マクロ経済って本当に難しい
よそ様の備忘録に茶々を入れるのも何だとか思ったけど、小飼弾氏が今頃になって選挙前に出た電波記事をピックアップしながらブログを書いていたので、ちょっと一言。
備忘録-日本政府のB/S2003年度分(404 Blog Not Found)
日本の公的バランスシートが2003年時点で350兆円の債務超過だという話から、小飼氏は「民間に金を回したかったら、郵政を『民営化』して『民間に金を回した』と言い張るより、国が吸い上げる金を減らした方がずっと効果的」と結論づけている。
(9/24 9:30小飼氏からの反論について追記しました)
ちなみに、子飼氏が参考にしているネタ元はこちらの記事。この記事を書いたのは吉田繁治という経営コンサルタントで、その人はこのデータを財務省のこのページから引っ張っている。
国の債務超過額なんて1999年頃に「1000兆円ぐらいかなー」なんていうこんな記事が日経新聞にも載っていたぐらいだし、僕的に言うと「年金債務除けば350兆円?あれ、ちょっと見ないうちに随分減ったねえ、誰かなんかいじった?」とかいうぐらいの感想しかないわけですが。それを今ごろ引っ張り出してきて「郵貯・簡保が民営化されると国債価格が暴落する!金利が暴騰する!」とか騒ぐのってどうよ。(´△`)ホゲー ま、選挙に何の影響もなかったみたいだし別にいいんだけどさ。
しかもそういうマクロ経済をちょこっとかじっただけの素人コンサルの分析を引っ張ってきて「資産が増えてなければ今年は400兆円ぐらいだ」とか、「民間にカネを回したかったら郵政民営化より国の予算規模を減らせえ」って言うに至っては、なーんだかーなー、という感じだ。もう素人床屋政談炸裂モード、めちゃくちゃでんがな。ま、選挙後だから世の中に何の影響もないし別にいいけど。
いちいち個別の発言に反論するのもあまりにめんどくさいんで、どうしてこの分析がDQNなのか知りたい!って人は適当にネットの中で誰かが分析してる記事を探してみてください。
っていうのも不親切すぎかもと思うので箇条書きで簡単に論点をいっとくと、
- 国の債務超過は別に大した問題じゃない。そんなのはよくある話
- 郵政民営化がなるかならないかと国債消化とは全然関係ない。というか郵政マネーが民間に回ろうがどうなろうが日本には今のところ国債以外に資金運用の場所などない
- 金融の世界では、理論的にはとっくに価格暴落して破綻しているはずの日本国債がなぜいまだにそうならないのかは最大のパラドックス。理論の部分だけかじって「今すぐにでも破綻するぞ!」って叫ぶのは素人の証拠
- 郵政マネーは国の一般予算とは関係ないところで運用されていたからこそこうなった。減らさなきゃいけないのは闇会計たる郵政マネーを勝手にじゃぶじゃぶ使っていた(今も使ってる)31ある特別会計や(たぶん80とかそこいらぐらいあるはずの)特殊法人とかの方
- 「実は国が貸し剥がしの原因だ」というのは、一面においてはそうかもしんない。だけどバブル崩壊という羮に懲りて「100%元本保証」にしがみつくという膾を吹いてきたのは、そもそも日本国民自身でっせ
このあたりの話って、一般の企業の財務会計と全然勝手が違うから、企業経営の専門家であればあるほど、その常識を適用して類推しちゃうのでどえらい勘違いをやっちゃうのだよね。だからマクロ経済ってのは本当に難しい。とはいえ、「知らねえ奴は軽率なことは言うな」というのもアレだし、どっかに「サルでもわかるマクロ経済」みたいな素人向け解説ってありませんかね?いや、これはマジメな話。
あと、全然関係ないけどParsleyさんのオカラと前チョンの分析があまりに面白かったのでご紹介しておく。これから武部幹事長を見るたびにボブ・マーレイやバーニー・マックの顔が思い浮かんで吹き出してしまいそうだ。
(9/24 9:30追記)さっそく小飼氏から神速レスTBが。→反論エントリ
基本的なところで特に反論する点はない。表現の問題として「コップの水がもうあふれそうだ」というのと、「まだあふれてないしこれからもそう簡単にはあふれないんじゃね?」という程度の違いだけで、事実認識には大した隔たりはないということが分かったので、「素人床屋政談」の言は撤回させていただきます。あ、自分で「素人」ってのは認めてるからそのままでも良いのかな。
しかし、20年後ねえ。個人資産何百億の小飼氏はいざしらず、吹けば飛ぶようなへそくり貯金しか持たない僕なんざ、20年後のことなんて真剣に考えたら、こんなところで生きてられませんがな。依存度が高いというより、選択肢がないからこそそういう発想になるってことだと思うんだけどね。
あと、もう一つ言っとくと「国に吸い上げるカネを減らすべし」といってる人が「こういう勇ましい台詞は、私より多く納税してから言って欲しいものだ」って納税額自慢するっていうのもどうかなあ。僕みたいなオケラ庶民でさえ年間貯蓄額の5%を寄付に回して何とか税金によらない再配分をしようとしてるんだから、小飼氏みたいな資産家は助成財団でも作ってガンガン慈善活動に寄付して、「サラリーマンふぜいなお前の生涯所得の何倍も国に吸い上げられる前に再配分してやってんだよボケが」ぐらいの啖呵は切って欲しいと思われ(もうやってるならゴメンナサイ)。
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コメント
じぇんじぇん明後日だけど、山川健一さんの「just one more chance と fox」って記事オモロイよParsleyさん風ではアル^^
ところで「cock」ってなんでつか_| ̄|○
http://ameblo.jp/yamaken/entry-10004448122.html
投稿: マルセル | 2005/09/24 00:55
ご本人も慣れっこになってるとどこかで仰っていたような気もしますが、それにしたって批判されるならちゃんと書かんと。。「小飼」弾氏ですよ〜、R30氏。
エントリーご趣旨については、ようわかりまへんが。
投稿: katshi | 2005/09/24 02:31
とりあえず人名をtypoしているのでツッコミ。
s/子飼弾/小飼弾/
s/子飼/小飼/
投稿: otsune | 2005/09/24 04:45
私はかなり素人で なんかこうまた視野が開けるようなそうでないような
全くわからないままとにかくいつも楽しく拝読しています。
このエントリ・コメントにあるリンク先をまたいつものように徘徊しつつ
残った疑問。今回のコメントって批判になってないの??
箇条書きの簡単な論点について、そんなんだと思ってはいけないのでしょうか。
そんなことはここで書くレベルではないんでしょうか・・。
朝早くから我慢できず初のコメントしてしまいました。
サルでもわかるマクロ経済、単なる主婦だけど見てみたいとかも思います。
失礼しました。
投稿: yasuko | 2005/09/24 04:50
>今回のコメントって批判になってないの??
コメントじゃなくてエントリの間違いでした;;
投稿: yasuko | 2005/09/24 04:54
弟子のガ島・藤代君が一蹴されたタイミングでこのエントリー。このブログもだんだん香ばしくなってきましたね。
ま、こういうちょっとした火種が大炎上になるパターンも多いわけで、いよいよR30氏も年貢の納め時が近づいてきてるんでしょうね。これからが見物。さて、小飼さんの真っ正面からの反論、どうかわすかねえ。
投稿: 鮫島 | 2005/09/24 05:18
そんなことより鮫島どんの下衆加減が大そう香ばしいに一票。
つうか、マクロ経済って言うと如何にも学問ばって聞こえるけど、要は「国家を人体に例えて」健康体であるよう留意しましょうねってだけのことやん。
マネー流通・物流を血流、会社組織を臓器、人間の品質を細胞に例えりゃ話が楽っちゅうか。
で、だ。この手の話をするときって、みんな「手前ェが脳みそ」って思い込んでる状態で話するから、話がまとまらんのよね。そんな訳ネーだろと。お前なんか盲腸じゃ十二指腸じゃ酒飲み過ぎて壊死寸前の脾臓じゃ目くそ鼻くそじゃっていう冷徹な自己診断が無いと、どんなに綺麗な発言しても意味ないよね、と思ってみる。
で、ここのシャッチョサンはどのポジションなのか。それが判然としないから、んだから反論とか箇条書きとか言われてもピンとこない。
どこの臓器のどの細胞なのか。そこからまずハッキリしたほうが吉。
投稿: うんこ | 2005/09/24 05:37
うんこさんだ・・(・・嬉)
マクロ経済について わかりやすいと思いました。
マーケティングって 奥深くも結構人の生活に密着してるのかなと極論?
鮫島さんと同じコト実は思ってたんです。とりあえずなんとか
下衆加減あたりにでもいるらしいと ちょっとホッとしちゃった単細胞です。
投稿: yasuko | 2005/09/24 07:29
> 国の債務超過額なんて1999年頃に「1000兆円ぐらいかなー」なんていうこんな記事が日経新聞にも載っていたぐらいだし、僕的に言うと「年金債務除けば350兆円?あれ、ちょっと見ないうちに随分減ったねえ、誰かなんかいじった?」とかいうぐらいの感想しかないわけですが
1000兆というのは資産を差し引く前のグロスの債務で350兆というのはネットの純債務では?
>金融の世界では、理論的にはとっくに価格暴落して破綻しているはずの日本国債がなぜいまだにそうならないのかは最大のパラドックス。
これはマクロ経済的にはパラドックスでもなんでもないのでは?
デフレだから、株とか土地は下がり続けるし、円安になりにくいから外債も不利。
デフレで実質金利は高くなるから消費や投資をせず現金のままを持っておくのが有利になる。
国が保証する国債は現金と同様の安全性だが、金利がつくので現金より有利。
だから国債は買い手が殺到して低利になるし、個人向け国債もすぐ完売する。
自国通貨での債務だから、政府が意図的に債務不履行にしない限り財政破綻は無いはず。
マクロ経済から見た財政赤字の解説はこれを読めばいいと思います。
http://bewaad.com/20050903.html#p03
投稿: ● | 2005/09/24 22:55
思い切ってコメントします。『いい国作ろう!「怒りのブログ」』というブログを書いている管理人です。
この手の話題は、郵政民営化問題も含めてずーっと書いてきました。件のコンサルの方が書いた内容についてはほぼ網羅しています(記事がいっぱいなので、興味あればお読みになってください)。全て私の方が早く書いています。勿論金融・財務の専門家が考えても同じ結論が出てくるだけなのかもしれませんが。
国債暴落危機説はもっと昔から存在しているようですが、それについても郵政民営化が実施されてもいきなり暴落といった危険性は少ないことも記事に書いています。個人金融資産と国債買入余力の関係についても書きました。
私は単なる素人に過ぎませんので、自分で考えられる範囲で調べたりして書いてます。比較的分かりやすく書いている積もりです。内容的にはコンサルの方が書いているのと似ているので、微妙な気分です。
長々と失礼しました。
投稿: まさくに | 2005/09/24 22:59
連続で失礼します。
負債総額は貸借対照表でも1000兆円超ですが、資産があるのでそれを引くと03年度で250兆円位ですけど(減ったかのように感じる)、05年度では年40~50兆円増加するという予測からコンサルの方はざっくりと「今は350兆円」という風に述べているのです。
年金債務は今の債務に算入されてません(これは将来支払予定の額ですので、厳密に言うと積立不足ということで、年金債務だけで600~800兆円(国庫負担額を含むかどうかでも処理が異なります)という規模になってしまいます)。
投稿: まさくに | 2005/09/24 23:11