水に落ちた方の犬が負け
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プロのジャーナリズムとは何かについて考えてみる・その1

2004/12/08

あいまいでスマートなニッポンの携帯

 スマートフォンについてのふにゃらけた論旨のエントリに、早速奥さんとmgkillerさんからTBをもらった。答え書かなきゃ~と思ってるうちに切込ブログにレスしてたりいろいろと忙しかったので、応酬エントリが遅れてしまった。

 この議論のそもそもの始まりとなった三田隆治's Blogのエントリなども読みつつ、つらつらと考えていて思ったこと。まとまらないかもしれないが「遅くて良い記事より早い記事」の鉄則に従い、突っ込んでおこう。

 三田氏のブログで指摘されているのは、通信端末の内外格差の根本原因が「国内ではインセンティブで3万円台で入手できるケータイも、海外に持っていけば、そんな多額のインセンティブを付けることは難しいから、結果的に6万円以上とか、そういう値段になってしまう」という点にあることだ。だから日本の端末メーカーには、北米や欧州などの海外市場で死にものぐるいで戦うモチベーションがどうしてもなくなってしまう。

 ま、これは少々古い話でもあって、実際のところそんなことは各社とも重々承知していて、mgkillerさんのエントリで指摘されているように「実際FOMAを販売するメーカー同士が協業の名の下にコスト削減に走っている」のが実態である。つまりドコモ向けの端末は徹底省力化して、その開発余力を北米や欧州市場での競争力向上に回そうという戦略。日本の電機メーカーも、ただのバカではありません。その意味で三田氏の指摘は、むしろもう解決されつつある問題かもしれない。

 本当の問題はここからだ。だいたいデジタル家電製品というのは、同じルールで競争しさえすれば、日本の消費者の方が数段品質・機能とも高い商品を要求するので、自動的に日本市場向け商品が世界のハイエンドの水準になるはずだ。例えば、デジタルカメラなどは日本市場向けに先行発売される機種が世界のカメラヲタクの垂涎の的になっていて、日本のデジカメ情報サイトは海外のマニアによって日々ウォッチされている。

 ところが通信端末分野に限ってはこの法則が成り立たない。日本市場と海外市場の競争ルールがまったく違うからだ。普通に端末価格だけで見た場合、無線通信機能の搭載されている携帯電話は、(Palmなどシステム標準化が進んだ)PDAに比べて割高だったため、欧米市場では「PDAの付加機能に無線通信を加える」というかたちで進化の主軸が作られた。

 これに対して日本ではキャリアのインセンティブによって「携帯<PDA」という端末価格が常識になってしまったため、無線通信機能のある電子機器のほうが先に爆発的に普及してしまい、インセンティブによるディスカウントのないPDAなどに、今さら誰も見向きもしなくなってしまった。

 だからこの「端末にインセンティブを払う代わりに特定キャリアに顧客を一定期間以上縛り付ける」ことを条件とするビジネスモデルを一気にぶっ壊さない限り、端末の仕様のイニシアチブをメーカーでなくキャリアが持つという日本市場の特性をなくすことはできないと、僕は思う。市場の拡大期ならまだしも、成熟期に自分でR&Dのイニシアチブを持てないビジネスの将来を誰が期待するだろう?というわけで、端末メーカーに丁重にだがじわじわと間を置かれつつあるドコモが苦況に陥るのも、ある意味では当たり前なのである。

 とはいえ、今からインセンティブを全廃して端末の販売価格を倍近く引き上げれば、市場の絶対的なシュリンクを招くのは火を見るより明らかだ。ナンバーポータブル制が導入されて、特定キャリアに顧客を一定期間縛り付けることができなくなったとしても、端末価格値上げだけは回避したい。とすればキャリアはどこにビジネスモデルの活路を見いだすべきか?

 それに対する夏野氏の回答が、恐らく「Felica」なのだろう。ありていに言えばドコモ(とソニー)が目指しているのは「全国民の電子財布に“ショバ代”をかけること」だ。このビジネスモデルが秀逸なのは、ショバ代を巻き上げられるのが自社の携帯電話端末にとどまらないということだ。他社の携帯、あるいはまったく違う形をした電子財布も、Felicaチップを搭載していればライセンス料を巻き上げられる。

 他社の商品からも薄く広く「税金」をすくい取って自社携帯電話の販売インセンティブに回せれば、そりゃ負けるわけがない(笑)。で、たぶんそれが実現する頃には、iアプリの仕様オープン化などいつでもOKということになっているのだろう。

 奥さんの反論エントリで指摘されているiアプリのジレンマも、お客がぶちきれない程度のゆっくりさでちまちまと「仕様追加」していけば、上記の理由で遅かれ早かれ問題にならなくなってしまうと夏野氏は見ているのではないか。

 だから、ドコモを倒す方法があるとすれば、携帯でできることを急激に広げて(jigブラウザのように)ドコモの想定以上のことをやってしまうiアプリを投入する一方で、Felicaをデファクトにしないよう、非Felica系ポイントシステムのあらゆる抵抗勢力を結集するみたいなことをやればいいんじゃないのかしら。と思うわけだ。

 …と、ここまで語ってみたものの、なんかスマートフォンの普及の話に持っていけないのよね(笑)。結局スマートフォンがPDAから進化したデバイスである以上、日本ではどうしても技術的可能性以前に「ユーザー(市場)に受け容れられない」という、厚い壁にブチ当たってしまう。だから、いつまで議論してもマーケティング戦略の話に至らない。

 それに、12月に発売されたSH901iCなんか見ると、シャープがザウルスのノウハウを全部つぎ込んで、miniSD経由でOfficeやPDFのドキュメント開けたり、ピンクのクマが出てきたり、テレビ録画機能までついてるという、もはや下手なPDA真っ青の高機能てんこ盛りだ。これではスマートフォンとか威張ってみても、日本人に「高機能ケータイにフルキーボードつけただけのごっつい端末でしょ?」と笑われてもしょうがないよな。

 僕としては、今の901iCのスケジューラにPCのスケジューラとのHotSync機能さえ搭載されれば、もうたぶん何もいらない。日の丸端末メーカーが海外市場で勝てるかどうかは別にして、日本市場の携帯電話は、もう既に実質的なスマートフォン一歩手前まで来てしまっているからだと思う。

10:35 午前 携帯・デジカメ

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「スマートフォンが普及」という1点に引っかかっていたのだな トラックバック mgkillerの目が光る。 @2004/12/09 22:33:22
ということに「R30::マーケティング社会時評(以降R30~)」よりTBいただい 続きを読む

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