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2004/11/06

10年後のマンション価格

注)このエントリは08/10/2004 11:32:55 PMにアップしたものを日付だけ変えてそのまま再録しましたが、URLは変わっています。リンクされていた方はリンク先変更をお願いします。
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 8月22日号のYomiuri Weeklyに「東西430駅マンション10年後の価格」という特集が載っていた。最近、住宅に関心を持っているので買って読んでみたが、例によってYWの空砲だった。不動産評価会社、東京カンテイのマンション売買データをもとに、「10年後に値下がりしにくいマンション」の駅を上位100駅までランキングしたというものだ。

 結論から言うと「下らない」の一言に尽きる。なぜかというと、10年後の価格下落率の予想方法というのが、「現在の新築価格と中古流通価格の単位面積当たりの差を求め、それを中古物件の築年数で割り、1年当たりの減価額の10倍を新築物件の単位面積当たり価格で割る」というものだからだ。

 要するに、単純に過去10年のマンション価格の変動を「年ごとに一定率減価していく」と仮定して、それを新築マンションの価格に乗じて10年後の相場予想を出しただけなのである。

 あほらしい。中古マンションの価格が年ごとに一定率減価するなんて、10年たったら価値がなくなる自動車じゃあるまいし。最近のマンションは、メンテナンスさえちゃんとしていれば躯体寿命は100年である。10年で15%価格下落する地域のマンションは、50年経ったら4分の1の価格ですか。そんなことありえない。

 ま、東京カンテイというデータ屋さんのウリはこの計算方法の分かりやすさにあるわけで、こういうサルみたいな計算式が日本のあらゆる町の不動産屋ほぼ100%に採用されている限り、こういう頭の悪い雑誌の特集もなくならないのでしょう。

 ちなみにランキングの上位10駅は、1位田園調布、2位光が丘、3位品川、4位御獄山、5位吉祥寺、6位月島、7位新浦安、8位平井、9位若葉台、10位代官山。

 分かる人には分かるが、これらの駅はすべて過去10年以内に鉄道の新線が開通した地域か、大規模な地区再開発が実施されたところである。田園調布、御獄山は地下鉄南北線の東急線乗り入れと、東横線複々線化。光が丘、月島は都営大江戸線。若葉台は小田急の新駅開通(予定)。品川、平井、代官山はそれぞれ大規模な(再)開発が行われた地域だ。新浦安は少し古いが90年の京葉線開通に加え、今も海辺の埋め立て地で継続的に住宅・商業地の開発が進んでいる。吉祥寺だけがよく分からないが、ここも駅周辺の商業施設の充実があるのだろう。

 だから本当に「10年後に価格が下がらないマンション」を言い当てたいなら、地域に今後大規模な再開発が起こりそうな、あるいは新線が開通して交通の便が劇的に向上しそうな場所を選ぶべきだろう。今なら、ゆりかもめが再来年に延伸する豊洲とか、有楽町線が延伸する住吉とかの駅まで数分以内のマンションが「お買い得」だと思う。本当に10年後にキャピタルゲインを狙ってマンションを買おうという人は、そういうところを買えばいい。

 だが、マンションを買うのは別に投資家ばかりではなく、むしろ自宅として購入する人の方が多いはずだ。YWのランキングは単に「過去10年余りの間にマンションを買って大損しなかった人の多い地域ランキング」なだけで、今後10年間のマンションの価格変動とは何の関係もないものだが、さらに言うなら「値下がり率」という投資の尺度だけでランキングしているという点で、投資用ではなく自宅用にマンションを購入する人にとっては、二重の意味で何の指針にもならない。

 YWの記事には、「先行き不透明な時代、人生に何が起きるか分からない。不測の事態に備え、将来も値崩れしにくく、高く売れ、人に貸しても高い賃料が取れる物件を買うことが重要」と書かれているが、もし住み替えが必要になるような「不測の事態」があり得る人生ならば、そもそもマンションなど買うべきではなく、賃貸マンションに住んでいればいいのである。

 実際にマンションを「買う」人には、人生に「不測の事態」が起こってそこに引き続き住めなくなるリスクも負ってでも、マンションを「買わなければならない」理由がある。ならばなぜその「理由」をもとに将来の不動産の価値を評価しないのだろうか。

 僕には、10年後にこれが住宅用不動産(主にマンション)の価値を決めるだろうと思われる、決定的な評価軸のイメージがある。ただ、これについて語り始めるとまた長くなるので、続きは次のエントリで。

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コメント

ちょうど逆パターンでバブルの頃を思い出しました。毎日のようにマンションの玄関に「買います」「売り物件募集」のチラシが入り、普通のマンションが億ションに化けましたが、立地が気に入っていたので買い替える気もなく、住んでいる側にとってはなんのメリットもなかったですね。
バブルが弾けて価格がピーク時の四分の一以下になりましたが、担保価値が下がったので、借り入れ限度額が減ったぐらいで、だからといって特になにが困るわけでもありません。改造して気に入ってしまったらちょっと動く気がしないですね。投資と住居では価値観が確かに違いますね。

投稿: 大西 宏 | 2005/12/09 17:36

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