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2005/07/22

米国議会が荒れると日本がデフレの津波をかぶる

 最近ブログを読んでいる友人と飲んだら、帰り際に「うんこに負けないようがんばれ」とか不思議な激励をされてしまった。ところでうんこさんは最近コメント欄からごぶさたしちゃってるけど、元気なのかな。畑の除草や害虫駆除で忙しいのかしら。何にせよご健勝をお祈りするばかり。

 ところで昨夜の人民元切り上げだけど、ニュースを聞いたときから気になってしょうがないのが、2%の切り上げ幅じゃなくて「通貨バスケット制への移行」という話。定食についてくるお漬物みたいにしれっと出てきたんだが、これって結構重要な話のような気がするんだが誰も何も言わないのかな。

 通貨バスケットっていうのは、複数の通貨の加重平均によって自国通貨の為替相場を決める方法のこと。人民元がどの通貨をバスケットに入れているかは分からないけど、貿易額や政治的な影響から言ってもドル、円、ユーロの3つはかなり大きな比重を占めているだろう。

 となると、例えば米国の議会が「人民元を切り上げろ!」と騒いだとして、ドルを人民元に対して大幅に安くし、かつ「通貨バスケット制だからこれでいいのだ」と説明するためには、円とユーロが対ドルで大幅に高くならなければならない。

 中国の貿易相手国として圧倒的に大きいのは米国と日本だから、ユーロが大幅高になったとしても貿易額で加重平均すればたかが知れている。ということは、為替調整のターゲットとなるのは円だ。

 実際、昨夜元切り上げの発表があってから、NYの円/ドル相場は前日の113円から109円まで一気に振れた。2001年以来、1日で1円単位の為替相場の変動が起こることがあまりなくなっていただけに、この振れ幅には僕はかなりびっくりした。

 短期的には今回の中国の「先制攻撃」で、米国も少しもみ合いに戻るのかという気がするし、元の為替相場が大きく振れることはないだろうが、今後米国の議会が雇用の海外流出などをネタに中国叩きをぶり返すたびに、相場調整の圧力弁として円が狙われることになるんじゃないか。

 つまり、米国は円がドルに対して圧倒的に高くなれば「通貨バスケットなのだから元を切り上げよ」と中国に迫れるわけで、景気指標が悪化すればするほど円への投機マネー流入は増える。つまり、株価と債券は爆上がり。一方、中国は当然ながらそれを押さえたいわけで、日本から中国への資金流入を猛烈に促すことになるだろう。

 資金流入といっても、国内経済の安定から見れば沿岸部に円の投機マネーが大量流入することを望んではいないだろうから、日本向けの輸出の増加で対抗することになる。つまり、中国産品の対日輸出を熱烈奨励するってことになるんじゃないか。こっちの記事みたいに「人民元切り上げで物価が上がる」なんていうのは全然逆。円が必ず人民元に先行して猛烈な上げを食らうことになったら、またぞろデフレの再来ですよ。とほほ。

 今年初め頃に「ここ数年円もずいぶん高止まりしてきたし、これから数年は円安ドル高かなー」とか漠然と思っていたものだが、なんか大外れしそう。少なくとも中国がその経済成長で米国の神経をとがらせ続ける2007年までは、当て馬的に日本への海外資金の流入はますます増えそうな予感。TOPIX連動インデックス投信でも、買っとこうかしら。

03:02 午後 経済・政治・国際 コメント (10) トラックバック (6)

2005/07/21

テレビ番組のアフィリエイト、何で誰もやらないの?

 ずいぶん前の話になっちゃうのだけど、そろそろ自分的に時効だからいいか、みたいな感じになってきたので書いてしまおう。最近、民放が相次いでネット映像配信をぶち上げていて、今日もTBSがツタヤとなんかやるぞみたいな発表をしていたわけだが。

 TBSとツタヤがタッグ--番組のDVD強化後、ネット配信はイバラの道(CNET Japan)

 この提携自体は、単にこれまでパッケージソフトの自前流通チャネルを持たなかったTBSが、CCCと共同でレンタルやセルDVDを流通させまっせ、という話に過ぎなくて、まあそれは可もなく不可もなし。僕が「何だかなあ」とクビをひねりたくなるのは、やっぱりその後の「ネット配信」あたりの話である。

 テレビの人たちって、口を開けば「番組は著作権関係がややこしすぎるのでネット配信は簡単ではない」とか言うけれど、実際にはハコフグマン氏のブログで書かれているように、下請けの制作会社がネット関連の著作権処理もこなした上で番組を着々制作し始めているので、あれって何かの言い訳に過ぎないんだよね、実は。

 で、何の言い訳だろうと考えると、やっぱりテレビにはテレビというチャネルしかないっていう、まさにその弱みが原因だろうと思うわけだ。フジみたいにポニーキャニオンという流通会社をグループで握っているメディア・コングロマリットはいい。あと、NHKも。だけど他のテレビ局って自前のチャネルがないから、ソフトを販売しても大して売れなければ他人の資本の流通会社を潤わせるだけで終わってしまう。だからやらないってことだったんじゃないかと思うわけだ。

 でも、別にテレビの映像コンテンツのリセールチャネルって、パッケージソフトだけじゃないと思うんだよね。そりゃもちろんネットで課金して映像を売れればベストだけど、それには著作権とCDNの問題が…ていうんなら、別にネットじゃなくったっていいじゃん。ケーブルテレビとか衛星放送だって、あんだからさ。

 パッケージだとあまりにも流通コストが高すぎて、結局ロングテイルの末端部分は全部「利益出ない」の一言で切り捨てざるを得ないけど、多チャンネル放送とかなら特定ジャンルだけループで垂れ流して、課金は番組単位のPPVってことでスクランブルかけりゃいいわけでしょ?そしたら、DVDじゃなくったってリセールできるじゃん。もちろんツタヤで売るよりはリーチする市場が小さいかも知れないけどさ。

 で、それで思い出すのが「ネコプロトコロル」のオーシマさんが6月26日のダイアリーで書いていた、テレビのアフィリエイトというアイデア。

 「昨日見たTV面白かったよと書いてもあなたのプログ読者も遡って番組参照することができないわけで、記事として参考になりにくい」、だから「TVに限って言うならばTV局は番組の放送後すぐに、番組データをNET上にあげるべきなのです。それを有料配信する仕組みにしておいて、プロガーは紹介エントリで有料配信サイトへ誘導、TV局はプロガーに対し紹介料を支払うようなそんなビジネスあったっていいじゃん」って書いている。

 …いや、実は僕ね、これとまったく(厳密に言うとネットではなくてCATVを使うという)同じアイデアを、某(以下検閲削除)に持ち込んでたわけよ。テレビチャンネルのアフィリエイトシステム、作りましょうってね。でもそこの社長が「つまんね」とか言って蹴ったわけさ。

 ま、オーシマさんと僕が考えつくぐらいだから、どうせ既にどこかの誰かが考えついてるんだろうし、湯川氏も「求められているのはネット配信ではなくてオン・デマンド」というエントリを書いているように、メディアビジネスをじーっと目を凝らして見ている人にはほぼ自明の話だと思うんだよな。メディアの中の人たちにとってはむしろ自明じゃないらしいってのがちょっと笑えるけれども。。

 そんなときに、テレビ系の映像コンテンツはたぶん、映像そのものはネットの外側に置いたまま、ブログやRSS、SNS、SBMと段階を踏んだ発展のステップを、ほぼそのまま踏んで進歩すると思うのだが、どうよ。ツタヤも、はてなツタヤオンラインとかやってる場合じゃなくて、早くツタヤオンラインにブログ+チャンネル・アフィリエイト実装しようよ、マジで。でないとテレビ屋さんに抜かれちゃうよ。

 あと、全然関係ないけど最近つくづく信じられなかったのが、NTT東が「ひかり電話」のイメージキャラにSMAPの中居正広を使ってること。別にネットサービスじゃなければいくらジャニ系使おうがカネ余ってる企業の勝手だと思うけどさ、ネットのサービス売るのにネットで画像使えないタレント起用してどうすんだよ。

 ま、NTTだしバカ高いカネかけた広告の効果なんてどうでもいいんだろうけど。うちもそのうちNTTの電話切ってIP電話に完全移行するしな。NTTさいなら。

12:08 午前 メディアとネット コメント (5) トラックバック (10)

2005/07/17

環境が無敵のポジショニング軸になる日

 3つ前のエントリで自動車業界の話が出たので、クルマネタをもう1本。

 今の国内自動車業界の話題と言えばとにかく8月のレクサス上陸でもちきりなわけだが、その中でもトヨタ以外の各社が一番衝撃を受けているのがこちらのブログで語られているような話。つまり、2006年にもレクサスで販売する全車種にハイブリッド・エンジンが搭載されるらしい、というものだ。

 先日クルマ大好きな(お金持ちの)友人と話していたところ、「レクサスISにハイブリッドエンジンが載ったら、絶対に買う」と言い張っていた。彼はそれまでトヨタ車を1台も買ったことがない。かつては日産スカイライン、今はBMWの3シリーズという、典型的なスポーツカーマニアである。

 こういう人は、かつてトヨタ車などには脇目もくれなかったタイプだ。その彼がなぜハイブリッドが載ったレクサスなら買うのか?理由を聞いてみると、「モーターの加速を味わってみたいから」と言う。

 眞鍋かをりと一緒に退屈なエンジン講義を聴いた人なら分かると思うが、排ガス低減・省エネのためだとばかり思っていたハイブリッド・エンジンに、実は高トルク走行時のガソリンエンジンの動力効率の悪さを電気モーターでカバーするという、新しい使い方があることを示した。

 もし前評判通り、レクサス車に搭載されるハイブリッドが従来のターボエンジンよりも加速性能が高いとなると、価格や居住性より「走り」の性能が求められる上位車種の競争のルールががらりと変わってしまう。ハイブリッド・エンジンを持たない他のメーカーにとっては、危機的な事態だ。

 もっとも、このようなハイブリッド・エンジンの使い方自体は、トヨタのオリジナルではない。昨年12月に米国でホンダが発売した「アコード・ハイブリッド」は、通常のガソリンエンジンの横に電気モーターを積むことで、高トルク時の加速性能を従来車比で30%も高めた。

 トヨタがこれにヒントを得た、と言ったらさすがに言い過ぎだろうが、このホンダのマーケティングが米国で大きく当たったことから、「『ハイブリッド=ターボ以上の加速性能』という構図を作れば上位車種で勝てる」という自信をトヨタに持たせたことは、ほぼ間違いないだろう。「環境対策」がマイナスをゼロに戻す陰の努力ではなく、他社の追随できない圧倒的な競争優位性の源泉になる時代が来たのだ。

 …といったようなことを、電車の中でぼーっと思い出していたら、トヨタ以外にも環境対応を競争優位性にしようとしている企業を発見。「ペコロジー」ってなんか意味不明なんだけど妙に頭に残るフレーズ。ブランドとしてまず面白い。少なくとも「クールビズ」よりは少しクールだ。「これからのお茶は潰しやすくなくっちゃね」というコピーがどうにもイケてないのが残念だが。

 「んなぺらぺらの薄いペットボトルなんて、やろうと思えば誰だってマネできるっしょ?」とか思いがちだが、そんなに簡単なもんでもないようだ。ペットボトルそのものはぺらぺらに作ることができても、それにうまく飲料を充填する生産ラインが難しいらしい。つまりうまくブランドとして浸透させられれば、他の飲料メーカーに3~4年(ボトリングラインの刷新にはそれぐらいの時間がかかる)のアドバンテージをつけられるってこと。うまくいくといいですね。

01:10 午前 ビジネス コメント (7) トラックバック (6)

2005/07/16

そういえばモヒカン族って…

 こちらのテストをやってみたのですが、わたくしめは「非攻撃的モヒカン族」であるという判定が。

 ところで、モヒカン族って何なんですか?パプアニューギニアの山奥にいるインターネットユーザーのこと?

01:33 午前 日記・コラム・つぶやき コメント (6) トラックバック (2)

2005/07/15

SBMってオーソライズ機能にならないのかな

 昨日は久しぶりに1日のPVが1万に届きそうだった。ブログニュースサイトを意識して見出し立ててみたからなんだけどね。ところでリファラを見ると2%ぐらいが「http://www.ameba.jp/」から来てるんだけど、アメブロのトップページって、どこにもこのブログへのリンクなんか張られてないし、いったいなぜこんなに飛んできてるのだろう。

 それはともかく、僕と同様に最近更新頻度が落ちているParsley氏のブログからこんなトラックバックをもらったのだが、それを読んで結構考えさせられた。

 確かにガ島通信とか、更新停止した著名ブログもいくつかあるのだけれど、僕が巡回してるところはまあペースは落ちてもそこそこ続いているところも多いし、フリーランスのライターさんなど新しい書き手も常に流入はしているし、ブログ界隈のコンテンツ生産能力はそんなに落ちてないと思う。

 でもなんか活気がなくなったように思う理由の1つが、ブログの読み方がだんだん単発のエントリのクオリティではなく、文脈(コンテキスト)依存型になってきたからじゃないかというのがParsley氏の仮説。以下引用。

 とはいえ、ニーズの問題や、形態の問題以外に、オーソライズの形を再構築する必要もある。これが簡単ではないだろうなぁ。
 おそらく「読ませる」記事というのは、そこら辺に転がってはいる。が、それを権威づける媒介がないと、存在さえもが知られずに眠ったままで過去ログへと流されていく。
 個人商店が基本のblogだと、ひとたびの粗相で、たちまちのうちに評判がガタ落ちになり、その後に良質なエントリーをアップしても、決して元には戻らないことがままある。
 (中略)blogという縦軸でなくて、点単位のエントリーで捉える発送を、閲覧者に求めるのは、ちょっと無理がある。それを強制する手段として、情報の詰め合わせの配送業に徹することにより、雑誌屋が生き抜くことが出来ないかなぁ。
 そんな戯言はともかく、まっさらな状態でエントリーを評価し、伝播させる仕組みを考える時期が近づいているというのは、偽りのない私の実感ではあるのだ。
 ひところの「匿名vs実名」論争あたりも、同じ問題意識に端を発していたようにも思う。

 Parsley氏は「雑誌」のパッケージング(詰め合わせ)機能に期待してるみたいだけど、まさにそこがカギだと思う。テキストコンテンツって、実は書くことよりもそれを面白いパッケージに詰め合わせる(編集する)方がずっとずっと手間がかかるし、能力が必要なんだな。

 たぶん、ソーシャルブックマークっていうのがそういうニュースクリップ機能になるか?というのが今年上半期の期待だったと思うのだけれど、いやもちろんそれはなるのだろうけれど、でもそれって「はてな」っていう集合意識のニュースクリップ(しかも最強のスピードと情報収集能力のあるクリップ)が1つできました、っていうだけの話。

 個々人の編集するSBMにスポットを当てるという方向にはベクトルが向いてないから、結局「他人が面白いと思うだろうと思うページを自分もブックマーク」という、ケインズの美人投票と同じことになっちゃってるんじゃないかと思うわけだ。ウェブコンテンツの(株式)市場化という点では意味があるのかもだけど、特異なパーソナリティや切り口を持った人のニュースクリップを見て楽しめるという、ネットならではの多様性を楽しみたいという向きには、はなはだ残念な方向に向かっているような気がしてならない。

 希望があるとすれば、クリッピングの機能やSBMのページデザインに最大限個性を反映できるようにして、「あの人のSBMはとにかくコメントが面白い!」「デザインがかっこいい!」とか言われるようなものを生み出して、株式市場ではなくて個人のポートフォリオをフィーチャーする方向性をこれから作れるかどうか、ってことじゃないかなあ。世の中に星の数ほど雑誌があるように、ネットの世界にも星の数ほど個性的なブックマーク集があって、その上でTOPIXみたいな「相場全体の動向」としてのはてなブックマークトップページがある、というのが一番望ましいと思うんだけど。どうなんでしょうね。

11:25 午前 メディアとネット コメント (6) トラックバック (5)

2005/07/14

ひさびさの大型ブログサイト登場

 ぼーっとしていて1週間も気がつかなかった。不覚でした。毎週3回、こっそり楽しみに読んでいるメールマガジン「日経ビジネスExpress」の一部が、ついにブログ化。

 2005東京国際自動車会議コラム

 通常はメールで配信されてくるコラム2本(池原照雄の「最強業界探訪―自動車+α」、浜田基彦の「走る、曲がる、止まる」)に加えて、スタイリッシュなフリー月刊誌「ahead」の若林葉子副編集長、日経ビジネスの石黒千賀子編集委員の新装コラム2本を加え、なんと4本のコラムが毎週タダで読めるという、超ぜいたくな期間限定サイト。

 しかも、コメント・トラックバック両方とも開放ですよ。いきなりなんという素晴らしいことを。実際、マニアの多い自動車業界の話題だけあって、読み応えのあるトラックバックやコメントが続々集まり始めている。

 各コラムニスト、特に池原氏と浜田氏のコラムの面白さは折り紙付き。池原氏は元日刊自動車新聞記者で、自動車業界専門の著名ジャーナリスト。各社の経営を主に論じるのだが、この切れ味がまた鮮やかで、毎回唸らされる。記念すべきタダ化第1回目のコラムは、やっぱりこのネタ。「米国トヨタの値上げのメッセージ」で来ました。名も実も両方取るトヨタの見事な手綱捌きを論じた内容は、トヨタに滅びてほしいと思ってるどこかの偏屈親父さんのコラムとは全然格調が違う。

 若林氏のコラムも、自動車関連と言いつつ実はバイク、しかもリアシートのタンデムライド体験記という、まさに「美人の女性にはかくあれかし」と男どもが夢想するままの姿を演じてくれるお話。「自動車業界に向けて普通の女性の見たままを書いていく」とのこと、もう興味津々、というか萌え萌えです。

 ただ、個人的に一番好きなコラムは、なんと言ってもメカマニア垂涎の浜田氏のコラム。この元祖メカオタクぶりには背筋が凍るほどの興奮を感じる。1作目はホンダのかち割りコンロッドが、エンジン軽量化にどのような役割を果たしたかという、超マニアックなお話。過去2年のコラムのマニアぶりもすごいのだが、年末までの6ヶ月間、毎週どのようなオタクネタを披露してくれるかと思うとわくわくする。

 これだけの強力なラインナップのコラムを集めたウェブサイト、RSSリーダーにはぜひとも登録せざるを得まい。これでアクセスを集めて広告収入を上げれば日経ビジネスもウハウハなのだろうけれど、惜しむらくはこのサイトが自動車会議の宣伝サイトに過ぎず、ウェブサイトへの広告では稼ぐつもりがないもよう。いっそのことここでRSS広告でも試せば良かったのに。ああもったいない。

11:38 午前 ウェブログ・ココログ関連 コメント (1) トラックバック (3)

やっぱりそうだったのかニュース

 R30久しぶりの下ネタです。読んでいるだけで妄想大爆発、考えるだけで顔がにやついて止まらなくなるビジネスニュースを発見。

 オカモト、イチジク製薬を10月に完全子会社化(NIKKEI.NET)

 近藤さんの会社が浣腸薬の会社を買収。その理由は「オカモトは男性用避妊具を製造販売しており、イチジク製薬の取り扱う浣腸薬と販路が共通。卸の共通化などで営業・物流の効率化などの相乗効果を狙う。」

 販路が共通
 販路が共通
 販路が共通
 販路が共通

 や っ ぱ り か ! ( 爆 笑 )

 とかって笑いながらいろいろ書くネタを考えていたら、70%の株式を取得した3月に、既にこのサイトでは到底書けないレベルの内容を大まじめにビシバシ書いているブログを発見した。ので、詳しくはそちらを読んで妄想を暴発させてください。

06:57 午前 ビジネス コメント (1) トラックバック (0)

2005/07/12

連邦制チェーンストアの可能性

 3年以上前から業界内でくっつく、くっつくと言われていた3社がとうとうくっついた。周到な準備のうえでの、見事な統合でした。

 ホーマック・カーマ・ダイキ、経営統合を発表(NIKKEI.NET)

 来年9月に37都道府県に524店舗を擁する、売上高4330億円のホームセンターチェーン「DCMJapanホールディングス」が登場、と。持ち株会社になるのは、これまで3社+三井物産の合弁で作った共同仕入れ会社。これまで1位だったカインズが2006年2月期末で約150店舗、売上高3000億円の見通しだから、売り上げ規模だけで見れば2位をはるかに上回る圧倒的なトップが登場ですな。

 カインズは売上高でここ2~3年、伸びが鈍っていた。新潟でPLANTとガチンコの勝負のまさにその時に中越地震が起きたり、ベイシアとの合同出店でのスーパーセンター業態を中心に据えたため、出店調整にてこずっていたりとか、最近あまり良い話がなかったので仕方ないかもと思うが、何かあったのかな。

 個人的にはやっぱり群馬が本部の会社は群馬周辺でしか、東京が本部の会社は東京周辺でしかうまくいかないんじゃないかという印象を持つ。前橋に本社を置きながら直営店だけでほぼ全国に店舗展開を成し遂げたヤマダ電機は例外中の例外。たいていはどんなに強いチェーンストアでも、本部から遠くなればなるほどその強みが薄れ、その地場の強豪ライバルに競り負けてしまう。

 これは、チェーンストアといえども日本国内でも極端に違う「土地柄」に勝てないからだ。日本というのは本当に不思議な国で、地域間のギャップがものすごく大きい。言葉一つとっても、東北弁と関西弁は言語的に見ればイタリア語とポルトガル語よりも離れている、というような話を前に聞いたことがある。

 生活風習についても同じで、地域ごとに生活習慣や食事などがものすごく違うので、どこでも同じような品揃えの小売りには客がつかない。品揃えだけじゃなくて、商圏設定から始まって陳列や接客スタイルに至るまで、地域の独自性というのはとどまるところを知らない。流通業界風に言うと「本当の意味でのチェーンオペレーションが通用しない」のじゃないか、日本という国は。というような話が、もう延々と10年来議論されてきたのだけれども。

 そんな中で最近「ふーん」と思って興味を持って見ているのが、DCMのような「ボトムアップでできたローカルチェーンの連合体」みたいな形式の全国チェーン。家電業界で言うとエディオン(西日本=デオデオ、東日本=エイデン)とかギガスケーズデンキ(関東=ケーズ、中部=ギガス、近畿=八千代ムセン)みたいなとこ。

 各地域に機能をまとめて持つ地域統括本部みたいなのがちゃんとあるチェーンは、それなりに全国展開できるのだろうけれど、じゃあ「おまえんとこをうちの○○地域統括本部にしてやるから仲間に入れよ」とか言われて納得できるわけじゃないところが小売業の難しいところだ。

 なぜなら、小売業で一番「おいしい」ところは仕入れであり、一番「つらい」のは店舗運営だから。仕入れはスケールメリットを出すために本部でやります、しかし現場は独自の店作りでがんばれとか言われて、ハイそうですかって喜んで全国チェーンに店を売る経営者などいない。結局みんな自分がおいしい思いをしたいのは当然である。だからこういう合従連衡による全国チェーン化というのがなかなか進まなかった。

 ただ、エディオンやギガスケーズのように、経営トップたちに強い危機感があり、かつ主導権を持つ企業が仕入れ、利益配分も徹底的に透明化しないと、納得ずくで仕入れの権限など譲れないだろう。実際、ドラッグストア業界ではこの手の企てがほとんど失敗している。薬や日雑など、国内のメーカーや卸が至れり尽くせりで小売店をちやほやしてくれる業界などで、仕入れ機能を集約して利権を手放してまで価格勝負に挑もうなどと思う小売りは出てくるわけないからだ。

 DCMはその意味で、価格競争に勝つために海外仕入れのスケールメリットが必要で、しかも仕入れ先の開拓が大変なホームセンターという業界だったからうまくいったとも言える。だが、やはり誰かが中心になるというよりは、3社がそれぞれの得意技(ダイキ=店舗建設、カーマ=売り場設計、ホーマック=PB開発)を持ち寄るというかたちだったからうまくいったというのもあるだろう。そういう、ギブ&テイクのない一方的関係で連邦を築くのは難しい。

 別にどの業界の企業も連邦をおやんなさいなどと言うつもりもない。そもそも仕入れのスケールメリットの効かない分野で巨大化してもしょうがないし、イオンやダイエーなどのGMSはまさにその点を間違えたがゆえに厳しいことになってるわけだ。ただ、スケールメリットのある程度効く業界で生き残るためには、地場で強くなるのと全国規模で通用する強みを1つか2つ持って、遠くの地域で似たような補完関係が作れるお友達を探すというのが一つの成功パターンになるのではないかな、と思った次第。

 最も、ホームセンターだって規模よりオペレーションが大切な商品も扱ってるわけだし、DCMだって数年後にダイエー化していない保証もないわけなので、あまり楽観的なことは言えないけど。しかし小売業の方々というのは、本当に大変ですな。

12:19 午後 ビジネス コメント (9) トラックバック (3)

2005/07/06

トップニュース2件に簡単な感想

反対37票 読み切れず 『郵政』薄氷の通過(東京新聞)

 久しぶりの国会メークドラマだったわけですが、肝心の小泉首相があまりいきり立ってないからつまんねーの。ちなみに参院は大荒れ、とか下馬が騒いでますが、意外にあっさり通過するんじゃないの、という予想を7月5日の日記でかんべえ先生がおっしゃっています。僕は政治のことは門外漢でようわからんけど、普通に考えたら「通さない」っていう選択肢はないだろ。

 仮に自分が選挙区に郵便関係者の支持基盤を抱えている政治家だったとして、どう考えるかを想像してみればいい。今の状況で優勢民営化を争点にして選挙に勝てるかと言えば、ノーだと思う。だって一般国民はあの法案が自分たちの暮らしにクリティカルな影響を及ぼすとも思ってないし、そもそも今のまま郵政民営化すれば何が起こるかなんて、予想すらつかないから。つまり「反応のしようがない」。

 今の政府がやろうとしてることはまず第一に「郵貯・簡保の分離独立」なわけで、(本当かどうかはともかく)郵便についてはユニバーサルサービスを維持する、と言っている。一方、反対派は郵便のユニバーサルサービス維持を必達目標として、それには郵貯・簡保の利益が必要、といっている。要するに議論の方向がまったく逆さま、噛み合ってないのだ。だから一般人には理解できない。

 郵便局が社会インフラとしてクリティカルに重要だと思ってる一般人は、田舎住まいの人を中心にわずかだ。少なくとも日本の人口の大半を占めるわけではない。その中でも全特関係者以外は「郵便局にコンビニとかの機能も付けば便利やん。ていうかあのふんぞり返って選挙運動ばっかりやってる局長のおっさん、もうちょいまじめに働かんかい」程度しか思ってないから、ユニバーサルサービスに関する限り反対派に勝ち目はない。

 で、郵貯・簡保だがこっちは一般人にはもっと縁遠い話で、要するに預けた金がちゃんと返ってくればいい以上の要望もないから、分離独立すれば無駄遣いしまくりの特殊法人や特別会計に流れるカネが細ります、と言われれば「ふーん、そう、じゃそうすれば」以上の反応は引き出せない。つまり、反対派はこんなものを選挙のネタになんかできないのだ。

 一方、郵政法案と関係なく今選挙で小泉と戦って勝てると思ってる議員というのも僕には不思議ちゃんにしか見えなくて、だって都議選が「自・民・公の3つの党に所属する以外の有象無象には、有権者はだんだん目もくれなくなっている」という事実を示しているのに、ここで自ら有象無象の1人に志願しようというアホの気が知れない。

 というわけで造反者の皆様は票読みして否決されないことを確認した上で、おらが選挙区の全特や全逓連関係者のメンツを立てるために造反したのだと思いましたですよ。ま、個人的には自民党小選挙区の支持基盤って半分近く層化なんじゃないかと思うので、層化がついてくれるんならもはや全特や全逓連なんてネグリジブルなんじゃないのとか思うけどさ。

 それよりもそれよりも、経済ニュースとしてはこちらのほうがメガトン級。

 三洋電機、3年で1万4000人減 激痛覚悟の野中流(フジサンケイ・ビジネスアイ)

 すごい大革命だな。人員削減数1万4000人のうち8000人が国内っていうのもすさまじい。日本企業過去最大のレイオフじゃない、これって。ていうか、フジサンケイさあ、トラックバック受け付けるのはいいけど、記者会見の一番面白いところ書いてないじゃない。以下東京新聞の記事から引用。

「操り人形だとか世襲の弾よけだとかいろいろ書いてくれてありがとうございました」。三洋電機の野中ともよ会長(51)は、五日の経営方針説明会の冒頭、集まった約六十人の報道陣に対し、皮肉るよう切り出した。
 いやー野中さん、洒落が分かるいい人だねえ。経営者として一流なのかも。

 クビ切られる人には可哀想だとは思うけど、ここまでドラスティックにやっちゃえば、後は上がるだけ…と思いたい。6月末に発表した事業報告書を見ても、最大の焦点はデバイス・コンポーネント関連なので、このへんをタイミングよく取捨選択できれば業績は好転しそうな気がするな。ただ、コンシューマエレクトロニクスを半分も抱えて連結営業利益率5%という目標は、ちょっと厳しそう。ここはやっぱり儲かるデバイスに徹底的に突っ込むしかないんだろう。うまくいくといいけどね。

 しかし、その陰でせっかく三洋とリスクシェアしたはずだった液晶ディスプレー事業をまた押しつけられたセイコーエプソン、ちょっと可哀想かも。ま、エプソンは業績絶好調でキャッシュもあるのだろうから、お家芸の中小型液晶を完全子会社化して、また市況の荒波にもまれつつがんばってください(笑)。

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2005/07/05

使用期間の長い商品選びの鉄則 ――リフォームビジネスを考える その1

 最近、新聞の社会面やらワイドショーやらでしきりと悪質リフォームの話をやっているみたいですね。てゆーかあれって朝日ソーラーとか光通信とか在宅パソコン内職とか、そうゆう過去に累々と積み重なった消費者生活センターネタと何が違うんですかね。たぶんパターンとしては何も違わないんでしょ。まあ、物忘れの激しいお年寄りにとっては有益な情報かもね。

 リフォーム詐欺のニュースなんかより、リフォームについて本当はもっと大事な議論があるだろうにと思うのだが、たいていテレビ系のマスコミ(除くNHK)というのは不易的に重要な話というのは流さない。彼らにとって「大事」な話というのは流行の話だからね。

 それはともかく、今回自分自身が築20年の中古マンションを買って中身を全面リフォームするという体験をしてみていろいろなことを考えた。これからちょっとずつそれについて書いてみようと思う。

 冒頭にリフォーム詐欺の話を振っておきながら、それと何の関係もない話をするのも何なので、ちょっと話を戻そう。そもそもあのような詐欺事件を制度的に防げたかというと、そりゃ難しいだろうねとは思う。だってリフォームというのはそもそもトラブル産業だからだ。ニュースになってるのは極めて極端な例ではあるけれど、本質的にその他一般のリフォームと何ら違わない。

 マスコミ自身がリフォーム番組をやって煽りまくってるからそういう話が表に出てこないのだけれど、リフォームして工事業者と1つもトラブルなく終わることなど、ほぼあり得ないというぐらいトラブルだらけなのがリフォーム産業の実態だ。

 何故そうなってしまうかというと、理由はとても簡単。そもそも建築業界の常識を知らない一般人が一般的だからだ。

 例えば、あなたがある商品を買ったところ、それが機能的には確かに説明通りなのだが、デザインの仕上がりが当初イメージしていたよりも少し悪かったとしよう。それが工業製品なら、メーカーに「これ、私が思ってたのと違うんだけど。返品するから新しいものを交換して」あるいは「カネ返して」と言えば、たいていは認めてもらえる。

 ところがリフォームではそうはいかない。商品は1件ごとにすべてオーダーメードであるうえ、作ってしまったものを取り替えることもできない。したがって「こんな商品要らないから金返せ」と言われても、業者も応じられないのである。

 しかも、不具合を手直ししようにも、工事が終わった後からでは手を加えられなかったり、手を加えるとかえって見た目が悪くなってしまったりすることがやたらと多い。住んでいる時に目に付きにくい部分なら我慢もできるが、これが壁とか床とかドアとか、思いっきり目に付くところだとどうしようもなく腹が立つ。

 Googleなどで「リフォーム」「トラブル」と検索してこの手の話を書いたウェブサイトなどを読んでみると、たいていは「経験豊富な良いリフォーム業者を選びましょう」「リフォームを頼む消費者の側が勉強して賢くなりましょう」といった結論が書いてある。だが、マニアならともかく、住宅リフォームの設計や施工の経験もない仕事に家庭に忙しい一般人が、どうやって完璧なリフォームの知識を身につけて業者と対等の立場に立てばいいのか。そんなのは後知恵だと僕は思う。少なくとも僕には無理だ。

 CS(顧客満足)やアフターサービスについて、たぶん日本中のどんな記者よりもたくさん取材をした僕に言わせれば、何も自分がリフォームの専門家にならなくても、この問題を解決することはできる。少なくとも、理論上はそんなに難しいことではない。使用期間が長期にわたるような、あらゆる製品を購入する際の企業選びの「鉄則」を適用すればいいだけなのだ。

 その鉄則とは、製品を提供する企業の側に、売上げではなく顧客満足のためだけに対価を受け取っているポジションのスタッフがいるかどうか、そしてそのスタッフが売上げや利益を目標に課されたポジションの人間よりも上の立場にいるかどうかを確かめるというものだ。

 ある業者がリフォームの経験が豊富かどうかなんてちょっとやそっと調べた程度では分からないし、建築業者としての経験があればいいってものでもない。そもそも社歴なんていくらでも詐称できるのがリフォーム業界である。そんなものはあてにならない。

 工事の売上高に関係なく顧客満足の結果によって報酬を受け取り、しかも工事を進める部門のどの人間よりも偉いスタッフがいるリフォーム業者は存在するかと聞かれれば、正直言ってほとんどいないだろうね、残念ながら。だが、そういう構造を作り出すことはできる。リフォーム業者と自分の間に、独立した建築家を挟んで契約するのである。

 建築家、正確に言えば建築設計事務所というのは、工事費用の10%程度の手数料を取る代わり、設計からリフォーム工事の施工監理までを消費者に代わってやってくれる。10%といっても、工事代金に比例して取るわけではなくて、最初の予算が1000万円なら100万円の設計料という契約をするだけだから、こちらが商品の出来に満足して100万円を支払うまでは、リフォーム業者への指示や交渉にいくらでも手を尽くしてくれる。

 建築家は、住宅工事のどこがキモか、職人が手抜きをするとしたらどこで手を抜くか知り尽くしているので、工事業者にしてみれば手強い存在だ。しかも建築業界の弱みを知っていて顧客に入れ知恵したりもするから、トラブルを起こしても勝ち目がないと知っていて、言うことは何でも聞く。つまり、リフォーム業者の「上の立場」の存在なのである。

 工事料金のたった1割をケチって、一生モノの商品購入に失敗して「カネ返せ」「できない」の不毛なトラブルに巻き込まれるぐらいなら、設計から施工まで全部リフォーム業者に任せるのではなく、設計には独立した建築家を必ず入れることにすれば良いと思うのだが、どうもそういう声が世の中のどこにも出てこない。

 思うに、リフォーム業者も建築家という目障りな存在をリフォームに介在させるのを極力避けようと、情報操作に必死なのだろう。だから、この手のトラブルを防ぐのが主目的であるはずの財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターなども、結局“優良”リフォーム業者(何度も言うが、本来あらゆるリフォームにトラブルは付き物であり、業者が優良とかそういうのは関係ない)の登録団体みたいになっていて、優良リフォーム事例の紹介でも設計料と工事費用を分けて表示することさえしていない。トップページには「増改築相談員」とか「マンションリフォームマネジャー」なる資格者を紹介するとうたってるが、見てみると登録者はほとんど全部リフォーム業者の社員。激しく笑わせてくれる。

 これでは、優良事例とかいっても結局競馬か宝くじと同じで、「あなたは当たりのリフォームを引き当てました、おめでとう」と言ってるのと何ら変わらないということが、どうしても分からないようである。ま、紛争予防じゃなくて「紛争処理」を飯のタネにしてる公益法人だから当然と言えば当然か。

 それにしても、リフォームというのはあらゆる意味で日本のライフスタイル全般に関する問題点の縮図だと思う。それは、逆に言えば市場機会の宝庫、ビジネスチャンスの秘密が詰まっている分野でもあるということだ。消費者が悩みを抱える問題の構造をうまく解きほぐせるようにマーケティングすれば、まったく新しい(しかも世の中の役に立つ)ビジネスを生み出せるかもしれないからだ。

 というわけで、これからしばらくこんな調子で、リフォームビジネス周辺のことを折りに触れてあれこれ書いていきたいと思う。

02:41 午前 住まい・インテリア コメント (18) トラックバック (5)

2005/07/01

経営者は何によって記憶されるか――追悼・小倉昌男

 ヤマト運輸元会長の小倉昌男氏が昨日、死去した

 経営者というのは、何によって記憶されるのだろうかと考える。もちろん、経営者と言う職務の本来的な役割は事業活動を通じた社会のイノベーションである。巨大な事業を興した人やその後の社会になくてはならない基盤となるようなイノベーションを生み出した人は、間違いなく永く人々に記憶されるだろう。

 だが、そのような事業はどのようにして興されるのか?と問うてみると、実はその奥底に潜む経営者本人の志というか執念というか、そうしたものの凄まじさこそが事業を生み出すのであり、それこそが経営者の本質であるということもできる。

 日本では、たいていの成功した経営者には、官庁の審議会委員、業界団体や経済団体の役員などのポストが名誉職のように与えられ、自分の会社やそれらの名誉職ポストを引退した後も、死ぬまでそういう団体が居場所を確保してあげる仕組みがある。今はどうか知らないが、数年前までは丸の内の日本工業倶楽部とかに行くと、よぼよぼの今にもぶっ倒れて死にそうな元著名経営者が何人も、緋色の分厚い絨毯の部屋で日がなぼーっと新聞を読んだりお茶を飲んだりしている光景を見ることができた。

 けれどもそういう「徐々に会社からも社会からも忘却されていく」タイプの経営者というのは、亡くなった時にはほぼ完全に世の中から忘れられていて、勲章受章しているようなあまりに偉大な人だったりすると一応マスコミも引退寸前の論説委員あたりを引っ張り出してきて追悼記事を書かせたりとかして、でも誰も覚えてねーみたいな話になる。それを考えると、亡くなった時に人々にある種のショックを与える経営者というのは、実はそんなに多くはない。

 世の中に永く記憶されるタイプの経営者というのは、死ぬまで自分の志とか執念とかに忠実に生き、しかも業界団体や審議会などのポストを経由して緋色の絨毯の部屋に押し込められたりしなかった人なんだろうと思う。

 ヤマトの小倉氏は、まあ確かに運輸省に喧嘩を売ったりもしたけれど、おそらくそういう「徐々に忘れ去られる」道にも踏み込めたし、実際ほんの少しだけ踏み込んだりしたこともあったけど、敢然とそれを蹴り飛ばし、死ぬまで自分の志に忠実であることを選んだ、希有な経営者だった。

 では、彼の「志」とは何だったのだろうか。

 小倉氏の遺志を最もストレートに継いだ、ある女性がいる。福祉ベンチャーパートナーズ代表の大塚由紀子氏だ。

 彼女は中小企業診断士時代に小倉氏に出会い、その情熱と思いに自分の人生を小倉氏の理想を実現することに捧げると決めた。そして、事業として成り立つかどうかも分からないまま、小規模福祉作業所に経営コンサルティングをする会社「福祉ベンチャーパートナーズ(FVP)」を立ち上げた。僕は、彼女がFVPを開業してまもない頃に会い、取材をさせてもらった。

 知っている人なら分かるが、障害者福祉の世界に「経営」「コンサルティング」というキーワードで踏み込むことがどれほどの困難を伴うものか、それは想像を絶する世界だ。まず「経営」という言葉に激しいアレルギーがある。福祉作業所の人たちには、そもそも「売上げ」とか「利益」という概念が分からないのだ。彼女が「障害者の人たちに自立して生活できる給料を出せるように経営を改善しましょう」と呼びかけても、「自分たちは利益を上げるために仕事をしているのではない」と、頭ごなしに怒鳴られるのである。

 しかし、彼女はそれでも諦めなかった。ねばり強く経営セミナーへの参加を呼びかけ続け、作業所の若手職員たちのどんな相談にも乗った。FVP創立から2年がたち、彼女が必死で教え、励まし合った福祉起業家の第1期生が昨年、生まれた。今年も第2期がまもなく始まるそうだ。

 著作権侵害は承知のうえで、今日の午後1時に受け取った、彼女が小倉氏追悼によせて書いたFVPのメールマガジンを引用させてもらう。この文章は、かの人の理想を実現するために自分の人生をなげうつという決断をした人間だけに書ける言葉だと思う。読むたびに涙があふれてくる。これ以上の心揺さぶる言葉は、世の中に存在しないだろう。そして、小倉氏がそれによって世の人々に記憶されるであろう「志」が何だったかも、その中に刻み込まれているに違いない。以下、大塚由紀子氏による小倉昌男哀悼の辞。

1万円脱出なんて、そんなみみっちいことはお止めなさいよ!
やっぱりねえ。きちんと会社にして障害者を雇用して給料10万円払うっていう
のがいいと思うのよ。
ベンチャーだよ。これからは。
作業所うんぬんじゃなくてベンチャーでおやんなさい。

小倉昌男前ヤマト福祉財団理事長のお言葉を今もはっきりと覚えています。
これは2003年の3月、「障害者賃金1万円からの脱却経営塾」を始めたいとご相
談に伺ったときのこと。
これは今、福祉起業家経営塾と名づけられ、FVPのサービスとなって存在し
ています。

「福祉ベンチャーパートナーズ」の社名は小倉さんに頂いたようなものです。
小倉さんとのご縁がなければ、
小倉さんの「ベンチャーでおやんなさい」というお言葉がなければ
今日のFVPは、福祉起業家経営塾はありませんでした。

大変だよね。
でもやりがいがあるよ。
とても大切な仕事だよ。
がんばっておやんなさい。
お客様に喜んでいただくこと。
それが一番大切なんだよ。

基本は自分がしてもらいたいことを相手にもしてあげることなんだよ。
相手の立場になって考えるんだよ。
経営でも人生でも同じなんだよ。

再来週に福祉起業家経営塾の第2期が開講します。
障害者に10万円の月給を払える経営者をたくさん世に出していくこと。
これを、私自身、そしてFVPの使命として
取り組んでいく。
何が何でも障害のある人の働く場作りを進めていく。
小倉昌男さんの訃報に接し、
「福祉に経営の視点を」とおっしゃられた小倉さんの願いを改めて確認しました。
しっかりしっかり受け継いでいこうと思います。
FVPは、小倉イズムをひとつも曲げることなく、正しいことを正しく進めてい
こうと思います。

宅急便を作った方。
官と闘った経営者。
私財を投じて福祉改革に取り組んだ方。
すべて小倉さんです。

どんな方にも等しく優しいまなざしをお向けになる小倉さん。
ジャガイモと北海道が大好きな小倉さん。
日本酒をこよなく愛し、
時折、少年のようなはにかんだ表情をお見せになる小倉さん。
福祉起業家の経営するお店で、一緒にお酒を飲む日を楽しみにしていらした
小倉さん。

ご冥福をお祈りいたします。
合掌。

大塚由紀子

07:47 午後 ビジネス コメント (5) トラックバック (8)