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2005/01/18

「絡まれ系キャラ」は褒め言葉と受け取っておきます。

 出会い系オタのブログARTIFACTでネタにされ、栗先生からは「絡まれ系キャラ」とのご紹介を賜りましたR30でございます。

 実のことを言うと仕事が結構忙しくなってきてブログの更新頻度が落ちそうなムードがまん延してきてるのだけど、にもかかわらず書きたいことはたくさんある。ブログ論争整理ツールのことや、湯川さんとこで語られている記者ブログの話など。一気に2つ以上のテーマをぶち込んで効率よく語るみたいなことを、試しにやってみようか。

 切込隊長氏が絡んでくる件については、まあ独身と既婚子持ちという彼我の立場の差を利用したお約束のネタだと思ってるので別にどうとも思わない。ていうかアクセス増やしてくれてありがとーぐらいにしか思っていないのでどうでもいいのだけど、コメント欄に論文を発表して下さったとおりすがり改め居座り君ことantiECOさんに関しては、結構どう反応しようか悩んだ。

 個人的には、ブログっていうのは2ちゃんねるみたいなショートコメントの積み重ねによる議論ではなく、書いている人が(仮名か実名かはともかく)固有名で意見を述べ合うという仕組みだと思っているので、まあその意見に対する反応の仕方は人それぞれでも良いけれども、少なくとも意見を「述べる」だけで他人との「応酬」がなければブログの面白さ、意義は味わえないと思ってる。

 なので、本当のことを言うとコメント欄での書き込みは自分のブログでエントリ立てるまでもないショートコメントのみってことで、10行以上のコメントは自動削除(笑)にしようかと思ったりもしたんだけど、でもいろいろ考えて意見を書いてくれる人の書き込みをむげに消すのもなんだしなあと。

 ま、それはおいといて、要するにブログっていうのは、他のブログやらウェブサイトやらにいかに面白く絡むかという「カラミニュケーション」のメディアなんだと思うわけだ。酔っぱらったふりして絡む、180度違う角度から共感してみせる、事実認識に因縁つける、背景にある価値観にもの申す、反証データを募集する、読者信者に総攻撃を呼びかける、みたいな各種の絡み方の芸を見せるのが一種のエンタメであるわけで。

 僕だって別に切込隊長に絡まれてるばかりじゃなくて、僕自身も他のブログにさんざん絡んだり、あるいは「ここでこういうネタ書いたらあのブロガーが絶対絡んでくるよな~」みたいなことも考えながらエントリを書いたりしてるので、「絡まれ系キャラ」の認定というのはむしろブロガーとして「芸がありますよね」ってほめられたようなもんかなと思ってる。

 で、話は少し変わってマスコミ記者のブログについてなんだけど、湯川氏@時事通信が北海道新聞の高田氏とミッドナイトパックス氏のブログの話を挙げつつ「われわれプロの言論人こそ議論の仕方を学び直さなければならないのかもしれない」とか書いているのを読んで、「いや、別にそんな大仰な話でも何でもないのだけどなぁ」というのが正直な感想だ。

 マスコミ人といっても、職業として見たときはそれは新聞やら雑誌やらテレビやら、彼or彼女の所属する媒体に特化した必要な文章or映像を決められたプロセスに従って作ってアウトプットする人、ということを意味する以上でも以下でもないので、例えば雑誌でばりばりいい記事を書く人がすべからくいいブログが書けるかというとそんなことはまったくない。だって彼or彼女は雑誌の文章の書き方は知っているけどブログの書き方は知らないからだ。

 それは、例えば僕が雑誌の記事をたくさん書いていたからと言って、じゃあテレビドラマのシナリオも書けるかというと、当たり前だが素人同然にまったく書けないのと同じ理屈である。実際、僕の元職場の同僚でも、インターネットの原稿を書くのはどうも苦手だと言ってはばからない人もたくさんいた。それは、ある意味で記者や編集者という専門職にいる人間として持っていて当たり前の自覚というか謙虚さだと思う。

 それでもネットやらブログやらに手を出すマスコミ人あるいは言論人は、キムタケみたいにお金をもらってやってるのでない限り、以下の3通りのどれかだろうな。

  1. 本業で閑職に追いやられ、ヒマを持て余して「会社は認めてくれないけど、ネットなら俺様を認める奴はたくさんいるだろう」と考えたカンチガイ野郎
  2. ネット上での情報発信の巧拙が将来のメディア企業にとって存亡を左右すると直感し、それを今のうちに身につけておこうとする愛社精神&マーケティングセンスに長けた奇人変人
  3. 本業もそこそこにこなして普通のマスコミ人を演じてはいるが、今後の所得減or転職などに備えて副収入になりそうなネタをネット界隈で見つけておこうと考えた商売人
 自分の周囲にいる「記者ブロガー」はこの3種類にほぼ分類できるし、ネットの中を見回しても(ごくごく一部に例外はいそうだけど)たいていこの3つのどれかじゃないかな。誰がどこに分類されるかは語弊がありすぎるのであえて言いませんが(笑)。ちなみに僕は最初2.だったのだけど、昨年11月に考えが変わって3.になりました。

 で、1.のカンチガイなセンセイは放置&隔離の方向として、僕は2.や3.の人たちには、今さら言い古されてきたことだが「ネットでの文章作法は、あなたの仕事上の文章作法とは微妙に、あるいはかなり根本的に違う」と分かってほしいと思う。

 マスコミの人間というのは、特に文章の「内容」を価値だと思い、良い内容の文を書けば読まれるのだと思ってる人が多い。ネットにおいては、これは大きな勘違いだ。毎日、毎週更新するブログで奇抜な話、他人があっと驚く話を書き続けるのは不可能である。慣れないうちに無理矢理アクセスを集めようと欲張って奇抜な話を書くと、読者から根本的なミスを指摘されて自爆するのがオチである。

 それより、当たり障りない身の回りの話を、まず「自分ならではの文体」で書いてみることを心がけるべきだと僕は思う。簡単に言っちゃったけど、自分なりの文体っていうのを書くのはチョー難しい。マスコミで書かされる文章は、特に新聞などは激しくそうだが、文体は「ちょっとでも個性的であってはいけない」と教えられ、徹底的にスタンダードを押しつけられる。だから文体の個性を出す作業というのは、ほとんどのマスコミ人にとっては初めての経験なのだ。

 それで悪戦苦闘して、ある程度自分のオリジナルな文体とか、アクセスの集まりがちな書き方みたいなものが分かってきたら、話題になっているネタを語って人気ブログにトラックバックを送る(つまり「絡んでみる」)などして、ネット論壇にデビューしていけばいいと思う。

 さっきも言ったようにブログというのは「カラミニュケーション」だから、内容や表現にいちゃもんつけてくる人が必ず出てくる。その時によほど論争して勝てると思うネタでない限り「降りる」か「スルーする」のが原則だ。特にトラックバックを打って絡んでくる人というのは、本当にあなたの書いた記事の内容に文句が言いたいというよりも、単にあなたのブログから読者を“かすめ取りたい”と思っている場合が半分以上なのである。だからスルーあるいは「そうですねー、おっしゃることもまったくその通りだと思いますですよー」みたいなリアクションで流しておく。

 ただ、読者からのコメントなどでも応戦を促すような雰囲気が漂ってきたら、果敢に叩き返しに行くのもエンターテイメントとしてはアリだ。反論する際に注意しておきたいのは、反論には「今ごろ反論してちょっと遅いかな」ぐらいがいいということだ。じっくり考えて論理の抜け穴を埋め、リアルで周囲の友人にも相談して自分の意見の妥当性を確認した上で、満を持して反論に出る。そうすれば、再反論で手痛いダメージを負うことだけは避けられる。

 っていうようなことは、マスコミでは絶対に教えてくれないのですよ。僕が会社に入って最初に上司から習ったことと言えば、「いいか。取材先が電話してきて文句を言って、それがどんなに“筋が通ってる”と思えるクレームでも、絶対に電話口で『すみませんでした』って言うんじゃねえぞ」ってことだった(笑)。多くの人が勘違いしている部分もあると思うが、マスコミというのは組織的に「謝らない、傲慢な人間」を育てる。なぜなら読者や取材先1人1人にいちいち謝っていたら仕事なんかできなくなるから。それが「マス・コミュニケーション」というものだから。

 これに比べて、ブログの「カラミニュケーション」はまったく逆だ。ブログを開いて最初に相手にするのは、誰も知らないサイトに来てわざわざくだらない文章を読んでくれる、奇特な読者だ。そういう人たちには最大限「いじって絡んで遊んでいって下さい」と頭を下げるべきだ。人が増えてくれば、またそれはそれで対応が少しずつ変わっていくべきだろうが、ネットだもの、締切もないし記事を書き続ける義務もないし、読む側も気にくわなければ読まなくなるまでの話。読者と書き手、そこで語られているネタの3つが適度に「絡み」合わないことには、面白くも何ともない。

 僕が言いたいのは、別にブログ的な議論方法を学ばなくてもマスコミ人は言論人たりうるよ、ということ(現在のマスコミ人が本来あるべき姿の言論人であるかどうかは別だけどね)だし、ブログ界では記者だろうが記者じゃなかろうが、そういう作法を分かった人だけがブログをやって楽しみ、何かを得ればいいんじゃないかってことだけだ。

 というわけで読者の皆さん、これからもどんどん絡んでください。ただしコメントはできるだけ10行以内で(笑)。

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コメント

では早速。

「カラミニュケーション」がもしcommunicationの活用形としての造語だったとするならば、カラミュニケーションとなるべきである事をここに主張しておきます。はっはっは。

投稿: ぎょろ | 2005/01/18 12:30

ご無沙汰です。最近の私の問題意識がこのエントリーでまたまたクリアに整理されていました。「降りる」か「スルーする」が原則、は思っていたこととドンぴしゃり。一応、(2)のつもりでブログを継続していますが、そろそろ本業との融合で具体的な形をとらないといけないなあ、と思うこのごろ。何とかやってみます。引き続きR30さんのサイト、楽しみにしております。しかし、やることなすことこう見事に分析されるとは(笑)。参りました…

投稿: 匿名記者 | 2005/01/18 13:13

なんだか気の毒なので、おみやげを持ってきたですよ。

「TouchGraph GoogleBrowser V1.01」
http://www.touchgraph.com/TGGoogleBrowser.html"

これでgoogleから見た自分のサイトの位置関係をビジュアルに確かめると、なかなか味わい深いものがあります。

投稿: tomo | 2005/01/18 13:20

 ネットでは文章を送る力と同じくらい「上手に受け止める力」が重要だよ、とよく私は言うんですが、たしかにブログ独特の絡みスキルってのはありますね。

投稿: 並河 | 2005/01/19 00:07

>ただしコメントはできるだけ10行以内で(笑)。

































投稿: 切込隊長 | 2005/01/19 06:51

ベタな絡みですなあ。
もしかしてマカダミアナッツ送ってこないこと、怒ってる?w>隊長

投稿: R30 | 2005/01/19 07:51



















投稿: 切込隊長 | 2005/01/19 08:17

Σ( ̄ロ ̄;) マジスカ!

投稿: R30 | 2005/01/19 08:42

当然1のヒマだからBLOGしているに決まっているではないか。自分はもろちんそーだ。
いそがしそーにしているんじゃねー、ばーか。
というような感じでございます。はい。

投稿: ゲスト | 2005/01/20 23:21

このエントリを某このエントリを書いた人や
このエントリを書いた人に絡む人がガソリン
ぶっかけて燃やしたブログの人に読ませて
「おまえはどう思う!言ってみろ!」
とカラミたいですハイ

投稿: はまなこ1号 | 2005/01/21 03:21

はじめまして。
新聞での文体は「個性的である事を捨てさせられる」という指摘は、一読ハッとさせられました。
あれですか、TV・ラジオのアナウンサーが「方言などの“なまり”」を徹底的に捨てさせられ、それがために他の番組(バラエティー)などで発言する場合でも「あまり血の通っていない話し方」になっているような感じというか。
もちろん、「他人の手の入った原稿を読み上げる」アナウンサーと、「自分の意思を介在させながら文章を構成・推敲する」記者という違いはあるでしょうけど…

投稿: guldeen | 2005/02/09 00:40

突然はじめまして。いやどーでもいーんですけど、R30さんがマスコミの人(しかも記者?)とは知りませんでした。ぜんぜんそんなニオイがしなかったから。意外だったんで思わずコメント残しました。なんとなく勝手に広告代理店系の人かなぁ、と。あ、広告代理店ってマスコミの中に入るのか???
隊長通じてときどき読ませて頂いてます。面白いし鋭いなぁと感心してます。隊長なんでそこまで絡むかなぁ。R30さんのことが好きなんですね、きっと。絡み方に愛を感じます。からみにゆけーしょんからみゅにけーしょん
ところで私は多分1でも2でも3でもないなぁ・・・。3に近いのかなぁ・・・。何となく仕事上では言いにくいけど言いたいことがあった時とか、ただただ個人的に書きたいことがあった時に書いてます。それではおとななので10行以内で失礼します。

投稿: ゆびとま | 2005/02/13 23:00

自分の味や主観を出した(と思っている)コラムとかを書いても、どうせデスクが書き直すんだけどね。

「オイオイ、自分が考えたオチまで変わってるよ Σ( ̄□ ̄;) 」

なんてことも良くあったような……。

さて、最近異動で閑になったし、1みたいな勘違いブログでも書こうかな、と思っていても、ついついvip板で毎晩遊んでしまう厨房風味のオイラはどうしたらいいのでせうか?

投稿: 名無し風味 | 2005/02/14 01:52

▼R30様、はじめまして。こちらからのリンク&トラックバックへのご挨拶とリンクの貼り間違いのご指摘をありがとうございました。早速修正させていただきました。嗚呼。▼こんな粗忽なわたくしですが、これも何かのご縁ということで、今後とも何かありました時にはよろしくお願いいたします。それではまた。

投稿: honeybluemoon | 2005/02/16 11:16

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