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2004/11/02

「釜ゆでうどん」であること

 再開後最初のエントリにまず、なぜ再開するのか少し考えを書いておきたい。

 もともとこのブログは、リアルでほとんど会えない友人に、僕が今考えていることを伝えるために始めたものだった。ただ、仕事柄ネットの世界の技術動向を理解していなければという思いもあり、「ブログ」というものがどんな影響を及ぼし得るのか自分で体験してみようという気持ちもあった。

 半年間ブログをやってみて感じたのは、ぶっちゃけて言うと「自分で思ったことを好き勝手に書ける場所があるって楽しいねえ」ってことである。知っている人は知っているから今さら隠し立てしないが僕はマスコミの片隅で飯を食っていて、普通の人に比べれば「自分で思ったことを書いて他人に読ませる」チャンスがべらぼうにたくさんある。それでもブログをやってみて、改めてそう思った。

 と同時に、大マスコミのブランドの傘が外れてしまえば、他人に向かって偉そうなご託を言えるほど知識のあるネタというのも自分には実はほとんどないということにも気がついた。切込隊長氏のエントリでうまくまとめてくれているので、それにリンクしておこうと思うが、彼の言葉を引用して曰く、

人間、好きなことを語るってのはどんなに忙しくても文章が長くなっても苦にならないのだなあという感嘆。あと、自分がどんな糞マイナーな趣味だと自負しているものでもその方面に長じている、より極めた男というのが存在していて立ちはだかるという現実の厳しさ。
 といった感じである。

 一方、当初想定していたのをはるかに上回る数と範囲の人がこれを読むようになって、以前書いたことが少し無防備すぎたなあという反省が出てきた。それでいったんブログを閉鎖した。

 ただ、閉鎖して改めて思った。こういう、自分が偉くも何ともないと思える場所をきちんと持っておかないと人間がダメになるなあということだ(特にマスコミに長くいると、この感覚が鈍る)。それに、少数ではあれこのブログを楽しみに読みに来ている人もいる。そういう人たちとささやかに意見交換ができることも、ブログで知った楽しさの1つである。

 ここしばらく、今の自分の仕事に悩み続けていた。他人のやることにあれこれ文句をつけるだけで、自分が何かビジネスの価値を生み出すわけじゃない。取材先でよく「そこまでお知りならぜひうちでコンサルしてくださいよ」とか言われるが、僕にコンサルなんかできっこないと思う。ふだん言っていることとやっていることのギャップの大きさにいつも悩む。特にビジネス・ジャーナリズムっていうのはそのジレンマに陥る。

 そんなとき、ある人からこう言われた。「世の中には言うだけの人ってのも必要なんですよ。その人の発言で他の人たちがカタルシスを感じてるんだから、それで十分価値を生んでるじゃないですか」。まあ、そうかもしれない。偉いことを言っているわけでもないけど、誰かのカタルシスになっていればそれでもいいか。最近、ちょっとそう思うようにもなってきた。

 関西出身なので小さい頃、生返事をしてだらだらしていると祖母などに「あんたは釜ゆでうどんやねえ」とたしなめられた。そのココロは「湯~(言う)だけ」である。でもその時以来ずっと釜ゆでうどんそのままの人生を過ごしている。でも釜ゆでうどんでもいいじゃないの、と言ってくれる人がいる限り、おいしい釜ゆでうどんで過ごすのも悪くないかもしれない。

 偉ぶらない釜ゆでうどんになる。このブログを通じて僕がやりたいことの1つはそれだ。自分にどこまでそれができるか、もうしばらく試してみようかと思っている。

 それから、以前のブログのネタで「もう一度読みたい!」っていうリクエストがあれば、ものによっては加筆修正して再アップすることも考えます。リクエストがあればコラムの内容を指定してコメントしてください。

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コメント

再開おめでとうございます。
技術者として商品を開発していると、どうしても視座がその商品を基準としたものになってしまいます。
特定の商品や市場から離れた立場でいろいろ情報を集めてきて、評価も含め書いていただけるのは、とてもありがたく感じています。
これからも、「釜ゆで」楽しみにしています。

投稿: kazuho | 2004/11/04 21:37

ごぶさた~>kazuho君
ブログ始めたんだね!あれだけ「僕には関心ない」って言ってたくせに~(笑)。これで世の中に「社長ブログ」がまた1つ増えた。ほりえもんに負けないようガンガレ(何

投稿: R30@管理人 | 2004/11/05 02:54

「マスメディアやコンサルに就職する人間の最大の動機は、”モラトリアム”の延長である」と、元コンサルが言っておりました。

いつまでも大学生的な第三者マインドでいたいのですが、なかなか会社はそうさせてくれません。

そんなプチ社内失業者にぴったりはまったのが、Blogなんでしょうかねえ。

投稿: いとー | 2004/11/08 10:07

はるばるコメントども。>いとーさん
おっしゃりたいことは分かるんですが、ロジックはちょっと逆かなあと。ずっと傍観者的でいたい人は、たぶん今のマスコミに埋もれることに満足してると思います。で、その人たちは(極私的日記を除けば)BLOGやろうなんて夢にも思わない。実際、社内でBLOGやってる人は圧倒的少数派。

「プチ社内失業者」は、そんなマスコミのモラトリアム精神から抜けだそうと思ってる人が陥る状況で、そういう人が「自分が自分であること」の証明とはけ口を求めてBLOGを始めるんじゃないかと。

そういえば僕も就職する時って、30歳以降の自己イメージを全く持たずに今の会社に入った気がします…。

投稿: R30@管理人 | 2004/11/08 11:01

再開、乙です。というより、大丈夫だったんですか。
ところで「R30」の由来は、30禁?勝手に由来を想像して、思わず30歳から許されることを考えてみましたが、なんか思いつかないですね。30代で許されなくなることは沢山ある気がしますが。本音で仕事とか(笑)
私のブログの動機は、今の仕事では活躍する機会の無い、自分の中の某ミニコミ的発想のはけ口だったりします。

投稿: 納豆屋TO | 2004/11/09 06:54

コメントどもです>納豆屋さん

30歳から許されなくなること?何だろ??人生の価値観の転回はあると思いますけど。その中で「自分はもうできないだろ」って、自分で諦めちゃうこととかかな。

そういうのを諦めない。という選択も30代にまだ許されるんじゃないかと思いますが…どうだろ。このへん、もう少し考えて次のエントリのネタにしてみますか(笑)。キーワードは「パラレル(並列的)ライフ」。

投稿: R30@管理人 | 2004/11/10 10:10

> そういうのを諦めない。という選択も30代にまだ許されるんじゃないかと思いますが…どうだろ。このへん、も
> う少し考えて次のエントリのネタにしてみますか(笑)。キーワードは「パラレル(並列的)ライフ」。

あっこれ、とても読んでみたいッス。

投稿: てけてけ | 2005/03/03 03:11

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