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2004年12月のバックナンバー

2004/12/30

年の瀬に思う来年~10年後のブログ界動向

 年の瀬ですねえ。年の瀬の定番ネタと言えばやっぱり、10大ニュースと来年予想。10大ニュースの方は、今年は誰にも言えない俺ニュースが多すぎて世間の動きがかすんで見える年だった(笑)ので、やりません。

 で、来年予想の方ですが、「2005年のブログ業界はどうなるのか」というネタが、あちこちのブロガーの間でアップされるようになってきた。面白かったのは、小林Scrap Bookの「2005年のブログに関するメモ」と、Moleskin Diaryの「来年のblog界を予想してみる」の2本かな。

 ま、日本のブログ業界というものが、そもそも2002年末のはてなダイアリー開始によって幕を開けたばかりのものなので、正直これから次第でどうとでもなるとは思うけれど。

 おおかたの方向は、2人の意見も一致しているように「ブログの専門化・分業化」といったところだろう。小林ScrapBook氏はそれを「ポスト木村剛の地位を狙う“あらゆる社会ネタ引き出しを持つブロガー”の登場期待」と、「ごくわずかの知り合いだけに読んでもらえればOKとするSNS的ブログ、あるいは特定の属性に特化した切り口でコミュニティ・マーケティングなどを試みるブログサービスの増加」と表現している。

 一方、Moleskin氏は後者の「専門ブログサービス」に対しては肯定的、というかニュートラルだが、前者の「スーパーブロガー(になりたい奴)の台頭」に関してはネガティブに考えているようだ。

 個人的な考えを言うと、僕自身は木村剛が登場したときから突き放して見ていた覚えがある。というのも、彼は「アンチ権力」みたいなポーズで大衆を自分の政治力に巻き込もうという意図が見え見えで、しかもそのくせ「俺は偉い、だからお前らはついてこい」的な悪臭がプンプンするものだから、こんな人がネットワーク上の言論でいつまでも中心にいられるわけがないと直感したからだ。

 恐らく同じことはMoleskin氏も含めいろいろな人が感じていたことだろうと思うのだが、最後の最後に木村剛を担ぎ出した当の仕掛け人である切込隊長が日本振興銀行問題に端を発した論争で、ネットワーカーとしての木村剛を完全に撃破してしまった。ローカルルールとして落着していたはずのゴーログTB全文転載問題も蒸し返された挙げ句、ネット界隈には今や「木村剛の回りには木村剛ルールで動く信者以外近寄るな」という暗黙の了解が形成されてしまったように見える。

 木村氏のミスは、「トラックバックランキング」という、金融業界における「財務格付け」のごとき強力なレーティングツールを手にしていながら、そのツールを運用する権力を唯一持つ者として求められる沈着冷静かつ公正中立な装いを演じきれなかったことだと思う。

 実際のところ、トラックバックランキングが発掘した「面白ブログ」の数は非常に多く、この功績は2004年のブログ界にとって決して小さくはなかったと思う。だが、金融の世界でもレーティングツールを握るものは(少なくとも表向きは)個人の思惑でツールから生じる権力を用いてはならないのは常識のはずなのに、彼は自分のリアルの立場がやばくなるとその禁じ手に手を出してしまった。

 ゴーログの次にそうしたブログ「レーティング」の権力を、次に誰がどのようにして手にするのか、来年はそこが1つの注目すべきポイントだというのは確かだ。だがそれと、ユニークな切り口で時事ネタを次々と斬りまくる「スーパーブロガー」の登場、あるいはそれへの待望とは、切り分けて考えた方がいいのではないかと僕は思う。

 思うに、木村剛氏がネットワーク・ハブとしてのポジションを取り得たのは、優良ブログの発掘やレーティングのオートマティックなシステムがまだ確立されていない黎明期だったればこそであり、その機能は今や「Feed Meter」や「matome.jp」などに取って代わられようとしている。したがってMoleskin氏の懸念するように、「自分を主、読者を従」として扱うようなブログが今後(狭い範囲の信者グループ内を除いて)ネットワーク内のメジャーなハブのポジションを取ることは、恐らくあり得ないだろう。

 実際、ゴーログに続くネットワーク・ハブの2匹目のドジョウを狙って登場したものの、読者にトラックバックでの情報提供を呼びかけたりと同様の悪臭を放っていた団藤保晴氏の「ブログ時評」は、、開設わずか1週間でその意図を切込隊長に見破られて放火され、火だるまにされてしまった(と言いつつ、僕もちゃっかりそこにガソリンぶっかけるのを手伝ってたわけだが(笑))。

 ただ、無機質なレーティングデータに解釈とエンタテイメントの要素を加えつつ解説してみせる人というのは常に必要なわけで、世の中にそうした「何でも解説屋さん」の需要がなくなることはない。なので小林ScrapBook氏の言うような「社会派ネタ全般に引き出しを持ったおじさん」をITも援用して何とか作りあげるか、それともそこそこの人ならカバーできる範囲にまでブログの対象分野を細分化・専門化していくか、という話になるのだと思う。

 前者についてはここで何度か取り上げている「議論整理ツール」のようなものもその道具の1つなのかなと思う。また後者は地域、趣味、場合によっては「会社」という単位でのブロググループなども出てくるかもしれない。

 従業員全員が毎日つける「会社」ブログというのは、どっかのITベンチャーが言っていたなぐらいの、突拍子もないアイデアのように思われるかもしれないけれど、知的生産が主軸になる企業においては(2005年中に、とまでは言わないけれど)意外にすぐに訪れる事態のような気がする。

 というのも、実はブログ登場前から「ブログ的コミュニケーション」を実践して社内で成功したビジネスパーソンというのは、実例を挙げると結構いるような気がするからだ。

 その、ものすごく有名な一例だけ挙げると、セイコーエプソンの木村登志男副社長あたりじゃないかな。前段のもう1人の木村氏と混同しないよーに(笑)。

 彼は確か10年以上前、エプソンのNEC98互換機事業を率いていた頃から、部門内で「こんにちは、木村です」というガリ版刷りのミニコミ誌を作って配っていたと記憶している。その後、メールが登場してそれをメールに切り替え、ウェブが登場するとイントラネット内に自分のサイトを立ち上げた。その間、ほぼずっと毎週必ず自分の身の回りに起こったことを自分の部下たちに自分の言葉で伝えてきた。

 なぜそんなことを続けているのか、木村氏本人に尋ねたことがある。彼の答えは非常に興味深いものだった。「普段仕事と何の関係もない話を書いていても、たいした内容のことを書いてなくても良いんですよ。毎週必ず書いていれば、それを読むのを習慣にする人たちが出てくる。そして、本当に自分が何か大きな問題に直面して困っている時、そのことを書くとすぐさま数人、数十人の人たちが助けの手を差し延べてくれるんです。その時のためにやってるんですよ」

 エプソン社内で木村氏を真似して毎週メッセージを発信しようという役員がこれまで何人もいたが、継続できた人がほとんどいないらしいという話も聞いた。

 ブログを書き始めた今、僕にはあの時木村氏が言ったことの意味、そしてエプソンの他の役員たちが彼を容易に真似できなかった理由がすごくよく分かる気がする。ブログでは自分自身が明快な結論を持っていなくても、投げかければ誰かがそれに助け船を出してくれる。結果として、その「場」には1人で考え続けていたのでは思いつかない「知」がものすごいスピードで集積するのだ。

 木村氏が見ていた情報発信のメリットとは、この点にあったのだろうと想像がつく。だが、こうした知の集積は、「俺が主で、お前らは従だ」「俺が正しくて、俺に文句を言う奴は間違っている」という姿勢の情報発信者の元では決して起こらない。絵文禄ことのはブログに「安倍ぬすみ主義」とこき下ろされて以来、ゴーログへのトラックバックの数が減少しているのは、その象徴だ(ちなみにこのゴーログTB引用問題に対する僕の考えは、笑わせんなヴォケが!のこのエントリにほぼイコールである)。

 このままの勢いでブログが利便性の高いコミュニケーションツールとして普及していけば、従来の企業で一般的なヒエラルヒーを想定したコミュニケーションよりも、こうしたフラットな関係の中での「モデレーション(ファシリテーション)」を想定したコミュニケーションのほうが知的生産性が高いことが次第に明白になる。

 そうすれば、「知」を軸に活動する企業(コンサルティングファームやマスメディアなど)が「社員に個人ブログを運営させ、誰が(企業という)コミュニティの知的生産性向上により多く貢献したかを明確にしようじゃないか」と考え始めたとしても、何ら不思議ではない。というか、そう考えて実行する企業だけが生き残る時代が、まもなくやってくるだろう。

 来年ではなく10年先ぐらいの話かもしれないが、今の僕たちにとってこういう時代が来るのは「そう遠くない未来の話」だと、ここで予言してみようと思う。やや理想に傾いた独断ではあるけれども。では皆様、良いお年を。

03:22 午前 ウェブログ・ココログ関連

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