リベラルぶりっ子<萌えヲタの時代
忘年会に行って来た。
相手は、会社の同僚のR嬢、S嬢。年齢は少しずつ違うが、3人で大きな仕事をいくつかやった「同志」。年末で辞める僕への送別会も兼ねた会だったが、いつも通り熱い議論からバカ話まで、4時間以上おしゃべりに花が咲いた。
で、その話題の矛先が先日の「カノジョに働いていいよと言いつつ家事をやれとプレッシャーをかける男」というこのブログのエントリに。あれを読んでブチ切れたというR嬢の毒舌トークをひとしきり聞いた後、話は恋愛論へとなぜか急展開した。
エントリのコメント欄に出ていた「リベラルぶりっ子」っていうのは、言い得て妙だよねとか大笑いした後に、「じゃ、ぶりっ子じゃなくて今本当のリベラル男ってどこにいるのか?」という話になった。
ここで言うリベラルとは、言葉の本来の意味で「寛容な」とか「気前の良い」といった意味。つまり、男女の多様な働き方、生き方の選択に寛容で、「社会的ステータス」とか「男としてのメンツ」とかにこだわらず、たとえ自分より妻の給料が多くても自分の家事分担が多くてもニコニコしてそれを受け容れるような、働く女性にとって一緒に過ごしやすいそんな男性、という意味だ。政治的なウヨサヨの話ではないので念のため。
それってもしかして、オタクとかニートとかの、「自分は結婚、就職などの社会的能力が他人に比べて足りない」と認識している、Loveless zeroさんの言葉を借りるなら“退却系”の男性のことじゃないだろうか。と、R嬢が言った。
そういえば確かにそうかもしれない。AERAによれば「電車男」の本を買っている人の半分は女性だそうだし、最近発見してびっくりしたブログ(こちら)を見ても、ラブドールにいろいろな服を着せて妄想と一緒に写真を載せるという、普通なら「キモイ」以外に表現できない内容のブログ作者に女性からのデート申込みが相次いでいるというし。
電車男がなぜ女性の人気を集めるのかについては、こちらのブログなどが「対人関係の煩わしさを嫌がるものぐさ女性の希望的観測」と斬って捨てているが、ま、確かにそういう部分はあるのだろうし、R嬢もS嬢もそれは指摘していたが、僕はそれってあながち悪いことでもないと思う。
世の中には一方で先日のエントリに書いたような「生まれ育ちまでガチガチの保守主義者なんだけど、でも俺って女性に理解あるリベラリストなんだよ実は」みたいなことをひけらかす、危険な二枚舌の男性が少なからずいる。もし、それなりに自立して生きたいと思う女性がそうしたトラップから身を守ろうと思えば、自分の危ない性癖とか恥ずかしい趣味をありのままにさらけ出して、女性に尊敬と憧れのまなざしを向けてくれる男性とつき合った方が、どうみたってリスクは少ない。
それから、もっとラディカルな見方をすれば、実はリベラルぶりっ子よりも萌えヲタ君のほうが、コンテンツ的にずっと深くて面白いということもあるかもしれない。
たいてい、リベラルぶりっ子の男性というのは、俺はあれもできる、これも知ってると見栄をはりたがるくせに、実際にやらせてみると口ほどにもない奴というのが大半である。なんとなれば、彼らは「女性にダサイところを見せてはなるまじ」と思っているので、できもしないことを「できる」とつい口にしてしまうからだ。でも女性は趣味遊び系は男性よりずっと幅広い経験がある人が多いので、たとえ自分の知らない領域でも、一目見れば彼の達人度が大したことないレベルだというのは判断できる。それで女性の側は、「あれだけできるできるとか言っといてそのレベルかよ…」と萎えてしまうわけだ。
前回のエントリで、「なぜそういう人たちはお見合いという、彼らの階級だけに許された手段を使わないのか」というコメントをもらっていたが、実際のところ僕もそう思う。だが、彼らは、「結婚はやっぱり恋愛結婚じゃなきゃあね」というリベラルな価値観を披露したいがために恋愛にこだわっているのだ。要するに、言葉だけでなく行為そのものもリベラルぶりっ子なわけだ。しかも、そのことを遠回しに非難されたりすると、あくまで一般論として受け止めて「理解を示」し、自分に向けられたものと感じて反省するなど絶対にしない。
これに対して、ヲタク系の男性というのは、「いや、俺ただのオタクだからさ…」とか謙遜するくせに、それまで他の男性が女性の目を引くためになどに費やしていた労力のすべてを賭けた没入で、非常に狭い領域の知識・芸を極めている。だからその領域に聞き手が興味を持ってさえあげれば、常人の想像を超えたウンチクが滔々と流れ出てくるのだ。これは、考えようによっては汲めども尽きぬコンテンツの泉である。
しかも当の男性は「自分はその分野だけしか究めていない」という自覚が明確にあるから、それ以外の部分では女性の言い分を割と素直に聞いてくれる。それがどんなに自分のこれまでの生活習慣となじまないものでも、「俺みたいなダメ人間は普通の人並みになるのに努力が必要だから」とか言いながら、ちゃんと合わせる努力を払ってくれる。
R嬢、S嬢に共通する言い分は「ヲタク男性の方が、自分と他人に正直だ」ということだ。特に、電車男やラブドールブログの524氏のような、自分の恥ずかしい部分も含めて持っているコンテンツを他人のためのエンタテインメントとしてインターネットで晒せるヲタクには、女性から大いに共感を集めるチャンスが増えているということでもある。R嬢がその後送ってきたメールをそっくり引用しておこう。
ネットって、ある意味、恋愛における新興市場みたいなものかと。これまで、中小企業(オタク男)の存在そのものが投資家(女性)に知られておらず、資金(恋愛チャンス)集めが難しかったけれど、新しい市場のおかげで、小さくても魅力的な企業なら広く資金を集められる。良い世の中になったと私は思いますよ。いやはや、まったくその通り。3K、イケメン、リベラルぶりっ子の時代は終わった。これからは貧乏でもダメ人間でも正直で面白いコンテンツ力のある「萌えヲタク男」の時代なり!男性諸君、心せよ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
結婚して子供もいる元オタクです。
ヲタのほうが、あわせる努力をする、というのはそのとおりだと思いますが、
1. 実際にどこまであわせられるか
2. どうしてほしいかを感じとれるか
3. 自分で考えて動けるか
といった点では、非ヲタの方がいいかもしれません。
「がんばってます」だけじゃ世の中まわらないのよ、ということで。
投稿: kazuho | 2004/12/17 12:21
ほうほう。
もう一つのタイプが
映画「猟奇的な彼女」のキョヌだな。
キョヌは、電車男とはちょっと違う。
もっと、お互い求めていることに正直でいい。
そうそう、たぶん、行間をもう少しあけると、
チカチカが減るのではないかなぁ?
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/2292374
ぐらいが、見やすい?
投稿: 野猫 | 2004/12/17 13:57
このエントリーは非常に面白かった。ヲタクとかって一概に馬鹿に出来ないのかなあ、と思いました。考えてみればある職業のプロ、スペシャリストはその方面のヲタクでもある訳だし、その違いは社会的に認められているか否かというだけの様な気もしますね。てゆうかマックだとなんで文字化けしますか?
投稿: cmyk | 2004/12/18 03:52
コメントありがとうございます>みなさま
奥さん…なんていうか、行間から苦渋がにじみ出ていますな(苦笑)。
結婚したのが「変われる」20代前半で良かったと言うべきか。
Loveless zeroさんの言うとおり、30歳なってからではきつかったかもね。
「猟奇的な彼女」見てないんですよね。すいません>野猫さん
行間の開け方分からないんですが…またおいおい研究します。
おほめの言葉ありがとうございました。
僕はマカーじゃないのでわかりませぬ>cmykさん
投稿: R30@管理人 | 2004/12/18 09:18
一言で言うと、「電車男」は奇蹟ではなく必然だった、ということですね。いや、このエントリのほうが前回よりも前向きでいいと思いました。前のエントリだけだと、何だか欧米の幻想に囚われている哀しい状況という感じがします。私は仕事柄そういう思考全般に対して非常に敏感に反応してしまいます。(あ、男女関係じゃなくて、欧米の幻想、というほうですが。)だから、こんな形で男女関係ができるというのもいいんじゃないかと。
投稿: むなぐるま | 2004/12/18 09:58
とっても興味深く読ませて頂きました。
ここに書かれたようなオタク達には何らかの需要や
脚光を浴びるべきものがあるような気がします。
ただし、それにはやっぱり
・限定的な分野への理解という限定を自覚している
・だけど自分の分野に関してはよく秀でている
・概して自分と他人に素直
という要請を満たしている必要がるんだな、と再確認
しました。確かにここに書かれたようなオタク達なら
魅力的だと感じます。一方で、ここに書かれている
条件を満たしきっていないオタク達はアウトなの
かなぁとも感じさせられました。そういう意味で、
示唆的だなぁと感じました。
投稿: シロクマ | 2004/12/18 13:03
ハッキリ言って「要請を満たしている」オタクは
極々わずかだと思います。
オタクの集団を見てみれば分かります。
対人関係の能力が欠如した人がたくさんいます。
なので、あまり期待しない方が良いです。
屑会社だらけの新興市場かもしれませんよ?
投稿: オタク1号 | 2004/12/19 19:39
その通りですね!!本エントリに大いに
同感なのですが、一つだけ根本的問題があります。
それは、オタクは、女と付き合う時間よりも
オタク趣味をやっている時間の方が楽しいので、
女と付き合う必要を感じないということです(笑)
投稿: kagami | 2004/12/22 21:59
個人的感想を連ねるだけになりますが、
テキストサイト系が一時期こぞって非モテやオタを標榜した現象によって
こういう現象は語りつくされたしむしろ既に瓦解したと思ってたことがあります。
最初から完全に女性読者を意識したものが多かったし、こんなのはネットの些細な特性を利用しただけの現象だろう、と。
ところが電車男とかがやってきて(出版の話があがる前の段階で)
数少ないネットに詳しい女友達が次々とこれを絶賛し
私にも読むことを薦めてきたときに考えを改めざるをえませんでした。
なんでこんな男性向け妄想話が女性の支持を得れるのだ? と。
しかし「対人関係の煩わしさを嫌がる」のが女性にも現れているならば、なるほどよく分かりますし
(だいたい男性だけがこの現象に傾いていっていると考えるほうが不自然ですよねよく考えれば……)、
それをことさら否定的に捉える必要がないというのもよく理解できます。
もちろんオタクが認められた(?)というだけでなく、
ネット上で強いコンテンツパワーを持つサイトだから女性の支持も
得られたという側面もあるように思いますが、
数年前と違い今は一般人のネット参加も十分に多い中でパワーを確保したわけですから、
今後も「新興市場」は内容の移ろいはあっても一定の規模を確保し続けるかもですね。
3Kとかイケメンみたいな一部上場市場にはならないでしょうけど(笑)
投稿: スープ | 2004/12/24 08:03