財務省の役人は救いがたい低能である件について
なんかベンチャーキャピタル業界が大騒ぎになってるみたいだね。Richstyles!経由で知った。火元はNIKKEI.NET「海外投資家への源泉徴収方針、ファンド9社が反対」、「業界そのものが消える」と悲鳴を上げているのがこちら(小林雅ブログ)とかこちら(堀義人ブログ)とかこちら(元リップルウッドのスタッフのブログ)とか。にしても小林氏のブログ、最近ファイアーしてますな。そのうちヤバイこと口走るんじゃないかと、冷や冷やしてますが(笑)。
その小林氏のところなどでだいたい書き尽くされてるかなとも思うのだが、この問題はベンチャーキャピタル業界だけの問題じゃないわな。実は財務省が自分で自分のクビを締めている希ガス。
何でかっていうと、Richstyles!氏も書いているが、要するにこの課税強化というのは、取れるところからはなりふり構わず税を巻き上げたい石"ストーン・ヘッド"弘光・政府税調会長と財務省主税局のストーン・ヘッドぶりを余すところなく露呈しているからだな。
まあ、別に今に始まったことじゃないので「またかよ財務省」って感じなのだが、しかしそれにしてもこのバカっぷりというのは目を覆うばかりというか目を見張るばかりというべきか。
特に興味深いのは、今回の件が財務省の愚劣低能ぶりを2段階の鉄板論理で証明しているところである。2段階というのは、1つは、税金を取るという行為の意味を、それによって企業や個人という国民経済を支えている経済主体がプラス・マイナスどういう影響を受けるかというPolitical Scienceの観点からではなく、単に国家財政にとってカネがいくら足りねえのかというレベルでしか思考できないこと。
Richstyles!のエントリでは、「ドラフトワン」に対する酒税税率アップという事例で説明していたが、まあ酒税に関してはそもそも税法自体が論理も何もない欠陥法だからしょうがないのだけど、もしかして主税局の担当官がたまたまマッコリとか紹興酒とかが大嫌いで、「おっ、ドラフトワンから税金ふんだくるついでにマッコリと紹興酒も潰しちゃえ、どうせ俺嫌いだし」とか考えたのだとしたらこれはまあ納得できる。ていうか納得できないけど笑える。
だけど、今回の件は今まさにこうした独立・外資系M&Aファンドの圧力によってようやく健全でリーズナブルな市場に生まれ変わろうとしている日本の株式市場のクリーンアップのモメンタムを根こそぎ引っこ抜き、状況を10年ぐらい巻き戻しさせかねない税制改正なわけだ。
いや、こんな言い方しても税務署での殿様接待しか受けずに育ったスポンジ脳な主税局の連中には理解できんだろうな。しょうがない。もうちょっと分かりやすくNHK週刊子供ニュース的に言うとだな、こういうことだ。
こいずみしゅしょうは、これから5年のあいだに、がいこくのお金もちにこれまでよりもずっとたくさんのお金を日本へもってきて、日本のきぎょうのためにつかってもらいたいと言っています。ところが、こいずみしゅしょうの言うことをきかなければいけない人たちが、日本のくににひつようなお金がたりないといって、がいこくのお金もちからぜいきんをとるときめようとしています。このせいで、がいこくのお金もちはけっきょくこれまでよりずっとすくないお金しかもってきてくれなくなりそうです。こいずみしゅしょうは、きっとおこるとおもいます。どう?理解できた?
まあ、この程度のことはポリサイのポの字も知らない財務省主流派の沙汰としては常套の話なので今さら何とも思わない。だが、仮にそれに納得してもさらにもう1つの理由で愚劣低能となってしまうのが、今回の件のすごいところだ。
Richstyles!でも指摘されているが、主税局が課税できそうなネタを必死で探している一方で、理財局(国債の発行・管理する部局)は、郵政民営化が秒読みに入ったこともあって、これまで95%以上が国内で消化されていた日本国債を、海外投資家にも買ってもらえるようにするにはどうしたらいいか、昨年から議論を重ねてきているのだ。
で、その議論の議事録の中に、傑作なことが書いてある。読んでもらえれば分かるが、日本の国債が海外投資家にほとんど購入されない理由として、
- 日本の税制が複雑すぎて、非居住者(海外投資家)には手続きが面倒&高コスト
- 利回りが低すぎる
- 国内の"特定の投資家"(もちろん郵貯のこと)が保有しすぎていて、流動性ショックが起こるのが心配だ
- 英語での情報開示がほとんどない
ちゃんと最初の方に「税制の複雑さが日本への投資を細らせている」って書いてあるのに、そして理財局が必死に国債を買ってもらおうと海外投資家に頭下げて回っているというのに、そのそばで「ハゲタカ野郎は二度と日本に来んな」と喚いて回る主税局。がははは。こいつら、頭イカレてんじゃねーの?下手なジョークもほどほどにしてくれよ。
Richstyles!氏は「財務省も含めてもっと『金融のプロ』を育成してもらいたい」と総括しているが、まあ無理だわな。理財局は傍流だし、日銀と一緒にALMとか必死に勉強して金融の知識を身につけていると思うが、主税局なんてもうダメダメだ。金融のプロどころか、政策のプロと呼ぶことさえおこがましい。堺屋太一センセイじゃないが、「官僚は優秀に見える?違います。官僚は"あたまが悪い"のです!」って叫びたくなるな。
主税局ってのはさあ、キャリアで入ったらまず全国の税務署にいきなり署長として赴任し、「若殿」とか言われながら地元企業が出来レースで献上する「脱税摘発」の実績の勲章をもって本省に帰り、それ以降はずっと税調のストーンヘッドな学者や政治家につき合わされるわけですよ。税を政策誘導のインセンティブに使うなんていうポリサイのテクニックとか、まったく知らずに法律ひたすら書かされる。そりゃ、そんな生活を数年も続ければ本人たちもストーンヘッドになるのは当然だと思うよ。ストーンヘッドのくせに「俺たちが日本の財政を支えてるんだ」とか威張りくさるからますます手に負えない。
金融庁は、何とか財務省から切り離して外部の民間人を大量に入れたことで多少ともまともになったが、財務省の中枢である主計・主税は、もうどうしようもないんかもねえ。
以前に、住専問題当時の銀行局長だった西村吉正氏(早稲田大学アジア太平洋研究科教授)に話を聞いたことがあるが、彼は「財務省っていうのは、いまだにインターネットでそこら中に転がっている統計資料よりもっと古いものを後生大事に抱えて政策判断している。あれで現実が分かるわけがない」と嘆いていた。
結局どんだけ間違った政策を作っても、政治家に最終的な責任を転嫁しちゃえる以上、官僚に責任を問うことはできないし、政治家がバカだとどうしようもないし。
うーん、なんか希望のない話になっちゃったな。せめて財務省自体にもっと民間人を入れて人事交流することはできないんか。それだけでもやればずいぶん変わると思うんだが。
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コメント
「『良心的』納税拒否」したい気分です。
投稿: UKE | 2005/02/10 21:24
まず、税務署長になっていたのは、入ってすぐではなく入省5年くらいたってから。なお、この慣例は今はない。税務署というのは各国税局に属するもので、その頂に国税庁がある。関連は深いが、主税局とは別物である。であるから、税務署長になっていたのは主税局振り出しの人間に限らず、彼らが多かったわけでもない。当然、税務署長になったからと言って、その後主税局に行くとも限らず、そういった者が多かったわけでもない。もちろん、一度主税局に行ったからと言ってずっとそこにとどまるとも限らない。
「脱税摘発」に関しては初見なのでどのような根拠があるのか興味深い。
投稿: ああ | 2006/07/14 19:03