも無くなった。
「ちょっと最近具合いが悪いんよ」
「ほんなら痩せい、デブが」
それが、最後に交わした言葉だったような気がする。よく覚えていない。
―法要が終わる―
親戚や友人知人が集まりしめやかな空気を醸し出す。
居心地の悪さを覚えるものの、なんのかんので周囲に人が集まり哀しんでもらえるだけ、まだ果報なのかもしれないなと思う。
その旨伝えたところ、そうよねぇ…ということで、一気に場の空気が沈んでいった。そんなに酷いことを言った心算は無い訳だが。
元気だった頃の思い出話や往時の面影をぽつりぽつりと話してみる。
よく覚えてるねと言われ、「人としてそういう部分は忘れちゃいけんよね」「ええ人ゆうのは早うに死んで心の中で生き続けるけん、いつまで経ってもええ人なんよ」「歳食って邪魔モンになってから死ぬくらいなら、綺麗なときに綺麗なまんまで死んだほうが、いっそ幸せじゃろう」「辛うて泣くんも、幸せのうちよ」
といった回答を寄せたところ、そうよねぇ…ということで、より一層場の空気が沈んでいった。そんなに酷いことを言った心算は無い訳だが。
ありがとう、と言われた。
帰宅する。ふと車窓を覗くと、姉ちゃんのいた小さな小さなお店が、目に入った。
「店に行っても詰まらんじゃろうが。元気になって早よう顔出せよ、デブが」
そう心の中で毒づく。デブ。享年36歳。南無。
おわり
投稿: うんこ | 2005/09/24 19:38
↓こんなことまでやっているようじゃ、
ストリンガーもお手上げだと思います。
ソニー、リストラでAIBOに不当労働強制
http://bogusnews.seesaa.net/article/7236956.html
投稿: SOY | 2005/09/24 19:49
『享年』36『歳』だって。プ
投稿: 馬鹿みっけ | 2005/09/24 20:30
ソニィに残っていた優秀な人材が、こぞって退社している模様。
削減する人間を間違えているわけではないのだろうけど、残るはやたらとプライド高いバカばかり…。
さようなら、ソニィ。
投稿: tomo | 2005/09/24 22:27
うんこ、うるせぇ。
君はあれか?
運動会の副団長になって人気だんちょーの横にいっつもぴったりくっついててこんな不細工な自分でも対等にあこがれの男子と物言いあえるんですよ。みたいな。
んで運動会終わったら副団長の存在終了。
ごめん、↑の話、他でやってくれ。
投稿: oooo | 2005/09/25 02:07
マルセルさんのご意見 とても近くて うなづきつつ
小泉政権に似た雰囲気も感じたり。
プライドだけでは成り立たない時代に来てて
女性的なラインに近そうな 家族を守るために外せないかもしれない既得権益がこっそり
ストリンガーさんに存在したりして・・うまくいえないけど。
投稿: yasuko | 2005/09/25 04:39
社長変えてもダメ、なのか?ってとこでしょう。
ストリンガー氏の言葉に傷ついたプライドの高い方たちをクビにしたらいいんじゃねーの。
これがSONYクオリ(ry
投稿: Cyberbob:-) | 2005/09/25 06:24
ストリンガー卿、なんとなしにマイケ○・ムー○監督に
似ている件について。
投稿: R29くらい | 2005/09/25 11:55
はじめまして。
責任回避の意味合いも含んでいるのではないでしょうか。
後で株主代表訴訟を起こされないための保険として、
「俺は主張した、実行しないのは会社の問題だ」と明確にしておくと
ストリンガーは見切りを付けているのかも知れませんね
CEOを引き受けた際、契約時に違約金条項を当然付けてあるのでしょうから、
ソニーが解雇してくれた方が儲かると
投稿: yes | 2005/09/25 21:54
|彼にはやっぱり日本のメンツ文化は分からなかったってことなんかな。
じゃ、なんで外国人を社長などにしたのでしょうか。外国人を社長にした時点で、すでにメンツもなにもないとおもうのだが。(結局日産と違い土壇場に追い込まれても危機意識がなかったということでしょう)
#それより、日本株式会社の社長(総理大臣)をヨーロッパの人にしてくれ。(アメリカ人、特にブッシュタイプはだめだけれど)
投稿: 大澤遼 | 2005/09/26 02:32
ソニーには2種類の人間が居る。
小奇麗にして「賢い」人と、汁が滲んでくるぐらい濃い人だ。後者の存在はブランドイメージから隠蔽されているがソニーというかメーカーというもののコアはそんな彼らにある。
その濃い人に話を聞くと自己責任の度合いが強いが相当自由だそうでそこがソニーに居る理由だとか。
AIBOなんか作りたがるのはときめきメモリアルを作るぐらい濃い奴じゃないといけない。もちろんアニオタだというわけではなく。しかし彼らは専門外で興味の外である市場を理解していない。そこで経営の判断が必要になる。問題はここだ。小奇麗で賢い振りした馬鹿が一杯居るのだ。AIBOなんか儲かる訳ねえだろ。技術はいざ知らず経営としては馬鹿を広報して鼻息を荒くしてるのだから救われない。
経営だマーケティングだと上品に言っても商売だ。商いの臭いと言う物はMBAみたいなチンチンに毛が生えていない坊やに分かるはずも無い。大体その才があればお勉強して資格をとろうなんて奴隷の発想をしない。奴隷に判断させてはいけないのだ。
リストラだと社内政治に疎い汁の滲む濃い汁社員を排除するのは簡単だ。日経だって商売できないから記事書いてる坊やなのだから世間では何が悪いか分かりゃしない。
商品は人で商売は頭。商品が悪いのでなく頭が悪い。商品を批判すると汁社員が槍玉に上がるが社内ゴロのスーツどもを吊るし上げないとソニーというか日本のメーカーは死滅する。
投稿: a | 2005/09/26 11:14
> ストリンガーさん、終わったかも…
つうか、表題がチャウんじゃないのかな
「SONY、終ったかも・・・」じゃねぇの
PS3も性能UPつうだけで、話題性ゼロだし
画像が超リアルになってもゲーム開発費があれだけかかるとなぁ、つうのが本音
正直X-BOXと小型ゲーム機の方に興味がある
ま、2万円でブルーレイが再生できますなら、一応購入リストに入るかもしれんがのう
投稿: マルセル | 2005/09/26 11:22
↑aさんを発見したクマー。
ところでこんな事が書かれてます。
「社会派ブログにはなぜ痛いコメント常連が住み着くのか?」
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20050925
投稿: キングフラダンス | 2005/09/26 13:51
カネボウみたいに解体してしまうとか。
AV、PC、ゲーム、映画、音楽、金融の6社に分割して、「あとは各自頑張って生き残ってよ」とすれば、どこも必死で努力するでしょう。
投稿: Baatarism | 2005/09/26 16:40
とりあえず、理系のオノコさん達が飲み会パーチィーにおいて、
モテ系でなくなった時に、ソニィーの復活劇スタートのスタート。
て、ことにしてよ。嗚呼。
投稿: R29くらい | 2005/09/26 19:59