幕張地域が宇宙人に制圧されました
昨年末から店舗売却の打診をしていたらしいが、とうとう撤退ケテーイ。しかも売却先はあの宇宙人社長の会社。
仏カルフール、イオンへの日本事業売却額は100億円弱(NIKKEI.NET)
海浜幕張ってイオンの本社があるのに、最寄り店が2駅離れた稲毛海岸にしかないもんだから何でだろうと不思議に思っていたんだが、目の前の巨大店がいずれ潰れるだろうと思って待っていたというのが真相なのかもな。ダイエーは論外だろうし、ヨーカ堂もすぐ近くに店があって買いに来るわけないだろうという読みで。
しかし最近小売業はひそかにまた再編ブームなのかしら。ダイエーの再建が動き出せば、これからまたあちこちで地殻変動が起こりそうな。
最近の流通再編の大きな特徴の1つとしてあるだろうと思うのは、小売りサイドの合従連衡もさることながら、その背後に必ず中間流通の再編の影が見えることだ。
一昔前までは、小売りがどんどん吸収合併を繰り返して大きくなっていくことによって、中小の卸は赤字を出してでもその取引を失うわけにはいかない状況に追い込まれ、結果的に小売りサイドにバーゲニングパワー(価格交渉力)が集まるという仕組みがあった。
だが、今はむしろ規模が大きくても消費者のグリップ力の弱い小売りがどんどん増え、相対的に物流や需要予測でハイテク化した卸に価格決定の主導権が移るケースも出てきている。地場の食品スーパーの競争力を分析しようと思ったら、デポ運営から棚割までをどこの卸が握っているかを知るのがまず最初のステップとされるほどに、卸の影響が強まってきた。
たとえばダイエーについてもさっそく丸紅からこんなアナウンスが出ているが、この背景には食品卸だけ見てももともと強かった独立系(国分)に加えて、三菱系(菱食)、伊藤忠系(日本アクセス+伊藤忠食品)、三井系(三井食品+加藤産業)という財閥系が着々とM&Aを繰り返して巨大化している現実がある。
ダイエーの仕入れなんて、もともと丸紅1社程度でまかなえるような規模じゃないんだから勝俣社長の言う「何がなんでも丸紅系列の食品卸を使え、ということはしない」なんてのは当たり前。むしろこれは「良い条件さえ出してもらえれば、4グループのどこかにデポ(物流センター)運営も含めて集約してもいいですよ~」と秋波を送っているものと読むべきだろう。だからこそ「物流情報システムではイオンとかウォルマートとかでも」など、突然競合相手の名前まで飛び出してくるわけだ。
ここで極端なケースを考えてみる。小売業が持つべき4つの基本機能(立地、価格、MD、販促)のうち、MDと価格を卸に丸投げしても成り立つのだとすれば、実際の小売企業のやるべきことは出退店の判断とチラシ撒きや陳列、レジといった広い意味の店舗運営だけである。ということは、この2つの機能を可能な限り低リスクでやる仕組みを作れた企業が最終的に勝つに違いないのであって、それ以上でもそれ以下でもない。
となると、話がまた以前の「中小店の復権」に戻ってくるのだが、一番出退店の投資リスクが低いのは、実は巨大ショッピングモールではなくて中小型のパパママ店である。そしてネットなどを使ってローコストで的確なターゲット顧客へのワン・トゥ・ワンのプロモーション(電子チラシ・電子クーポン)が実現できるのなら、実は巨大ショッピングモールよりもコンビニタイプの店の方が儲かるよ、という話になる。
食品スーパーではないが、家電量販店の世界ではMKSパートナーズのラオックス買収、ビックカメラのソフマップ買収に続き、アキバ系の店がまた再編に飲み込まれた。新生銀行主導の企業再生で復活したマツヤデンキがサトームセンに経営支援というニュースがそれ。500㎡以下の店舗が多いマツヤデンキが、昨年11月に東京に本社を移転して急速に店舗展開の攻勢に出ていることも、小型店の投資効率の高さを証明する一事例になるような気がする。
話を戻すと、宇宙人の会社さんはそもそも卸に丸投げするつもりもなく、自分でメーカーと直取引して卸機能も持とうとしているわけだ。まあそれはそれで逆張りという1つの壮大な生き残り戦略ではあると思うのだけれど、一方で現実の利益はほとんどSC開発という、タダ同然の田畑を買い上げてそれを高値で他人に貸し付けるという錬金術的事業から生まれている。つまり、まだ誰も宇宙人が音頭を取って始めた、本業のGMSでの一気通貫独自流通戦略の方の成否を知らないわけだ。あちこちで「全然ダメ」という噂は聞くんだけど、それもどこまで本当だかさっぱり分からないし。
10年後の幕張はどうなっているんでしょうかねえ。日本の田舎の未来がかかっているだけに、恐竜みたいにいきなり絶滅とかしてほしくないわけですが。
ちなみに、勉強熱心な皆さんのご参考まで。流通関連業界の業界再編動向ヲチページ。業界地図を作る時にはぜひご利用下さい。
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コメント
はじめまして
私の知り合いが茨城に住んでいて車で遊びに出かけた時、見るだけで面白いからって下妻のジャスコを車から外観眺めたんですが
冗談みたいな大きさで圧倒されるより笑ってしまいました。
ここ買い物来るの?聞いたら1回行ったけどデカすぎて歩くのも一苦労もういかない(^^;
おじさんおばさんおじいさんおばあさんになったらよっぽどでしょうね・・・・
投稿: ari | 2005/03/10 17:53
中小スーパーの現在未来が仄見える例として。
http://www.f-asano.co.jp/
Edyを使ったワン・トゥ・ワンプロモーションの端的な例ってことでどうぞ。
投稿: mgkiller | 2005/03/10 18:43
あの辺は津田沼にもでっかいイオンがありますからね。半径5km圏内に10,000平米を超えるイオンが3店舗も存在することになる訳ですが、これって同地域のミニストップの数より多いかも・・・
投稿: haho | 2005/03/10 20:47
コメントどうもです>皆さん
そういえば、9日の記事ですがNIKKEI.NETに深堀編集委員がダイエーの店舗閉鎖の話を書いてましたな。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/fukabori/20050308n4838000_08.html
これみると巨大店舗に生活インフラを依存する町っていうのは本当に危ういと思います。そろそろそのあたり、気づいたらどうなんだろ日本人も。
仙台のアサノのケース教えて下さってありがとうございます。ワン・トゥ・ワンのプロモーションの先駆と言えばやっぱり甲府のオギノですよね。
http://www.ogino.co.jp/
こういう、高度な店舗オペレーション能力と急速な店舗展開力を持ちIT武装した食品スーパーが早く増えてほしいです。そしたらイオンのSCなんか要らないと、みんな思うようになると思うんですが。
投稿: R30@管理人 | 2005/03/11 10:33
実はこのアサノの案件はFelica関連の講演で貴重な中小成功のケーススタディとして必ず語られている物です。ここのキモはFelicaで溜めたポイントをただ安く売るってことに使うんではなくて集客のツールとしての生きたアイテムとして効果的に利用されてることでしょう。
最近ITを利用した再生がはじまっている三越なども含めて、ドコモあたりがやっているソリューションフェアなどでの講演はネタが意外に豊富なのでした。タダ聞きできますしね。
そうそう、それと漂ってて読んだ単店舗で流通の壁にまで踏み込んだ書店の記事も貼っときます。面白い。
http://d.hatena.ne.jp/chakichaki/20050211
投稿: mgkiller | 2005/03/11 14:39
うちの近所はジャスコ1号店(今は更地)で菰野という岡田一族のお膝元地方にも近いのですが、
ジャスコ系列(含むマックスバリュ)には決定的な問題点があります。
生鮮食材がまずい。
これに尽きます。同じ価格なのに、何故か競合他社の食料品より格別においしくない。
これは、致命的です。普通に旨い地方もあるのでしょうが、ここらへんの地方では
お話にならなかったりするわけであります。
近所の港と農家を回るだけでも抜群に旨い食材が手に入るのに不思議な話である。
微妙にルートが違うのか、サティ店は普通なのである。
民主の岡田が尻尾を握られているとしても、さもありなん、と思う次第。
投稿: j | 2005/03/12 01:01