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2005年の衝撃トレンド・属性のコモデティ化(その2)

2005/02/13

2005年の衝撃トレンド・属性のコモデティ化(その1)

 前のエントリでHPの話を書いたら、コメント欄に「両社のテクノロジーライフサイクルの考察を」とか「マーケッターとしての明るいビジョンを」とかのリクエストをいただいた。

 ここはマーケッター的な人あるいは社会事象をマーケティング的にウオッチするブログであり、管理人自身がマーケッターなのではありません(笑)。したがって後者のリクエストにはたぶん応えられないが、前者についてはちょっと書いてみようかしらと思って下調べをしていた。

 ところが、ネットをあちこち徘徊していた僕の前に、チンケな経営戦略論など吹き飛ばしてしまう、超衝撃的なエントリが現れた。ここではそれをご紹介したい。

 その前にまず、僕が前エントリへのレスとして考えつつあったことを(もったいないので)簡単に述べておく。HPとソニーのテクノロジーライフサイクルについてである。

 この問題は、一言で言うと「コモデティ化」の問題である。ちなみに、「コモデティ化(commoditization)」は、昨年から今年にかけてのIT分野での大きなキーワードの1つである(詳しくはCNETの渡辺聡氏の昨年7月20日の記事「コモデティ化するソフトウエア(2)」でご覧いただきたい。ちなみに、渡辺氏はHPについても昨年10月19日に「HP、M&Aから二年過ぎて」という記事を書いている。ご参考まで)。

 さて、僕は前のエントリで「HPとソニーはどこか似ている」と書いたが、コモデティ化への対応という点から見ると、1999年以降の両社が取った戦略はむしろ微妙に対照的である。

 フィオリーナ氏がCEOに就任した2000年当時、HPの主力商品はプリンター(インクジェット及びレーザー)、PC、サーバーの3つで、同社はこのうちレーザープリンター以外のほぼすべての商品で低価格競争に直面しつつあった(レーザープリンターは、本来最大のライバルであるはずのキヤノンからエンジンのOEM供給を受けることで「握って」いたため、まだ本格的な叩き合いにはなっていなかった)。

 商品がコモデティ化し、市場がコスト競争に突入すると、たいていのマーケッターが「商品の差別化・付加価値によるコスト競争からの離脱」を画策するが、僕の知る限り(デジタル分野に限らず)この戦略で成功した企業は1つもない。経験的に言って、コモデティ化する市場で生き残る戦略は、以下の2つに1つである。

  • 同等以上の機能・利便を全く異なるアプローチで実現する画期的な技術革新を生み出して、元の市場をスプリット(分割)するか、あるいは消滅させる
  • 調達・生産から流通機構までを徹底的に効率化し、究極のローコスト・サプライチェーンを作って勝ち残る
 後者はもちろん、PC市場におけるデルである。また前者の戦略の典型例は、たとえばオーディオプレーヤー(ミニコンポやCD、MDプレーヤーも含む)の市場に対してアップルがiPodで参入したアプローチなどが挙げられるだろう。

 ちなみにこの2つの戦略は、一度に両方をとってリスクをヘッジすることはできない。なぜなら画期的な技術を開発しようとすると莫大な研究開発投資が必要だが、それをすれば既存商品の価格に開発コストを上乗せせざるを得なくなり、ローコスト=ロープライスでなくなるからである。

 その意味では、大企業がコモデティ化市場で生き残るための方策として最も正しい戦略は、キヤノンや船井電機のやり口である。いわく、サプライチェーンのオペレーション効率化に全精力を注いで莫大なキャッシュを内部に蓄積し、どこかのベンチャーが次世代の市場を作りそうな技術を生み出したのを見つけたとたんに、その企業ごと買収する、あるいは提携、出資するというものだ。

 いずれにせよ中途半端な研究開発への注力は、コモデティ化市場におけるプレーヤーにとっては即死につながりかねない。HPのフィオリーナ氏は、このことに気がつくのに1999年から2001年までの2年間かかったが、2001年にcompaqを買収して何とか会社を生きながらえさせるのには成功した。僕のような外野にとっては「つまんない、普通の会社」に成り下がり果ててしまったけれども。

 一方のソニーである。ここまで読んでいただければ分かる通り、ソニーの商品展開するデジタル機器の分野は、法人向けの多いHPよりもさらにコモデティ化の激しい個人市場である。当然ながら、最先端の技術開発戦争が起こっている分野以外は、どんどんコモデティ市場の戦略へと切り替えていかなければならない。

 2000年の当時から「最先端の技術開発戦争」がどこかは、誰の目にも明らかだった。ゲーム機である。一方「それ以外の分野」も明らかだった。テレビやビデオカメラ、PCといった分野である。

 ソニーは「技術のソニー」を標榜しているからコモデティ化市場ではうまくやれないのではないか、と思う人もいるだろう。でもそんなことはない。ソニー製品がコモデティ化して高い利益率を稼いでいる商品分野はちゃんと存在する。たとえば、「オーディオケーブル」である。

 知る人ぞ知る世界だが、ソニーは量販店などで売っているオーディオ用各種ケーブルの7~9割のシェアを握っている。完全に枯れ果てた典型的な「コモデティ」の市場で、ソニー以外のプレーヤーがいないからだ(最近、松下が目を付けて再参入してきているみたいだが)。

 でも、テレビやビデオカメラといった、ソニーの「看板」だった商品までがコモデティになったとは、ソニーの中の誰も信じたくなかった。だからその効率化を自分でやるのではなく、ソレクトロンなどのEMSに工場ごと売り払ってしまい、結果的にコストハンドリングの能力を大きく下げてしまった。これが現在のソニーとHPの根本的な差につながっていると思う。

 渡辺氏がCNETのコラムで書いているように、現在のHPの課題は個々の製品分野でのコスト競争力から、その上部でインテグレートされた価値を生み出せるかということ、言い換えれば「製品・事業間のシナジー」は何か、HPらしいソリューションとは何か、というところに移ったと言える。その意味で、フィオリーナ氏が画策していたと言われる(おそらくプリンタ、PC、サーバ+その他への)会社3分割案というのは、間違った道だと取締役会に判断されたのだろう。

 一方のソニーの喫緊の課題は、(擬似的なものでもいいから)会社を分割することだと僕は思う。昨今のソニーの社内事情を漏れ聞くに、あの会社は社内のカンパニー間の風通しは異様に悪いくせに、カンパニーをまたがっての派閥争いが存在し、どこかのカンパニーが良かれと思って新商品を出そうとすると、突然他のカンパニー(の派閥)から横やりが入るみたいな風習があるらしい。

 そのくせ、クオリアみたいな利益の出るわけがない狂気のプロジェクトでは、平気でソニーのコア技術を他社の機器でも使えるようなものを発売したりもするものだから、企業としてのフォーカスというか、判断基準が完全に狂っているとしか言いようがない。昔、アイワが売り上げを伸ばすために携帯用ウォシュレットを発売したのと似たような状況に会社全体が陥っている。

 あの状態を解決するには、「コモデティ化市場の商品」と「そうでない商品」に会社を完全分割し、いったん徹底的に独立採算を追わせるしかないと思う。実際、外部企業とのJVに切り替えた携帯電話事業(ソニー・エリクソン)は、3年で見事に復活したわけだし。

 いちいち外部企業とのJVにしなきゃいけないというのも屈辱だけど、少なくとも調達・生産(EMCS)-商品企画・マーケティング(本社)-販売(SMOJ)-アフター(EMCS)という、サプライチェーンをずたずたに切り刻んだ水平分業制は止めて、いったんカンパニーに生産から販売までの全権限を委譲したほうがいいんじゃないか。さもないと、生き残れる最低限のサプライチェーンの競争力さえ自前で作れないまま野垂れ死んでしまう。

 ちょっと難しい話が続いたので、今回はここまで。

02:22 午前 経済・政治・国際

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Comments

 差別化に成功する=別のものだと思ってもらえる=市場も別になる ですからね。差別化に成功したら、それは差別化とは呼ばれないって言うことですかね。
 私が毎年授業でする意地悪な質問は、「中小小売店に出来る差別化は、大企業の小さな支店でも出来るんじゃないの?」です。自分に簡単に出来る工夫は他の企業にも出来る、ということは大人なら落ち着いて考えればわかるんですが、とっさにそれに思い至らない人は多いですね。年齢を問わず。

POSTED_BY:並河 @2005/02/13 4:03:48

いつも楽しく読んでいます。

>「商品の差別化・付加価値によるコスト競争からの離脱」
これって、競争からは脱落したものの一定の地位を築いたものは含まれないんでしょうか。
ハンバーガーのモスとかそんな感じですが。がつっと売り上げは落ち込んだものの、まだ生き残ってます。

POSTED_BY:caq @2005/02/13 18:50:35

いつもROMってます。
さて、クオリア001に関しては、それなりにあの会社の意思が感じられる、すなわち画像処理回路>パネルというメッセージだと思います。

POSTED_BY:のん @2005/02/13 21:28:28

ソニーは会社を分割すべきというのは賛成ですね。SCEを単にキャッシュ欲しさから取り込んだとところから狂い始めたような気がします。

POSTED_BY:大西宏 @2005/02/14 2:12:40

通りすがりで拝見しました・・・

ソニー、HPとも共通しているのは
「ネットワーク(ブロードバンド・ユビキタス)時代の生き方を標榜して進みたかったところが、結局実現途中でコケた(ように見える)」
ということかと思います。

IBMはその点、「ネットワークを捨てた(AT&Tへの売却)」というところにその姿勢が象徴されるかと思います。
要は「自前で持っていても仕方ない。ただ、ネットワーク化に対応できる商品・サービス、そしてネットワーク時代でも稼げるノウハウを育てないとイカン!」という方針といえます。

一方、コモディティ化しつつある商品のコスト競争力をあげている、アジア各国のコンピュータ製造企業は、
ネットワーク化というところとは距離を置いているようにみえます。「それはそれで流れに応じて対応しておいて、オレたちは目先の体力強化に注力していくことがbest way」といった姿勢でしょうか。

その意味で、サムソン電子が今後どういう道を歩んでいくか、興味あります。
通信機器にも強く、半導体、家電、PCにも強い会社が、これらを統合するソリューションを志すのか、
それともそれぞれの強みを極限まで追っていくのか・・・。
その試練はこれから訪れるように思います。(もし試練ナシにそれを乗り越えたら、韓国(朝鮮)の歴史上に名を残す(!)組織体になるかもしれません。)

POSTED_BY:Chuck_UGOne @2005/02/21 13:04:13

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