マスゴミの人と議論することの難しさ
Main
激安くりぬきリフォームの入居者募集中

2004/12/04

企業はスマートフォンを欲するか?

 以前にこのブログでも長尺のインタビューを掲載したこともある、Xiino開発者の奥一穂・モビラス社長が、ブログを始めている。

 僕は、ソフトウエア開発者というのは一種の「ウィザード(魔術師)」だと思っていて、とりわけcoolなソフトを書く人を非常に尊敬する。奥さんは書くソフトがcoolだというだけでなく、世の中を見る魔術師的視点もとてもcoolなので、2重の意味で尊敬している。

 で、その彼が直近のエントリ「iPod の成功と NTT ドコモの未来」で、興味深いことを書いていた。

 内容を簡単に言うと、「ドコモはiアプリで成功しているように見えるけど、iPodに完敗したソニーみたいに、スマートフォンが日本市場に出てきたら負けますよ。なぜならDoJa(iアプリのプラットフォーム)でソフトウエア的にできることは、スマートフォンのOSができることよりもずっとずっと限られているから」というものだ。

 このエントリを読んで思ったのは、「さすが、通信関係のテクノロジのトレンドがよく見えているな~」ということと、「しかしそんなことはドコモの連中だってとっくに考えていて、分かってるから抵抗してるんじゃないの?」ということだ。

 奥さんの頭の中には、すべてのロジックが線でつながっているのだと思うのだが、ブログの文章はその線の上に何カ所か点を打つようにしか書かれてないので、この分野のことを知らない読者にはおそらく何を言っているのか全然分からないに違いない(笑)。

 彼の言うとおり、この分野は端末のヴァリエーションなどでは米国の方が圧倒的に進んでいる。ちょうどITProの「ケータイonBusiness」という特設サイトに、IBMの人が書いたスマートフォンの動向紹介記事があったので、リンク()しておこう。ここを読むと、Nokiaの「6630」などは年内にボーダフォンから日本語化されて出てくるようだ。個人的には、ソニエリの「P910」がカッコイイと思ったけど。

 で、ポイントは本当にこのテの商品に日本で(Geek向け以外の)需要があるのか?ということだ。

 これまでの答えは「ない」だった。もちろん企業向けPDA端末とかも出ていたが、物流センターとか医療機関などの特殊用途ばかりにしか売れない。

 テクノロジカルな側面から言うと、「画面が小さい、解像度が粗い」「通信速度が遅い、コストが高い」「端末の処理能力が低い」といったことが普及の阻害要因として挙げられていた。だから、特定用途に特化したカスタマイズ端末でなければ使えないし、売れないと。僕も、それらの要因は確かにあったと思う。

 だが、高解像度LCD、3G+無線LAN、BlueToothといった携帯ブロードバンドの普及、MPUの高集積化などによって、それがクリアされれば(実際、最近の携帯を見るとハードスペックのレベルではほぼクリアされつつあるように見える)普及するのか?と言われると、正直「どうかな」と思ってしまう。

 なぜ僕が懐疑的かというと、そもそも米国でスマートフォンが普及する背景には、ホワイトカラーの生産性を徹底的に管理して高めようという、企業と個人の双方の強い意志があると思うのだ。

 奥さんのエントリでも少し触れられているが、例えばスケジュール帳を出して仕事の「終了」ボタンを1つ押すだけで、それまで処理していた業務のワークフローにメッセージが送られ、関係者に周知され個人の就労管理システムに記録され、チームでこなす業務全体のABC(活動基準原価計算)のデータにもなる、といった情報システムを作ることが、スマートフォンによって可能になる。だが現時点で全社的にABCを導入している日本の大企業なんて、そもそもどれだけあるのか。ABCが分かりもしないのに、こんな情報システムを入れようと考える企業など、ほとんどないに違いない。理由は省略。自分の会社の愚痴になるので(笑)。

 そもそも、スマートフォンを使うレベルまで日本のホワイトカラーのレベルは達していませんぜ、というのと、仮にもしそうなったとしても、やっぱり携帯電話メーカーのビジネスモデルとスマートフォンは相容れないという気もする。つまり「ドコモがスマートフォンをやらないのはほぼ確信犯」ということだ。

 実は今、ある企業の社員管理システム構築を手伝っているのだが、ホワイトカラーの生産性をきっちりmeasureし、向上のための施策を的確かつスピーディーに打てる仕組みを作れるかどうかで、これからの企業の“基礎体力”が決まるような気がする。今僕が作らせているシステムはウェブベースのものだが、MySQLを直接叩くことができるアプリケーションを簡単に作れるスマートフォンが登場すれば、生産性管理の精度はより一層高まるだろう。

 だがそれをやると、システムから落ちる収益というのは、アプリケーションの開発者か、スマートフォン端末の開発メーカーにしかいかなくなると思う。間にいる通信業者という「土管屋さん」には、別に何の付加価値もないわけだし、となるとコスト削減圧力だけがかかることになる。実際米国がそうだし、僕自身も「jigアプリ」を自分のケータイにインストールして以来、iメニューをほとんど見なくなった。同時にXiinoも使わなくなったけどね(笑)。

 それがわかっているからこそドコモはボーダフォンやauがフルサイズブラウザ搭載の携帯とかスマートフォンを出すのを横目に動いてこなかったのだし、これからも収益がきちんと自分たちに落ちることが確認できない限り、アプリの仕様が完全にオープンになった携帯端末など出そうとはしないだろう。あ、でもiアプリを作った時点で、既にそのパンドラの箱は開いたと言ってもいいのかな。jigみたいなアプリが出て来ちゃったしな。

 ドコモ自身がjigのようなアプリを作って売れれば一番理想的なのだろうが、これってめっちゃ手間がかかる。あんな大企業が今さらそんなこと、やりたくないだろう。とすれば、彼らが取りかかるのは端末開発の自由を徹底的に制約してメーカーにいらぬ超過利潤を落とさないこと、これだけだ。

 楽曲のネット販売の既存収益などもともとビジネスの中に入っていなかったソニーのウォークマンが、自分で一から作った楽曲販売ビジネスを味方につけてヒットをかっさらったiPodに負けたのとは、ちょっと意味が違うと思うのはこの点である。しかも、iPodは楽曲のフォーマットではオープン(MP3)だが、ソフト(iTunes)とハードの結びつきではクローズドだ。

 問題はこうした「押さえるべきところをがっちり押さえる」戦略をドコモがとり続けたとしても、「それでもいつかオープンネットワークのスマートフォンは勝つ。ドコモは負ける」と、言えるのかどうかだ。奥さんには、そこんとこをぜひもう一度エントリで書いてもらいたいと期待している。

(18:31追記)下から3パラグラフ目など、一部を少し書き直し・書き足しました。

02:15 午後 携帯・デジカメ

 TrackBack URL:: http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16309/2148061

TrackBackList::企業はスマートフォンを欲するか?

iPod の成功と NTT ドコモの未来 (その 2) トラックバック Kazuho Oku's blog @2004/12/06 12:22:35
 前回のエントリ「iPod の成功と NTT ドコモの未来」にトラックバックがついていた。  まずは、「汎用性にはリスクが伴う」について。ドコモが汎用 O... 続きを読む

汎用性にはリスクが伴う トラックバック mgkillerの目が光る。 @2004/12/06 16:11:47
というか様々なコストが増大するというか。コンピュータにおいてのオープンソースがコ 続きを読む

Comments

Post a comment