あおぞら信託買収で1700億円の財布を手に入れる(はずの)ソフトバンク
忙しくてブログ書いてる場合じゃないという悲鳴があちらからもこちらからも聞こえて参りますが、で私もヤバイぐらい忙しいわけですが、そう書いたら「ブログ書いてるくせに忙しいふりすんじゃねえバーカ」とか煽られたので歯を食いしばって書き続けてやるぞちくしょう。
前の記事で「ヤフー(とソフトバンク)は当面キャッシュの流出になるようなM&Aをするつもりはないだろう」と書いた矢先に、ヤフーが100億円以上出してあおぞら信託を買収するというニュースが飛び込んできたので、ちょっと追加エントリを書いておきたい。
さっそく切込隊長氏がこのニュースで「ふーん。」というやる気のない感想を表明してるが、なかなかどうしてこのニュースは非常に意味深である。
いずれ消えてしまうNIKKEI.NETの記事(こちらとこちら)を要約しておくと、以下の通りだ。ヤフーはあおぞら銀の100%子会社であるあおぞら信託(資本金50億)に130億程度を出資(あおぞら信託があおぞら銀に対して発行する新株及び普通株転換予約権付き株式(なんだそりゃ??)を買い取り)、3月末までに66.6%の株式を保有して子会社化する。あおぞら銀は信託をネット専業に転換してヤフー上でコンテンツやオークションによって動くユーザーの資金の流れ(月間約660億円)を取り込み、収益化を目指すと。
同じ銀行への出資でも、今回と前回(オリックス、東京海上とともにあおぞら銀へ出資し、2003年に株を売り払った件)とでは、意味が全く異なる。前回は大証とナスダック・ジャパン構想をぶちあげる中で、「ナスダックに来た会社にはお金も借りられますよ~」という見せ金、言い方が悪けりゃ誘い水として買ったわけだ。で、ナスダックJがぽしゃったんで要らなくなったから売っちゃった。
今回の狙いは、実質的な「ヤフー銀行」の設立である。いや、マジで多分3月に金融庁が出資を認めたら「ヤフー銀行」に社名変更すると思うよ、彼らは。今ジャパンネット銀行などにそっくり取られているオークションの参加料決済とか代金決済とかイー・トレード証券での新株売買とかを、全部ヤフー純正サービスで乗っ取るつもりなんだな。JNB様、ご愁傷様。三井住友様、さようなら。
月間660億円もの決済業務が新しい銀行に雪崩れ込んできたら、手数料0.5%としたって年間30億円以上の売り上げがすぐに稼げる。今からまた新銀行設立だのどーのって金融庁や政治家センセイたちともめてもめてもめまくる手間を考えりゃ、殻を買うための130億の資金なんて、安いものだよ。ホッホッホ。
ここまではだいたい想像が付くわけだが、気になるのはこの先だ。こっち方面は専門家の切込隊長氏も書いているように、現在ソフトバンクはブロードバンド事業の収益性という点では1人負けに近い。資金調達も今は隊長が言うような「風呂敷を使った市場からの吸い上げ」が利かなくなり、金融機関のシンジケート団からのコミットメントラインや、海外機関投資家に向けたユーロ建て社債発行などにシフトしてきているのが実情だ。
とすると、ここで銀行業務を子会社の傘下におさめるというのは、当然「ソフトバンクにとっての財布」が1つ増えることを意味する…んじゃないの、という話になる。
ヤフオクに依存しまくりで成功した決済専門銀行であるジャパンネット銀行の昨年9月中間決算を見てみると、経常収益(いわゆる売上高)が半期で50億、経常利益、純利益ともに赤字だった昨年同期から黒字に転換している。半期の営業キャッシュフローが1185億。ヤフー全体で半年に動くカネは4000億ぐらいだから、そっくりそのままだとすればJNBはヤフーで2~3割のシェア持ってるわけだね。ま、だいたい想像に近い水準だ。
うぉーと思ったのは、JNBの総資産が3120億、預金残高が1700億円っていう点だね。僕がソフトバンクグループの経営者ならここでこう考えるだろう。「ヒャッホウ!見ろよ!ヤフー公認銀行作ったら、何も考えてねーオークション参加者とかプチ株式投資家とかが、俺たちに1700億円も黙ってカネ貸してくれるんだゼ!やるっきゃないだろ!」
なんか、昔ダイエーが銀行団から融資を受ける際に財務をよく見せようとして、ある日突然期末決算書の中に「レジの中に入っているお釣り用の現金 ウン百億円」という項目が追加されていた、みたいな話を彷彿とさせますな。いやそれはチミの財テクに使っていいおカネじゃないんだけどなーっていう(笑)。
というわけで、130億円の銀行免許買収資金はもの言わぬ消費者から1700億円ぐらいのお金を黙って俺様のものにするための準備金であるということをご説明申し上げた次第でございます。どこまでも頭の良い我らがIT革命の同志にして偉大なる指導者、孫正義様マンセー。
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