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2005/01/14

寄付文化が知りたきゃ米国の爪の垢でも煎じて飲め

 毎度ながらブログを始めたばかりの人のところに難癖つけるエントリばかり書いていて、弱いものいじめみたく見られそうでちょっとアレなのだけど、さすがに堂々とトラックバック送ってこられたら黙ってるわけにもいかないので。

 「ニュースを読む 未来を読む」というブログで、僕の「国際人道援助の投資戦略」のユニセフに関する解説の一部だけを引用して、僕の意図とまったく逆のことが主張されているので、この際くぎを刺しておきたい。

 このブログの著者のgauya氏という人物はどうも寄付を集める民間団体というのはみんなオウム真理教と似たり寄ったりの宗教団体であるという理解をされているようだ。ま、NGOに対するこの手の不勉強さというか不信感というのは40代以上の人には割と一般的に見られることなので、恐らく彼もそのような一般人だと思うが、「(欧米に比べて)日本の民間の寄付が少ないかどうかはっきりしない」などという変な予見でもって僕のブログを引用しないでもらいたい。

 内閣府あたりのデータを調べてもらえば分かるが、確か僕の調べた範囲では、日本の寄付の総額は米国の10分の1もないのである。イギリスやドイツにも劣る(はず)。先進国としては「恥」と言えるレベルで「少ない」。これははっきりしている。(1/22追記:朝日がスマトラ島沖津波関連の寄付だけまとめた記事が出ました。ご参考まで)

 理由は簡単である。大金持ちの遺産寄付がほとんどないからだ。米国の寄付のほとんどは死んだ、あるいは生きている大金持ちからの寄付である。

 以前(確か2002年)に米BusinessWeek誌が「社会に貢献した資産家・貢献していない資産家ランキング」という、日本の納税者番付も真っ青な露骨な特集を掲載していた。1位は妻を自分の名前を冠した財団の理事長に据え、エイズ予防から芸術活動までさまざまなNGO、NPOに莫大な寄付をしていたビル・ゲイツ。ウォーレン・バフェットやアンドリュー・グローブなども上位に入っていたと思う。みんな1年間に「億ドル」単位の寄付をしている大富豪だ。ちなみに、ワーストの1位は自分がどんな寄付をしたか一切明らかにしないオラクルのラリー・エリソンCEOだった。

 日本の富裕層による寄付が少ない理由も簡単だ。大金持ちから寄付を引き出す「営業努力」をする団体というのが、ほとんどないからである。

 なぜないかと言えば、理由はこちらのブログなどを見てもらえば分かる。寄付金の所得税控除を受けられる資格を持つ一般人相手の非営利団体は、日本赤十字やユニセフなど指折り数えるほどしかない。それ以外のほとんどは企業が自社の社会貢献(+税金逃れ)のために役所に大金を積んで設立した財団だ。そんな団体が金持ち相手に寄付集めの営業などするわけがない。

 かくして、一般人の寄付を集めるのは菊のご紋を背負った赤十字か、国連を初めとする海外のコングロマリットNGOの息のかかった集金専門NGOと相成るわけである。こんちくしょう。

 活動のための資金を本当に渇望しているさまざまなNGO・NPOは、オウム真理教みたいな奴が入ってきたら大変だ(というのは建前で、実際には中央政府を経由せずに国民が自分の所得から公益目的の資金を大々的に動かし始めたら大変だ)と考える財務省の分厚い壁によって寄付金控除の資格を得られず、スタッフはかすみを食って野垂れ死ぬというわけだ。

 したがって、「ニュースを読む」ブログが引用している町村外相の意見も、gauya氏同様に全くの見当違いも良いところである(実際は質問した記者が不勉強なだけなのだろうが)。確定申告するサラリーマンがほとんどいない日本で1万円の寄付控除枠引き下げなどしても無意味だ。政府が本気で民間寄付を増やしたいのなら、「寄付集めの営業努力」をする非営利団体の数をもっと増やせ。つまり寄付金控除が受けられる資格を、一般の特定非営利活動法人にまで拡大せよ。それだけの話である。

 あと、gauya氏に本当はぜひ読んでもらいたいのだが、「日経ビジネス」の購読者限定ウェブサイトにブルッキングス研究所の谷口智彦研究員のコラムがあり、その1月7日付の記事「『半旗全体主義国』とブッシュ氏の運動神経」で、米国ではクリントン前大統領までテレビ出演して国民(小学生にまで)に寄付を呼びかけている、という話が書かれている。読めない人も多いだろうと思うので、以下少々長くなるけど引用。

 「この番組見てる子供たちもきっといると思うんです。ぼくは8ドル持ってるよ。わたしも 10ドルならお小遣いで出せるわと、そう思ってる小さい子もいるでしょう。そういう子供たちに、わたしは言いますが、1ドルだって無駄にはならない。その 10ドル紙幣、寄付するといいよってね」

  クリントン氏はテレビのインタビューに答え、案の定こういう物の言い方をした。「案の定」というのは、子供に向けたこの種スウィートな話を大真面目にして白粉(おしろい)の臭いを感じさせない指導者がいる国は他に滅多にないばかりでなく、中でもクリントン氏くらい、そこに長けて老若男女を頷かせてしまうカリスマを持つ人はざらにない。大統領はそれらすべてを計算ずくで、クリントン氏を使ったに違いないからである。クリントン氏にあるのが人たらしの天才としたら、時宜を得てそれを使う才がブッシュ氏の側にあった。

  予想に違わず、翌日のニュースは全米各地で子供たちが立ち上がり、スーパーの店頭などで寄付を呼びかけ始めた姿を紹介した。善意のアメリカが、うなりを上げ出した。

 「寄付文化など要らない」とか寝ぼけたこと抜かす前に、こういう「善意のTSUNAMI」を起こすことにかけては決して他国にひけを取らない、というか世界で断然のトップを自認する米国の実態でも、目をこすってよく見たらどうか。そういうのをちゃんと見てたら、政府が公的資金でも出さなきゃ先進国並みの貢献もできない日本なんて、恥ずかしくて恥ずかしくて口が裂けてもそんなこと言えないと思うけどね。

 ま、gauya氏の最後のまとめ「募金は政府機関がやって、自衛隊に支援物資を送ってほしいものだ」には、まったく別の意味で大賛成ですが(笑)。どのくらい日本の政府が国民から信頼されてるかの、いいテストにもなりそうだし。それで集まった募金額が赤十字より少なかったら、マジで笑える。

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コメント

はじめまして。
トラックバックさせていただきました。いつも愉しく勉強になるエントリーありがとうございます。
基本的にアメリカ人にくらべて利他的じゃないと思います。大人の方にその傾向が強いと思います。(こういうこと書くと叩かれるかな?)

投稿: akiller | 2005/01/14 01:59

寄付

初めまして、このエントリーの内容に賛成なので何も付け加えることはありませんが、参考までに一つのエピソードをご紹介いたします。

アメリカに駐在していたころの話。先輩社員が取引先に表彰されることになった。その取引先は毎年度、出入り業者の中から「最優秀営業マン」を表彰することにしていたのだ。聞くと、結構な賞金が出るらしい。しかもその先輩社員個人に対してである。ただし、条件がついている。受け取った賞金はただちに寄付することが条件だという。寄付する先は所得控除の対象となるきちんとした慈善団体ならどこでも自分の好きなところを選んでよい。

華やかな表彰式の壇上に、ちょっと緊張しながら小切手を受け取る先輩社員の姿があった。しかし、その次の瞬間、受け取った小切手を慈善団体の責任者に手渡した時の先輩社員の表情は、とても幸せそうに見えた。

皆がハッピーになるうまい仕組みだな、と大いに感心したものです。

投稿: やぶ猫 | 2005/01/14 09:28

いつも楽しく読ませていただいております。

>政府が公的資金でも出さなきゃ先進国並みの
>貢献もできない日本なんて、
>恥ずかしくて恥ずかしくて

 【ニューヨーク13日共同】途上国支援などに関するアナン国連事務総長の諮問委員会が策定した最終報告書が、日本とドイツの国連安全保障理事会常任理事国入りの条件として「政府開発援助(ODA)の対国民総生産(GNP)比0・7%」達成を要求していることが13日、分かった。
ttp://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=main&NWID=2005011301003092

半ば恫喝されてますよね。
国際社会(というのも怪しい国連ですが)に。

投稿: 閲覧者 | 2005/01/14 11:47

>基本的にアメリカ人にくらべて利他的じゃないと思います。

そうですね。他国までわざわざ爆撃に行ったりするくらい利他的なんだと思います。
# より干渉的である、なら同意します。

直接的な利他的行動って欧米の「建前文化」のように感じるのですが。悪いとは思いませんがそこだけ切り出すのは難しいような。

投稿: maki | 2005/01/14 14:26

病害・災害寄付の規模なんかはどうなんでしょうかね。
日本人は緊急的要素に寄付する傾向が強いです。

投稿: スープ | 2005/01/14 15:45

また暗いニュースから引きますけど、
時宜を得てそれを使う才があったブッシュ自身は。
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/01/1.html
クリントンはどのくらい寄付したんすかね?
自伝でガッポリ儲けたんじゃろ?クリちゃんよぅ

投稿: 酢豆腐 | 2005/01/14 21:32

済みません、また最初のトラックバックがうまく行かなかったみたいです。
申し訳ないです。(平身低頭モード)

投稿: kazumaro@来るべき名前 | 2005/01/15 17:43

単純にNGOのマーケティング能力以前の実務能力の問題だと思いますがね。
国境なき医師団なんかのプロとして役に立つ人材に対して投資するきにはなります。そういった意味ではまずテレビがとりあげればいいはずなんですがね。いかんせん
イラク三馬鹿みたいな能もないのばっかと思われてもしかたないような印象しか
テレビでも与えてないきがします
だったら信頼できるユニセフや
自衛隊にいってもらうってのが
マシかなって思うんです。
あと政府援助で
ツナミ警戒システムなんかの発注を
日本業者がしてくれれば
それはプロの仕事だからね

投稿: うーおぽ | 2005/01/16 12:48

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